いちご Research Memo(4):クリーンエネルギー事業では太陽光に加え風力発電所も稼働開始
[21/05/31]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業概要
1. アセットマネジメント事業
当該事業セグメントは、いちごオフィスリート投資法人<8975>(2005年10月上場。以下、いちごオフィス)、いちごホテルリート投資法人<3463>(2015年11月上場。以下、いちごホテル)及びいちごグリーンインフラ投資法人<9282>(2016年12月上場。以下、いちごグリーン)のいちご<2337>がスポンサーを務める上場投資法人に対し、投資対象資産の発掘及び供給による成長支援、運用期間中の運用・管理などを展開している。
いちごオフィスは運用資産残高の増加や保有不動産の価値向上による賃料収入の増加などにより、J-REIT最長の18期連続増配の実績を持つ(2010年4月期〜2019年4月期)。安定的かつ収益成長が見込める中規模オフィスに特化したポートフォリオに特徴がある。2019年12月には、世界の上場不動産株式、REITなどで構成され、世界中の機関投資家が指標とするグローバルインデックスファンド「FTSE EPRA / NAREIT Global Real Estate Index Series」に組み入れられた。2021年2月末日の運用資産は86物件、残高2,061億円、2021年2月期の期中運用フィー粗利1,524百万円(前期比88百万円増)となった。いちごホテルは2015年11月に上場し、その後も運用資産残高を増やしている。ビジネス・観光に優位性のある好立地の宿泊主体・特化型ホテルで構成されるホテル特化型J-REITで、グループの資産運用会社に対する報酬体系を投資主価値向上に連動するJ-REIT初の完全成果報酬への移行、自己投資口の取得など、いちごオフィスとともに積極的な運用を行っている。2021年2月末日の運用資産は23ホテル(上場時は9ホテル)、残高519億円、2021年2月期の期中運用フィー粗利42百万円(前期比339百万円減)となった。主因はコロナの影響でベース運用フィーが減少したためである。いちごグリーンは2016年12月に東証インフラ市場に上場した、グリーンインフラ特化型投資法人である。長期にわたる安定収益を背景に、史上初となる10ヶ年の長期業績予想を行う。2021年2月末日の運用資産は15発電所、残高114億円、2021年2月期の期中運用フィー粗利79百万円(前期比3百万円減)となった。
同社はスポンサーとして各投資法人の成長サポートを担う。同社が“心築”を施した物件と各投資法人の保有する物件の入替を行うなど、スポンサー(同社)と各投資法人が連携することで、グループ全体として株主価値を向上させ、安定収益を生み出せるシステムが同社の総合力である。
2021年2月期は、いちごホテルにおいて、売上高に連動してベース運用フィーが減少したこと、前期に発生したホテル物件売却に伴うフィーが剥落したことなどにより、セグメント売上高は2,480百万円(前期比37.2%減)、セグメント利益は1,403百万円(同44.5%減)となった。
2. 心築(しんちく)事業
心築事業は同社事業の柱であり、不動産価値向上ノウハウは同社のコアコンピタンスである。心築という言葉は同社の造語であり「心で築く、心を築く」の信条のもと、同社の技術とノウハウを活用し、1つ1つの不動産に心を込めた丁寧な価値向上を図り、現存不動産に新しい価値を創造することを言い、日本における「100年不動産」の実現を目指すものである。
心築事業は、保有不動産の賃貸収益(ストック収益)と譲渡収益(フロー収益)の両面がある。賃貸収益は自己保有資産(2,451億円)から生み出され、2021年2月期の粗利ベース収益で6,219百万円(前期比5,720百万円減)と、ホテルの賃貸収益が大きく減少した影響を受けた。譲渡収益は売却における譲渡益であり、2021年2月期はいちごオーナーズによるレジデンス中心の売却により粗利ベース収益で5,028百万円(前期比12,180百万円減)となった。レジデンスは市況が順調だったもののホテルをはじめ商業施設やオフィスにおいて売却における価格が合わないため、見送った案件が多かったことがその要因である。
自己保有残高は2,451億円(2021年2月末)となっている。保有資産の特徴は、物件タイプとしては商業施設(28%)、ホテル(26%)、オフィス(25%)、レジデンス(14%)とバランス型のポートフォリオになっている。地域別には東京(51%)が多く、福岡(20%)と東京以外首都圏(11%)が続く。また物件規模では、10〜50億円未満の中規模物件が47%と多く、いちごオーナーズが対象とする10億円未満の物件も20%と一定割合を占める。
心築事業の成功のカギは、好立地かつ価値向上のポテンシャルを持つ良質な物件の取得である。2021年2月期では41物件、38,206百万円(平均931百万円/物件)の資産を取得した。2020年2月期が58物件、63,048百万円(平均1,087百万円/物件)だったのと比較すると、総額が減少し、案件規模が小型化した。いちごオーナーズでの取得が24,384百万円と全体の64%に達したことからも、取得物件の小型化の傾向が分かる。取得物件種類で多かったのはレジデンスであり、25,479百万円と全体の67%に達する。
売却に関しては、2021年2月期では49物件、41,430百万円(平均845百万円/物件)の資産が売却された。売却物件種類のなかではレジデンスが35,229百万円と最大であり、構成比で85%と高かった。売却においても、いちごオーナーズでの売却が30,671百万円と全体の74%に達した。多様な物件ポートフォリオを持つ点が同社の特徴であるが、小型物件やレジデンスの比率がより高くなる傾向にある。
3. クリーンエネルギー事業
クリーンエネルギー事業は2012年に開始され、全国67ヶ所の太陽光、風力発電所プロジェクトをグループで開発及び運営するまでに成長した。2021年4月19日時点で同社が保有する発電所のうち売電開始済が52ヶ所、157.3MW(うち、いちごグリーンは15発電所、29.4MW)、開発中の発電所が15ヶ所、41.5MWであり、今後これに同社が開発を進めていく木質バイオマスによる発電が加算されていく。2021年2月期以降では太陽光発電所6ヶ所、風力発電所1ヶ所(2021年3月から)が稼働開始した。
同社のクリーンエネルギー事業の特徴は、1)遊休地の不動産の有効活用を図ること、2)北海道から九州・沖縄まで全国に分散していること、3)固定買取価格制度のもと20年間の安定した収益が保証されており、36円以上の買取価格が過半であること、4)2MW以下のものから関東最大級の43MW(いちご昭和村生越ECO発電所)まであること、5)太陽光発電のほか風力発電、木質バイオマス発電に取り組み電源の多様化が行われていること、などである。2016年2月期決算で黒字転換して以来、安定収益を生んでいる。今後も発電所の開発を強化し、2年後の2023年2月期には198.9MWとする開発計画がある。企業のESG活動に注目が集まるなか、同社がクリーンエネルギー発電事業を擁することは、今後一段と同社の強みとなるだろう。
2021年2月期は、前期に竣工した発電所の売電収入が通期で寄与したことや新たに6ヶ所の発電所が売電を開始したことなどにより、セグメント売上高は4,654百万円(前期比22.6%増)、セグメント利益は1,834百万円(同44.2%増)と大幅に増加した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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1. アセットマネジメント事業
当該事業セグメントは、いちごオフィスリート投資法人<8975>(2005年10月上場。以下、いちごオフィス)、いちごホテルリート投資法人<3463>(2015年11月上場。以下、いちごホテル)及びいちごグリーンインフラ投資法人<9282>(2016年12月上場。以下、いちごグリーン)のいちご<2337>がスポンサーを務める上場投資法人に対し、投資対象資産の発掘及び供給による成長支援、運用期間中の運用・管理などを展開している。
いちごオフィスは運用資産残高の増加や保有不動産の価値向上による賃料収入の増加などにより、J-REIT最長の18期連続増配の実績を持つ(2010年4月期〜2019年4月期)。安定的かつ収益成長が見込める中規模オフィスに特化したポートフォリオに特徴がある。2019年12月には、世界の上場不動産株式、REITなどで構成され、世界中の機関投資家が指標とするグローバルインデックスファンド「FTSE EPRA / NAREIT Global Real Estate Index Series」に組み入れられた。2021年2月末日の運用資産は86物件、残高2,061億円、2021年2月期の期中運用フィー粗利1,524百万円(前期比88百万円増)となった。いちごホテルは2015年11月に上場し、その後も運用資産残高を増やしている。ビジネス・観光に優位性のある好立地の宿泊主体・特化型ホテルで構成されるホテル特化型J-REITで、グループの資産運用会社に対する報酬体系を投資主価値向上に連動するJ-REIT初の完全成果報酬への移行、自己投資口の取得など、いちごオフィスとともに積極的な運用を行っている。2021年2月末日の運用資産は23ホテル(上場時は9ホテル)、残高519億円、2021年2月期の期中運用フィー粗利42百万円(前期比339百万円減)となった。主因はコロナの影響でベース運用フィーが減少したためである。いちごグリーンは2016年12月に東証インフラ市場に上場した、グリーンインフラ特化型投資法人である。長期にわたる安定収益を背景に、史上初となる10ヶ年の長期業績予想を行う。2021年2月末日の運用資産は15発電所、残高114億円、2021年2月期の期中運用フィー粗利79百万円(前期比3百万円減)となった。
同社はスポンサーとして各投資法人の成長サポートを担う。同社が“心築”を施した物件と各投資法人の保有する物件の入替を行うなど、スポンサー(同社)と各投資法人が連携することで、グループ全体として株主価値を向上させ、安定収益を生み出せるシステムが同社の総合力である。
2021年2月期は、いちごホテルにおいて、売上高に連動してベース運用フィーが減少したこと、前期に発生したホテル物件売却に伴うフィーが剥落したことなどにより、セグメント売上高は2,480百万円(前期比37.2%減)、セグメント利益は1,403百万円(同44.5%減)となった。
2. 心築(しんちく)事業
心築事業は同社事業の柱であり、不動産価値向上ノウハウは同社のコアコンピタンスである。心築という言葉は同社の造語であり「心で築く、心を築く」の信条のもと、同社の技術とノウハウを活用し、1つ1つの不動産に心を込めた丁寧な価値向上を図り、現存不動産に新しい価値を創造することを言い、日本における「100年不動産」の実現を目指すものである。
心築事業は、保有不動産の賃貸収益(ストック収益)と譲渡収益(フロー収益)の両面がある。賃貸収益は自己保有資産(2,451億円)から生み出され、2021年2月期の粗利ベース収益で6,219百万円(前期比5,720百万円減)と、ホテルの賃貸収益が大きく減少した影響を受けた。譲渡収益は売却における譲渡益であり、2021年2月期はいちごオーナーズによるレジデンス中心の売却により粗利ベース収益で5,028百万円(前期比12,180百万円減)となった。レジデンスは市況が順調だったもののホテルをはじめ商業施設やオフィスにおいて売却における価格が合わないため、見送った案件が多かったことがその要因である。
自己保有残高は2,451億円(2021年2月末)となっている。保有資産の特徴は、物件タイプとしては商業施設(28%)、ホテル(26%)、オフィス(25%)、レジデンス(14%)とバランス型のポートフォリオになっている。地域別には東京(51%)が多く、福岡(20%)と東京以外首都圏(11%)が続く。また物件規模では、10〜50億円未満の中規模物件が47%と多く、いちごオーナーズが対象とする10億円未満の物件も20%と一定割合を占める。
心築事業の成功のカギは、好立地かつ価値向上のポテンシャルを持つ良質な物件の取得である。2021年2月期では41物件、38,206百万円(平均931百万円/物件)の資産を取得した。2020年2月期が58物件、63,048百万円(平均1,087百万円/物件)だったのと比較すると、総額が減少し、案件規模が小型化した。いちごオーナーズでの取得が24,384百万円と全体の64%に達したことからも、取得物件の小型化の傾向が分かる。取得物件種類で多かったのはレジデンスであり、25,479百万円と全体の67%に達する。
売却に関しては、2021年2月期では49物件、41,430百万円(平均845百万円/物件)の資産が売却された。売却物件種類のなかではレジデンスが35,229百万円と最大であり、構成比で85%と高かった。売却においても、いちごオーナーズでの売却が30,671百万円と全体の74%に達した。多様な物件ポートフォリオを持つ点が同社の特徴であるが、小型物件やレジデンスの比率がより高くなる傾向にある。
3. クリーンエネルギー事業
クリーンエネルギー事業は2012年に開始され、全国67ヶ所の太陽光、風力発電所プロジェクトをグループで開発及び運営するまでに成長した。2021年4月19日時点で同社が保有する発電所のうち売電開始済が52ヶ所、157.3MW(うち、いちごグリーンは15発電所、29.4MW)、開発中の発電所が15ヶ所、41.5MWであり、今後これに同社が開発を進めていく木質バイオマスによる発電が加算されていく。2021年2月期以降では太陽光発電所6ヶ所、風力発電所1ヶ所(2021年3月から)が稼働開始した。
同社のクリーンエネルギー事業の特徴は、1)遊休地の不動産の有効活用を図ること、2)北海道から九州・沖縄まで全国に分散していること、3)固定買取価格制度のもと20年間の安定した収益が保証されており、36円以上の買取価格が過半であること、4)2MW以下のものから関東最大級の43MW(いちご昭和村生越ECO発電所)まであること、5)太陽光発電のほか風力発電、木質バイオマス発電に取り組み電源の多様化が行われていること、などである。2016年2月期決算で黒字転換して以来、安定収益を生んでいる。今後も発電所の開発を強化し、2年後の2023年2月期には198.9MWとする開発計画がある。企業のESG活動に注目が集まるなか、同社がクリーンエネルギー発電事業を擁することは、今後一段と同社の強みとなるだろう。
2021年2月期は、前期に竣工した発電所の売電収入が通期で寄与したことや新たに6ヶ所の発電所が売電を開始したことなどにより、セグメント売上高は4,654百万円(前期比22.6%増)、セグメント利益は1,834百万円(同44.2%増)と大幅に増加した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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