ザイマックス Research Memo(6):外部成長による巡航DPUの向上を通じて、投資主価値の向上を目指す(2)
[21/05/24]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の成長戦略
4. ホテルの成長戦略
ザイマックス・リート投資法人<3488>のホテル事業で所有する物件は仙台の1物件のみであり、JR仙台駅から徒歩4分の好立地にあるホテルだ。ただ、現状はコロナ禍の影響を大きく受け、最も苦戦を強いられている事業分野である。
すなわち、同投資法人では、2020年9月には宿泊需要の“蒸発”を背景にオペレーターから賃料減免の要請を受け、2021年1月に賃料条件変更に合意した。2021年3月にはオペレーターが東京地方裁判所に民事再生手続開始の申立てを行い、手続開始の決定がなされたものの、好立地・収益が取れている物件であることから、オペレーターからは賃貸借契約を継続したい申し出があり、今後も合意した契約条件が継続する予定である。
条件改定の内容は、以下のとおりである。2021年8月までは、コロナ禍に配慮し、月次GOP(営業総利益)に連動する完全変動賃料方式を採用する。しかし、2021年9月以降は固定賃料を復活させ、かつ、一定のGOPを超えた場合には変動賃料の受取が可能な方式とする。さらに、2022年9月以降は固定賃料を月額0.5百万円増額し、完全変動賃料方式の期間の減免分回収を目指す。
ホテルビスタ仙台の実績推移を見ると、2回目の緊急事態宣言下の2021年2月には稼働率、ADR(Average Daily Rate:実際に販売された客室1室当たりの平均単価)、RevPAR(Revenue Per Available Room:「販売できるすべての客室」の平均単価)は回復傾向にある。ただ、足下では感染再拡大もあり、楽観視できない状況が続いている。ホテルビスタ仙台は元々高稼働の物件であることから、同投資法人では、テナント民事再生手続きの動向、客室売上の動向やホテル運営コストの適正性を注視する方針である。
5. 今後の外部成長戦略の着目点
同投資法人では上述の現状を踏まえて、アセットタイプ別に次のような戦略を立てている。すなわち、テナントニーズの旺盛さを、不動産の収益性を見極める重要な要素と考えて、アセットタイプごとに以下のポイントを総合的に判断することで、収益性の高いポートフォリオの構築を目指している。そして、今後もポートフォリオの80%以上をオフィス・商業施設・ホテルで構成する計画である。
まず、オフィスの成長戦略としては、同投資法人では、テナント訴求力の強い不動産に着目する。具体的には、引き続き都心8区、名古屋中心部、大阪中心部、福岡中心部に所在し、最寄駅からおおむね徒歩5分圏内の駅近で、1坪当たり賃料単価1〜2万円台の、借り手にとって魅力のある物件を取得する方針だ。
次に、商業施設の今後の成長戦略では、テナント賃料の安定性または物件価格の安さに着目する。すなわち、施設売上やテナントの賃料負担率が分析可能な物件や、市場対比で割安な物件を取得する計画である。
そして、ホテルの今後の成長戦略としては、交通結節点に所在する宿泊特化型ホテルに着目する方針だ。宿泊特化型ホテルは、スポンサーの運営ノウハウに基づき分析可能である。交通結節点へのアクセスが良好なエリアや訪日外国人の増加が見込まれるエリアなど旺盛な宿泊需要が見込まれるエリアに所在する物件を取得する計画だ。ただ、当面は、ホテル宿泊需要の回復を注視する方針だ。
同投資法人ではアセットタイプ別着目点を堅持し、ポートフォリオ戦略に則って、今後の物件の取得検討をしている。そして、分配金成長と財務健全性のバランスを意識し、対象物件の根源的な価値を見極める取得活動を継続する方針である。物件取得に際しては、スポンサーグループの「見極め力」や「ソーシング力」を最大限に活用し、対象物件が本来有している収益力を見極めた投資実行を想定する。また、同投資法人は LTV水準が低いことから、投資口価格の動向も踏まえて、借入金による機動的な物件取得も選択可能である。現在、都心5区のオフィス、東京23区のオフィス、その他(寮、企業1棟借り)、地方政令指定都市のオフィス、地方中核都市のホテル(宿泊特化型)などの取得を検討している。
6. ESGへの取り組み
同投資法人は、ESG(Environment、Social、Governanceの頭文字)にも熱心に取り組んでいる。
Environment(環境)の分野では、同投資法人の保有物件のうち7物件がCASBEE(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構が認証する環境性能評価ツール)及びBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の認証を取得している。特にCASBEEではAランクの高評価を得ており、今後も保有物件の環境・省エネ対策やエネルギー利用の効率化を推進する計画だ。
Social(社会)の分野では、テナント・地域社会への取り組み(エレベーター非常用収納ボックスの設置や災害救援ベンダーの導入などのほか、ザイマックス不動産投資顧問による21世紀金融行動原則への署名、ペーパーレス化の推進、同社社員への資格取得の支援やダイバーシティの尊重などを実践している。また、スポンサーグループでは、「からくさ不動産塾」を通じた不動産ビジネス人材の育成にも取り組んでいる。
Governance(ガバナンス)の分野では、ザイマックス不動産投資顧問の意思決定フローにおいて、投資家利益に重大な影響がある事項について外部委員が参加する委員会を経る意思決定フローとし、投資主の利益保護を図るほか、同社でのコンプライアンス教育、スポンサーによる同投資法人への出資(スポンサーが同投資法人の投資口を保有することで投資家と利害を一致させ、投資主価値の向上を実現する)などを実践している。
近年、欧州や米国を中心に、ESGの観点から企業を分析して投資をするESG投資が増えている。世界のESG投資残高は2014年の18.2兆ドルから2018年には30.7兆ドルに拡大した。わが国はESG投資では欧米に遅れていたが、2018年には残高2.1兆ドル、世界シェア7.1%に急拡大している。世界的にESG投資拡大の潮流のなかで、日本でも成長余地が大きいと言えるであろう。その意味でも、積極的にESGに取り組む同投資法人が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<NB>
4. ホテルの成長戦略
ザイマックス・リート投資法人<3488>のホテル事業で所有する物件は仙台の1物件のみであり、JR仙台駅から徒歩4分の好立地にあるホテルだ。ただ、現状はコロナ禍の影響を大きく受け、最も苦戦を強いられている事業分野である。
すなわち、同投資法人では、2020年9月には宿泊需要の“蒸発”を背景にオペレーターから賃料減免の要請を受け、2021年1月に賃料条件変更に合意した。2021年3月にはオペレーターが東京地方裁判所に民事再生手続開始の申立てを行い、手続開始の決定がなされたものの、好立地・収益が取れている物件であることから、オペレーターからは賃貸借契約を継続したい申し出があり、今後も合意した契約条件が継続する予定である。
条件改定の内容は、以下のとおりである。2021年8月までは、コロナ禍に配慮し、月次GOP(営業総利益)に連動する完全変動賃料方式を採用する。しかし、2021年9月以降は固定賃料を復活させ、かつ、一定のGOPを超えた場合には変動賃料の受取が可能な方式とする。さらに、2022年9月以降は固定賃料を月額0.5百万円増額し、完全変動賃料方式の期間の減免分回収を目指す。
ホテルビスタ仙台の実績推移を見ると、2回目の緊急事態宣言下の2021年2月には稼働率、ADR(Average Daily Rate:実際に販売された客室1室当たりの平均単価)、RevPAR(Revenue Per Available Room:「販売できるすべての客室」の平均単価)は回復傾向にある。ただ、足下では感染再拡大もあり、楽観視できない状況が続いている。ホテルビスタ仙台は元々高稼働の物件であることから、同投資法人では、テナント民事再生手続きの動向、客室売上の動向やホテル運営コストの適正性を注視する方針である。
5. 今後の外部成長戦略の着目点
同投資法人では上述の現状を踏まえて、アセットタイプ別に次のような戦略を立てている。すなわち、テナントニーズの旺盛さを、不動産の収益性を見極める重要な要素と考えて、アセットタイプごとに以下のポイントを総合的に判断することで、収益性の高いポートフォリオの構築を目指している。そして、今後もポートフォリオの80%以上をオフィス・商業施設・ホテルで構成する計画である。
まず、オフィスの成長戦略としては、同投資法人では、テナント訴求力の強い不動産に着目する。具体的には、引き続き都心8区、名古屋中心部、大阪中心部、福岡中心部に所在し、最寄駅からおおむね徒歩5分圏内の駅近で、1坪当たり賃料単価1〜2万円台の、借り手にとって魅力のある物件を取得する方針だ。
次に、商業施設の今後の成長戦略では、テナント賃料の安定性または物件価格の安さに着目する。すなわち、施設売上やテナントの賃料負担率が分析可能な物件や、市場対比で割安な物件を取得する計画である。
そして、ホテルの今後の成長戦略としては、交通結節点に所在する宿泊特化型ホテルに着目する方針だ。宿泊特化型ホテルは、スポンサーの運営ノウハウに基づき分析可能である。交通結節点へのアクセスが良好なエリアや訪日外国人の増加が見込まれるエリアなど旺盛な宿泊需要が見込まれるエリアに所在する物件を取得する計画だ。ただ、当面は、ホテル宿泊需要の回復を注視する方針だ。
同投資法人ではアセットタイプ別着目点を堅持し、ポートフォリオ戦略に則って、今後の物件の取得検討をしている。そして、分配金成長と財務健全性のバランスを意識し、対象物件の根源的な価値を見極める取得活動を継続する方針である。物件取得に際しては、スポンサーグループの「見極め力」や「ソーシング力」を最大限に活用し、対象物件が本来有している収益力を見極めた投資実行を想定する。また、同投資法人は LTV水準が低いことから、投資口価格の動向も踏まえて、借入金による機動的な物件取得も選択可能である。現在、都心5区のオフィス、東京23区のオフィス、その他(寮、企業1棟借り)、地方政令指定都市のオフィス、地方中核都市のホテル(宿泊特化型)などの取得を検討している。
6. ESGへの取り組み
同投資法人は、ESG(Environment、Social、Governanceの頭文字)にも熱心に取り組んでいる。
Environment(環境)の分野では、同投資法人の保有物件のうち7物件がCASBEE(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構が認証する環境性能評価ツール)及びBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の認証を取得している。特にCASBEEではAランクの高評価を得ており、今後も保有物件の環境・省エネ対策やエネルギー利用の効率化を推進する計画だ。
Social(社会)の分野では、テナント・地域社会への取り組み(エレベーター非常用収納ボックスの設置や災害救援ベンダーの導入などのほか、ザイマックス不動産投資顧問による21世紀金融行動原則への署名、ペーパーレス化の推進、同社社員への資格取得の支援やダイバーシティの尊重などを実践している。また、スポンサーグループでは、「からくさ不動産塾」を通じた不動産ビジネス人材の育成にも取り組んでいる。
Governance(ガバナンス)の分野では、ザイマックス不動産投資顧問の意思決定フローにおいて、投資家利益に重大な影響がある事項について外部委員が参加する委員会を経る意思決定フローとし、投資主の利益保護を図るほか、同社でのコンプライアンス教育、スポンサーによる同投資法人への出資(スポンサーが同投資法人の投資口を保有することで投資家と利害を一致させ、投資主価値の向上を実現する)などを実践している。
近年、欧州や米国を中心に、ESGの観点から企業を分析して投資をするESG投資が増えている。世界のESG投資残高は2014年の18.2兆ドルから2018年には30.7兆ドルに拡大した。わが国はESG投資では欧米に遅れていたが、2018年には残高2.1兆ドル、世界シェア7.1%に急拡大している。世界的にESG投資拡大の潮流のなかで、日本でも成長余地が大きいと言えるであろう。その意味でも、積極的にESGに取り組む同投資法人が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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