ノムラシステム Research Memo(1):2020年12月期は営業2ケタ増益、DXの進展で今後の成長が有望
[21/04/14]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
ノムラシステムコーポレーション<3940>は、1986年2月に設立され、企業のオープン化コンサルティング業務、それに関連するソリューション提供業務などを展開し、発展を遂げてきた。ITが急速に進化する時代の流れにうまく乗り、ソフトウェア設計・制作請負中心の事業構造から、ERP(Enterprise Resource Planning:基幹系統合システム)パッケージ導入におけるコンサルティング業務に経営資源をシフトしている。
同社の次世代戦略室では、ライセンス販売を積み重ね、システム更新需要等で安定的に収益を上げるビジネスのストック化を目指す。ストックビジネスが増えれば、中長期的に着実に業績がアップするシナリオが描けるようになる。
民間調査機関が試算した国内ERP市場は、年平均成長率が8%。さらに、クラウド市場やビッグデータ市場も拡大が見込まれており、コンサルティング企業として同社の成長余地は大きいと言えるだろう。
同社の事業内容はSAP導入コンサルティング、SAP保守サポートセンター運営、Webシステム開発コンサルティング、情報サイトコンサルティングなどで構成されるが、2001年にSAPとサービスパートナー契約を結んだことが飛躍するきっかけになった。2009年にはSAPのチャネル・パートナーとなり、SAP ERPのスペシャリスト集団として収益を伸ばし、2016年9月に東京証券取引所JASDAQ市場への上場を果たし、2018年3月には同第2部市場に上場。2018年6月には早くも1部市場に指定替えとなり、信頼度の高まりから受注が拡大している。
2020年12月期決算は、売上高が2,540百万円(前期比5.3%増)、営業利益が373百万円(同11.6%増)、経常利益が391百万円(同10.4%増)、当期純利益が269百万円(同11.9%増)と2ケタ増益を確保した。
プライム※案件にシフトする一方、既存のFIS(Function Implement Service)が減少する傾向が続いている。FIS案件は外注コストがかかるため、売上高全体は劇的な伸びにはならなかったものの、利益率が改善し、売上高に対して利益が高い伸び率を示した。全体の売上高に占めるプライム比率は2020年12月期末時点で4割程度。この比率がさらに高まれば、一段の利益率向上が期待できる。
※クライアントから直接受注し、全工程を同社のコンサルタントが担当する。
一方、次世代戦略室のRPA(Robotic Process Automation)事業への先行投資に力を注いでいるが、RPA事業への前向きな投資分によるコストアップについては、今後の成長につながるため不安材料とはならない。現在は、将来の成長を考慮し、人材投資をはじめ投資に重点を置いている。
今後も、利益率改善を図るために、プライム案件、準プライム案件の比重を高めていく方針。従来型のFIS案件のように、プライムベンダーから依頼を受け、支援する形で部分的に対応することと比べて、売上総利益率に10ポイントほどの差が生じることになることから、当面はプライム案件の受注確保が業績向上のポイントだ。
さらに、次世代戦略室では、ライセンス販売を積み重ね、システム更新需要等で安定的に収益を上げるビジネスのストック化を目指す。ストックビジネスが増えれば、中長期的に着実に業績がアップするシナリオが描けるようになる。
次世代戦略室に関連したビジネスは、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ過)におけるテレワーク需要の拡大によって、前の年に比べて売上が150%アップした。今後もDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進によって、さらに拡大すると見られ、飛躍のチャンスに差し掛かったと言える。
2021年12月期通期の見通しは、売上高は2,700百万円(前期比6.3%増)、営業利益は371百万円(同0.6%減)、経常利益は371百万円(同5.0%減)、当期純利益は253百万円(同6.1%減)を想定している。利益面が伸び悩むのは、人材投資を活発化させることによる投資負担増が大きいため。こうした点があるのにもかかわらず、営業利益がほぼ横ばいにとどまるのは、収益構造がより筋肉質になった証左と言えよう。
受注については、昨今のコロナ禍によってIT投資を活発化させる企業が増えていることもあり、環境は申し分ない。2020年12月期の後半には、国内の総合コンテンツ企業より、「SAP S/4 HANA」による新基幹システム導入プロジェクトを受注したが、これは同社にとって過去最大規模の案件であり、向こう2年にわたって収益に貢献する。さらに、国内でTOP3に入る大手電機メーカーから、DX施策の1つとしてのロボット(RPA)開発を受注した。このように着実に案件を積み重ねている。
今後も「高付加価値ソリューションの提供」を目指し、1) 「SAP S/4 HANA」のリプレイス需要を取り込むため、SAP認定コンサルタントの資格取得を推進し技術力を強化、2) 「SAP Success Factors」拡販のためのクラウドソリューション強化、を重点施策とする。また、既存のシステムについてクラウドを導入していない企業が多いため、クラウドへの置き換えを進めるといったビジネスチャンスもありそうだ。
コロナ禍の影響、リーマンショック時と異なり成長の機会に
コロナ禍は産業界に大きなダメージを与えたが、同社へのコロナ禍の影響は、リーマンショックの時とは様相が異なっていると言う。リーマンショック時には、40%の業績落ち込みを記録したものの、今回は前述したように大型案件の受注を確保するなど、コロナ禍においてIT関係はむしろ積極的に先行投資を行う企業が多い。金融緩和でもたらされた余剰資金がシステム投資に向けられていると会社側では感じており、受注を順調に確保している。世間では、「コロナ禍はテレワークの推進化などで、IT業界全体に追い風となっている」と言われているが、同社もそのような状況にあり、むしろ成長の機会にあると言えそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
<NB>
ノムラシステムコーポレーション<3940>は、1986年2月に設立され、企業のオープン化コンサルティング業務、それに関連するソリューション提供業務などを展開し、発展を遂げてきた。ITが急速に進化する時代の流れにうまく乗り、ソフトウェア設計・制作請負中心の事業構造から、ERP(Enterprise Resource Planning:基幹系統合システム)パッケージ導入におけるコンサルティング業務に経営資源をシフトしている。
同社の次世代戦略室では、ライセンス販売を積み重ね、システム更新需要等で安定的に収益を上げるビジネスのストック化を目指す。ストックビジネスが増えれば、中長期的に着実に業績がアップするシナリオが描けるようになる。
民間調査機関が試算した国内ERP市場は、年平均成長率が8%。さらに、クラウド市場やビッグデータ市場も拡大が見込まれており、コンサルティング企業として同社の成長余地は大きいと言えるだろう。
同社の事業内容はSAP導入コンサルティング、SAP保守サポートセンター運営、Webシステム開発コンサルティング、情報サイトコンサルティングなどで構成されるが、2001年にSAP
2020年12月期決算は、売上高が2,540百万円(前期比5.3%増)、営業利益が373百万円(同11.6%増)、経常利益が391百万円(同10.4%増)、当期純利益が269百万円(同11.9%増)と2ケタ増益を確保した。
プライム※案件にシフトする一方、既存のFIS(Function Implement Service)が減少する傾向が続いている。FIS案件は外注コストがかかるため、売上高全体は劇的な伸びにはならなかったものの、利益率が改善し、売上高に対して利益が高い伸び率を示した。全体の売上高に占めるプライム比率は2020年12月期末時点で4割程度。この比率がさらに高まれば、一段の利益率向上が期待できる。
※クライアントから直接受注し、全工程を同社のコンサルタントが担当する。
一方、次世代戦略室のRPA(Robotic Process Automation)事業への先行投資に力を注いでいるが、RPA事業への前向きな投資分によるコストアップについては、今後の成長につながるため不安材料とはならない。現在は、将来の成長を考慮し、人材投資をはじめ投資に重点を置いている。
今後も、利益率改善を図るために、プライム案件、準プライム案件の比重を高めていく方針。従来型のFIS案件のように、プライムベンダーから依頼を受け、支援する形で部分的に対応することと比べて、売上総利益率に10ポイントほどの差が生じることになることから、当面はプライム案件の受注確保が業績向上のポイントだ。
さらに、次世代戦略室では、ライセンス販売を積み重ね、システム更新需要等で安定的に収益を上げるビジネスのストック化を目指す。ストックビジネスが増えれば、中長期的に着実に業績がアップするシナリオが描けるようになる。
次世代戦略室に関連したビジネスは、昨今の新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ過)におけるテレワーク需要の拡大によって、前の年に比べて売上が150%アップした。今後もDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進によって、さらに拡大すると見られ、飛躍のチャンスに差し掛かったと言える。
2021年12月期通期の見通しは、売上高は2,700百万円(前期比6.3%増)、営業利益は371百万円(同0.6%減)、経常利益は371百万円(同5.0%減)、当期純利益は253百万円(同6.1%減)を想定している。利益面が伸び悩むのは、人材投資を活発化させることによる投資負担増が大きいため。こうした点があるのにもかかわらず、営業利益がほぼ横ばいにとどまるのは、収益構造がより筋肉質になった証左と言えよう。
受注については、昨今のコロナ禍によってIT投資を活発化させる企業が増えていることもあり、環境は申し分ない。2020年12月期の後半には、国内の総合コンテンツ企業より、「SAP S/4 HANA」による新基幹システム導入プロジェクトを受注したが、これは同社にとって過去最大規模の案件であり、向こう2年にわたって収益に貢献する。さらに、国内でTOP3に入る大手電機メーカーから、DX施策の1つとしてのロボット(RPA)開発を受注した。このように着実に案件を積み重ねている。
今後も「高付加価値ソリューションの提供」を目指し、1) 「SAP S/4 HANA」のリプレイス需要を取り込むため、SAP認定コンサルタントの資格取得を推進し技術力を強化、2) 「SAP Success Factors」拡販のためのクラウドソリューション強化、を重点施策とする。また、既存のシステムについてクラウドを導入していない企業が多いため、クラウドへの置き換えを進めるといったビジネスチャンスもありそうだ。
コロナ禍の影響、リーマンショック時と異なり成長の機会に
コロナ禍は産業界に大きなダメージを与えたが、同社へのコロナ禍の影響は、リーマンショックの時とは様相が異なっていると言う。リーマンショック時には、40%の業績落ち込みを記録したものの、今回は前述したように大型案件の受注を確保するなど、コロナ禍においてIT関係はむしろ積極的に先行投資を行う企業が多い。金融緩和でもたらされた余剰資金がシステム投資に向けられていると会社側では感じており、受注を順調に確保している。世間では、「コロナ禍はテレワークの推進化などで、IT業界全体に追い風となっている」と言われているが、同社もそのような状況にあり、むしろ成長の機会にあると言えそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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