不二精機 Research Memo(3):高精度精密プラスチック金型の製造を専業とし事業を拡大(2)
[21/03/31]
提供元:株式会社フィスコ
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■会社概要
2. 事業内容
不二精機<6400>事業は、射出成形用精密金型及び成形システム事業と精密成形品その他事業に分類され、2020年12月期における売上高は、射出成形用精密金型及び成形システム事業が2,327百万円(構成比39.3%)、精密成形品その他事業が3,586百万円(同60.7%)となっている。同様に事業別営業利益では射出成形用精密金型及び成形システム事業が267百万円(構成比92.1%)、営業利益率11.5%、精密成形品その他事業が23百万円(同7.9%)、営業利益率0.6%となっている。
(1) 射出成形用精密金型及び成形システム事業
射出成形用精密金型及び成形システム事業は、「精密金型の不二精機」を前面に掲げ、ハイサイクル、多数個取り、不良率・バラツキの極小化、長寿命な精密成形用金型に特化し事業展開してきた。その代表的な製品がCD用プラスチックケース向け精密金型並びに周辺機器を組み合わせた成形システムである。CDは1979年にソニー<6758>とフィリップスが共同開発を進め、1982年にCDの生産が開始された。同社は当初よりCDケース用精密金型に関わりCDケース用金型を開発し、1995年には量産タイプを開発して周辺装置と組み合わせ成形システムとして輸出販売も開始し、事業拡大を図った。「ディスクケース」成形ではミクロン精度の金型が必要で、しかも低コスト化の要求から、ハイサイクル、多数個取り技術、さらに長寿命の金型が必須となり、同社の精密金型システムの採用が広がった。2000年12月には同社売上高の50%を占めていた。しかしその後、光ディスクからiPod、スマートフォン、さらにはインターネット配信の普及で、ピークでは年間100億枚製造していたCDケースが現在では激減し古い設備のまま製造されており、情報関連向け精密金型市場はほぼないに等しい状況となっている。
同社はこのような環境下において、超精密、ハイサイクル、不良率・バラツキの極小化、多数個取りの金型技術を他業界に生かすべく、1997年9月に現在の主力となる注射器用精密金型を開発した。その後、ダイアライザー・シャーレ・点滴用品などの医療分野へ大きく舵取りを変化させた。2020年12月期において、医療用・食品容器用精密金型の売上高はダイアライザー向け等を中心に1,320百万円、構成比率は56.7%を占めている。
(2) 精密成形品その他事業
精密成形品その他事業は、精密金型で培ったノウハウを生かすため、2001年1月にタイにTHAI FUJI SEIKI Co.,LTD.を設立したところから始まる。同年9月に中国上海、2002年3月には中国蘇州と、相次いで精密成形品の生産拠点を設けた。スタート時点の成形品はCDケース、デジカメのオートフォーカスレンズ鏡筒部品が中心だった。しかし、CDの衰退により特に蘇州工場は大型投資が裏目となり業績が急降下、2014年にすべてを譲渡し撤退する経験を味わうこととなる。利益面では、CDケース事業の減退が同事業全体の足を大きく引っ張る格好となり、同事業の収益は蘇州撤退時の2014年12月期まで不安定な状況が続いた。
一方で非情報関連の拡大を目指し、長期的に安定した需要分野として自動車関連事業をターゲットとした。タイで納入していた精密金型の技術力が評価され、本田技研工業<7267>系の日立Astemo(株)(旧 (株)ケーヒン、旧 日立オートモティブシステムズ(株))に2輪車向けインジェクター(エンジンとスロットルボディやキャブレターと接続する樹脂製パーツ)成形品を納入したことが始まりとなった。2011年にはタイの大洪水で大損害を被ったが、住友電装(株)向けにワイヤーハーネスの留め具などの供給開始したほか、日系自動車部品現地法人向けを中心に、2輪向けに加え4輪向けの安全保安部品などの小物自動車部品成形品が拡大し、4輪向けの売上構成比が高まっている。2020年12月期の同事業の売上高3,586百万円のなかで、2輪・自動車関連部品成形品は2,685百万円(前期比3.8%増)、同事業の74.9%を占める。また同事業の収益力が2019年12月期まで安定しつつあった要因は、蘇州からの撤退に加え、先行投資負担が大きかったインドネシア子会社が2016年12月期に営業黒字化し業績に寄与していたことである。
3. 同社事業を取り巻く環境
同社が属する金型製造業界は業界全体の出荷額が3,622億円(「令和2年 経済産業省生産動態統計年報機械統計編」より)となっている。同業界で最大の生産規模を誇るのがプレス用金型で、1,537億円(構成比42.4%)、同社が製造しているプラスチック用金型の生産金額は1,267億円(同35.0%)と、用途別では2番目に大きい。しかし金型業界全体の推移を見ると、バブル期の1991年の生産額5,441億円をピークとして長く業界全体が低迷している。リーマンショック後の2010年には3,149億円まで落ち込み、現状はピーク時1991年生産額の67%水準、プラスチック用金型も同様にピーク時1991年生産額2,037億円の62%にとどまる。この間金型製造事業所も減少を続け、「工業統計表」(経済産業省)より 日本金型工業協会が算出した統計によると、1990年に13,115事業所あったものが、2018年には6,883事業所と52%水準となっている。この背景には主力産業の国内生産の低迷、またグローバル化による海外での金型生産並びに汎用製品での海外金型企業への調達増などが影響している。また金型生産は、自社生産のために自家消費用金型を生産しているが、プラスチック用金型では徐々に自家消費比率が上昇し、現状24.3%が自家消費向けとなっている。このため外販用のプラスチック用金型メーカーはいかに付加価値を上げ、差別化した金型を供給できるかがカギとなる。
同社の射出成形用精密金型及び成形システム事業も、世界シェアが高いCDケース用射出成形用精密金型事業が縮小するなかで、精密金型において医療機器の開発・製造・販売などに新たな活路を見出し、また精密金型技術を生かした精密成形品その他事業の拡大を目指す形となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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2. 事業内容
不二精機<6400>事業は、射出成形用精密金型及び成形システム事業と精密成形品その他事業に分類され、2020年12月期における売上高は、射出成形用精密金型及び成形システム事業が2,327百万円(構成比39.3%)、精密成形品その他事業が3,586百万円(同60.7%)となっている。同様に事業別営業利益では射出成形用精密金型及び成形システム事業が267百万円(構成比92.1%)、営業利益率11.5%、精密成形品その他事業が23百万円(同7.9%)、営業利益率0.6%となっている。
(1) 射出成形用精密金型及び成形システム事業
射出成形用精密金型及び成形システム事業は、「精密金型の不二精機」を前面に掲げ、ハイサイクル、多数個取り、不良率・バラツキの極小化、長寿命な精密成形用金型に特化し事業展開してきた。その代表的な製品がCD用プラスチックケース向け精密金型並びに周辺機器を組み合わせた成形システムである。CDは1979年にソニー<6758>とフィリップスが共同開発を進め、1982年にCDの生産が開始された。同社は当初よりCDケース用精密金型に関わりCDケース用金型を開発し、1995年には量産タイプを開発して周辺装置と組み合わせ成形システムとして輸出販売も開始し、事業拡大を図った。「ディスクケース」成形ではミクロン精度の金型が必要で、しかも低コスト化の要求から、ハイサイクル、多数個取り技術、さらに長寿命の金型が必須となり、同社の精密金型システムの採用が広がった。2000年12月には同社売上高の50%を占めていた。しかしその後、光ディスクからiPod、スマートフォン、さらにはインターネット配信の普及で、ピークでは年間100億枚製造していたCDケースが現在では激減し古い設備のまま製造されており、情報関連向け精密金型市場はほぼないに等しい状況となっている。
同社はこのような環境下において、超精密、ハイサイクル、不良率・バラツキの極小化、多数個取りの金型技術を他業界に生かすべく、1997年9月に現在の主力となる注射器用精密金型を開発した。その後、ダイアライザー・シャーレ・点滴用品などの医療分野へ大きく舵取りを変化させた。2020年12月期において、医療用・食品容器用精密金型の売上高はダイアライザー向け等を中心に1,320百万円、構成比率は56.7%を占めている。
(2) 精密成形品その他事業
精密成形品その他事業は、精密金型で培ったノウハウを生かすため、2001年1月にタイにTHAI FUJI SEIKI Co.,LTD.を設立したところから始まる。同年9月に中国上海、2002年3月には中国蘇州と、相次いで精密成形品の生産拠点を設けた。スタート時点の成形品はCDケース、デジカメのオートフォーカスレンズ鏡筒部品が中心だった。しかし、CDの衰退により特に蘇州工場は大型投資が裏目となり業績が急降下、2014年にすべてを譲渡し撤退する経験を味わうこととなる。利益面では、CDケース事業の減退が同事業全体の足を大きく引っ張る格好となり、同事業の収益は蘇州撤退時の2014年12月期まで不安定な状況が続いた。
一方で非情報関連の拡大を目指し、長期的に安定した需要分野として自動車関連事業をターゲットとした。タイで納入していた精密金型の技術力が評価され、本田技研工業<7267>系の日立Astemo(株)(旧 (株)ケーヒン、旧 日立オートモティブシステムズ(株))に2輪車向けインジェクター(エンジンとスロットルボディやキャブレターと接続する樹脂製パーツ)成形品を納入したことが始まりとなった。2011年にはタイの大洪水で大損害を被ったが、住友電装(株)向けにワイヤーハーネスの留め具などの供給開始したほか、日系自動車部品現地法人向けを中心に、2輪向けに加え4輪向けの安全保安部品などの小物自動車部品成形品が拡大し、4輪向けの売上構成比が高まっている。2020年12月期の同事業の売上高3,586百万円のなかで、2輪・自動車関連部品成形品は2,685百万円(前期比3.8%増)、同事業の74.9%を占める。また同事業の収益力が2019年12月期まで安定しつつあった要因は、蘇州からの撤退に加え、先行投資負担が大きかったインドネシア子会社が2016年12月期に営業黒字化し業績に寄与していたことである。
3. 同社事業を取り巻く環境
同社が属する金型製造業界は業界全体の出荷額が3,622億円(「令和2年 経済産業省生産動態統計年報機械統計編」より)となっている。同業界で最大の生産規模を誇るのがプレス用金型で、1,537億円(構成比42.4%)、同社が製造しているプラスチック用金型の生産金額は1,267億円(同35.0%)と、用途別では2番目に大きい。しかし金型業界全体の推移を見ると、バブル期の1991年の生産額5,441億円をピークとして長く業界全体が低迷している。リーマンショック後の2010年には3,149億円まで落ち込み、現状はピーク時1991年生産額の67%水準、プラスチック用金型も同様にピーク時1991年生産額2,037億円の62%にとどまる。この間金型製造事業所も減少を続け、「工業統計表」(経済産業省)より 日本金型工業協会が算出した統計によると、1990年に13,115事業所あったものが、2018年には6,883事業所と52%水準となっている。この背景には主力産業の国内生産の低迷、またグローバル化による海外での金型生産並びに汎用製品での海外金型企業への調達増などが影響している。また金型生産は、自社生産のために自家消費用金型を生産しているが、プラスチック用金型では徐々に自家消費比率が上昇し、現状24.3%が自家消費向けとなっている。このため外販用のプラスチック用金型メーカーはいかに付加価値を上げ、差別化した金型を供給できるかがカギとなる。
同社の射出成形用精密金型及び成形システム事業も、世界シェアが高いCDケース用射出成形用精密金型事業が縮小するなかで、精密金型において医療機器の開発・製造・販売などに新たな活路を見出し、また精密金型技術を生かした精密成形品その他事業の拡大を目指す形となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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