ウイルプラスH Research Memo(4):成長戦略はマルチブランド戦略、ドミナント戦略、M&A戦略(2)
[21/03/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■ウイルプラスホールディングス<3538>の事業戦略
(3) M&A戦略
M&A戦略は、1)新たなエリアへの進出、2)新たなブランドの獲得(マルチブランド戦略)、3)既存ブランドのシェア拡大になる。なお、進出候補エリアは、人口100万人超の政令指定都市※と40万人超の中核都市となる。
※人口100万人超の政令指定都市は、札幌市、仙台市、さいたま市、横浜市、川崎市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、福岡市。
ウイルプラスアインスが2018年12月に「ポルシェセンター仙台」を事業譲受し、東北エリアに進出した。同ケースでは、新たなエリアへの進出と新たなブランドの獲得を同時に行った。東北エリアの全商圏をカバーするため、2019年1月に福島県に2店舗目の「ポルシェセンター郡山」を出店している。通常、新たなエリア進出では、飛び地での成功率が低いため、既存の拠点に近接している地域を選ぶ。高級スポーツカーの代名詞となるPORSCHEは、安定的な販売実績を上げており、2020年の外国メーカー車新規登録台数では第9位とトップ10入りしていることから、戦略的に新ブランドの獲得を図ったと言える。
輸入車の全国正規ディーラー網は国産車ほど多くはないものの、同社の拡大余地は大きい。具体的には、日本国内の新車・中古車、サービスを含む拠点数は、BMWが280ヶ所、MINIが207ヶ所、VOLVOの新車ディーラーが122ヶ所ある(2020年10月時点)。
M&A案件の紹介は、インポーター、金融機関、仲介会社と同社もしくは先方からの直接アプローチになる。今後の成長性や事業シナジーなどを検討し、各種デューデリジェンスを経て、事業計画を策定し、投資回収期間などの確認をする。優先的に案件を紹介してもらえるよう、インポーターとは良好な関係構築を心掛けている。一方、金融機関や仲介会社の場合は、競争入札になることが多い。同社グループは、社内の投資回収基準などに沿って入札する。
また、同社グループが扱うブランドの車種や価格帯はバラエティーに富んでいる。販売価格は、FIATが184万円から339万円、MINIは238万円から579万円、PORSCHEは680万円から3,656万円となる(2020年3月時点)。以前は、「輸入車のオーナーは富裕層」「輸入車は壊れやすい」などのイメージがあったが、輸入車と国産車の価格差は縮小し、品質も改善した。価格面で手の届く範囲になり、ユーザー層も広がっている。
(4) 店舗投資など
店舗への投資は、来場客数や顧客満足度(CS)向上によるリピーターの増加につながるため、同社グループでは、既存店舗への投資により最新CIに準拠してサービス品質の向上を図るとともに、より好立地で経営効率の向上が見込まれるロケーションに移転することを進めている。インポーターは、拡販のための新CIへの投資、納期短縮化のための手厚いディーラー在庫などを求めている。小規模で既存のエリア販売権に安住したディーラーの中には、店舗への投資負担、デモカーの増加、新CIへの対応、事業承継問題などで、事業を譲渡するケースが見られる。
新規出店は、商圏の拡大や既存エリアの補完、既存ブランドの業容拡大を狙う。持続的な成長のために、新規出店と事業譲受により継続的に店舗数を増やす必要がある。企業買収や事業譲受は、前もって時期を決めることができず、投資タイミングを逃すのも得策でない。そのため、M&Aを含めた投資には、波が生じる。同社では、2017年6月期から2020年6月期に積極的な店舗投資を行った。その結果、この期間のCAGRは営業利益が1.4%減に対しEBITDAが10.0%増であった。店舗改装はおおむね一巡していることから、今後は収穫期に入ることが見込まれる。
(5) 加速するEV化に向けた取り組み
菅首相は2020年10月の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする『脱炭素社会の実現』を目指すことを宣言した。世界では、2020年12月時点で123ヵ国・1地域が2050年までの『脱炭素社会の実現』を表明している。
この脱炭素化の潮流で、ガソリン車・ディーゼル車の新車販売を禁止する動きが加速している。一例を挙げると英国及びフランスは、2040年までにEV以外の新車販売を禁止することを2017年に表明していた。英国はさらにこれを前倒しにし、ガソリン車・ディーゼル車を2030年に、ハイブリッド車を2035年に販売禁止することとした。その他、米国カリフォルニア州や中国でも同様の取り組みが進んでいる。これに対し日本は、遅くとも2030年半ばまでに乗用車の新車販売のすべてを電動車化することを検討している。また、小池東京都知事は国に先駆け、2030年までに都内でのガソリン車の新車販売禁止を宣言している。
脱炭素化で先頭を走る欧州では、各自動車メーカーがEV化で日本に先行しているが、これは同社にとっては追い風と言える。同社が取扱うブランドのEVとしては、Jeep「Regegade 4Xe」(PHV)、FIAT「500e」、BMW「iX」「iX3」、MINI「ミニクーバーSE」、VOLVO「XC40 Recharge」(PHV)、PORSCHE「タイカン」などがあり豊富である。攻めの経営をする同社では、加速するEV化での先行者利得を追求し、すでにEV化に向けた設備投資を行い、今後も拡充する方針である。具体的な取り組みとしては、全店舗に最新の充電器の設置を推進(全店舗の84%に設置済、加えて急速充電器を順次設置中)している。また、いち早くEVの試乗体験を提供するために、EVのデモカー導入も推進している。なお、EVのデモカー導入はインポーターに対しても積極的な姿勢をアピールできるので、M&A案件の優先的紹介にもつながる可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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(3) M&A戦略
M&A戦略は、1)新たなエリアへの進出、2)新たなブランドの獲得(マルチブランド戦略)、3)既存ブランドのシェア拡大になる。なお、進出候補エリアは、人口100万人超の政令指定都市※と40万人超の中核都市となる。
※人口100万人超の政令指定都市は、札幌市、仙台市、さいたま市、横浜市、川崎市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、福岡市。
ウイルプラスアインスが2018年12月に「ポルシェセンター仙台」を事業譲受し、東北エリアに進出した。同ケースでは、新たなエリアへの進出と新たなブランドの獲得を同時に行った。東北エリアの全商圏をカバーするため、2019年1月に福島県に2店舗目の「ポルシェセンター郡山」を出店している。通常、新たなエリア進出では、飛び地での成功率が低いため、既存の拠点に近接している地域を選ぶ。高級スポーツカーの代名詞となるPORSCHEは、安定的な販売実績を上げており、2020年の外国メーカー車新規登録台数では第9位とトップ10入りしていることから、戦略的に新ブランドの獲得を図ったと言える。
輸入車の全国正規ディーラー網は国産車ほど多くはないものの、同社の拡大余地は大きい。具体的には、日本国内の新車・中古車、サービスを含む拠点数は、BMWが280ヶ所、MINIが207ヶ所、VOLVOの新車ディーラーが122ヶ所ある(2020年10月時点)。
M&A案件の紹介は、インポーター、金融機関、仲介会社と同社もしくは先方からの直接アプローチになる。今後の成長性や事業シナジーなどを検討し、各種デューデリジェンスを経て、事業計画を策定し、投資回収期間などの確認をする。優先的に案件を紹介してもらえるよう、インポーターとは良好な関係構築を心掛けている。一方、金融機関や仲介会社の場合は、競争入札になることが多い。同社グループは、社内の投資回収基準などに沿って入札する。
また、同社グループが扱うブランドの車種や価格帯はバラエティーに富んでいる。販売価格は、FIATが184万円から339万円、MINIは238万円から579万円、PORSCHEは680万円から3,656万円となる(2020年3月時点)。以前は、「輸入車のオーナーは富裕層」「輸入車は壊れやすい」などのイメージがあったが、輸入車と国産車の価格差は縮小し、品質も改善した。価格面で手の届く範囲になり、ユーザー層も広がっている。
(4) 店舗投資など
店舗への投資は、来場客数や顧客満足度(CS)向上によるリピーターの増加につながるため、同社グループでは、既存店舗への投資により最新CIに準拠してサービス品質の向上を図るとともに、より好立地で経営効率の向上が見込まれるロケーションに移転することを進めている。インポーターは、拡販のための新CIへの投資、納期短縮化のための手厚いディーラー在庫などを求めている。小規模で既存のエリア販売権に安住したディーラーの中には、店舗への投資負担、デモカーの増加、新CIへの対応、事業承継問題などで、事業を譲渡するケースが見られる。
新規出店は、商圏の拡大や既存エリアの補完、既存ブランドの業容拡大を狙う。持続的な成長のために、新規出店と事業譲受により継続的に店舗数を増やす必要がある。企業買収や事業譲受は、前もって時期を決めることができず、投資タイミングを逃すのも得策でない。そのため、M&Aを含めた投資には、波が生じる。同社では、2017年6月期から2020年6月期に積極的な店舗投資を行った。その結果、この期間のCAGRは営業利益が1.4%減に対しEBITDAが10.0%増であった。店舗改装はおおむね一巡していることから、今後は収穫期に入ることが見込まれる。
(5) 加速するEV化に向けた取り組み
菅首相は2020年10月の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする『脱炭素社会の実現』を目指すことを宣言した。世界では、2020年12月時点で123ヵ国・1地域が2050年までの『脱炭素社会の実現』を表明している。
この脱炭素化の潮流で、ガソリン車・ディーゼル車の新車販売を禁止する動きが加速している。一例を挙げると英国及びフランスは、2040年までにEV以外の新車販売を禁止することを2017年に表明していた。英国はさらにこれを前倒しにし、ガソリン車・ディーゼル車を2030年に、ハイブリッド車を2035年に販売禁止することとした。その他、米国カリフォルニア州や中国でも同様の取り組みが進んでいる。これに対し日本は、遅くとも2030年半ばまでに乗用車の新車販売のすべてを電動車化することを検討している。また、小池東京都知事は国に先駆け、2030年までに都内でのガソリン車の新車販売禁止を宣言している。
脱炭素化で先頭を走る欧州では、各自動車メーカーがEV化で日本に先行しているが、これは同社にとっては追い風と言える。同社が取扱うブランドのEVとしては、Jeep「Regegade 4Xe」(PHV)、FIAT「500e」、BMW「iX」「iX3」、MINI「ミニクーバーSE」、VOLVO「XC40 Recharge」(PHV)、PORSCHE「タイカン」などがあり豊富である。攻めの経営をする同社では、加速するEV化での先行者利得を追求し、すでにEV化に向けた設備投資を行い、今後も拡充する方針である。具体的な取り組みとしては、全店舗に最新の充電器の設置を推進(全店舗の84%に設置済、加えて急速充電器を順次設置中)している。また、いち早くEVの試乗体験を提供するために、EVのデモカー導入も推進している。なお、EVのデモカー導入はインポーターに対しても積極的な姿勢をアピールできるので、M&A案件の優先的紹介にもつながる可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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