NexusB Research Memo(6):3年間で国内Fintech事業の基盤再構築に取り組む
[21/03/31]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■Nexus Bank<4764>の今後の見通し
2. 中期経営計画について
(1) 中期経営計画の概要
2021年2月に3ヶ年の中期経営計画「Nexus Growth Plan 2023」を発表した。同社グループの“Growth(成長)”を基本テーマに、2023年度における業績目標の達成と、より強固なグループ経営基盤の構築により更なる事業拡大を目指す方針を打ち出した。2023年12月期の業績目標としては、営業収益250億円、営業利益50億円を掲げ、「海外Fintech事業の安定成長」「国内Fintech基盤の再構築」「グループ経営に向けたコーポレート・ガバナンスの強化」の3点を基本戦略として取り組んでいく。
海外事業については安定成長により2023年12月期の営業収益構成比で92.5%、金額ベースで230億円強を見込んでいる。一方、国内事業はFintech基盤の再構築により営業収益構成比で7.5%、金額ベースで18億円強となり、2020年12月期から3倍以上の成長を目標としている。また、営業利益目標の50億円という水準は、JT親愛貯蓄銀行における2020年12月期の営業利益に相当するため、韓国における市場環境が悪化しなければ数値目標を達成する可能性は高いと弊社では見ている。最大のポイントは、この3年間で国内Fintech事業をいかに成長事業に育成していくことができるかにある。なかでも成長ポテンシャルの高いクラウドファンディング事業を、今後どのように育成していくことができるかが注目される。
(2) 基本戦略
a) 海外Fintech事業の安定成長
韓国のJT親愛貯蓄銀行については市場環境の変化や競争激化に柔軟に対応しつつ、安定した財務健全性の維持と量的成長をもとに収益性向上を目指していく。経営戦略としては、預貸率やBIS自己資本比率の健全な水準を維持しながら、資金調達と運用の効率化による収益性の最大化に取り組んでいく。営業戦略としては、優良顧客を中心とした年利10〜15%の中金利貸付の拡大による資産ポートフォリオの向上と、投融資における柔軟な金利の運用、金融環境変化に対応した審査・モニタリングの強化を継続していく。JT親愛貯蓄銀行の強みの1つに、審査・モニタリングが厳格で貸倒率が極めて低いという点が挙げられる。他行も融資の可否を判断する際に、同行が融資をしているかどうか参考にしているほどだ。
また、競争力強化に向けた施策として、先進的なIT技術を取り入れたFintechサービスの強化(オンラインでの金融取引サービス)に加えて、Fintech事業者との提携による競争力の確保に取り組んでいく。同行にも約40名のIT技術者が在籍しており、継続的なシステム開発によるサービス品質の維持向上を図れることも強みの1つとなっている。また、マーケティング戦略としては、ブランド価値・認知度向上に向けた広告・PR活動を積極的に実施していくほか、徹底した与信審査・マーケティングにより優良顧客の獲得に注力し、収益基盤となる貸付残高の積み上げを図っていく方針だ。
貸付残高※については、個人向けを中心に2020年12月末の1,694億円から、2023年12月末は48%増の2,500億円まで積み上げることを目標としている。また、自己資本※も同様に202億円から300億円に拡大し、BIS比率も13.1%と12%以上の水準を維持していく。
※いずれも韓国現地の会計基準(KGAAP)に基づく実績・計画値
b) 国内Fintech基盤の再構築
国内ではクラウドファンディングやキャッシュレスをテーマとした既存サービスの再構築・成長に加え、グループシナジーが期待できる事業への投資を行い、相互連携によるシナジー効果の創出に取り組んでいく。
クラウドファンディングについては、従来は貸付型商品を主に提供していたが、今後は成長ポテンシャルの大きいエンタメ・事業型商品に注力し、高成長軌道に乗せていく方針だ。エンタメ・事業型とは、資金調達を必要とする企業や個人がプロジェクトを企画し、その企画に賛同する投資家が出資し、プロジェクト成功時のリターンとともに当該プロジェクトでしか得ることができない特別なモノやサービスを得ることができるスキームであり、「CAMPFIRE」や「Makuake」などが提供する「購入型」とは異なり、投資の対価としてプロジェクト成功時におけるリターンを享受することができるという特徴がある。同社は映画・ドラマ、音楽、イベントなどのエンターテインメント分野を主軸としたプロジェクトを、ビジネスパートナー(2019年に業務提携したKeyHolder等)と協業しながら提供していく予定で、2021年中の販売開始を目標としている。また、コンテンツ事業者とクラウドファンディングのプラットフォーム構築についても検討していく考えだ。
また、Jトラストカードでは本格的なキャッシュレス社会到来により、多様なニーズに応えるデポジット型クレジットカードサービスを国内外で強化していくほか、コロナ禍で減少した個別クレジット(個別信用購入あっせん業)の債権残高を積み上げ、収益力を高めていく方針となっている。デポジット型クレジットカードは、デポジット(保証金)と同額の利用可能枠を付与したクレジットカードで、在留外国人などを含め審査が通りづらい個人でもカードを保有し易いサービスとなっている。利便性の高さがYouTubeやSNSなどで紹介されるなど、認知度が向上し発行枚数も伸びはじめている。今後、営業推進体制の強化とグループ間の連携により、個別クレジットにおける取扱加盟店や取扱業種・エリアの拡大に取り組んでいく。また、2021年5月のNexus Cardへのブランド変更を機に、SNSやWEB広告等によるデポジットカードのプロモーション活動を積極的に行い、包括クレジット(包括信用購入あっせん業)の取扱高の拡大を目指していく方針だ。2020年12月期におけるJトラストカードの個別クレジット、包括クレジットの取扱高は15億円であったが、2023年12月期にはこれを80億円まで拡大することを目標としている。
(3) コーポレート・ガバナンスの強化
同社は、中期経営計画を遂行していくため、グループ経営戦略機能の強化と各事業における自律的な専門性の強化を目的に、2021年4月より持株会社体制へ移行する予定となっている。また、東京証券取引所の株式上場において、「合併などによる実質的存続性の喪失」に係る猶予期間からの早期解消と新市場区分への対応、株主をはじめとしたステークホルダーへの適切な情報開示等にも今後注力していく。経営戦略・経営管理・グループ事業推進を強化するための専門人材の採用活動を積極的に進めていくほか、社内における人材育成にも取り組みながらグループ全体の組織力を強化していく方針となっている。加えて、事業の特性上、様々な顧客情報を有することから情報セキュリティ強化のための社内教育・研修のほか、継続的なシステム機能の追加を実施し、情報管理体制も強化していく。
なお、東京証券取引所が今後予定している新市場区分の見直し(2022年4月にプライム市場、スタンダード市場、グロース市場に再編)では、将来的なスタンダード市場への移行を見据えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 中期経営計画について
(1) 中期経営計画の概要
2021年2月に3ヶ年の中期経営計画「Nexus Growth Plan 2023」を発表した。同社グループの“Growth(成長)”を基本テーマに、2023年度における業績目標の達成と、より強固なグループ経営基盤の構築により更なる事業拡大を目指す方針を打ち出した。2023年12月期の業績目標としては、営業収益250億円、営業利益50億円を掲げ、「海外Fintech事業の安定成長」「国内Fintech基盤の再構築」「グループ経営に向けたコーポレート・ガバナンスの強化」の3点を基本戦略として取り組んでいく。
海外事業については安定成長により2023年12月期の営業収益構成比で92.5%、金額ベースで230億円強を見込んでいる。一方、国内事業はFintech基盤の再構築により営業収益構成比で7.5%、金額ベースで18億円強となり、2020年12月期から3倍以上の成長を目標としている。また、営業利益目標の50億円という水準は、JT親愛貯蓄銀行における2020年12月期の営業利益に相当するため、韓国における市場環境が悪化しなければ数値目標を達成する可能性は高いと弊社では見ている。最大のポイントは、この3年間で国内Fintech事業をいかに成長事業に育成していくことができるかにある。なかでも成長ポテンシャルの高いクラウドファンディング事業を、今後どのように育成していくことができるかが注目される。
(2) 基本戦略
a) 海外Fintech事業の安定成長
韓国のJT親愛貯蓄銀行については市場環境の変化や競争激化に柔軟に対応しつつ、安定した財務健全性の維持と量的成長をもとに収益性向上を目指していく。経営戦略としては、預貸率やBIS自己資本比率の健全な水準を維持しながら、資金調達と運用の効率化による収益性の最大化に取り組んでいく。営業戦略としては、優良顧客を中心とした年利10〜15%の中金利貸付の拡大による資産ポートフォリオの向上と、投融資における柔軟な金利の運用、金融環境変化に対応した審査・モニタリングの強化を継続していく。JT親愛貯蓄銀行の強みの1つに、審査・モニタリングが厳格で貸倒率が極めて低いという点が挙げられる。他行も融資の可否を判断する際に、同行が融資をしているかどうか参考にしているほどだ。
また、競争力強化に向けた施策として、先進的なIT技術を取り入れたFintechサービスの強化(オンラインでの金融取引サービス)に加えて、Fintech事業者との提携による競争力の確保に取り組んでいく。同行にも約40名のIT技術者が在籍しており、継続的なシステム開発によるサービス品質の維持向上を図れることも強みの1つとなっている。また、マーケティング戦略としては、ブランド価値・認知度向上に向けた広告・PR活動を積極的に実施していくほか、徹底した与信審査・マーケティングにより優良顧客の獲得に注力し、収益基盤となる貸付残高の積み上げを図っていく方針だ。
貸付残高※については、個人向けを中心に2020年12月末の1,694億円から、2023年12月末は48%増の2,500億円まで積み上げることを目標としている。また、自己資本※も同様に202億円から300億円に拡大し、BIS比率も13.1%と12%以上の水準を維持していく。
※いずれも韓国現地の会計基準(KGAAP)に基づく実績・計画値
b) 国内Fintech基盤の再構築
国内ではクラウドファンディングやキャッシュレスをテーマとした既存サービスの再構築・成長に加え、グループシナジーが期待できる事業への投資を行い、相互連携によるシナジー効果の創出に取り組んでいく。
クラウドファンディングについては、従来は貸付型商品を主に提供していたが、今後は成長ポテンシャルの大きいエンタメ・事業型商品に注力し、高成長軌道に乗せていく方針だ。エンタメ・事業型とは、資金調達を必要とする企業や個人がプロジェクトを企画し、その企画に賛同する投資家が出資し、プロジェクト成功時のリターンとともに当該プロジェクトでしか得ることができない特別なモノやサービスを得ることができるスキームであり、「CAMPFIRE」や「Makuake」などが提供する「購入型」とは異なり、投資の対価としてプロジェクト成功時におけるリターンを享受することができるという特徴がある。同社は映画・ドラマ、音楽、イベントなどのエンターテインメント分野を主軸としたプロジェクトを、ビジネスパートナー(2019年に業務提携したKeyHolder等)と協業しながら提供していく予定で、2021年中の販売開始を目標としている。また、コンテンツ事業者とクラウドファンディングのプラットフォーム構築についても検討していく考えだ。
また、Jトラストカードでは本格的なキャッシュレス社会到来により、多様なニーズに応えるデポジット型クレジットカードサービスを国内外で強化していくほか、コロナ禍で減少した個別クレジット(個別信用購入あっせん業)の債権残高を積み上げ、収益力を高めていく方針となっている。デポジット型クレジットカードは、デポジット(保証金)と同額の利用可能枠を付与したクレジットカードで、在留外国人などを含め審査が通りづらい個人でもカードを保有し易いサービスとなっている。利便性の高さがYouTubeやSNSなどで紹介されるなど、認知度が向上し発行枚数も伸びはじめている。今後、営業推進体制の強化とグループ間の連携により、個別クレジットにおける取扱加盟店や取扱業種・エリアの拡大に取り組んでいく。また、2021年5月のNexus Cardへのブランド変更を機に、SNSやWEB広告等によるデポジットカードのプロモーション活動を積極的に行い、包括クレジット(包括信用購入あっせん業)の取扱高の拡大を目指していく方針だ。2020年12月期におけるJトラストカードの個別クレジット、包括クレジットの取扱高は15億円であったが、2023年12月期にはこれを80億円まで拡大することを目標としている。
(3) コーポレート・ガバナンスの強化
同社は、中期経営計画を遂行していくため、グループ経営戦略機能の強化と各事業における自律的な専門性の強化を目的に、2021年4月より持株会社体制へ移行する予定となっている。また、東京証券取引所の株式上場において、「合併などによる実質的存続性の喪失」に係る猶予期間からの早期解消と新市場区分への対応、株主をはじめとしたステークホルダーへの適切な情報開示等にも今後注力していく。経営戦略・経営管理・グループ事業推進を強化するための専門人材の採用活動を積極的に進めていくほか、社内における人材育成にも取り組みながらグループ全体の組織力を強化していく方針となっている。加えて、事業の特性上、様々な顧客情報を有することから情報セキュリティ強化のための社内教育・研修のほか、継続的なシステム機能の追加を実施し、情報管理体制も強化していく。
なお、東京証券取引所が今後予定している新市場区分の見直し(2022年4月にプライム市場、スタンダード市場、グロース市場に再編)では、将来的なスタンダード市場への移行を見据えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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