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パイプドHD Research Memo(6):2021年2月期はコロナ禍の影響を受けるも、営業増益で着地(2)

注目トピックス 日本株
■パイプドHD<3919>の業績動向

(4) 財務状況及びキャッシュ・フローの状況
2021年2月期末の財務状況は、資産合計は8,074百万円(前期末比945百万円増)となった。流動資産は1,729百万円増加したが、主に現金及び預金の増加1,510百万円、受取手形及び売掛金の増加269百万円などによる。固定資産は784百万円の減少となったが、無形固定資産の減少50百万円、投資その他の資産の減少733百万円による。投資その他の資産の減少は主に投資有価証券(米国株式)の売却による。

負債合計は3,582百万円(同356百万円増)となったが、主に1年内返済予定の長期借入金を含めた短期借入金等の増加477百万円、未払法人税等の減少253百万円、長期借入金の減少147百万円などによる。純資産合計は4,491百万円(同589百万円増)となったが、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上などによる利益剰余金の増加1,057百万円、自己株式の取得による減少500百万円などによる。

営業活動によるキャッシュ・フローは891百万円の収入となったが、主な収入は税金等調整前当期純利益の計上1,735百万円、減価償却費163百万円、未払金の増加289百万円などで、主な支出は投資有価証券売却益293百万円、売上債権の増加269百万円などであった。投資活動によるキャッシュ・フローは950百万円の収入となったが、主な収入は投資有価証券の売却1,201百万円、主な支出はソフトウェアを中心とした無形固定資産の取得107百万円、投資有価証券の取得154百万円などによる。財務活動によるキャッシュ・フローは337百万円の支出となったが、主な収入は借入れによる収入(ネット)330百万円、主な支出は、自己株式の取得501百万円、配当金支払い168百万円などによる。この結果、期中の現金及び現金同等物は1,510百万円増加し、期末の残高は5,049百万円となった。

(5) 2021年2月期の主なトピックス
a)「SPIRAL(R) ver.2」をリリース
新たなローコード開発プラットフォーム「SPIRAL(R) ver.2」の提供を、2020年11月に開始した。これは、「SPIRAL(R)」のアーキテクチャーを刷新し、国際化対応したローコード開発基盤を提供している。ローコード開発ならではのスピード感とハイレベルなセキュリティを両立していることに加え、国際化にも迅速な対応が可能となっている。なお、先行して10社以上の企業に導入済みである。

b) 「SPIRAL(R)」のプロダクト強化
20年のノウハウと高い信頼性を誇る「SPIRAL(R) ver.1」は強化を継続しながら引き続き提供する一方で、「SPIRAL(R) ver.2」とともにローコード開発プラットフォームとして幅広い分野のDXの推進に貢献する。

c) 自治体にネット投票システムを提供
つくば市に「xID」と連携したネット投票システムを導入した。これにより、スマートフォンでの投票による投票数の増加、海外を含む投票場所の自由化、マイナンバーカードとの連携を実証した。また、町田市が実施した投票企画にネット投票システムを提供した。

d) CVC(Corporate Venture Capital)ファンドを設立、投資事業を開始
以前から同社は、有望なベンチャー企業等に対して直接投資(出資)を行ってきたが、効率や評価という観点で課題があった。グループの中長期的な発展と、収益力の拡大に資することを目的として、2020年3月に投資事業子会社ダブルシャープ・パートナーズを設立し、4月には第1号であるダブルシャープ・パートナーズ・ファンド1号投資事業組合(ファンド規模約5億円、期間10年)を組成し、組合経由の投資事業を開始した。

既に2021年2月期末までに、ナレッジ・マーチャントワークス(株)(【リテールテック】小売・飲食・サービス業の生産性向上を支援する店舗マネジメントツール「はたLuck」を提供)、JOINS(株)(【HRテック】地方企業と大都市の副業・兼業人材マッチングサービス「JOINS」を提供)、(株)subsclife(【リテールテック】家具のサブスクリプション型サービスを提供)、BPM(株)(【建設テック】建設メンテナンス業務管理SaaSの提供)、CO-NECT(株)(【リテールテック】小売・飲食店とメーカー・卸会社間のアナログな受発注をスマートにするクラウドサービスを提供)の5社に総額約130百万円を出資済みである。同社では、「今後も良い候補企業があれば出資を行っていく」としている。

e) 自己株式の取得について
資本効率の向上及び今後の資本政策の実施に備えるため、自己株式を取得した。具体的には、東京証券取引所における市場買付により、同社普通株式500,000株・500百万円を上限とし、取得期間は2020年4月22日から2020年10月21日までとした。取得結果としては、累計取得自己株式334,300株(上限の66.9%)、累計取得価額総額499,936,000円(上限500百万円の100.0%)、保有自己株式数334,532株(2020年11月末の発行済株式総数8,138,964株の4.1%)となった。

f) Sprinklr, Inc.株式の売却
2020年10月に、投資有価証券として保有していた米国のSprinklr, Inc.株式を売却し、投資有価証券売却益293百万円を計上した。Sprinklr, Inc.とはリセラー契約をしていたが、想定していたほどの効果が出なかったことから株式を売却した。

(6) 新型コロナウイルス感染症拡大の影響
案件の失注や商談の長期化等、特に営業面で停滞が見られたIT活用需要の顕在化により、2021年2月期下期にシステム案件の受注が加速した。以下は各セグメントの影響である。

a) 情報資産プラットフォーム事業
「SPIRAL(R)」の収益の根幹であるシステム利用料売上(ストック売上)への影響は軽微にとどまった。また、当初アウトバウンドによる新規開拓営業が難航したものの、IT活用需要の高まりにより徐々に復調している。加えて、ワクチン接種やウェビナー申込等、新型コロナウイルス感染症対策に関連する急を要するシステム案件を多数受注し、業績に寄与した。

b) 販促CRMソリューション事業
販促、CRM運用案件で失注やペンディングが発生した。また、インサイドセールス代行事業では、新規案件の商談が停滞した。

c) 広告事業
消費活動の自粛等により、企業の広告宣伝活動が停滞した。特に交通広告に関連するインターネット広告の取扱が停滞した。

d) xTech事業/社会イノベーション事業
BIM事業は比較的堅調に推移したものの、「美歴(R)」で主要顧客である美容室の休業が相次いだことでマイナスの影響を受けた。ネット投票「政治山(R)」では、ネット投票の機運の高まりが見られることに加え、「マイ広報紙」は自治体の積極的な情報発信の一助として掲載が増加した。一方、「I LOVE 下北沢」はイベントが開催できないことによる影響を大きく受け、「シモキタコイン(R)」は飲食店でのコイン流通額が大きく減少した。

e) グループ共通/全社
初回の緊急事態宣言中は9割以上の従業員を在宅勤務させる対策を講じた。また、在宅勤務の制度を整えたうえで在宅勤務を継続させ、顧客等に約束している事業の品質や情報セキュリティを確保しながら、通勤や移動時間の削減等による業務効率化と感染症拡大リスクの低減の両立を目指した取り組みを推進した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)




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