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クロスマーケ Research Memo(3):デジタルマーケティング・データマーケティング・インサイト事業が新たな柱

注目トピックス 日本株
■事業内容

1. 事業セグメントの変更
2021年12月期初にクロス・マーケティンググループ<3675>は事業セグメントの変更を行った。新たな事業セグメントはデジタルマーケティング事業、データマーケティング事業、インサイト事業の3つである。デジタルマーケティング事業には従来のITソリューション事業及びその他の事業(プロモーション)を取り込み、データマーケティング事業はリサーチ事業のリサーチ、インサイト事業は分析やレポーティングなどリサーチ事業のリサーチ以外と組み替えている。事業セグメントを変更した理由は、デジタルトランスフォーメーションを背景とした市場の急変に対応し、ターゲットとするデジタルマーケティング市場にリサーチ企業として参入を果たすとともに、自社のポジショニングと意志を内外に明確にすることにある。さらに、デジタルマーケティング事業を成長の軸に据えることで、ビジネスの方向性と経営のベクトルを成長に合わせ、総合マーケティングソリューション企業として継続的な企業価値拡大を目指していく。一方、祖業のリサーチ事業(データマーケティング事業、インサイト事業)は今でも同社の強みであり、同社を支える収益基盤であるため、強みを生かした経営によって安定成長を持続する方針である。


ITソリューションとプロモーションを統合、成長を推進
2. デジタルマーケティング事業
デジタルマーケティング事業では、デジタルを中心としたプロモーションやマーケティング支援、インターネット通販、システム開発・保守・運用など、ITビジネスにおける総合的なソリューションサービスを提供している。旧ITソリューション事業では、Webサイトの構築、スマートフォンアプリの開発、各種ツール・パッケージの提供、調査・分析、インフラ・サーバ構築、Webプロモーション、セキュリティ対策、人材派遣を含む運用アウトソーシングなど、ソリューションサービスをワンストップで提供してきた。特に、金融機関向けアプリや決済・ポイント管理といった堅牢性が求められるシステムや、会員数100万人規模の大規模なシステムの構築・運用などに強みを持っている。旧プロモーション事業では、消費者データを活用したデジタルマーケティングやデジタルプロモーションなど、最先端のマーケティングサービスを提供している。すでにDMP※大手と提携しており、大規模な属性データと企業のデータを連携することで、複雑化する広告主ニーズや市場環境の変化に対応することが可能となっている。改めて振り返ると、デジタルマーケティング事業のもととなるITソリューション事業とプロモーション事業は、これまでも高い成長を続けてきたことが分かる。

※DMP(Data Management Platform):インターネット上の様々なサーバーに蓄積されるビッグデータや自社サイトのログデータなどを一元管理するためのプラットフォーム。分析することで広告配信などのアクションプランの最適化を図ることができる。

ところで、2020年12月に、首都圏を中心にマーケティングサービスを展開するドゥ・ハウスの子会社化を発表した(子会社化は2021年1月)。ドゥ・ハウスは「モラタメ.net」や「テンタメ!」といったメディアを運営しており、無料サンプリングプロモーションを通じて550万人にのぼる独自の消費者ネットワーク(パネル)を形成している(同社のパネルと合わせると800万人規模になる)。サンプリングプロモーションとは、化粧品や飲料、食品などを配って消費者のアンケートをとり、メーカーの商品開発や商品育成支援など多目的なマーケティングに利用する販促手法である。ドゥ・ハウスの特徴は、同社にはない大メーカーとの繋がりや商品在庫・ハンドリングにあり、一方、リサーチ業務の構成比が非常に小さいため、同社と補完関係にあるといえる。

ドゥ・ハウスの子会社化により、同社はドゥ・ハウスの成長力を直接連結に取り込むことができる。つまり、システム・アプリ開発・運用・保守・IT人材供給によるITビジネス支援など従来の戦力に加え、800万人に強化されたWEBプロモーションネットワーク、消費者に向けたサンプルプロモーション・商品開発・育成支援などプロモーションサービスでの領域拡大、顧客層拡大によるクロスセル効果、同社と取引のない大メーカーとの繋がりなどが新たに戦力として期待できることになる。このようにデジタルマーケティング事業における打ち手が広がることで、新たなサービスを提供できるようになるだけでなく、同社の事業領域も着実に広がっていくことになると予想される。


オンラインリサーチはパネルの量と質に強み
3. データマーケティング事業
データマーケティング事業では、旧リサーチ事業におけるオンライン及びオフラインリサーチによるデータ収集などのサービスを提供しており、顧客の事業活動やマーケティング活動の意思決定を支援している。オンラインリサーチで、最も重視されるのがパネルの量と質である。量については、直近1年以内にアンケートに回答したアクティブパネル数が219万人※、提携先も合わせたアクティブパネル数は465万人と日本最大規模のアンケートパネル数を誇る(2019年10月時点)。質は、性別・年代・居住地といった基本情報のほか同居家族構成など基本属性を網羅しているほか、毎年会員登録情報を更新してパネルの基本属性を常に最新の状態に保っている。また、悪質な不正回答者を登録抹消するなどパネルの品質管理も徹底している。スムーズな調査を実現するため、自動車保有などあらかじめ特定のテーマでセグメントした、20を超える専門的なパネルを用意している。このように同社はオンラインリサーチのパネルの量と質に強みがあるが、さらに、機能が分離しがちな大手他社に対して、セールス、リサーチャー、ディレクターなどすべての担当者が一丸となって顧客に接し、グループ企業が一体となって機動的に課題解決に当たるサポート体制も大きな強みということができる。なお、海外でのリサーチ事業も行っているが、構造改革やインフラ基盤強化によって再拡大を準備中である。

※ドゥ・ハウスのパネルを含めると800万人になる。


消費者のインサイトを見つけ出すことで顧客の意思決定を支援
4. インサイト事業
インサイト事業は旧リサーチ事業のうちリサーチ以外を引き継いだ事業で、分析やレポーティング、コンサルティング、消費者のインサイト※発掘といったソリューションを提供することで、顧客の意思決定を支援している。SNSなどを利用した投稿データの分析や、アンケートデータと2次データを統合したデータドリブンなコンサルティングなども行っている。例えば、医師・医療従事者や患者のパネルに対するリサーチをベースに、健康管理プログラムや発症リスクモデルの策定支援、創薬・治験などに関する論文・研究・医療技術評価の支援サポートを行っており、非常に好評である。このような専門領域でのインサイト事業は、専門人材の確保や新しい技術への対応などが必要なため、非常に付加価値の高いサービスと言え、同社の強みとなっている。また、デジタルマーケティング事業の機能を機動的に活用した、トータルなマーケティングソリューションの提案なども強みといえる。

※インサイト(マーケティング用語):消費者の行動や思惑の背景にある意識構造を分析して得られる購買のトリガー。消費者の潜在ニーズを顕在化させるスイッチ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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