LTS Research Memo(4):2020年12月期は旺盛なDX需要を追い風に、期初計画を上回る増収増益を達成
[21/03/23]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2020年12月期の業績概要
エル・ティー・エス<6560>の2020年12月期の連結業績は、売上高で前期比46.6%増の5,555百万円、営業利益で同55.5%増の478百万円、経常利益で同50.0%増の447百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同34.0%増の270百万円と4期連続の増収増益となり、期初計画に対しても売上高、各利益ともに10%以上上回って着地した。コロナ禍によって市場環境の悪化が懸念されたが、同社が事業領域とするDXをテーマとしたコンサルティングやデジタル活用サービスなどの引き合いは期を通して活発に推移した。コロナ禍でも事業活動に影響を受けない経営体制を構築するためには、DXが重要であるとの認識が高まったことが背景にある。
2019年12月期第4四半期より子会社化したワクトの売上高が通年で寄与したことも大幅増収の要因となっているが、同要因を除いても2ケタ増収増益となっている。売上総利益率が前期の39.4%から36.8%に低下したが、これは営業利益率が1%程度と低水準だったワクトを連結化したことが主因だ。ただ、ワクトの利益率に関しては、同社が受注した単価の高いプロジェクトを協業することで改善している。実際、連結化直後の2019年12月期第4四半期の売上総利益率が34.9%だったのに対して、2020年12月期第4四半期は37.5%と2.6ポイント上昇しており、ワクトにおける同社の協業案件が1〜2割程度まで増加したことが改善要因になっていると考えられる。なお、今後も協業案件を3〜4割程度まで引き上げていくことで、ワクトの収益性をさらに向上していく意向となっている。
営業利益の増減要因を見ると、人員増加や給与改定等により人件費が前期比で634百万円増加したほか、外注費で907百万円、採用費で14百万円、支払手数料で11百万円、のれん償却費を含めたその他で28百万円の費用増があったが、増収効果によりカバーする格好となった。なお、四半期業績の推移を見ると、2020年12月期第4四半期は売上高が前年同期比15.1%増の1,468百万円であったのに対して、営業利益が同8.1%減の90百万円と減益となっている。これは12月にソフテックのM&A費用を計上(第3四半期に6百万円、第4四半期に27百万円)したためで、同影響額を除いた実質ベースでは19.3%増益となっている。また、同社は例年、業績が計画よりも順調に推移した場合には、第4四半期に従業員のスキル向上のため教育研修費を積み増す傾向にある。
(1) プロフェッショナルサービス事業
プロフェッショナルサービス事業の売上高は前期比46.3%増の5,367百万円、営業利益は同38.8%増の432百万円となった。コロナ禍を機に、テレワーク体制の導入など企業のDXに対する取り組みが活発化するなか、同社では旺盛な需要に対応すべく、2019年12月期第4四半期に子会社化したワクトのリソースも活用することで大幅な増収増益を達成した。
具体的には、主要顧客向けの売上高が順調に拡大したほか、新規顧客からの引き合いも旺盛だった。経営のDXに新たに取り組む企業だけでなく、すでにDXに取り組んでいるにも関わらず、想定していたほどの効果が得られていない企業からの引き合いも増加している。RPAツールや各種ITサービスを個別で導入したとしても、その企業の事業プロセスやITシステム全体を俯瞰して分析し、戦略を立ててプロジェクトを進めることがDXの効果を得るには重要であり、こうした領域で多くの知見を持つ同社に対する引き合いが増えている要因となっている。
なお、2020年1月に子会社化したイオトイジャパンについては、手掛けていた大手消費財メーカー向けのIoT関連プロジェクト2件がコロナ禍の影響で延期となったため、2020年12月期の収益貢献はなかった。今後については顧客の意向次第となるが、2022年12月期上期には何らかの成果が見えてくるものと思われる。
プロフェッショナルサービス事業については、季節要因として第1四半期と第3四半期に利益が偏重する傾向にある。第2四半期は新卒・中途社員含めて20名以上の新入社員に対する研修費用が掛かるほか、講師として社内の優秀なコンサルタントを充当するため、売上能力も一時的に落ち込む傾向にあるためだ。また、第4四半期については業績の進捗状況にもよるが、余裕がある場合はコンサルタント自身が論文を執筆したり、グローバルテクノロジーカンファレンスに参加するなど、スキルアップのための時間に充当しており、その結果、関連費用が膨らむことが要因となっている。別の見方をすれば、第4四半期の利益については経営の意思である程度コントロール可能な状態になっているとも言える。2020年12月期第4四半期の営業利益については、2020年12月に子会社化したソフテックのM&A費用を計上したため、前年同期比で11.6%減の77百万円となっているが、同要因を除けば同19.0%増益となっている。
ソフテックは静岡県に拠点を置くシステム開発・運用・保守を行うIT企業で、設立は1993年と歴史が長く、主要顧客には、大手自動車部品メーカーがあり、そのほかにも顧客の裾野は広い。主に保守・運用等のBPOサービスを展開しており、業績は、2020年6月期で売上高684百万円、営業利益40百万円となっており、ここ数年安定して推移している。また、システムエンジニアは約70名在籍している。同社ではソフテックを子会社化することで、大手から中堅規模の製造業が多く集まる静岡・東海エリアの体制強化を図り事業を拡大していくとともに、受注単価の高い業務をソフテックと協業することで、ソフテックの収益性も向上し、シナジーを高めていく戦略となっている。同社の連結業績には2021年12月期より組み込まれることになる。
(2) プラットフォーム事業
プラットフォーム事業の売上高は前期比47.1%増の237百万円、営業利益は45百万円(前期は4百万円の損失)となった。「アサインナビ」の会員数が2020年12月末時点で法人・個人合わせて前期末比1,831会員増加の10,206会員(法人会員4,159社、個人会員6,047名)と順調に拡大し、「アサインナビ」「コンサルタントジョブ」ともに増収となった。とりわけスキルの高いITコンサルタントのマッチングサービスとなる「コンサルタントジョブ」に関しては、前期に体制強化を図った効果もあり、売上高で前期比5割増と大きく伸長した。また、新サービスとなる「CS Clip」のβ版を2020年7月にリリースしたほか、「アサインナビ」の収益性向上を目指した課金体系の見直しも2020年8月に実施するなど、将来の収益拡大に向けた取り組みも推進した。第4四半期の業績で見ると、売上高は前年同期比58.8%増の70百万円と四半期ベースで過去最高を更新したが、「アサインナビ」の課金体系見直しの効果も出ているものと見られ、今後の成長が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2020年12月期の業績概要
エル・ティー・エス<6560>の2020年12月期の連結業績は、売上高で前期比46.6%増の5,555百万円、営業利益で同55.5%増の478百万円、経常利益で同50.0%増の447百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同34.0%増の270百万円と4期連続の増収増益となり、期初計画に対しても売上高、各利益ともに10%以上上回って着地した。コロナ禍によって市場環境の悪化が懸念されたが、同社が事業領域とするDXをテーマとしたコンサルティングやデジタル活用サービスなどの引き合いは期を通して活発に推移した。コロナ禍でも事業活動に影響を受けない経営体制を構築するためには、DXが重要であるとの認識が高まったことが背景にある。
2019年12月期第4四半期より子会社化したワクトの売上高が通年で寄与したことも大幅増収の要因となっているが、同要因を除いても2ケタ増収増益となっている。売上総利益率が前期の39.4%から36.8%に低下したが、これは営業利益率が1%程度と低水準だったワクトを連結化したことが主因だ。ただ、ワクトの利益率に関しては、同社が受注した単価の高いプロジェクトを協業することで改善している。実際、連結化直後の2019年12月期第4四半期の売上総利益率が34.9%だったのに対して、2020年12月期第4四半期は37.5%と2.6ポイント上昇しており、ワクトにおける同社の協業案件が1〜2割程度まで増加したことが改善要因になっていると考えられる。なお、今後も協業案件を3〜4割程度まで引き上げていくことで、ワクトの収益性をさらに向上していく意向となっている。
営業利益の増減要因を見ると、人員増加や給与改定等により人件費が前期比で634百万円増加したほか、外注費で907百万円、採用費で14百万円、支払手数料で11百万円、のれん償却費を含めたその他で28百万円の費用増があったが、増収効果によりカバーする格好となった。なお、四半期業績の推移を見ると、2020年12月期第4四半期は売上高が前年同期比15.1%増の1,468百万円であったのに対して、営業利益が同8.1%減の90百万円と減益となっている。これは12月にソフテックのM&A費用を計上(第3四半期に6百万円、第4四半期に27百万円)したためで、同影響額を除いた実質ベースでは19.3%増益となっている。また、同社は例年、業績が計画よりも順調に推移した場合には、第4四半期に従業員のスキル向上のため教育研修費を積み増す傾向にある。
(1) プロフェッショナルサービス事業
プロフェッショナルサービス事業の売上高は前期比46.3%増の5,367百万円、営業利益は同38.8%増の432百万円となった。コロナ禍を機に、テレワーク体制の導入など企業のDXに対する取り組みが活発化するなか、同社では旺盛な需要に対応すべく、2019年12月期第4四半期に子会社化したワクトのリソースも活用することで大幅な増収増益を達成した。
具体的には、主要顧客向けの売上高が順調に拡大したほか、新規顧客からの引き合いも旺盛だった。経営のDXに新たに取り組む企業だけでなく、すでにDXに取り組んでいるにも関わらず、想定していたほどの効果が得られていない企業からの引き合いも増加している。RPAツールや各種ITサービスを個別で導入したとしても、その企業の事業プロセスやITシステム全体を俯瞰して分析し、戦略を立ててプロジェクトを進めることがDXの効果を得るには重要であり、こうした領域で多くの知見を持つ同社に対する引き合いが増えている要因となっている。
なお、2020年1月に子会社化したイオトイジャパンについては、手掛けていた大手消費財メーカー向けのIoT関連プロジェクト2件がコロナ禍の影響で延期となったため、2020年12月期の収益貢献はなかった。今後については顧客の意向次第となるが、2022年12月期上期には何らかの成果が見えてくるものと思われる。
プロフェッショナルサービス事業については、季節要因として第1四半期と第3四半期に利益が偏重する傾向にある。第2四半期は新卒・中途社員含めて20名以上の新入社員に対する研修費用が掛かるほか、講師として社内の優秀なコンサルタントを充当するため、売上能力も一時的に落ち込む傾向にあるためだ。また、第4四半期については業績の進捗状況にもよるが、余裕がある場合はコンサルタント自身が論文を執筆したり、グローバルテクノロジーカンファレンスに参加するなど、スキルアップのための時間に充当しており、その結果、関連費用が膨らむことが要因となっている。別の見方をすれば、第4四半期の利益については経営の意思である程度コントロール可能な状態になっているとも言える。2020年12月期第4四半期の営業利益については、2020年12月に子会社化したソフテックのM&A費用を計上したため、前年同期比で11.6%減の77百万円となっているが、同要因を除けば同19.0%増益となっている。
ソフテックは静岡県に拠点を置くシステム開発・運用・保守を行うIT企業で、設立は1993年と歴史が長く、主要顧客には、大手自動車部品メーカーがあり、そのほかにも顧客の裾野は広い。主に保守・運用等のBPOサービスを展開しており、業績は、2020年6月期で売上高684百万円、営業利益40百万円となっており、ここ数年安定して推移している。また、システムエンジニアは約70名在籍している。同社ではソフテックを子会社化することで、大手から中堅規模の製造業が多く集まる静岡・東海エリアの体制強化を図り事業を拡大していくとともに、受注単価の高い業務をソフテックと協業することで、ソフテックの収益性も向上し、シナジーを高めていく戦略となっている。同社の連結業績には2021年12月期より組み込まれることになる。
(2) プラットフォーム事業
プラットフォーム事業の売上高は前期比47.1%増の237百万円、営業利益は45百万円(前期は4百万円の損失)となった。「アサインナビ」の会員数が2020年12月末時点で法人・個人合わせて前期末比1,831会員増加の10,206会員(法人会員4,159社、個人会員6,047名)と順調に拡大し、「アサインナビ」「コンサルタントジョブ」ともに増収となった。とりわけスキルの高いITコンサルタントのマッチングサービスとなる「コンサルタントジョブ」に関しては、前期に体制強化を図った効果もあり、売上高で前期比5割増と大きく伸長した。また、新サービスとなる「CS Clip」のβ版を2020年7月にリリースしたほか、「アサインナビ」の収益性向上を目指した課金体系の見直しも2020年8月に実施するなど、将来の収益拡大に向けた取り組みも推進した。第4四半期の業績で見ると、売上高は前年同期比58.8%増の70百万円と四半期ベースで過去最高を更新したが、「アサインナビ」の課金体系見直しの効果も出ているものと見られ、今後の成長が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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