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シンバイオ製薬 Research Memo(2):「がん、血液、希少疾病」領域がターゲットのバイオベンチャー

注目トピックス 日本株
■会社概要

シンバイオ製薬<4582>は、2005年3月に現代表取締役社長兼CEOの吉田文紀(よしだふみのり)氏が創業したバイオベンチャーである。事業戦略は、患者数が少ないため開発が見送られている「空白の治療領域」を埋める新薬の開発・提供を行うことを基本方針とし、なかでも医療ニーズの高い「がん、血液、希少疾病」の分野にターゲットを絞り、ヒトでのPOC※を取得した開発候補品を導入して臨床試験段階から開発を行うことで、高確率かつ迅速な創薬を目指すビジネスモデルであることが特徴となっている。

※POC(Proof of Concept):研究開発中である新薬候補物質の有用性・効果が、動物もしくはヒトに投与することによって認められること。


最初に導入した開発候補品はアステラス ファーマ(独)の開発した悪性リンパ腫を対象とした抗がん剤「ベンダムスチン塩酸塩」(日本での商品名は「トレアキシン(R)」)で、2005年12月に国内での独占的開発及び販売権の契約締結を行った。同社は開発コード「SyB L-0501」(FD製剤)として、2006年より再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)及びマントル細胞リンパ腫(MCL)を対象とした第1相臨床試験に着手し、2010年に製造販売承認を取得した。なお、この間にライセンス活動も進めており、2007年に独占的開発及び販売権の対象エリアを中国、韓国、台湾、シンガポールに広げたほか、エーザイと2008年に国内で、2009年に韓国、シンガポールで販売ライセンス契約を締結※した。台湾については、2012年にイノファーマックス(台湾)とFD製剤の開発・販売契約を締結し、販売を行ってきたが、FD製剤からRTD製剤への切り替えを進めることから、FD製剤のアジアでの販売も終息していく方針となっている。

※エーザイの事業戦略変更に伴い国内のライセンス契約は2020年12月9日を期限に解消され、自社販売体制に移行している。韓国・シンガポールに関しても契約を解消する方向で協議を進めている。


2010年12月より国内で販売を開始した「トレアキシン(R)」は、その後も適応拡大のための開発を進め、2016年に慢性リンパ性白血病(CLL)、未治療(初回治療)の低悪性度NHL/MCLで承認を取得したほか、2021年3月には再発・難治性DLBCLで承認を取得し、対象患者数の拡大による販売増加が見込まれている。また、2017年にはイーグル・ファーマシューティカルズ(米)と「トレアキシン(R)」の液剤タイプとなるRTD/RI製剤(開発コード「SyB L-1701/SyB L-1702」)※の日本における独占的開発及び販売権契約を締結し、RTD製剤については2020年9月に販売承認を取得、2021年1月より販売を開始しており、FD製剤からの切り替えを進めている。RI製剤については2021年中に販売承認申請を行う予定となっている。

※これまでアステラス ファーマから仕入れていたFD製剤は、使用時に医療現場での溶解作業(調整時間含め3時間程度)が必要だったが、液剤タイプは同作業が不要なため、医療従事者の作業負荷が大幅に軽減されるメリットがある。また、RTD製剤とRI製剤の違いは静脈注射時間で、RTD製剤は既存品と同じく60分間であるのに対しRI製剤は10分間と短く、患者負担が大幅に軽減される。


また、2つ目の導入品として2011年にオンコノバより、骨髄異形成症候群(MDS)※を適応症とした開発候補品である「リゴセルチブ」(開発コード「SyB L-1101(注射剤)/SyB C-1101(経口剤)」)に関する日本、韓国における独占的開発及び販売権契約を締結した。さらに、2019年9月にはキメリックスとの間で「ブリンシドフォビル(BCV)」に関して、天然痘を除くすべてのウイルス性疾患を対象とするグローバルの独占的開発・製造及び販売ライセンス契約を締結した。「BCV」は、シドフォビル(CDV:日本未承認)と比べて高活性の抗ウイルス効果と安全性の高さ、また、複数のDNAウイルスに効果があることが特徴となっている。

※MDSとは、骨髄にある造血幹細胞の異常により正常な血液細胞を造ることができなくなる病気で、正常な血液細胞が減少し、貧血、感染症、出血などの症状が出るほか、急性骨髄性白血病に移行する可能性が高い難治性疾患であり、高齢者に多く発病する。国内の患者数は約1.1万人。唯一の根治療法は造血幹細胞移植となっており、化学療法では「アザシチジン」が第一選択薬として使用されている。国内では日本新薬<4516>が「ビダーザ(R)」の商品名で販売しており、薬価ベースで年間150〜160億円の売上規模となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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