ポート Research Memo(6):独自の戦略やM&Aを強みとして、売上高のCAGR30%以上を目指す(1)
[21/06/11]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略
1. 中長期の成長戦略
ポート<7047>は「株主価値の最大化」を使命と捉えており、長期的な目標としてフリー・キャッシュ・フローの最大化を目指している。これに向けては、短期的には売上高とその成長率の最大化が重要であると考えており、中長期経営計画における具体的な数値目標としては、今後10年間で売上高のCAGR30%以上を掲げている。売上高を伸ばすためには各領域のマッチング総数を増やす必要があるが、そのための要素として「会員数」「顧客数」「それぞれのマッチング機能」を想定しており、コンテンツ投資(会員数)、アカウント投資(顧客数)、システム投資(マッチング数)を推進することで達成を図る。
なお、中長期経営計画において積極的な投資方針が掲げられているが、同社では投資を定期的に行うことで事業拡大をさらに進めていくことを大きな指標と捉えている。同社が扱う情報はビッグデータとして社内にストックされていき、ビッグデータに情報が集まれば集まるほどマッチング率向上に寄与していくことが予想される。同社の収益体系はストック収益型モデルであるが、同社ではコンテンツ自体もストックと解釈しており、コンテンツ作成投資などを積極的に行っている。これらの投資をとおして同社は、展開する業界で販促活動のデジタル化、サプライチェーンの最適化を図り、「マッチングDX」の価値をユーザーとサプライヤーに提供していく。従来進んでいたデジタルシフトの流れがコロナ禍をきっかけに加速しており、同社の効率的マッチングに対する注目はユーザー側、サプライヤー側両面で高まりやすい状況だと弊社では考えている。
既述のとおり、同社はストック収益型のビジネスモデルであり、負債を効率的に活用することで収益性の改善を目指している。自己資本比率は低下するものの、レバレッジで収益性が高まれば懸念する必要はないと弊社では考えている。コロナ禍によってDX推進が加速するなか、開発費用が増加しても時流に乗った事業を展開していることもあり、中長期的な成長性にも期待ができる。
また、昨年度のM&A等のため有利子負債残高は増加しているものの、同社が2022年3月期から公開している有利子負債/調整後EBITDA倍率を考慮すると、潜在的な収益力に対し余力ある有利子負債残高となっているものと認識でき、財務健全性指標も良好である。
市場展望も堅調で、インターネットメディア業界ではモバイルにおける運用型広告、動画広告の成長が加速している。2021年2月に電通グループ<4324>が発表した「2020年日本の広告費」によると、インターネット広告費(媒体費+制作費+物販系ECプラットフォーム広告費)の市場は前年同期比105.9%増の2兆2,290億円となった。加えて、コロナ禍に伴い在宅時間が増加するなかでインターネット広告の需要はさらに膨らむと見られることから、アフターコロナにおいても堅調な伸びを見せると弊社では予想している。
2. M&A戦略
同社は業績拡大に向けた施策として、新規領域への参入及びM&Aを掲げている。同社の事業(サービス領域)拡大の仕方は、一般的な事業会社と方針が異なり、新メディアの開発やM&Aを通じて事業を横展開している。各領域は就職活動や住宅リフォーム、カードローンなどジャンルが異なり、通常の事業会社であればシナジーを生むことは難しい。しかし、同社の場合は明確な参入基準を設けることで、シナジーや収益拡大の加速へとつなげている。
まず、既述のとおり、同社はデジタル化の遅れている領域をターゲットとしており、代理指標としてはEC化率を挙げている。巨大な市場規模であるにもかかわらずEC化率が低い業界として同社は、医療や保険、住居関連、教育等を挙げている。次に、同社の明確な参入基準を当てはめ、選別を図る。基準としては「普遍性が高い」「ユーザーの経験頻度が少ない」「選択肢が多い(顧客が多い)」「会員型モデル」「成果報酬型マッチングモデル」を挙げており、2020年に買収したリフォーム領域はおおよそ基準に当てはまっている。
M&A後は、コンテンツ投資、システム投資、アカウント投資を行うことで、大きな成長の実現を目指していく。コンテンツ投資では、コンテンツマーケティングによるアクセス強化やSEO対策を行うことで検索順位の改善を行う。システム投資では、サイト設計及びUI/UXの改善や、レコメンドによるマッチング率の改善を行う。アカウント投資では、営業体制の構築やクライアント向けのプロモーションの強化を行う。
もう1つのシナジーとしては、領域横断のクロスセルを想定している。各領域において獲得した会員ユーザーの基盤を生かし、追加獲得費用の発生しない送客を通じたハイマージン収益を獲得する。
これらのM&A戦略に基づき、2020年6月に「就活会議」、同年7月に「外壁塗装の窓口」を取得した。合計で計上したのれんは1,913百万円と大きな金額ではあるものの、就職領域、リフォーム領域ともに足元の業績は好調だ。市場も中長期的に成長すると予想されており、継続的に業績に貢献していくと弊社では予想する。
また同社は、中期経営計画として2023年3月期に連結売上高100億円以上、連結EBITDA20億円以上を目指している。積極的にM&Aを行っている同社の売上高はオーガニック成長をベースとしており、売上高の約8割は既存事業からなる。新規事業は戦略的に練られたM&Aによって展開し、既存事業はコンテンツ投資やシステム投資を通して拡大していく方針だ。投資を通じて拡大していくコンテンツやビッグデータなどのストック資産も貢献するため、同社のマッチングDXサービスへの引き合いは今後も強まると弊社は予想する。また、同社は業績予想に対して売上高、営業利益ともに高い達成率を実現しており、上場後3期連続で上方修正していることにも注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 石津大希)
<NB>
1. 中長期の成長戦略
ポート<7047>は「株主価値の最大化」を使命と捉えており、長期的な目標としてフリー・キャッシュ・フローの最大化を目指している。これに向けては、短期的には売上高とその成長率の最大化が重要であると考えており、中長期経営計画における具体的な数値目標としては、今後10年間で売上高のCAGR30%以上を掲げている。売上高を伸ばすためには各領域のマッチング総数を増やす必要があるが、そのための要素として「会員数」「顧客数」「それぞれのマッチング機能」を想定しており、コンテンツ投資(会員数)、アカウント投資(顧客数)、システム投資(マッチング数)を推進することで達成を図る。
なお、中長期経営計画において積極的な投資方針が掲げられているが、同社では投資を定期的に行うことで事業拡大をさらに進めていくことを大きな指標と捉えている。同社が扱う情報はビッグデータとして社内にストックされていき、ビッグデータに情報が集まれば集まるほどマッチング率向上に寄与していくことが予想される。同社の収益体系はストック収益型モデルであるが、同社ではコンテンツ自体もストックと解釈しており、コンテンツ作成投資などを積極的に行っている。これらの投資をとおして同社は、展開する業界で販促活動のデジタル化、サプライチェーンの最適化を図り、「マッチングDX」の価値をユーザーとサプライヤーに提供していく。従来進んでいたデジタルシフトの流れがコロナ禍をきっかけに加速しており、同社の効率的マッチングに対する注目はユーザー側、サプライヤー側両面で高まりやすい状況だと弊社では考えている。
既述のとおり、同社はストック収益型のビジネスモデルであり、負債を効率的に活用することで収益性の改善を目指している。自己資本比率は低下するものの、レバレッジで収益性が高まれば懸念する必要はないと弊社では考えている。コロナ禍によってDX推進が加速するなか、開発費用が増加しても時流に乗った事業を展開していることもあり、中長期的な成長性にも期待ができる。
また、昨年度のM&A等のため有利子負債残高は増加しているものの、同社が2022年3月期から公開している有利子負債/調整後EBITDA倍率を考慮すると、潜在的な収益力に対し余力ある有利子負債残高となっているものと認識でき、財務健全性指標も良好である。
市場展望も堅調で、インターネットメディア業界ではモバイルにおける運用型広告、動画広告の成長が加速している。2021年2月に電通グループ<4324>が発表した「2020年日本の広告費」によると、インターネット広告費(媒体費+制作費+物販系ECプラットフォーム広告費)の市場は前年同期比105.9%増の2兆2,290億円となった。加えて、コロナ禍に伴い在宅時間が増加するなかでインターネット広告の需要はさらに膨らむと見られることから、アフターコロナにおいても堅調な伸びを見せると弊社では予想している。
2. M&A戦略
同社は業績拡大に向けた施策として、新規領域への参入及びM&Aを掲げている。同社の事業(サービス領域)拡大の仕方は、一般的な事業会社と方針が異なり、新メディアの開発やM&Aを通じて事業を横展開している。各領域は就職活動や住宅リフォーム、カードローンなどジャンルが異なり、通常の事業会社であればシナジーを生むことは難しい。しかし、同社の場合は明確な参入基準を設けることで、シナジーや収益拡大の加速へとつなげている。
まず、既述のとおり、同社はデジタル化の遅れている領域をターゲットとしており、代理指標としてはEC化率を挙げている。巨大な市場規模であるにもかかわらずEC化率が低い業界として同社は、医療や保険、住居関連、教育等を挙げている。次に、同社の明確な参入基準を当てはめ、選別を図る。基準としては「普遍性が高い」「ユーザーの経験頻度が少ない」「選択肢が多い(顧客が多い)」「会員型モデル」「成果報酬型マッチングモデル」を挙げており、2020年に買収したリフォーム領域はおおよそ基準に当てはまっている。
M&A後は、コンテンツ投資、システム投資、アカウント投資を行うことで、大きな成長の実現を目指していく。コンテンツ投資では、コンテンツマーケティングによるアクセス強化やSEO対策を行うことで検索順位の改善を行う。システム投資では、サイト設計及びUI/UXの改善や、レコメンドによるマッチング率の改善を行う。アカウント投資では、営業体制の構築やクライアント向けのプロモーションの強化を行う。
もう1つのシナジーとしては、領域横断のクロスセルを想定している。各領域において獲得した会員ユーザーの基盤を生かし、追加獲得費用の発生しない送客を通じたハイマージン収益を獲得する。
これらのM&A戦略に基づき、2020年6月に「就活会議」、同年7月に「外壁塗装の窓口」を取得した。合計で計上したのれんは1,913百万円と大きな金額ではあるものの、就職領域、リフォーム領域ともに足元の業績は好調だ。市場も中長期的に成長すると予想されており、継続的に業績に貢献していくと弊社では予想する。
また同社は、中期経営計画として2023年3月期に連結売上高100億円以上、連結EBITDA20億円以上を目指している。積極的にM&Aを行っている同社の売上高はオーガニック成長をベースとしており、売上高の約8割は既存事業からなる。新規事業は戦略的に練られたM&Aによって展開し、既存事業はコンテンツ投資やシステム投資を通して拡大していく方針だ。投資を通じて拡大していくコンテンツやビッグデータなどのストック資産も貢献するため、同社のマッチングDXサービスへの引き合いは今後も強まると弊社は予想する。また、同社は業績予想に対して売上高、営業利益ともに高い達成率を実現しており、上場後3期連続で上方修正していることにも注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 石津大希)
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