エコモット Research Memo(4):好材料を背景にコンストラクションソリューションの更なる成長を目指す(1)
[21/04/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業概要
3. 事業戦略
(1) コンストラクションソリューション
エコモット<3987>では、好材料を背景にコンストラクションソリューションの更なる成長を目指しているが、これらの背景として、建設業界の人手不足、労働環境と安全性の向上、生産性の引き上げ、デジタル化を推進する国土強靱化対策、有用な新技術の積極的な活用を促進する施策などが挙げられる。詳細は以下の通り。
a) 建設業界の人手不足
建設業界にとって、生産性の向上は喫緊の課題だ。2020年12月のすべての職業の有効求人倍率は、前年同月の1.51倍から1.04倍へ急落したが、建築・土木関係の人手不足は解消からほど遠い。職業別有効求人倍率は、建設躯体工事が9.42倍、保安が6.82倍、土木が6.79倍、建築・土木・測量技術者が6.26倍、採掘が5.06倍、建設が4.77倍と建設・土木関連が上位を占めた。2020年11月調査の正社員等労働者過不足判断D.I.では、調査産業計が25(不足超過)であったのに対し、建設業は48と高水準にある。
求人に対し応募者が少ないのは、工事現場の半数が週休1日であるうえ、男性現場作業員の平均年収が440万円と、全産業平均(約550万円)や製造業の現場社員(約470万円)より低いことに起因する。国を挙げての働き方改革が進行するなか、日本建設連合会は「週休二日実現行動計画」を発表している。2019年度末までに4週6閉所以上とし、2021年度末までに4週8閉所の実現を目指している。同連合会の長期ビジョンによると、今後10年以内に、著しい高齢化に伴う建設技能者の大量離職時代が到来する。2014年の技能労働者数は約343万人であったが、60歳以上が全体の23.2%、50代が21.2%を占めており、2025年度までに全体の3分の1に当たる約109万人が退職すると予測されている。同社は、コンストラクションソリューションの各種サービスを拡大することで、これら建設業界の人手不足解消の実現を目指している。
b) 「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」
政府は2020年12月に、2021年度から2025年度までの5年間で大規模地震対策などを実施する新たな国土強靱化対策を閣議決定した。防災・減災のための国土強靱化計画は、2018年度から2020年度までの3か年の事業規模が7兆円だった。これに対し、新たな5か年対策では15兆円が見込まれている。豪雨対策や交通網維持に対し約12.3兆円、インフラ老朽化対策を加速するために2.7兆円、防災のための災害情報の充実などデジタル化の推進に2,000億円を充て、大規模地震対策など123事業を実施する。重点プログラムは、激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策、予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策の加速、国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進が挙げられている。
同社は、創業以来、一貫してIoTインテグレーション専業プロバイダーとして、工事現場の「安全管理」「生産性向上」「作業精度向上」等の総合情報化ソリューションを提供してきた。また、増水、豪雨、突風、倒壊、土石流、土砂崩れなどの自然災害の予兆・監視などの防災ソリューションも手がけている。このことから、国がデジタル化及び情報化を推進することは、同社にとって追い風となると弊社では見ている。
c) 「NETIS」(公共工事における新技術情報提供システム)
国土交通省は2006年度に、公共工事等に関する優れた技術を持続的に創出していくため、民間事業者等により開発された有用な新技術を積極的に活用する目的で、データベース「新技術情報提供システム」を整備した。これは、英訳である“New Technology Information System”の頭文字をとって「NETIS(ネティス)」と呼ぶ。新技術情報の収集・共有、積極的な現場導入、導入現場での活用効果の調査、調査結果に基づく事後評価という一連の流れを制度化し、有用な新技術の活用と技術開発のスパイラルアップを図る総合的な仕組みとなっている。評価結果が優れている新技術については、総合評価落札方式や工事成績評定において加点対象となるなどのインセンティブが付与される。
同社の風向風速計、傾斜計、振動騒音計、水位計や広角高画質動画カメラ、車両検知システム、モバイル式コンクリート養生温度管理システムなどがNETIS登録製品となっている。それら製品の活用シーンは、土木、共通工、コンクリート工、仮設工、河川海岸、砂防工、道路維持補修工、建築、建築設備(電気)と多岐にわたる。代表的なサービスには、遠隔クラウド計測システム「クラウドロガー」、コンクリート養生温度管理システム「おんどロイド」、ワイヤレス警報検知システム「Tbox」がある。これらは工事現場に設置され、工事現場の安全性向上、業務効率化、品質向上に大きく貢献している。
d) 建設情報化施工支援ソリューション「現場ロイド」
建設情報化施工支援ソリューションの「現場ロイド」は、多くの経験と実績に裏打ちされた高い技術力で、現場の安全対策・進捗管理・防犯対策等をしっかりとサポートする。「現場ロイド」は、業務効率化の実現や安心安全の確立をサポートする約300種類のサービスラインナップをそろえている。2009年3月にスタートして以来、累計9,000件以上(2020年3月現在)の工事現場で利用されている。屋外に設置した環境センサーやネットワークカメラからのデータにより建設現場を見える化でき、センサーによる常時警戒や異常を検知してからの迅速な警報発報は、コストや精度など多くの面で人が行う作業を凌駕する。人手不足を補う、遠隔臨場を可能とするシステムを提供している。また、同社は土木建築や災害の現場において、管理者や作業員がより高度で本質的な働きに集中できるよう、ワイヤレスコネクティビティ技術で現場を足元から支える。
収入形態は、工事期間の機器レンタル料とサービス利用料になる。1件当たり平均3〜4ヶ月程度利用され、利用料は約80〜100万円である。同サービスはパッケージ化されていることから、保安安全用品・建機レンタル業者等の販売店経由で提供する。保安安全用品の販売及びレンタル事業を行う(株)仙台銘板が最大の販売店であり、2020年8月期の仙台銘板への売上高依存度は24.3%であった。
注目製品となっているのは、視界が遮られている工事現場の車両や作業員に対し、付近を通行する一般車両の存在を通知するシステム「カークルスリム」、広域エリアに設置可能な傾斜検知システム「ぐらロイド」、遠隔臨場に特化したハンディ型モバイルコミュニケーションツール「Gレポート」、専用通信機とヘルメット装着型カメラ、インカム付属で構成される「MET-EYE」、現在の風速だけでなく、気象データをAIで解析し、設置エリアにおけるピンポイントの風速を高い精度で予測し、表示する「サインロイド2」などである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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3. 事業戦略
(1) コンストラクションソリューション
エコモット<3987>では、好材料を背景にコンストラクションソリューションの更なる成長を目指しているが、これらの背景として、建設業界の人手不足、労働環境と安全性の向上、生産性の引き上げ、デジタル化を推進する国土強靱化対策、有用な新技術の積極的な活用を促進する施策などが挙げられる。詳細は以下の通り。
a) 建設業界の人手不足
建設業界にとって、生産性の向上は喫緊の課題だ。2020年12月のすべての職業の有効求人倍率は、前年同月の1.51倍から1.04倍へ急落したが、建築・土木関係の人手不足は解消からほど遠い。職業別有効求人倍率は、建設躯体工事が9.42倍、保安が6.82倍、土木が6.79倍、建築・土木・測量技術者が6.26倍、採掘が5.06倍、建設が4.77倍と建設・土木関連が上位を占めた。2020年11月調査の正社員等労働者過不足判断D.I.では、調査産業計が25(不足超過)であったのに対し、建設業は48と高水準にある。
求人に対し応募者が少ないのは、工事現場の半数が週休1日であるうえ、男性現場作業員の平均年収が440万円と、全産業平均(約550万円)や製造業の現場社員(約470万円)より低いことに起因する。国を挙げての働き方改革が進行するなか、日本建設連合会は「週休二日実現行動計画」を発表している。2019年度末までに4週6閉所以上とし、2021年度末までに4週8閉所の実現を目指している。同連合会の長期ビジョンによると、今後10年以内に、著しい高齢化に伴う建設技能者の大量離職時代が到来する。2014年の技能労働者数は約343万人であったが、60歳以上が全体の23.2%、50代が21.2%を占めており、2025年度までに全体の3分の1に当たる約109万人が退職すると予測されている。同社は、コンストラクションソリューションの各種サービスを拡大することで、これら建設業界の人手不足解消の実現を目指している。
b) 「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」
政府は2020年12月に、2021年度から2025年度までの5年間で大規模地震対策などを実施する新たな国土強靱化対策を閣議決定した。防災・減災のための国土強靱化計画は、2018年度から2020年度までの3か年の事業規模が7兆円だった。これに対し、新たな5か年対策では15兆円が見込まれている。豪雨対策や交通網維持に対し約12.3兆円、インフラ老朽化対策を加速するために2.7兆円、防災のための災害情報の充実などデジタル化の推進に2,000億円を充て、大規模地震対策など123事業を実施する。重点プログラムは、激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策、予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策の加速、国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進が挙げられている。
同社は、創業以来、一貫してIoTインテグレーション専業プロバイダーとして、工事現場の「安全管理」「生産性向上」「作業精度向上」等の総合情報化ソリューションを提供してきた。また、増水、豪雨、突風、倒壊、土石流、土砂崩れなどの自然災害の予兆・監視などの防災ソリューションも手がけている。このことから、国がデジタル化及び情報化を推進することは、同社にとって追い風となると弊社では見ている。
c) 「NETIS」(公共工事における新技術情報提供システム)
国土交通省は2006年度に、公共工事等に関する優れた技術を持続的に創出していくため、民間事業者等により開発された有用な新技術を積極的に活用する目的で、データベース「新技術情報提供システム」を整備した。これは、英訳である“New Technology Information System”の頭文字をとって「NETIS(ネティス)」と呼ぶ。新技術情報の収集・共有、積極的な現場導入、導入現場での活用効果の調査、調査結果に基づく事後評価という一連の流れを制度化し、有用な新技術の活用と技術開発のスパイラルアップを図る総合的な仕組みとなっている。評価結果が優れている新技術については、総合評価落札方式や工事成績評定において加点対象となるなどのインセンティブが付与される。
同社の風向風速計、傾斜計、振動騒音計、水位計や広角高画質動画カメラ、車両検知システム、モバイル式コンクリート養生温度管理システムなどがNETIS登録製品となっている。それら製品の活用シーンは、土木、共通工、コンクリート工、仮設工、河川海岸、砂防工、道路維持補修工、建築、建築設備(電気)と多岐にわたる。代表的なサービスには、遠隔クラウド計測システム「クラウドロガー」、コンクリート養生温度管理システム「おんどロイド」、ワイヤレス警報検知システム「Tbox」がある。これらは工事現場に設置され、工事現場の安全性向上、業務効率化、品質向上に大きく貢献している。
d) 建設情報化施工支援ソリューション「現場ロイド」
建設情報化施工支援ソリューションの「現場ロイド」は、多くの経験と実績に裏打ちされた高い技術力で、現場の安全対策・進捗管理・防犯対策等をしっかりとサポートする。「現場ロイド」は、業務効率化の実現や安心安全の確立をサポートする約300種類のサービスラインナップをそろえている。2009年3月にスタートして以来、累計9,000件以上(2020年3月現在)の工事現場で利用されている。屋外に設置した環境センサーやネットワークカメラからのデータにより建設現場を見える化でき、センサーによる常時警戒や異常を検知してからの迅速な警報発報は、コストや精度など多くの面で人が行う作業を凌駕する。人手不足を補う、遠隔臨場を可能とするシステムを提供している。また、同社は土木建築や災害の現場において、管理者や作業員がより高度で本質的な働きに集中できるよう、ワイヤレスコネクティビティ技術で現場を足元から支える。
収入形態は、工事期間の機器レンタル料とサービス利用料になる。1件当たり平均3〜4ヶ月程度利用され、利用料は約80〜100万円である。同サービスはパッケージ化されていることから、保安安全用品・建機レンタル業者等の販売店経由で提供する。保安安全用品の販売及びレンタル事業を行う(株)仙台銘板が最大の販売店であり、2020年8月期の仙台銘板への売上高依存度は24.3%であった。
注目製品となっているのは、視界が遮られている工事現場の車両や作業員に対し、付近を通行する一般車両の存在を通知するシステム「カークルスリム」、広域エリアに設置可能な傾斜検知システム「ぐらロイド」、遠隔臨場に特化したハンディ型モバイルコミュニケーションツール「Gレポート」、専用通信機とヘルメット装着型カメラ、インカム付属で構成される「MET-EYE」、現在の風速だけでなく、気象データをAIで解析し、設置エリアにおけるピンポイントの風速を高い精度で予測し、表示する「サインロイド2」などである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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