ハウスコム Research Memo(3):コロナ禍の影響を受けるも、財務内容は盤石で今後の投資や株主還元への懸念なし
[21/06/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2021年3月期の連結業績概要
ハウスコム<3275>の2021年3月期の連結業績は、営業収益が12,299百万円(前期比5.5%減)、営業利益が351百万円(同65.4%減)、経常利益が576百万円(同51.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が312百万円(同53.6%減)と、どの項目も従来計画を上振れた着地となった。
コロナ禍や緊急事態宣言発出は転居需要にも影響し、年間の賃貸仲介件数は前期比6.0%減の72,279件となった。これを受け、仲介手数料をはじめ周辺商品販売・リフォーム収入など営業収益全般が低調となった。ただ、広告宣伝費をはじめとした費用面の見直しや、会議・研修等のオンライン化によるコスト低減に取り組んだことで減益幅は軽減された。
不動産関連事業の営業収益は10,757百万円(前期比7.8%減)、セグメント利益は1,962百万円(同17.0%減)となった。仲介件数の動向は、時期別の内訳として2020年4月〜6月は14,182件(前年同期比19.0%減)、同7月〜9月は17,906件(同0.3%減)、同10月〜12月は15,208件(同8.6%減)、2021年1月〜3月は24,983件(同0.9%増)となった。緊急事態宣言に伴う影響を大きく受けた後、転居需要の回復が見られた。しかし、2020年10月〜12月においては地域による動向差が顕著に表れて事業展開の中心である東京圏・中京圏を中心に地域市場全体の転居需要が低下した。引っ越しシーズンである2021年1月〜3月の繁忙期においては諸施策の効果もあり、前年同期を上回った。
施工関連事業の営業収益は1,542百万円(前期比14.9%増)、セグメント利益は78百万円(同53.0%減)となった。営業収益については、リフォーム事業の収益が社会情勢の影響によって減少したものの、2019年7月に子会社化したエスケイビル建材(株)の業績が連結対象として1年間分(前期は4ヶ月分)追加されたことから、増収となったが、利益面では前期を割り込んだ。
なお、連結子会社である宅都の連結損益計算書への業績寄与は2022年3月期第1四半期から開始する予定であり、2021年3月期には反映されていない。
2. 財務状況と経営指標
2021年3月期末の総資産は前期末比9百万円増の9,812百万円となった。流動資産は、現預金が1,769百万円減少したことから、前期末比1,740百万円減の4,976百万円となった。固定資産は、ソフトウェア等の無形固定資産の1,371百万円増を主因に、前期末比1,750百万円増の4,835百万円となった。負債について、流動負債は未払消費税等が164百万円減少したことから前期比末比で127百万円減の2,528百万円となった。固定負債は、資産除去債務の50百万円増を主因に前期末比で84百万円増の771百万円となった。純資産は、自己株式の19百万円減を主因に52百万円増の6,512百万円となった。
同社の現預金は4,170百万円と、単純月商1,025百万円(2021年3月期の営業収益12,299百万円を12で割ったもの)の4倍あり、事業継続性になんら懸念はないと弊社は見る。借入金等の有利子負債がなく、自己資本比率は66.1%と高水準なため、コロナ禍動向の見通しが立てづらい足元の状況下、不確実性に柔軟に対応できる財務内容となっている。そのほか、後に詳述する事業拡大・効率化に向けた投資や、株主還元用の原資も十分確保されており、投資・収益計上・株主還元のファイナンスサイクルは今後も順調に進展すると弊社は考える。
なお、同社は2021年5月21日に上限70,000株(発行済み株式総数(自己株式を除く)の0.9%)、110百万円の自己株式の取得の計画も発表した。取得期間は2021年5月24日〜11月30日となっている。5月24日〜5月31日には5,800株、6.9百万円を市場にて買い付けた。取締役と従業員へのインセンティブプランに活用するためで、資本政策とコーポレート・ガバナンスの面から業績拡大を図る姿勢が確認できた。長期的成長においてポジティブに作用すると弊社は評価する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 石津大希)
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1. 2021年3月期の連結業績概要
ハウスコム<3275>の2021年3月期の連結業績は、営業収益が12,299百万円(前期比5.5%減)、営業利益が351百万円(同65.4%減)、経常利益が576百万円(同51.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益が312百万円(同53.6%減)と、どの項目も従来計画を上振れた着地となった。
コロナ禍や緊急事態宣言発出は転居需要にも影響し、年間の賃貸仲介件数は前期比6.0%減の72,279件となった。これを受け、仲介手数料をはじめ周辺商品販売・リフォーム収入など営業収益全般が低調となった。ただ、広告宣伝費をはじめとした費用面の見直しや、会議・研修等のオンライン化によるコスト低減に取り組んだことで減益幅は軽減された。
不動産関連事業の営業収益は10,757百万円(前期比7.8%減)、セグメント利益は1,962百万円(同17.0%減)となった。仲介件数の動向は、時期別の内訳として2020年4月〜6月は14,182件(前年同期比19.0%減)、同7月〜9月は17,906件(同0.3%減)、同10月〜12月は15,208件(同8.6%減)、2021年1月〜3月は24,983件(同0.9%増)となった。緊急事態宣言に伴う影響を大きく受けた後、転居需要の回復が見られた。しかし、2020年10月〜12月においては地域による動向差が顕著に表れて事業展開の中心である東京圏・中京圏を中心に地域市場全体の転居需要が低下した。引っ越しシーズンである2021年1月〜3月の繁忙期においては諸施策の効果もあり、前年同期を上回った。
施工関連事業の営業収益は1,542百万円(前期比14.9%増)、セグメント利益は78百万円(同53.0%減)となった。営業収益については、リフォーム事業の収益が社会情勢の影響によって減少したものの、2019年7月に子会社化したエスケイビル建材(株)の業績が連結対象として1年間分(前期は4ヶ月分)追加されたことから、増収となったが、利益面では前期を割り込んだ。
なお、連結子会社である宅都の連結損益計算書への業績寄与は2022年3月期第1四半期から開始する予定であり、2021年3月期には反映されていない。
2. 財務状況と経営指標
2021年3月期末の総資産は前期末比9百万円増の9,812百万円となった。流動資産は、現預金が1,769百万円減少したことから、前期末比1,740百万円減の4,976百万円となった。固定資産は、ソフトウェア等の無形固定資産の1,371百万円増を主因に、前期末比1,750百万円増の4,835百万円となった。負債について、流動負債は未払消費税等が164百万円減少したことから前期比末比で127百万円減の2,528百万円となった。固定負債は、資産除去債務の50百万円増を主因に前期末比で84百万円増の771百万円となった。純資産は、自己株式の19百万円減を主因に52百万円増の6,512百万円となった。
同社の現預金は4,170百万円と、単純月商1,025百万円(2021年3月期の営業収益12,299百万円を12で割ったもの)の4倍あり、事業継続性になんら懸念はないと弊社は見る。借入金等の有利子負債がなく、自己資本比率は66.1%と高水準なため、コロナ禍動向の見通しが立てづらい足元の状況下、不確実性に柔軟に対応できる財務内容となっている。そのほか、後に詳述する事業拡大・効率化に向けた投資や、株主還元用の原資も十分確保されており、投資・収益計上・株主還元のファイナンスサイクルは今後も順調に進展すると弊社は考える。
なお、同社は2021年5月21日に上限70,000株(発行済み株式総数(自己株式を除く)の0.9%)、110百万円の自己株式の取得の計画も発表した。取得期間は2021年5月24日〜11月30日となっている。5月24日〜5月31日には5,800株、6.9百万円を市場にて買い付けた。取締役と従業員へのインセンティブプランに活用するためで、資本政策とコーポレート・ガバナンスの面から業績拡大を図る姿勢が確認できた。長期的成長においてポジティブに作用すると弊社は評価する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 石津大希)
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