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TKP Research Memo(1):新たな需要の取り込みや「逆張り仕入れ戦略」で、早期業績回復と収益性向上を目指す

注目トピックス 日本株
■要約

ティーケーピー<3479>は、貸会議室ビジネスを起点とした「空間再生流通事業」を展開している。不動産オーナーから遊休不動産等を大口(割安)で仕入れ、会議室や宴会場などに「空間」を「再生」し、それを法人に小口で販売・シェアリングを行う独自のビジネスモデルに特徴がある。遊休不動産の有効活用を図りたい不動産オーナーと、低コストで効率的に会議室を利用したい法人のニーズを結び付けるところに新たな市場を創出し、高い成長性を実現してきた。国内外の主要都市に251拠点・2,033室(約14.2万坪)と幅広く展開し、年間利用企業数は約35,000社に上る(2021年2月末時点)。

2019年5月にはレンタルオフィス「Regus」等を展開する日本リージャスホールディングス(株)(以下、日本リージャス社)を買収すると、2021年3月にはTKP本体による新ブランド「Work X Office(ワ?クエックスオフィス)」の立ち上げにより、貸会議室ビジネスとの親和性の高い短中期オフィス事業へ本格参入した。時間貸しから短中期のオフィス利用へサービス領域を拡充することで、今後、拡大が見込まれているフレキシブルオフィス市場をけん引し、成長を加速する戦略である。また、2019年9月には台湾リージャス社を買収し、アジアを中心とした海外展開へ向けても足掛かりを築いている。リージャス施設としては、日本国内で162施設(約4.0万坪)、台湾で14施設(約0.7万坪)を展開している。

2021年2月期業績は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響を受けて大きく後退したものの、リージャス事業は堅調に推移しているうえ、コロナ禍に伴う新たな需要の取り込みにより足元業績は回復傾向にある。また、2021年2月には今後の事業拡大に向けた資金確保を目的として、第三者割当による新株予約権を発行した。

1. 2021年2月期の連結業績
2021年2月期の連結業績は、売上高が前期比20.6%減の431.38億円、営業損失が24.97億円(前期は63.17億円の利益)と創業以来初となる減収及び営業損失の計上となった。ただ、重視するEBITDAでは30億円超の黒字を確保している。売上高はコロナ禍の影響によりTKP本体が大きく落ち込んだ。もっとも、コロナ禍の下、ウェビナー案件※や試験会場利用での高単価案件のほか、臨時オフィス(期間貸し)など新たな需要が増加傾向にある。一方、リージャスについては、日本・台湾ともに総じて堅調に推移し、業績の下支えとなっている。損益面でも、TKP本体については、新規出店の抑制や全社的な費用削減に取り組んでいるものの、急激な売上高の減少に伴って営業損失を計上した一方、日本リージャス社は営業利益、EBITDAともに黒字を確保した。

※ウェブ(Web)とセミナー(Seminar)を組み合わせた造語であり、Webセミナーやオンラインセミナーとも呼ばれる。


2. 2022年2月期の連結業績予想
2022年2月期の連結業績予想について同社は、売上高を前期比11.3%増の480.00億円、営業利益を7.00億円と増収及び営業黒字転換を見込んでいる。TKP本体についてはコロナ禍の影響がしばらく継続する想定であるが、年度後半にかけてコロナ禍収束とともに業績も回復へ向かう見通しとしている。特に、新たに開始した「Work X Office」ブランドにより、コロナ禍をきっかけに拡大している「期間貸し」(貸オフィス)需要を取り込んでいく方針である。新規出店については、不動産相場が下落したタイミングでの「逆張り仕入れ戦略」を新たに掲げているが、その分の上乗せについては業績予想のなかに織り込んでいない。損益面については、売上高の回復と収益構造の改善効果により営業黒字転換を図る見通しである。また、新規出店を行う場合にも、好条件物件を厳選し平均地代家賃の低減を図ることにより、グループ全体の収益性を高めていく方針としている。

3. 今後の方向性
同社は、2022年2月期を「第2の創業期」と位置付け、TKP・リージャスに加え、フランチャイズ(FC)展開するアパホテルを3本目の柱として成長させることにより、収益基盤を拡大していく方向性を打ち出した。すなわち、コロナ禍で拡大傾向にあるフレキシブルオフィス需要を、「Work X Office」ブランドを加えた新たなビジネスモデルで取り込んでいくほか、コロナ禍収束とともに需要回復が予想されるビジネスホテル分野にも注力していく考えである。もっとも、フレキシブルオフィス市場での圧倒的なポジションを確立し、将来的には事業モデルをアジア各国にも展開することによって成長を加速するシナリオに変化はない。弊社でも、今回のコロナ禍の影響により、同社の成長シナリオに時間的な滞りが生じたものの、中長期的な視点で見れば、これをきっかけに企業の働き方やオフィスの在り方を見直す機運が一気に加速し、その結果、フレキシブルオフィス市場の拡大に拍車がかかる可能性が高いと見ている。そうなれば、これまで積み上げてきた拠点数(契約面積)、グローバルネットワーク、顧客基盤、ブランド力を有する同社には、圧倒的な優位性があると見ている。

■Key Points
・2021年2月期はコロナ禍の影響により、創業以来初となる減収及び営業損失を計上。ただ、リージャス事業は堅調に推移しているうえ、TKP本体も新たな需要の取り込みにより足元業績は回復傾向
・2022年2月期の業績予想については、コロナ禍の影響が継続する想定の下、新ブランドを通じた新たな需要の取り込み等により増収及び営業黒字転換を目指すとともに、不動産相場の下落局面においては「逆張り仕入れ戦略」にも取り組む方針
・2022年2月期を「第2の創業」と位置付け、TKP・リージャスに加え、アパホテルを3本目の柱として成長させるとともに、フレキシブルオフィス市場での圧倒的なポジションを確立していく方向性

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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