アジア投資 Research Memo(1):2021年3月期は株式売却の期ずれ等により計画を下回る着地。
[21/06/08]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■要約
1. 会社概要
日本アジア投資<8518>は、日本とアジアにまたがる独立系の総合投資会社として、プライベートエクイティ投資(以下、PE投資)や再生可能エネルギー等のプロジェクト投資を手掛けている。1981年に(公社)経済同友会を母体として設立され、豊富な投資経験とブランド、ネットワーク、人材、事業パートナーなどの事業基盤に強みがある。革新的な技術やビジネスモデルを持ち、高い成長力を有するベンチャー企業及び中堅・中小企業等への投資や成長支援を通じて、日本とアジアの両地域における産業活性化や経済連携の拡大などに貢献をしてきた。同社グループが管理運用等を行っているファンド運用残高は16,450百万円(11ファンド)、同社グループの自己資金及び運用ファンドによる投融資残高は12,855百万円となっている(2021年3月期末現在)。PE投資については、VC業界を取り巻く環境が変化するなかで、新たなファンド設立に苦戦しており、投資残高も減少傾向にある。ただ、ここ数年はプロジェクト投資に積極的に取り組み、パートナー企業への戦略投資(PE投資)でも成果をあげている。
2. 2021年3月期の業績
2021年3月期の業績(ファンド連結基準)※は、営業収益が前期比6.1%減の3,709百万円、営業損失が163百万円(前期は716百万円の利益)となった。
※同社は2007年3月期より、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」を適用し、同社グループが管理運用する投資事業組合等を連結範囲に加えるファンド連結基準に移行している。ただ、ファンド連結基準は同社以外の外部出資者の持分が含まれていることやファンドごとの財務方針が反映されるところに注意する必要がある。同社では、投資家からの要望に応じて従来連結基準も同時に開示しているが、弊社でも、より実態を示しているとの判断から従来連結基準による分析を行っている。
従来連結基準では、営業収益が前期比11.9%増の3,089百万円、営業利益が同19.2%減の214百万円と増収ながら減益となった。また、期初見込値に対しては、営業収益、利益ともに下回る着地となっている。営業収益は、海外での株式売却が進捗したことで増収となった。ただ、期初見込みに対しては、新規上場の延期などにより予定していた株式の売却が期ずれし、その分をカバーすべくメガソーラープロジェクトの売却を進めたものの、若干下回る結果に終わった。また、損益面については、売却したメガソーラープロジェクトの開発コストが前期に比べて高かったことから売却益が減少したことや、他社が運営するPE投資で損失が発生したことなどから減益となった。
3. 今後の方向性(新中期経営計画の概要)
同社は、新たに2024年3月期までの新中期経営計画を公表した。投資活動のコアバリューを「ベンチャー投資と特色有るアジアのネットワークを活用した日本とアジアの未来に貢献するSDGs投資」と位置付け、今後、少子高齢化とポストコロナの日本の未来社会で生み出されるイノベーションから創出される事業を見出し、投資活動を通じて成長を支援する方針である。もっとも、基本的な投資方針に大きな変更はなく、戦略投資とプロジェクト投資によりバランスシートの早期改善と安定した収益の造成を図るとともに、ベンチャー投資により高い収益性の確保を目指す内容となっている。最終年度となる2024年3月期にはフィー収益(約2.5億円)とプロジェクトの収益(約9億円)で管理コストを賄うとともに、変動の大きなPE投資の収益により超過利益(アップサイド)を狙うシナリオであり、営業総利益で22億円、最終利益で8.5億円を計画している。
4. 2022年3月期の業績見通し
同社は、業績予想(ファンド連結基準)について、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きく、合理的な業績予想が困難である事業特性であることから公表を行っていない。ただ、2022年3月期については、ある一定の前提をもとに策定した「従来連結基準による見込値」を参考情報として開示している。
同社の「従来連結基準による見込値」によれば、営業収益を前期比4.5%減の2,950百万円、営業利益を同137.8%増の510百万円と減収ながら大幅な営業増益を見込んでいる。営業収益については、前期からの期ずれ分を含め、株式の売却を積極的に進めていく方針であるが、プロジェクト投資分の売却が前期と比べて減少することで減収となる。また、損益面では、株式の売却益が増益に大きく寄与する想定となっている。なお、株式の売却やプロジェクト投資分の売却の大半は第4四半期に実行する計画のため、第3四半期までは損失計上の見込みとなっていることには注意が必要である。
■Key Points
・2021年3月期の業績(従来連結基準)は増収ながら減益となり、期初見込み値を若干下回る着地
・海外での株式売却が進捗したものの、予定していた株式売却の期ずれ等が未達となった要因
・新たな3ヶ年の中期経営計画では、前中計の投資方針をさらに推し進めるとともに、SDGsを強く意識した投資活動に取り組む方向性
・2022年3月期の業績(従来連結基準)については減収ながら株式の売却益により大幅な増益を見込んでいる
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<NB>
1. 会社概要
日本アジア投資<8518>は、日本とアジアにまたがる独立系の総合投資会社として、プライベートエクイティ投資(以下、PE投資)や再生可能エネルギー等のプロジェクト投資を手掛けている。1981年に(公社)経済同友会を母体として設立され、豊富な投資経験とブランド、ネットワーク、人材、事業パートナーなどの事業基盤に強みがある。革新的な技術やビジネスモデルを持ち、高い成長力を有するベンチャー企業及び中堅・中小企業等への投資や成長支援を通じて、日本とアジアの両地域における産業活性化や経済連携の拡大などに貢献をしてきた。同社グループが管理運用等を行っているファンド運用残高は16,450百万円(11ファンド)、同社グループの自己資金及び運用ファンドによる投融資残高は12,855百万円となっている(2021年3月期末現在)。PE投資については、VC業界を取り巻く環境が変化するなかで、新たなファンド設立に苦戦しており、投資残高も減少傾向にある。ただ、ここ数年はプロジェクト投資に積極的に取り組み、パートナー企業への戦略投資(PE投資)でも成果をあげている。
2. 2021年3月期の業績
2021年3月期の業績(ファンド連結基準)※は、営業収益が前期比6.1%減の3,709百万円、営業損失が163百万円(前期は716百万円の利益)となった。
※同社は2007年3月期より、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」を適用し、同社グループが管理運用する投資事業組合等を連結範囲に加えるファンド連結基準に移行している。ただ、ファンド連結基準は同社以外の外部出資者の持分が含まれていることやファンドごとの財務方針が反映されるところに注意する必要がある。同社では、投資家からの要望に応じて従来連結基準も同時に開示しているが、弊社でも、より実態を示しているとの判断から従来連結基準による分析を行っている。
従来連結基準では、営業収益が前期比11.9%増の3,089百万円、営業利益が同19.2%減の214百万円と増収ながら減益となった。また、期初見込値に対しては、営業収益、利益ともに下回る着地となっている。営業収益は、海外での株式売却が進捗したことで増収となった。ただ、期初見込みに対しては、新規上場の延期などにより予定していた株式の売却が期ずれし、その分をカバーすべくメガソーラープロジェクトの売却を進めたものの、若干下回る結果に終わった。また、損益面については、売却したメガソーラープロジェクトの開発コストが前期に比べて高かったことから売却益が減少したことや、他社が運営するPE投資で損失が発生したことなどから減益となった。
3. 今後の方向性(新中期経営計画の概要)
同社は、新たに2024年3月期までの新中期経営計画を公表した。投資活動のコアバリューを「ベンチャー投資と特色有るアジアのネットワークを活用した日本とアジアの未来に貢献するSDGs投資」と位置付け、今後、少子高齢化とポストコロナの日本の未来社会で生み出されるイノベーションから創出される事業を見出し、投資活動を通じて成長を支援する方針である。もっとも、基本的な投資方針に大きな変更はなく、戦略投資とプロジェクト投資によりバランスシートの早期改善と安定した収益の造成を図るとともに、ベンチャー投資により高い収益性の確保を目指す内容となっている。最終年度となる2024年3月期にはフィー収益(約2.5億円)とプロジェクトの収益(約9億円)で管理コストを賄うとともに、変動の大きなPE投資の収益により超過利益(アップサイド)を狙うシナリオであり、営業総利益で22億円、最終利益で8.5億円を計画している。
4. 2022年3月期の業績見通し
同社は、業績予想(ファンド連結基準)について、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きく、合理的な業績予想が困難である事業特性であることから公表を行っていない。ただ、2022年3月期については、ある一定の前提をもとに策定した「従来連結基準による見込値」を参考情報として開示している。
同社の「従来連結基準による見込値」によれば、営業収益を前期比4.5%減の2,950百万円、営業利益を同137.8%増の510百万円と減収ながら大幅な営業増益を見込んでいる。営業収益については、前期からの期ずれ分を含め、株式の売却を積極的に進めていく方針であるが、プロジェクト投資分の売却が前期と比べて減少することで減収となる。また、損益面では、株式の売却益が増益に大きく寄与する想定となっている。なお、株式の売却やプロジェクト投資分の売却の大半は第4四半期に実行する計画のため、第3四半期までは損失計上の見込みとなっていることには注意が必要である。
■Key Points
・2021年3月期の業績(従来連結基準)は増収ながら減益となり、期初見込み値を若干下回る着地
・海外での株式売却が進捗したものの、予定していた株式売却の期ずれ等が未達となった要因
・新たな3ヶ年の中期経営計画では、前中計の投資方針をさらに推し進めるとともに、SDGsを強く意識した投資活動に取り組む方向性
・2022年3月期の業績(従来連結基準)については減収ながら株式の売却益により大幅な増益を見込んでいる
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<NB>