ドラフト Research Memo(7):ウィズコロナのニューノーマルに対応した空間の提案
[21/05/19]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■ドラフト<5070>の今後の見通し
2. 今後の成長戦略
(1) 上場調達資金使途の変更
2020年3月の上場時に調達した資金の使途変更を発表した。変更前は、予算の1,241百万円を、広告宣伝費に518百万円、本社移転に387百万円、人材採用及び人件費に311百万円、サテライトオフィス新設に25百万円を配分していた。変更後は、広告宣伝費及び本社移転の予算を取りやめ、代わって企業買収・不動産取得等及び事業拡大に伴う資金として700百万円を割り当てた。人材採用及び人件費とサテライトオフィス新設の金額は、変更していない。
新規上場企業のポストIPOの成長性は、上場がゴールになってしまっているか、もしくは上場メリットを生かした成長戦略を遂行するかに左右される。なかには、上場後に新社屋への移転、社会的信用や知名度の向上により採用がしやすくなることから新卒の大量採用、営業車両の更新、上場記念セレモニーや記念品配布などに調達資金を費やす企業がある。この場合、経費や固定費が増加するうえ、新規採用者が即戦力にならないことから、売上高が伸び悩んだ場合、収益性が低下する要因となる。
同社が、調達資金をより事業拡大に効果的な使途に変更したことは歓迎すべきことだ。同社の場合、本社がショールームの役割を兼ねることから、本社移転が引き合い・受注を高める効果が期待できた。今回は、ウィズコロナの新しいワークプレイス及び住まい方を具現化する方に資金使途を優先した。業容の急拡大に伴う運転資金の増加、案件の大型化などで事業機会を逃さないために、資金調達方法の多様化が上場メリットとして挙げられる。財務体質が堅固になったこともあり、メガバンクなどの金融機関と総額15億円のコミットメントライン契約を締結している。
(2) ウィズコロナのニューノーマルに対応した事業活動
コロナ禍による行動様式の変化や働き方の多様化は、空間デザイン及び建築設計に対するニーズに変化をもたらしている。同社のオフィス空間のデザイン力は、従来の「全員が集まって一斉に行動するための空間」とは一線を画すため需要が高まっている。ウィズコロナのニューノーマルでは、年間を通じて需要の増加が期待され、季節的な偏重が是正されることが見込まれる。
ウィズコロナにおける働き方は、テレワークの導入により、働く場所がオフィスだけでなく、自宅やサードプレイスへと多様化する。社員の出勤率が低下するため、既存のオフィスのワークスペースを縮小する動きがある。一方、感染症対策のソーシャルディスタンス確保のため、オフィスレイアウトの変更も必要となる。ニューノーマルに対応すべく、同社は名古屋大学医学部の平田仁教授による監修のもと、感染対策を本格導入した次世代型オフィスプロジェクトを始動した。2020年12月に、サンフロンティア不動産が保有する「銀座クイント」(東京都中央区)に、同社の新しいオフィスデザインを形とした次世代型セットアップオフィスがオープンした。
従来の詰込み型オフィスにおける執務面積は平均1人当たり0.9〜1.2坪だが、ソーシャルディスタンスに配慮して約2.5倍の2.6坪を確保している。3密を避け、濃厚接触のリスクを減らすため、長時間滞在するデスク周りの面積拡大が重要になる。1人当たりの面積拡充は、感染リスク軽減だけでなく、社員のウェルビーイングを高めることにもつながり、生産性や創造性の向上が期待できる。執務エリアは、パーティションやスタッグ式レイアウトにより、向き合わないデスク配置を採用している。会議スペースは、オンライン会議やWebセミナー(ウェビナー)を想定した半円型のレイアウトとなる。
「距離のデザイン」に加え、空気の流れを計算した本格的な「空気のデザイン」を取り入れた。コロナ対策のための4つの最新設備は、1)セキュリティ(マスクをつけたまま検温、打刻管理が行える顔認証セキュリティ)、2)空調(医療機関並みの気圧コントロールで汚れた空気の侵入防止)、3)換気(置換換気方式により空気の流れを整え、滞留を防ぎ、法令基準の約4倍の換気効率を実現)、4)除菌(空気中に浮遊するウイルスを紫外線で除菌)になる。
(株)ドワンゴは、2020年2月にテレワークを導入した。その後、緊急事態宣言の発出を受け、社員にアンケート調査を行い、同年7月より全社員約1,000人を対象に「原則、在宅勤務」へ移行した。全社員がオフィスに出社して業務を行うという固定観念を取り払い、業務プロセスやコミュニケーションのあり方を見直すことでオンラインによる業務遂行を可能とした。一方で、銀座にあるオフィスは撤収せず、200席を残して、次世代的なレイアウトの会議室やフリースペースに改造した。同社は、リモートワーカーが集まることにフォーカスしたオフィス空間の創出に携わった。
また、テレワーク(在宅勤務)をするためには、自宅で働くスペースが必要となる。同社は新たな取り組みとして、暮らしを再定義し、「食べる」「寝る」「働く」という目的に合わせた空間をデザインする「食寝働分離」をコンセプトとするブランド“ Re cord ”を始動した。仕事をするための専用スペースを確保することで、ストレスの少ないリモートワークが可能な暮らしが実現できる。日本の狭小な居住環境を見直すため、一人ひとりが豊かに暮らせる1人当たりの面積の倍増化を提案している。
テレワークでは、居住地がオフィスの近くである必要がないため、郊外型の「食寝働分離」の展開も計画している。候補地として、神奈川県の湘南や鎌倉エリアが検討されている。
コロナ禍において空間のデザインにより課題解決を図る提案を行ったこれらの取り組みが業界内では高く評価された。地方創生の新たなスタンダードとするため内閣府が注力しているスーパーシティ構想を実現する設計デザイン・企画提案の引き合いにも繋がり、本業の業績を押し上げるきっかけとなっている。
(3) サティスワンとの合併
2021年4月に、サティスワン(東京都渋谷区)を吸収合併した。サティスワンの事業内容は、ブランディング、プロモーション、デザイン支援などのコミュニケーションデザインで、同社と協業関係にあった。2020年12月期の業績は、売上高297百万円、営業利益が52百万円であった。事業統合後には総合クリエイティブ会社として1つのパッケージにまとめた提案ができるようになる。業界における新しい事業形態の確立を目指す。
(4) 中長期的展望−年率20%、年間売上高300億円を目指す
中長期的な成長として、年間売上高300億円の達成をイメージしている。社会の変化に応じて、事業領域を幅広く展開・拡大することで引き続きデザインの力で社会問題の解決を図る。テレワークによる在宅勤務地が郊外から地方に広がれば、地方創生に関わる事業として同社の事業機会も増加することになろう。また、ヘッドカウントに依存しない、オリジナルプロダクトの拡販を図る。既存事業のオーガニックな成長のみならず、M&Aなどにより周辺事業への拡大を進めることになろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
<NB>
2. 今後の成長戦略
(1) 上場調達資金使途の変更
2020年3月の上場時に調達した資金の使途変更を発表した。変更前は、予算の1,241百万円を、広告宣伝費に518百万円、本社移転に387百万円、人材採用及び人件費に311百万円、サテライトオフィス新設に25百万円を配分していた。変更後は、広告宣伝費及び本社移転の予算を取りやめ、代わって企業買収・不動産取得等及び事業拡大に伴う資金として700百万円を割り当てた。人材採用及び人件費とサテライトオフィス新設の金額は、変更していない。
新規上場企業のポストIPOの成長性は、上場がゴールになってしまっているか、もしくは上場メリットを生かした成長戦略を遂行するかに左右される。なかには、上場後に新社屋への移転、社会的信用や知名度の向上により採用がしやすくなることから新卒の大量採用、営業車両の更新、上場記念セレモニーや記念品配布などに調達資金を費やす企業がある。この場合、経費や固定費が増加するうえ、新規採用者が即戦力にならないことから、売上高が伸び悩んだ場合、収益性が低下する要因となる。
同社が、調達資金をより事業拡大に効果的な使途に変更したことは歓迎すべきことだ。同社の場合、本社がショールームの役割を兼ねることから、本社移転が引き合い・受注を高める効果が期待できた。今回は、ウィズコロナの新しいワークプレイス及び住まい方を具現化する方に資金使途を優先した。業容の急拡大に伴う運転資金の増加、案件の大型化などで事業機会を逃さないために、資金調達方法の多様化が上場メリットとして挙げられる。財務体質が堅固になったこともあり、メガバンクなどの金融機関と総額15億円のコミットメントライン契約を締結している。
(2) ウィズコロナのニューノーマルに対応した事業活動
コロナ禍による行動様式の変化や働き方の多様化は、空間デザイン及び建築設計に対するニーズに変化をもたらしている。同社のオフィス空間のデザイン力は、従来の「全員が集まって一斉に行動するための空間」とは一線を画すため需要が高まっている。ウィズコロナのニューノーマルでは、年間を通じて需要の増加が期待され、季節的な偏重が是正されることが見込まれる。
ウィズコロナにおける働き方は、テレワークの導入により、働く場所がオフィスだけでなく、自宅やサードプレイスへと多様化する。社員の出勤率が低下するため、既存のオフィスのワークスペースを縮小する動きがある。一方、感染症対策のソーシャルディスタンス確保のため、オフィスレイアウトの変更も必要となる。ニューノーマルに対応すべく、同社は名古屋大学医学部の平田仁教授による監修のもと、感染対策を本格導入した次世代型オフィスプロジェクトを始動した。2020年12月に、サンフロンティア不動産が保有する「銀座クイント」(東京都中央区)に、同社の新しいオフィスデザインを形とした次世代型セットアップオフィスがオープンした。
従来の詰込み型オフィスにおける執務面積は平均1人当たり0.9〜1.2坪だが、ソーシャルディスタンスに配慮して約2.5倍の2.6坪を確保している。3密を避け、濃厚接触のリスクを減らすため、長時間滞在するデスク周りの面積拡大が重要になる。1人当たりの面積拡充は、感染リスク軽減だけでなく、社員のウェルビーイングを高めることにもつながり、生産性や創造性の向上が期待できる。執務エリアは、パーティションやスタッグ式レイアウトにより、向き合わないデスク配置を採用している。会議スペースは、オンライン会議やWebセミナー(ウェビナー)を想定した半円型のレイアウトとなる。
「距離のデザイン」に加え、空気の流れを計算した本格的な「空気のデザイン」を取り入れた。コロナ対策のための4つの最新設備は、1)セキュリティ(マスクをつけたまま検温、打刻管理が行える顔認証セキュリティ)、2)空調(医療機関並みの気圧コントロールで汚れた空気の侵入防止)、3)換気(置換換気方式により空気の流れを整え、滞留を防ぎ、法令基準の約4倍の換気効率を実現)、4)除菌(空気中に浮遊するウイルスを紫外線で除菌)になる。
(株)ドワンゴは、2020年2月にテレワークを導入した。その後、緊急事態宣言の発出を受け、社員にアンケート調査を行い、同年7月より全社員約1,000人を対象に「原則、在宅勤務」へ移行した。全社員がオフィスに出社して業務を行うという固定観念を取り払い、業務プロセスやコミュニケーションのあり方を見直すことでオンラインによる業務遂行を可能とした。一方で、銀座にあるオフィスは撤収せず、200席を残して、次世代的なレイアウトの会議室やフリースペースに改造した。同社は、リモートワーカーが集まることにフォーカスしたオフィス空間の創出に携わった。
また、テレワーク(在宅勤務)をするためには、自宅で働くスペースが必要となる。同社は新たな取り組みとして、暮らしを再定義し、「食べる」「寝る」「働く」という目的に合わせた空間をデザインする「食寝働分離」をコンセプトとするブランド“ Re cord ”を始動した。仕事をするための専用スペースを確保することで、ストレスの少ないリモートワークが可能な暮らしが実現できる。日本の狭小な居住環境を見直すため、一人ひとりが豊かに暮らせる1人当たりの面積の倍増化を提案している。
テレワークでは、居住地がオフィスの近くである必要がないため、郊外型の「食寝働分離」の展開も計画している。候補地として、神奈川県の湘南や鎌倉エリアが検討されている。
コロナ禍において空間のデザインにより課題解決を図る提案を行ったこれらの取り組みが業界内では高く評価された。地方創生の新たなスタンダードとするため内閣府が注力しているスーパーシティ構想を実現する設計デザイン・企画提案の引き合いにも繋がり、本業の業績を押し上げるきっかけとなっている。
(3) サティスワンとの合併
2021年4月に、サティスワン(東京都渋谷区)を吸収合併した。サティスワンの事業内容は、ブランディング、プロモーション、デザイン支援などのコミュニケーションデザインで、同社と協業関係にあった。2020年12月期の業績は、売上高297百万円、営業利益が52百万円であった。事業統合後には総合クリエイティブ会社として1つのパッケージにまとめた提案ができるようになる。業界における新しい事業形態の確立を目指す。
(4) 中長期的展望−年率20%、年間売上高300億円を目指す
中長期的な成長として、年間売上高300億円の達成をイメージしている。社会の変化に応じて、事業領域を幅広く展開・拡大することで引き続きデザインの力で社会問題の解決を図る。テレワークによる在宅勤務地が郊外から地方に広がれば、地方創生に関わる事業として同社の事業機会も増加することになろう。また、ヘッドカウントに依存しない、オリジナルプロダクトの拡販を図る。既存事業のオーガニックな成長のみならず、M&Aなどにより周辺事業への拡大を進めることになろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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