はてな Research Memo(4):2021年7月期業績見通しは保守的な印象、利益は上振れ余地あり
[21/03/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 2021年7月期業績見通し
はてな<3930>の2021年7月期の業績は、売上高で前期比2.3%増の2,600百万円、営業利益で同61.7%減の106百万円、経常利益で同62.0%減の105百万円、当期純利益で同62.3%減の71百万円となる見通し。売上高については、コンテンツマーケティングサービスの落ち込みをテクノロジーソリューションサービスの伸長によりカバーし、7期連続増収を見込んでいる。一方利益面では、人件費やその他費用の増加により2期連続で減益となる見通しとなっている。
期初計画比では、コンテンツマーケティングサービスの回復が鈍いことから、売上高を若干下方修正したものの、DC利用料やその他経費が低減することから、各利益は上方修正している。ただ、事業費用の計画は毎年保守的に見積もる傾向にあり、2021年7月期についてもある程度の余裕を持たせた計画になっていると見られる。このため、売上高が計画並みの水準を達成すれば、利益面では上振れする可能性が高いと弊社では見ている。
(1) サービス別売上見通し
コンテンツプラットフォームサービスの売上高は前期比1.7%減の512百万円(期初計画509百万円)を見込んでいる。第2四半期累計では若干ながら増収に転じていることから、下期売上高は前年同期比4.3%減の246百万円と再度落ち込む見通しとなっている。コロナ禍で先行きの見通しが不透明なことから、広告単価の前提などを厳しめに見たためとしている。ただ、2020年4月以降に急速に悪化した時と同じような状況になる可能性は低く、売上高は若干の上振れ余地があると弊社では見ている。
コンテンツマーケティングサービスの売上高は前期比19.8%減の649百万円(期初計画740百万円)を見込んでいる。「はてなブログMedia」運用数は前期末比16件増の120件という目標を変えていないが、広告出稿の回復が緩慢なことからメディア当たり売上高が期初計画よりも下回ると見ている。ただ、半期ベースで見れば、メディア運用数の増加やメディア当たり売上単価の回復を背景に、売上高は上期の310百万円から下期は339百万円と増加に転じる見通しとなっている。メディア当たり売上高については、記事制作や記事拡散を図るための広告支援などのコンサルティングを強化することで、下期は上期比で10%弱程度の上昇を見込んでいる。また、運用数については、第2四半期までの進捗率がやや低いものの、「採用オウンドメディアプラン」の拡販を推進することで、目標を達成していく考えだ。
テクノロジーソリューションサービスの売上高は、前期比18.8%増の1,439百万円(期初計画1,406百万円)と2ケタ成長が続く見通し。SaaS型サーバー監視サービス「Mackerel」の契約件数増加並びに「GigaViewer」の売上深耕が進む予定としている。また、下期は受託開発案件で比較的大型案件の売上寄与もあることから、上期の610百万円から下期は829百万円と一段の増加を見込んでいる。
「Mackerel」については、リアルのセミナーや展示会が開催できないものの、オンラインセミナーやデジタルマーケティングを活用することで新規顧客の獲得が順調に進んでおり、2021年7月期末の顧客件数は前期末比18.5%増と前期並みの成長率を目指している。ただ、第2四半期までは計画を上回るペースで増加しており、通期でも上振れする可能性がある。既述のとおり、2020年9月から「Google Cloud インテグレーション」サービス提供を開始したことで、Google Cloudユーザー向けに拡販が進むものと期待されるためだ。また、2021年2月にはNTTスマートコネクト(株)が提供を開始した「スマートコネクト クラウド監視保守サービス」に「Mackerel」が採用されるなどOEMチャネルも引き続き増加している。「AWS」「Microsoft Azure」「GCP」と主要クラウドプラットフォームと連携したことにより、複数のクラウドプラットフォームを利用する企業にとっては、サーバー監視業務の負担軽減にもつながり導入メリットは大きくなる。このため、顧客数の拡大だけでなく、既存顧客の監視対象サーバー数が増加することによる顧客当たり売上単価の上昇も期待できる。
一方、「GigaViewer」については、引き続き導入件数の増加、課金支援機能の追加開発、レベニューシェアモデルの導入などによる売上増が見込まれており、期初計画からの上振れ要因となっている。マンガビューワについては主戦場となるスマートフォンアプリ版は競争が激しいものの、Web版については「GigaViewer」の利便性や広告運用も含めたソリューションが顧客から高く評価されており、年々導入数を伸ばしている。出版社側から見れば、スマートフォンアプリはプラットフォーマー(AppleやGoogle)に支払う手数料も高いため、Web版で広告運用も含めて収益化を図りたいというニーズが強く、こうしたニーズを取り込んでいることが背景にある。また、出版社運営のもと、マンガや小説を投稿するサービス※の開発・運用支援にも同社のUGCサービスのノウハウを生かして取り組んでおり、出版業のDX支援を推進していくことで、同分野においてさらなる成長を目指している。
※集英社の「ジャンプルーキー!」「あしたのヤングジャンプ」、KADOKAWA<9468>の「カクヨム」「魔法のiらんど」の開発・運用支援を行っている。
(2) 事業費用
2021年7月期の事業費用は前期比10.0%増の2,493百万円を計画している。内訳を見ると、人件費で同14.8%増の1,408百万円、DC利用料で同1.9%減の466百万円、その他費用で同9.6%増の619百万円となる。
人件費については、エンジニアを中心に前期末比18名の増員(2021年7月期末従業員数は178名)を計画している。これは、2022年7月期以降の高成長を実現するための体制整備を図っていく予定のためだ。ただ、第2四半期末では同1名減の159名となっており、下期は新卒社員が加わるとはいえ、目標達成のハードルは高い。なお、計画通り増員が進まなければ、人件費や採用費等が減少し、利益の上振れ要因となる。
DC利用料については、運営メディアの安全性を担保するためのツール導入費用や、「Mackerel」や「はてなブログMedia」などのサービス品質向上を目的としたミドルウェアソフトの機能強化等により、期初計画では前期比16.6%増の554百万円と増加する見込みとなっていたが、料金プランの見直しによりコスト最適化に取り組んだ結果、同1.9%減の466百万円と低減する見通しとなっている。対売上比率で見ても、2020年7月期下期の19.1%をピークに2021年7月期下期は17.4%まで低下する見込みとなっている。今後もサービス品質の向上を目的としたミドルウェアソフトの機能強化などには取り組んでいくが、売上高が成長トレンドに転換すれば、同比率もさらに低下してくると予想される。
その他費用については、上期が8.0%減に対し、前期比9.6%増の619百万円と増加する見通しとなっている。増加要因の1つには、下期に売上計上する比較的規模の大きい受託開発案件の関連費用の計上を見込んでいることが挙げられる。ただ、こちらについても保守的な前提となっており、計画よりも費用が減少する可能性はある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2021年7月期業績見通し
はてな<3930>の2021年7月期の業績は、売上高で前期比2.3%増の2,600百万円、営業利益で同61.7%減の106百万円、経常利益で同62.0%減の105百万円、当期純利益で同62.3%減の71百万円となる見通し。売上高については、コンテンツマーケティングサービスの落ち込みをテクノロジーソリューションサービスの伸長によりカバーし、7期連続増収を見込んでいる。一方利益面では、人件費やその他費用の増加により2期連続で減益となる見通しとなっている。
期初計画比では、コンテンツマーケティングサービスの回復が鈍いことから、売上高を若干下方修正したものの、DC利用料やその他経費が低減することから、各利益は上方修正している。ただ、事業費用の計画は毎年保守的に見積もる傾向にあり、2021年7月期についてもある程度の余裕を持たせた計画になっていると見られる。このため、売上高が計画並みの水準を達成すれば、利益面では上振れする可能性が高いと弊社では見ている。
(1) サービス別売上見通し
コンテンツプラットフォームサービスの売上高は前期比1.7%減の512百万円(期初計画509百万円)を見込んでいる。第2四半期累計では若干ながら増収に転じていることから、下期売上高は前年同期比4.3%減の246百万円と再度落ち込む見通しとなっている。コロナ禍で先行きの見通しが不透明なことから、広告単価の前提などを厳しめに見たためとしている。ただ、2020年4月以降に急速に悪化した時と同じような状況になる可能性は低く、売上高は若干の上振れ余地があると弊社では見ている。
コンテンツマーケティングサービスの売上高は前期比19.8%減の649百万円(期初計画740百万円)を見込んでいる。「はてなブログMedia」運用数は前期末比16件増の120件という目標を変えていないが、広告出稿の回復が緩慢なことからメディア当たり売上高が期初計画よりも下回ると見ている。ただ、半期ベースで見れば、メディア運用数の増加やメディア当たり売上単価の回復を背景に、売上高は上期の310百万円から下期は339百万円と増加に転じる見通しとなっている。メディア当たり売上高については、記事制作や記事拡散を図るための広告支援などのコンサルティングを強化することで、下期は上期比で10%弱程度の上昇を見込んでいる。また、運用数については、第2四半期までの進捗率がやや低いものの、「採用オウンドメディアプラン」の拡販を推進することで、目標を達成していく考えだ。
テクノロジーソリューションサービスの売上高は、前期比18.8%増の1,439百万円(期初計画1,406百万円)と2ケタ成長が続く見通し。SaaS型サーバー監視サービス「Mackerel」の契約件数増加並びに「GigaViewer」の売上深耕が進む予定としている。また、下期は受託開発案件で比較的大型案件の売上寄与もあることから、上期の610百万円から下期は829百万円と一段の増加を見込んでいる。
「Mackerel」については、リアルのセミナーや展示会が開催できないものの、オンラインセミナーやデジタルマーケティングを活用することで新規顧客の獲得が順調に進んでおり、2021年7月期末の顧客件数は前期末比18.5%増と前期並みの成長率を目指している。ただ、第2四半期までは計画を上回るペースで増加しており、通期でも上振れする可能性がある。既述のとおり、2020年9月から「Google Cloud インテグレーション」サービス提供を開始したことで、Google Cloudユーザー向けに拡販が進むものと期待されるためだ。また、2021年2月にはNTTスマートコネクト(株)が提供を開始した「スマートコネクト クラウド監視保守サービス」に「Mackerel」が採用されるなどOEMチャネルも引き続き増加している。「AWS」「Microsoft Azure」「GCP」と主要クラウドプラットフォームと連携したことにより、複数のクラウドプラットフォームを利用する企業にとっては、サーバー監視業務の負担軽減にもつながり導入メリットは大きくなる。このため、顧客数の拡大だけでなく、既存顧客の監視対象サーバー数が増加することによる顧客当たり売上単価の上昇も期待できる。
一方、「GigaViewer」については、引き続き導入件数の増加、課金支援機能の追加開発、レベニューシェアモデルの導入などによる売上増が見込まれており、期初計画からの上振れ要因となっている。マンガビューワについては主戦場となるスマートフォンアプリ版は競争が激しいものの、Web版については「GigaViewer」の利便性や広告運用も含めたソリューションが顧客から高く評価されており、年々導入数を伸ばしている。出版社側から見れば、スマートフォンアプリはプラットフォーマー(AppleやGoogle)に支払う手数料も高いため、Web版で広告運用も含めて収益化を図りたいというニーズが強く、こうしたニーズを取り込んでいることが背景にある。また、出版社運営のもと、マンガや小説を投稿するサービス※の開発・運用支援にも同社のUGCサービスのノウハウを生かして取り組んでおり、出版業のDX支援を推進していくことで、同分野においてさらなる成長を目指している。
※集英社の「ジャンプルーキー!」「あしたのヤングジャンプ」、KADOKAWA<9468>の「カクヨム」「魔法のiらんど」の開発・運用支援を行っている。
(2) 事業費用
2021年7月期の事業費用は前期比10.0%増の2,493百万円を計画している。内訳を見ると、人件費で同14.8%増の1,408百万円、DC利用料で同1.9%減の466百万円、その他費用で同9.6%増の619百万円となる。
人件費については、エンジニアを中心に前期末比18名の増員(2021年7月期末従業員数は178名)を計画している。これは、2022年7月期以降の高成長を実現するための体制整備を図っていく予定のためだ。ただ、第2四半期末では同1名減の159名となっており、下期は新卒社員が加わるとはいえ、目標達成のハードルは高い。なお、計画通り増員が進まなければ、人件費や採用費等が減少し、利益の上振れ要因となる。
DC利用料については、運営メディアの安全性を担保するためのツール導入費用や、「Mackerel」や「はてなブログMedia」などのサービス品質向上を目的としたミドルウェアソフトの機能強化等により、期初計画では前期比16.6%増の554百万円と増加する見込みとなっていたが、料金プランの見直しによりコスト最適化に取り組んだ結果、同1.9%減の466百万円と低減する見通しとなっている。対売上比率で見ても、2020年7月期下期の19.1%をピークに2021年7月期下期は17.4%まで低下する見込みとなっている。今後もサービス品質の向上を目的としたミドルウェアソフトの機能強化などには取り組んでいくが、売上高が成長トレンドに転換すれば、同比率もさらに低下してくると予想される。
その他費用については、上期が8.0%減に対し、前期比9.6%増の619百万円と増加する見通しとなっている。増加要因の1つには、下期に売上計上する比較的規模の大きい受託開発案件の関連費用の計上を見込んでいることが挙げられる。ただ、こちらについても保守的な前提となっており、計画よりも費用が減少する可能性はある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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