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AOITYOHold Research Memo(4):2020年12月期は大幅減収減益も第4四半期には急回復

注目トピックス 日本株
■決算概要

1. 2020年12月期業績の概要
AOI TYO Holdings<3975>の2020年12月期の業績は、売上高が前期比21.7%減の51,087百万円、営業損失が727百万円(前期は2,118百万円の利益)、経常損失が1,149百万円(同1,763百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失が2,552百万円(同1,280百万円の損失)とコロナ禍の影響を受けて大幅な減収となり、営業損失に転落した。しかし第4四半期には急回復し、修正予想(2020年8月24日公表)に対しては、売上高・営業損失ともに上回る着地となっている。

売上高は、コロナ禍の影響により各事業が減収となった。特に、緊急事態宣言発令(1回目)に伴う撮影業務の中止・延期や、広告需要の減少等により「動画広告事業」が大幅に落ち込んだ。また、「広告関連事業」についても、各種イベントの中止や延期等により落ち込み幅が大きかった。もっとも第4四半期には「動画広告事業」と「ソリューション事業」がほぼ前期並みの水準にまで回復し、修正予想を上回る水準で着地することができた。また受注高についても、緊急事態宣言解除後の第3四半期から増加に転じ、第4四半期も増加しており、2020年12月期末の受注残高は13,306百万円(前期末比8.9%減)と2019年12月期末には届かないものの相応の水準を確保している。

顧客別売上高で見ても、すべてのチャネルで減収となった。特に電通グループ及び博報堂グループなど大手広告会社向けの落ち込みが顕著となっている。

利益面は、中期経営計画で掲げた最大20億円のコスト削減を前倒しで実施すべく、旅費交通費や接待交際費などコスト削減に取り組んだものの、減収による収益の下押しにより営業損失に転落した。ただ下期だけで見ると、売上高の回復とともに営業黒字化を実現している。一方、親会社株主に帰属する当期純損失の損失幅が大きいのは、中期経営計画に基づく連結子会社の大幅削減や在宅勤務の推奨によるオフィス集約・削減等に伴う事業構造改革費用946百万円に加え、コロナ禍の影響によるのれんの減損損失300百万円や投資有価証券評価損86百万円などを特別損失に計上したことが理由である。

財政状態は、減収に伴う受取手形及び売掛金の減少等により総資産は前期末比8.8%減の48,682百万円に減少した。一方、自己資本も親会社株主に帰属する当期純損失の計上により同13.1%減の19,925百万円に減少したことから、自己資本比率は40.9%(前期末は43.0%)に低下した。一方、現金及び預金は同18.7%増の10,813百万円、流動比率も223.9%と高い水準を確保しているうえ、複数の金融機関との間で120億円のコミットメントライン(借入枠)を締結していることから、流動性を含めて財務面での懸念はない。

2. 各事業の業績と活動実績
(1) 動画広告事業
売上高は前期比19.8%減の35,194百万円と減少した。コロナ禍に伴う緊急事態宣言発令(4月7日〜5月25日)のもと、撮影をほぼ全面的にストップしテレビCM制作の延期要請等の措置を行ったことが特に響いた。経済活動の再開とともに、独自のガイドライン作成※による業務の再開やリモートでの動画制作手法の導入など機動的な対応が奏功し、第4四半期には四半期ベースでほぼ前年同期並みの水準にまで回復してきた。また注目すべきは、テレビCMに比べるとオンライン動画を含むデジタルコンテンツの減収幅が小さく、構成比が高まってきたところであり、構造的な変化を示しているという見方ができる。利益面でも、利益率の高いプリント売上の減少による外部要因に加え、上期についてはコロナ禍の影響で中止・延期となった案件の実費請求等により実行利益率が31.4%(前年同期は33.5%)に低下したものの、下期には売上高の回復や利益率の低い案件の減少等により実行利益率も34.5%(前年同期は32.1%)に大きく改善している。

※医療コーディネート会社とアドバイザリー契約を締結し、制作業務に関する独自のガイドラインを作成した。撮影時には医療従事者を含む衛生対策管理チームを帯同させ、体調確認、定期的な消毒・換気の実施確認を行うなど、新型コロナウイルス感染拡大防止策の徹底を図っている。


(2) ソリューション事業
売上高は前期比13.1%減の7,074百万円と減少したものの、修正計画を大きく上回った。TYOオファリングマネジメント部門については、好調なネット企業等からの需要が増えており第4四半期に大きく回復した。また、Quark tokyo(及びMediator)についても、広告主の予算削減の影響を受けつつも若年層向けネット系企業等との取引深耕により、第4四半期は前年同期比で増加した。

(3) 広告関連事業
売上高は前期比34.1%減の6,488百万円と大幅な減収となったが、ほぼ修正計画どおりの着地である。コロナ禍に伴う各種イベントの中止・延期等が業績の落ち込みを招いたものの、オンラインとリアルを組み合わせたハイブリッド型イベントが新たな主流となるなかで顧客層が拡大し、第4四半期には回復した。

(4) 海外事業
売上高は前期比31.0%減の2,331百万円と大幅な減収となったが、ほぼ修正計画どおりの着地である。ただ、東南アジアの一部地域ではコロナ禍の影響が収束しておらず、業績への影響が継続している。

3. 四半期業績の推移
四半期業績の推移を見ると、売上高はコロナ禍により2020年12月期第2四半期から第3四半期にかけて、大きく落ち込んだものの、第4四半期には急回復している。特に、「動画広告事業」及び「ソリューション事業」の2事業については、前期同期と比べてほぼ同水準にまで戻ってきた。また利益面でも、第2四半期と第3四半期は営業損失を計上したが、第4四半期は売上高の回復とコスト削減効果により大幅な損益改善を実現しており、利益を出せる収益構造への転換が進んできた。

4. 2020年12月期の総括
以上から2020年12月期を総括すると、コロナ禍の影響により業績面では厳しい結果となった。ただ見方を変えれば、広告市場の構造的な変化(広告主ニーズの変化や新たな商流への動き等)に対して、一気に事業・組織構造の変革や収益構造の転換に取り組むことができた点においては、今後に向けてプラスの材料と言える。また想定外のコロナ禍において、独自のガイドラインを作成し、新型コロナウイルス感染拡大防止策の徹底を図りながら活動再開にこぎつけ、第4四半期以降の業績回復に結び付けたところは、同社のリスク対応力の高さを示すものとして評価できるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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