SI Research Memo(2):「時間を奪うのではなく、時間を与えるソフトウェアを創り続ける」(1)
[21/05/21]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■事業概要
システムインテグレータ<3826>は1995年設立の独立系ソフトウェア開発会社で、自社開発したソフトウェアのパッケージ販売及び保守サービスのほか、クラウドサービス(SaaS)での提供も行っている。新製品に関しては基本的にクラウドサービスでの事業展開を志向している。現在の主力製品には、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」や統合型プロジェクト管理ツール「OBPM」のほか、ECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」、Web-ERPパッケージ「GRANDIT」等がある。事業セグメントに関しては、Object Browser事業、E-Commerce事業、ERP・AI事業のほか、新規事業をその他として区分開示している。
直近3年間の事業セグメント別構成比の推移については、売上高はERP・AI事業が全体の6割強を占めており、残りをObject Browser事業、E-Commerce事業で2分する格好となっているが、営業利益で見るとObject Browser事業が全体の5割前後を占める安定収益源となっており、残りをE-Commerce事業やERP・AI事業で稼ぎ出す格好となっている。また、新規事業については先行投資段階のため、損失計上が続いている。利益率の推移については、Object Browser事業は40%台から2021年2月期は30%台に低下した。これは収益性の高い「Object Browser」の販売がコロナ禍で減少したことに加えて、「OBPM」のビジネスモデルを売り切り型(ライセンス販売)から月額課金型(クラウドサービス)に移行するなかで、一時的に利益率が低下していることが要因となっている。また、ERP・AI事業のセグメント利益率は数%台と低いが、これはAI事業の先行投資費用が含まれていることが要因となっている。なお、2021年2月期の利益率低下は不採算プロジェクトの発生による受注損失引当金231百万円の計上によるもので、同要因を除いたERP・AI事業の利益率は9.6%となっている。各事業の内容は以下のとおり。
1. Object Browser事業
Object Browser事業ではデータベース開発支援ツール「SI Object Browser」やデータベース設計支援ツール「SI Object Browser ER」(以下、「Object Browser」シリーズ)のほか、統合型プロジェクト管理ツール「OBPM」、アプリケーション設計支援ツール「SI Object Browser Designer(以下、OBDZ)」等のソフトウェア製品の開発販売を行っている。「Object Browser」シリーズについては、従来はパッケージ販売(ライセンス販売+保守サービス)のみだったが、2021年2月よりサブスクリプションモデルでの販売※も開始している。「OBPM」や「OBDZ」についてはクラウドサービスでの提供を行っている。
※契約期間は1年、2年、3年の年間契約(保守料含む)。バージョンアップは無償。for Oracleのみ。
売上構成比は「Object Browser」シリーズが4割強、「OBPM」が6割弱となっており、「OBPM」の比率が年々上昇傾向にある。「Object Browser」シリーズについては1997年の発売以来、1.9万社、45万ライセンスの導入実績があり、国内ではデファクトスタンダードとなっている。現在は売上高の30%超が保守サポート等のストック収入で比較的売上高は安定している。高いブランド力を持つため販売費用もほとんどかからず、売上総利益率は約90%と高収益製品となっている。競合製品として無料ソフトが出ているが、機能面での差があることから直接的な影響は受けていない。
一方、「OBPM」は開発プロジェクトの進捗状況を統合管理(スケジュール、コスト、要員、品質、採算等の管理)することで、不採算プロジェクトの発生を未然に抑止し、開発部門の生産性向上を支援するツールである。国内で唯一、PMBOK※に準拠しており、2008年の発売以降、順調に導入社数を増やしている。2021年2月末の導入社数は中堅規模のIT企業を中心に210社を超えている。なお、大手IT企業はプロジェクト管理ツールを内製化しているが、ここ最近は「OBPM」の認知度向上や品質の高さが評価され、部門内で導入を検討する企業も増えている。一方、中小企業はExcelなどの市販ソフトや無料ソフトを使用しているケースが多い。
※PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは、プロジェクトマネジメントに関するノウハウや手法を体系立ててまとめたもの。1987年にアメリカの非営利団体PMIが「A Guide to the Project Management Body of Knowledge」というガイドブックで発表してから徐々に知られるようになり、現在はプロジェクトマネジメントの世界標準として世界各国に浸透している。
「OBPM」については2010年以降、クラウドサービスを開始し、2021年3月には新ブランドとなる「OBPM Neo」に名称を変更して、新規契約についてはすべてクラウドサービスで提供している。「OBPM」も競合品がほとんどないため、売上総利益率は70%前後と高いが、広告費や導入サポート費用等がかかるため、「Object Browser」シリーズと比較すると営業利益率は低くなる。なお、完全Web版となる「OBPM Neo」は2年間かけて開発を進めてきたもので、ソフトウェア資産として計上しており、2022年2月期より減価償却負担が発生する。
「OBDZ」はソフトウェア開発の上流工程である基本設計・詳細設計をシステム化し、合理化・標準化することで設計工程における生産性及び品質向上を支援するツールで、ソフトウェア開発分野におけるCADとも言える製品である(特許取得済み)。従来は、エンジニアがExcelやWordで個々に設計書を作成していたため、仕様変更が発生した場合などのメンテナンス、変更管理が難しく、手戻りミスによる開発遅延の原因にもなっていたが、「OBDZ」で設計書を統合管理することでこうした課題を解決する。このため用途としては、基幹業務システム等の大規模なウォーターフォール型※のシステム開発に向いている製品と言える。2013年のリリース以降、機能改良を重ね、2019年6月には完全Web化のフルモデルチェンジを行い、パフォーマンス速度も従来比1.5倍と大幅に向上した製品をリリースしている。導入社数はまだ少ないものの、中小から大手IT企業まで導入が着実に進んでいる。
※ウォーターフォール型とは、システム開発を「基本計画」「外部設計」「内部設計」「プログラム設計」「プログラミング」「テスト」という工程に分けて順に段階を経て行う開発手法を指す。前の工程には戻らない前提のため、下流から上流へは戻らない水の流れにたとえてウォーターフォールと呼ばれている。
2. E-Commerce事業
E-Commerce事業では、日本初のECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」を主力製品として販売している。「SI Web Shopping」の特徴は、大規模ECサイトに強いことにある。具体的には、売上金額が数百億円規模となる大量のトランザクション処理に対応可能なスケーラビリティと、高いセキュリティ機能を有している。また、スマートフォン等のモバイル対応機能や、英語、中国語など多言語対応、その他顧客ニーズに応じた機能をカスタマイズで付加することや、ERPなど既存システムとの連携も可能となっている。1996年の発売以降累計で1,100社以上のECサイトを構築しており(アクティブ稼働数は1割弱)、豊富な開発ノウハウや高い技術力が同社の強みとなっている。
ECサイト構築パッケージ業界でのポジションは、大規模事業者向けに限定すれば同社と、ソフトクリエイトホールディングス<3371>の子会社である(株)ecbeing(構築実績で1,300社超)、Eストアー<4304>の子会社である(株)コマース21(同300社超)の3社でほぼ寡占状態となっていたが、ここ最近はSIerとの競合も増えてきている。ECサイト構築パッケージに他の業務システムとの連携機能を付加するといったニーズが増えてきたためだ。こうしたことを背景に、1件当たりの受注単価も従来の数千万円規模から、ここ最近は1〜2億円と大型化している。ストック収入比率は18.1%(2021年2月期実績)と低く、開発プロジェクトの増減や生産性によって期間収益も変動する傾向にある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YM>
システムインテグレータ<3826>は1995年設立の独立系ソフトウェア開発会社で、自社開発したソフトウェアのパッケージ販売及び保守サービスのほか、クラウドサービス(SaaS)での提供も行っている。新製品に関しては基本的にクラウドサービスでの事業展開を志向している。現在の主力製品には、データベース開発支援ツール「SI Object Browser」や統合型プロジェクト管理ツール「OBPM」のほか、ECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」、Web-ERPパッケージ「GRANDIT」等がある。事業セグメントに関しては、Object Browser事業、E-Commerce事業、ERP・AI事業のほか、新規事業をその他として区分開示している。
直近3年間の事業セグメント別構成比の推移については、売上高はERP・AI事業が全体の6割強を占めており、残りをObject Browser事業、E-Commerce事業で2分する格好となっているが、営業利益で見るとObject Browser事業が全体の5割前後を占める安定収益源となっており、残りをE-Commerce事業やERP・AI事業で稼ぎ出す格好となっている。また、新規事業については先行投資段階のため、損失計上が続いている。利益率の推移については、Object Browser事業は40%台から2021年2月期は30%台に低下した。これは収益性の高い「Object Browser」の販売がコロナ禍で減少したことに加えて、「OBPM」のビジネスモデルを売り切り型(ライセンス販売)から月額課金型(クラウドサービス)に移行するなかで、一時的に利益率が低下していることが要因となっている。また、ERP・AI事業のセグメント利益率は数%台と低いが、これはAI事業の先行投資費用が含まれていることが要因となっている。なお、2021年2月期の利益率低下は不採算プロジェクトの発生による受注損失引当金231百万円の計上によるもので、同要因を除いたERP・AI事業の利益率は9.6%となっている。各事業の内容は以下のとおり。
1. Object Browser事業
Object Browser事業ではデータベース開発支援ツール「SI Object Browser」やデータベース設計支援ツール「SI Object Browser ER」(以下、「Object Browser」シリーズ)のほか、統合型プロジェクト管理ツール「OBPM」、アプリケーション設計支援ツール「SI Object Browser Designer(以下、OBDZ)」等のソフトウェア製品の開発販売を行っている。「Object Browser」シリーズについては、従来はパッケージ販売(ライセンス販売+保守サービス)のみだったが、2021年2月よりサブスクリプションモデルでの販売※も開始している。「OBPM」や「OBDZ」についてはクラウドサービスでの提供を行っている。
※契約期間は1年、2年、3年の年間契約(保守料含む)。バージョンアップは無償。for Oracleのみ。
売上構成比は「Object Browser」シリーズが4割強、「OBPM」が6割弱となっており、「OBPM」の比率が年々上昇傾向にある。「Object Browser」シリーズについては1997年の発売以来、1.9万社、45万ライセンスの導入実績があり、国内ではデファクトスタンダードとなっている。現在は売上高の30%超が保守サポート等のストック収入で比較的売上高は安定している。高いブランド力を持つため販売費用もほとんどかからず、売上総利益率は約90%と高収益製品となっている。競合製品として無料ソフトが出ているが、機能面での差があることから直接的な影響は受けていない。
一方、「OBPM」は開発プロジェクトの進捗状況を統合管理(スケジュール、コスト、要員、品質、採算等の管理)することで、不採算プロジェクトの発生を未然に抑止し、開発部門の生産性向上を支援するツールである。国内で唯一、PMBOK※に準拠しており、2008年の発売以降、順調に導入社数を増やしている。2021年2月末の導入社数は中堅規模のIT企業を中心に210社を超えている。なお、大手IT企業はプロジェクト管理ツールを内製化しているが、ここ最近は「OBPM」の認知度向上や品質の高さが評価され、部門内で導入を検討する企業も増えている。一方、中小企業はExcelなどの市販ソフトや無料ソフトを使用しているケースが多い。
※PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは、プロジェクトマネジメントに関するノウハウや手法を体系立ててまとめたもの。1987年にアメリカの非営利団体PMIが「A Guide to the Project Management Body of Knowledge」というガイドブックで発表してから徐々に知られるようになり、現在はプロジェクトマネジメントの世界標準として世界各国に浸透している。
「OBPM」については2010年以降、クラウドサービスを開始し、2021年3月には新ブランドとなる「OBPM Neo」に名称を変更して、新規契約についてはすべてクラウドサービスで提供している。「OBPM」も競合品がほとんどないため、売上総利益率は70%前後と高いが、広告費や導入サポート費用等がかかるため、「Object Browser」シリーズと比較すると営業利益率は低くなる。なお、完全Web版となる「OBPM Neo」は2年間かけて開発を進めてきたもので、ソフトウェア資産として計上しており、2022年2月期より減価償却負担が発生する。
「OBDZ」はソフトウェア開発の上流工程である基本設計・詳細設計をシステム化し、合理化・標準化することで設計工程における生産性及び品質向上を支援するツールで、ソフトウェア開発分野におけるCADとも言える製品である(特許取得済み)。従来は、エンジニアがExcelやWordで個々に設計書を作成していたため、仕様変更が発生した場合などのメンテナンス、変更管理が難しく、手戻りミスによる開発遅延の原因にもなっていたが、「OBDZ」で設計書を統合管理することでこうした課題を解決する。このため用途としては、基幹業務システム等の大規模なウォーターフォール型※のシステム開発に向いている製品と言える。2013年のリリース以降、機能改良を重ね、2019年6月には完全Web化のフルモデルチェンジを行い、パフォーマンス速度も従来比1.5倍と大幅に向上した製品をリリースしている。導入社数はまだ少ないものの、中小から大手IT企業まで導入が着実に進んでいる。
※ウォーターフォール型とは、システム開発を「基本計画」「外部設計」「内部設計」「プログラム設計」「プログラミング」「テスト」という工程に分けて順に段階を経て行う開発手法を指す。前の工程には戻らない前提のため、下流から上流へは戻らない水の流れにたとえてウォーターフォールと呼ばれている。
2. E-Commerce事業
E-Commerce事業では、日本初のECサイト構築パッケージ「SI Web Shopping」を主力製品として販売している。「SI Web Shopping」の特徴は、大規模ECサイトに強いことにある。具体的には、売上金額が数百億円規模となる大量のトランザクション処理に対応可能なスケーラビリティと、高いセキュリティ機能を有している。また、スマートフォン等のモバイル対応機能や、英語、中国語など多言語対応、その他顧客ニーズに応じた機能をカスタマイズで付加することや、ERPなど既存システムとの連携も可能となっている。1996年の発売以降累計で1,100社以上のECサイトを構築しており(アクティブ稼働数は1割弱)、豊富な開発ノウハウや高い技術力が同社の強みとなっている。
ECサイト構築パッケージ業界でのポジションは、大規模事業者向けに限定すれば同社と、ソフトクリエイトホールディングス<3371>の子会社である(株)ecbeing(構築実績で1,300社超)、Eストアー<4304>の子会社である(株)コマース21(同300社超)の3社でほぼ寡占状態となっていたが、ここ最近はSIerとの競合も増えてきている。ECサイト構築パッケージに他の業務システムとの連携機能を付加するといったニーズが増えてきたためだ。こうしたことを背景に、1件当たりの受注単価も従来の数千万円規模から、ここ最近は1〜2億円と大型化している。ストック収入比率は18.1%(2021年2月期実績)と低く、開発プロジェクトの増減や生産性によって期間収益も変動する傾向にある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YM>