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アンジェス Research Memo(1):Emendoの買収により、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指す体制が整う

注目トピックス 日本株
■要約

アンジェス<4563>は、1999年に設立された大阪大学発の創薬ベンチャー。遺伝子医薬に特化した開発を進めており、将来的に「遺伝子医薬のグローバルリーダー」になることを目標にしている。新薬候補品を開発し、販売パートナーとの販売権許諾契約によって得られる契約一時金や、開発の進捗状況などによって得られるマイルストーン収益、上市後の製品売上高にかかるロイヤリティ収入を獲得するビジネスモデルとなる。

1. 新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発状況について
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するDNAワクチンの開発状況について、同社は2020年12月より第2/3相臨床試験を関西及び関東の8つの施設で実施しており、2021年3月10日に500症例での接種が予定通り完了したことを発表した。試験結果は2021年初夏の公表を予定している。試験結果の内容が良好であれば、第3相臨床試験に進むことになるが、治験規模が1万人以上と大規模治験となるため、国の助成金が付くかどうかがカギを握ることになる。ワクチンの国産化を望む声は強いことから、同試験結果の内容が注目される。

2. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬「AV-001」は米国で臨床試験を開始
カナダのVasomune Therapeutics(バソミューン・セラピューティクス)(以下、Vasomune)と共同開発を進めている「AV-001」について、中等度から重度の新型コロナウイルス感染症肺炎患者向けの治療薬として、2020年12月より米国で第1相臨床試験を開始している。次のステップの臨床試験でも良好な結果が得られれば、米国FDA(米国食品医薬品局)に緊急使用許可を申請することを検討している。「AV-001」の開発については2020年8月に、米国国防総省からの「医療研究プログラム(PRMRP)」として280万ドルの助成金を獲得しており、米国でも注目度の高いプロジェクトとなっている。これにより同社は、新型コロナウイルス感染症を対象とするワクチンと治療薬の両方のパイプラインを持つこととなる。

3. 先進のゲノム編集技術を有するEmendoを買収
同社は、2020年12月に、遺伝子治療分野のゲノム編集で先進の技術を持つ、EmendoBio(以下、Emendo)の買収を完了した。すでに約40%のEmendo株式を保有し、持分法適用関連会社としていたが、残り約60%の株式に対する対価を主に同社の普通株式(約1,005万株)により支払った(一部現金での支払いあり)。Emendoを子会社化したことで、「遺伝子治療プログラムと次世代ゲノム編集プラットフォーム技術を有する世界初の企業」となり、遺伝子医薬のグローバルリーダーを目指す体制を構築したことになる。今後は、両社の経験及び専門知識を融合して、ゲノム編集技術を用いた遺伝子治療用製品の実用化及び適応拡大の加速化を目指していくことになる。

4. 海外機関投資家に向けた新株予約権の発行を決議
同社は、2021年3月8日開催の取締役会において、第三者割当による第41回新株予約権(行使価額修正条項付)の発行を決議したことを発表。募集の目的は、完全子会社化したEmendoが安定的に研究開発を進めていくための運営資金の調達と開発パイプラインの拡充による事業基盤の拡大のための資金調達としている。今回発行する本新株予約権の特徴は、同社普通株式を長期保有の意向を有する海外機関投資家に対して売却していく意向を有している点である。これにより、海外の機関投資家による安定的な同社への投資や、グローバル市場、特に米国での同社のプレゼンスが上がること、また、株価への影響も軽減され又は漸次的なものとなり、株価のボラティリティを抑制できることも期待されるとしている。

5. その他開発パイプラインの動向
そのほかのパイプラインでは、米国で実施している椎間板性腰痛症を適応症としたNF-κBデコイオリゴの後期第1相臨床試験の中間結果(投与後6ヶ月間のデータ)を2021年2月に発表している。安全性や忍容性が確認されたほか、患者の腰痛の著しい軽減とその効果の持続が認めらており、治験責任医師からも高い評価を受けている。今後は12ヶ月間の経過観察期間の結果も踏まえて、第2相臨床試験に移行する予定となっている。また、オーストラリアで実施していた高血圧DNAワクチンの第1相/前期第2相臨床試験についての初期の試験結果も同年2月に発表された。安全性に問題がなく、アンジオテンシンIIに対する抗体産生も確認されたとしており、今後、安全性、免疫原性及び有効性を評価する試験を継続していくことになる。国内で慢性動脈閉塞症患者向けに「潰瘍の改善」を効能として条件及び期限付き販売承認を得て2019年9月より販売を開始※しているHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の市販後調査については順調に進捗しており、2024年の本承認取得を目指す予定に変わりない。同様に2019年10月より国内で開始した慢性動脈閉塞症の「安静時疼痛の改善」を確認する第3相臨床試験も順調に進捗している。一方、米国で2020年2月より開始した下肢切断リスクの低い慢性動脈閉塞症患者を対象とした「下肢潰瘍の改善効果」を主要評価項目とする後期第2相臨床試験については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で進捗がやや遅れていたものの、試験施設の体制整備を進めたことで、当初の予定に軌道修正できたとしている。

※「標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症における潰瘍の改善」を効能として、厚生労働省から条件及び期限付製造販売承認を2019年3月に取得し、同年9月より提携先である田辺三菱製薬(株)を通じて販売を開始した。

6. 業績動向
2020年12月期の事業収益は、前期比87.8%減の39百万円、営業損失は5,599百万円(前期は3,270百万円の損失)となった。前期に売上計上していたムコ多糖症VI型治療薬「ナグラザイム®」の販売が2019年12月期の第2四半期で終了したほか、研究開発事業収益が無くなったことなどが減収要因となった。費用面では、新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発費用を中心に研究開発費が前期比で1,581百万円増加したこと、Emnedoの買収に伴うコンサルティング費用や租税公課の増加等により販管費が同525百万円増加したことが営業損失の拡大要因となった。なお、新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発費用については国の各種助成金で賄われているが、まだ、プロジェクトが完了していないため期間損益には反映されていないが、貸借対照表上には前受金として3,594百万円が計上されている。2021年12月期の業績見通しについては、合理的な算定ができないことから未定としている。なお、2020年12月期末の現金及び預金は約115億円となっており、当面の事業活動を進めていくうえでの資金は確保されているものと判断される。

■Key Points
・新型コロナウイルス感染症ワクチンは第2/3相臨床試験での500症例の接種を完了、2021年初夏に結果が判明する見通し
・新型コロナウイルス感染症治療薬「AV-001」は第1相臨床試験に続く臨床試験で良好な結果が得られれば、FDAに緊急使用許可を申請することも検討
・先進のゲノム編集技術を有するEmendoを完全子会社化
・海外機関投資家に限定した第41回新株予約権(第三者割当て)の募集を決議
・椎間板性腰痛症を対象としたNF-κBデコイオリゴは、後期第1相臨床試験の中間報告で安全性と忍容性を確認、痛みの軽減など有効性も想定以上の結果となる

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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