クイック Research Memo(3):主力の人材サービス事業とIT・ネット関連事業が業績を下支え(1)
[21/06/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2021年3月期の業績動向
クイック<4318>の2021年3月期の業績は、売上高20,089百万円(前期比4.5%減)、営業利益1,867百万円(同36.3%減)、経常利益2,124百万円(同29.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,464百万円(同29.4%減)となった。コロナ禍で悪化した雇用情勢は、2021年3月には有効求人倍率(季節調整値)が1.10倍、完全失業率(季節調整値)が2.6%と、2020年10月を底に緩やかながら回復の兆しを見せている。また、ワクチン接種の開始によりコロナ禍が徐々に収束に向かうとの見方もある。しかしながら、一部地域にまん延防止等重点措置や緊急事態宣言が発出するなど再拡大への懸念は解消されておらず、国内景気や雇用情勢の先行きは依然として不透明な状況が続いている。こうした環境のなかで同社は、コロナ禍における企業の人材ニーズに沿った多様なサービスを提供することに加え、M&Aを含めた新事業領域の開拓やグループ内連携の強化、営業体制の再構築などに取り組むことで、他社との差別化や顧客満足度の向上、生産性の改善などを推進した結果、収益の落ち込みは限定的なものとなった。
事業別の業績では、主力の人材サービス事業が売上高13,258百万円(前期比0.3%増)、営業利益2,215百万円(同10.9%減)と、専門職に対する顧客企業の採用ニーズを捉えたことで底堅く推移した。そのほかでは、リクルーティング事業が売上高2,862百万円(同23.4%減)、営業利益188百万円(同79.1%減)、情報出版事業が売上高1,935百万円(同7.5%減)、営業利益90百万円(同54.2%減)、IT・ネット関連事業は2020年3月期下期からグループ入りしたクロノスの業績が2021年3月期は通期で上乗せされたことも寄与して売上高1,268百万円(同27.7%増)、営業利益300百万円(同52.5%増)、海外事業が売上高764百万円(同23.3%減)、営業損失108百万円(前期は18百万円の損失)となった。なお、第3四半期に上方修正した業績予想から売上高で589百万円、営業利益で114百万円上振れて着地しているが、これは、人材サービス事業、リクルーティング事業及び情報出版事業の業績が計画を上回ったことが要因である。具体的には、同社が強みを持つ医療・福祉や建設、半導体分野での専門職の採用ニーズが想定以上に高かったこと、コロナ禍でも好調なITサービス企業や春先のイベント集客を検討している企業で販促活動を活発化する動きが見られたことが寄与した。
人材サービス事業の人材紹介を取り巻く事業環境は、コロナ禍により一部顧客企業で採用マインドの低下や採用活動の延期・中断等の動きが見られたが、世界的なデジタル化の潮流を背景に半導体業界で旺盛な採用ニーズが継続した。また、その他の業界でも下期に向けて採用活動を再開させる企業が徐々に増え、特にコロナ禍の長期化に伴う医療体制のひっ迫を背景とした看護師など専門職の採用ニーズが引き続き強くなっている。こうした事業環境のなかで、注力分野の絞り込みや営業体制の再構築、求人企業及び転職希望者との面談強化など細やかな対応に取り組んだ結果、一般企業向け専門職・技術職の人材紹介はほぼ横ばいで推移し、病院や介護施設などを対象とした看護師や保育士の紹介は順調に拡大した。人材派遣・紹介予定派遣・業務請負等では、看護師派遣で既存派遣スタッフの契約継続促進、新規派遣先の開拓、登録者との面談強化など進めたことで業績は拡大した。また、保育士派遣では、「ほいとも」のリニューアルや登録者獲得のためのプロモーション強化、神戸地区へのサービスエリア拡大、細やかな登録者対応などを進めたことで業績は堅調に推移した。一方、その他分野の人材派遣については、IT・Web関連など一部の職種を除いて厳しい状況が継続した。
リクルーティング事業では、新卒採用領域において、「リクナビ」の合同企業説明会が2020年8月まで全面中止になったうえ、11月及び12月に予定していた大都市圏での大規模合同企業説明会も中止となり、新卒関連イベントの取扱高が大きく減少した。また、インターンシップサイトの広告取り扱いは回復しているものの、2021年2月に販売開始した新卒採用広告において競合メディアとの競争が激化した。また、中途採用領域では、主要顧客である大手派遣会社や飲食・販売・サービス業などで採用ニーズが大きく後退した。一方、「Indeed」は、採用ニーズが旺盛な医療・介護・物流分野などを中心に引き続き好調に推移したほか、正社員や派遣登録スタッフ、アルバイト・パート募集の求人広告の取扱高も改善が続いた。新卒採用戦略構築のためのコンサルティングやオンラインによるインターンシップの企画提案、採用サイト作成といった顧客企業の採用活動を支援するサービスは、コロナ禍においても拡大した。
情報出版事業では、主力の生活情報誌が、政府による観光需要喚起策「Go Toトラベル」の停止や2021年1月の北陸地方の大雪などの影響により苦戦したものの、住宅イベントなど季節性の高い広告の取り扱いを強化したことに加え、金沢及び富山で特大号を発行したこともあり、業績は改善した。ポスティングサービスについても、大雪の影響などを受けたものの、住宅やスクール関連の広告など季節性の高いチラシに対するニーズが高まったことで回復傾向を示した。一方、「Indeed」の取扱高が総じて堅調に推移したほか、コンシェルジュサービスもIT関連職種の転職支援を強化したことで人材紹介が伸び、事業全体の業績を下支えした。
IT・ネット関連事業のうち、「日本の人事部」では、主要顧客である人材採用・人材育成関連企業の業況は引き続き厳しいものの、オンラインによる販売促進に対しては積極的な企業が多く、「日本の人事部」会員へ向けたメール広告等の取り扱いが増えたことから、広告収入が堅調に推移した。さらに、2020年5月及び11月にオンラインにて開催した人事関連担当者向けイベント「日本の人事部 HRカンファレンス」は、出展社数が増加し、年間参加者数は過去最高を更新した。オンライン化は利益面でも効果があり、会場費用などのコスト削減により事業全体の利益を押し上げた。システム開発分野では、開発プロジェクトの延期や見送りが相次ぐなか、既存案件の追加開発やAI関連の新規案件の受注強化に取り組んだことで業績が改善に向かった。ラーニング分野では、対面型集合研修の開催を見送る企業もあったものの、大手企業への営業強化に加え、AI・DX関連セミナーの開催、新卒・中途社員向け個別研修の受注を強化したことで業績は拡大した。
海外事業では、コロナ禍により各国でロックダウンや外出規制、入国規制など厳しい規制が行われた。このため、現地ニーズに即した営業、セミナーなどのオンライン化、採用・研修ニーズの掘り起こし、好調業種への注力などを推進した。厳しいロックダウンを実施した英国では、コロナ禍を機に帰国を考える転職希望者等を対象とした欧州企業への国際間の転職支援「クロスボーダーリクルートメント」が引き続き好調に推移した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 2021年3月期の業績動向
クイック<4318>の2021年3月期の業績は、売上高20,089百万円(前期比4.5%減)、営業利益1,867百万円(同36.3%減)、経常利益2,124百万円(同29.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,464百万円(同29.4%減)となった。コロナ禍で悪化した雇用情勢は、2021年3月には有効求人倍率(季節調整値)が1.10倍、完全失業率(季節調整値)が2.6%と、2020年10月を底に緩やかながら回復の兆しを見せている。また、ワクチン接種の開始によりコロナ禍が徐々に収束に向かうとの見方もある。しかしながら、一部地域にまん延防止等重点措置や緊急事態宣言が発出するなど再拡大への懸念は解消されておらず、国内景気や雇用情勢の先行きは依然として不透明な状況が続いている。こうした環境のなかで同社は、コロナ禍における企業の人材ニーズに沿った多様なサービスを提供することに加え、M&Aを含めた新事業領域の開拓やグループ内連携の強化、営業体制の再構築などに取り組むことで、他社との差別化や顧客満足度の向上、生産性の改善などを推進した結果、収益の落ち込みは限定的なものとなった。
事業別の業績では、主力の人材サービス事業が売上高13,258百万円(前期比0.3%増)、営業利益2,215百万円(同10.9%減)と、専門職に対する顧客企業の採用ニーズを捉えたことで底堅く推移した。そのほかでは、リクルーティング事業が売上高2,862百万円(同23.4%減)、営業利益188百万円(同79.1%減)、情報出版事業が売上高1,935百万円(同7.5%減)、営業利益90百万円(同54.2%減)、IT・ネット関連事業は2020年3月期下期からグループ入りしたクロノスの業績が2021年3月期は通期で上乗せされたことも寄与して売上高1,268百万円(同27.7%増)、営業利益300百万円(同52.5%増)、海外事業が売上高764百万円(同23.3%減)、営業損失108百万円(前期は18百万円の損失)となった。なお、第3四半期に上方修正した業績予想から売上高で589百万円、営業利益で114百万円上振れて着地しているが、これは、人材サービス事業、リクルーティング事業及び情報出版事業の業績が計画を上回ったことが要因である。具体的には、同社が強みを持つ医療・福祉や建設、半導体分野での専門職の採用ニーズが想定以上に高かったこと、コロナ禍でも好調なITサービス企業や春先のイベント集客を検討している企業で販促活動を活発化する動きが見られたことが寄与した。
人材サービス事業の人材紹介を取り巻く事業環境は、コロナ禍により一部顧客企業で採用マインドの低下や採用活動の延期・中断等の動きが見られたが、世界的なデジタル化の潮流を背景に半導体業界で旺盛な採用ニーズが継続した。また、その他の業界でも下期に向けて採用活動を再開させる企業が徐々に増え、特にコロナ禍の長期化に伴う医療体制のひっ迫を背景とした看護師など専門職の採用ニーズが引き続き強くなっている。こうした事業環境のなかで、注力分野の絞り込みや営業体制の再構築、求人企業及び転職希望者との面談強化など細やかな対応に取り組んだ結果、一般企業向け専門職・技術職の人材紹介はほぼ横ばいで推移し、病院や介護施設などを対象とした看護師や保育士の紹介は順調に拡大した。人材派遣・紹介予定派遣・業務請負等では、看護師派遣で既存派遣スタッフの契約継続促進、新規派遣先の開拓、登録者との面談強化など進めたことで業績は拡大した。また、保育士派遣では、「ほいとも」のリニューアルや登録者獲得のためのプロモーション強化、神戸地区へのサービスエリア拡大、細やかな登録者対応などを進めたことで業績は堅調に推移した。一方、その他分野の人材派遣については、IT・Web関連など一部の職種を除いて厳しい状況が継続した。
リクルーティング事業では、新卒採用領域において、「リクナビ」の合同企業説明会が2020年8月まで全面中止になったうえ、11月及び12月に予定していた大都市圏での大規模合同企業説明会も中止となり、新卒関連イベントの取扱高が大きく減少した。また、インターンシップサイトの広告取り扱いは回復しているものの、2021年2月に販売開始した新卒採用広告において競合メディアとの競争が激化した。また、中途採用領域では、主要顧客である大手派遣会社や飲食・販売・サービス業などで採用ニーズが大きく後退した。一方、「Indeed」は、採用ニーズが旺盛な医療・介護・物流分野などを中心に引き続き好調に推移したほか、正社員や派遣登録スタッフ、アルバイト・パート募集の求人広告の取扱高も改善が続いた。新卒採用戦略構築のためのコンサルティングやオンラインによるインターンシップの企画提案、採用サイト作成といった顧客企業の採用活動を支援するサービスは、コロナ禍においても拡大した。
情報出版事業では、主力の生活情報誌が、政府による観光需要喚起策「Go Toトラベル」の停止や2021年1月の北陸地方の大雪などの影響により苦戦したものの、住宅イベントなど季節性の高い広告の取り扱いを強化したことに加え、金沢及び富山で特大号を発行したこともあり、業績は改善した。ポスティングサービスについても、大雪の影響などを受けたものの、住宅やスクール関連の広告など季節性の高いチラシに対するニーズが高まったことで回復傾向を示した。一方、「Indeed」の取扱高が総じて堅調に推移したほか、コンシェルジュサービスもIT関連職種の転職支援を強化したことで人材紹介が伸び、事業全体の業績を下支えした。
IT・ネット関連事業のうち、「日本の人事部」では、主要顧客である人材採用・人材育成関連企業の業況は引き続き厳しいものの、オンラインによる販売促進に対しては積極的な企業が多く、「日本の人事部」会員へ向けたメール広告等の取り扱いが増えたことから、広告収入が堅調に推移した。さらに、2020年5月及び11月にオンラインにて開催した人事関連担当者向けイベント「日本の人事部 HRカンファレンス」は、出展社数が増加し、年間参加者数は過去最高を更新した。オンライン化は利益面でも効果があり、会場費用などのコスト削減により事業全体の利益を押し上げた。システム開発分野では、開発プロジェクトの延期や見送りが相次ぐなか、既存案件の追加開発やAI関連の新規案件の受注強化に取り組んだことで業績が改善に向かった。ラーニング分野では、対面型集合研修の開催を見送る企業もあったものの、大手企業への営業強化に加え、AI・DX関連セミナーの開催、新卒・中途社員向け個別研修の受注を強化したことで業績は拡大した。
海外事業では、コロナ禍により各国でロックダウンや外出規制、入国規制など厳しい規制が行われた。このため、現地ニーズに即した営業、セミナーなどのオンライン化、採用・研修ニーズの掘り起こし、好調業種への注力などを推進した。厳しいロックダウンを実施した英国では、コロナ禍を機に帰国を考える転職希望者等を対象とした欧州企業への国際間の転職支援「クロスボーダーリクルートメント」が引き続き好調に推移した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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