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オークファン Research Memo(6):2021年9月期上期は大幅な増収増益を実現

注目トピックス 日本株
■決算概要

1. 2021年9月期上期の業績
オークファン<3674>の2021年9月期上期の業績は、売上高が前年同期比55.7%増の4,647百万円、営業利益が同868.6%増の791百万円、経常利益が同952.0%増の784百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が502百万円(前年同期は6百万円の利益)と、第1四半期における「インキュベーション事業」(ベンチャー投資に係る株式の一部売却)の寄与により大幅な増収増益となり、計画に対しても順調に進捗した。ただ、主力事業だけで見ると、売上高が前年同期比10.5%増の3,266百万円※1、営業利益が同85.9%減の13百万円※2と先行投資の影響等により、とりわけ利益面での出遅れが生じている。

※1 外部顧客への売上高のみで算出。
※2 調整値を含めた金額で算出。


売上高は、ベンチャー投資に係る株式の一部売却により「インキュベーション事業」が増収に大きく寄与した。一方、主力事業については、「商品流通プラットフォーム事業」がコロナ禍における巣ごもり消費等により堅調に推移したものの、「在庫価値ソリューション事業」が、新たに開始した在庫管理AI「zaicoban」の苦戦等により出遅れたことで、主力事業全体では計画をやや下回る状況となっているようだ。

利益面でも、「インキュベーション事業」が大幅な増益に寄与。ただ、第2四半期だけで見ると、1)営業投資有価証券の評価損の計上、2)成長性の高い「NETSEA」への先行投資の実施、3)「zaicoban」におけるソフトウェア資産の減損により、営業損失及び特別損失を計上しており、とりわけ主力事業においては計画を大きく下回る進捗となっている。もっとも、1)及び3)は一時的な費用の前倒しであるほか、2)については今後の流通高拡大や利益成長につながるものとして捉えることができる。

財務面では、「現金及び預金」等が増加したものの、「営業投資有価証券」の売却及び評価替え等により、総資産は前期末比24.2%減の10,143百万円と減少。一方、自己資本についても、「営業投資有価証券」の評価替えに伴う「その他有価証券評価差額金」の減少により同20.5%減の6,441百万円に縮小し、自己資本比率は63.5%(前期末は60.5%)と若干上昇した。

各事業の業績は以下のとおりである。

(1) 在庫価値ソリューション事業
売上高は前年同期比16.2%減の911百万円、セグメント利益は同19.5%減の177百万円と減収減益となった。コロナ禍の下、大手顧客のマーケティング費用の抑制的な動きにより新規受注に遅れが生じたことや、新たに開始した在庫管理AI「zaicoban」の大手向け導入にリードタイムを要したことが業績の下振れ要因となった。なお、「zaicoban」については、同社の強みとする中小・SMB向けに活用する戦略に変更するとともに、関連するソフトウェア資産の減損処理(特別損失)を実施している。一方、ビジネス利用アカウント数は毎月順調に増加しており、今後のSaaS型サービスへの寄与はもちろん、商品流通プラットフォーム(NETSEA・リバリュー)の流通高拡大に向けても、しっかりと基盤強化を図ることができた。

(2) 商品流通プラットフォーム事業
売上高は前年同期比25.9%増の2,440百万円、セグメント利益は同52.8%減の21百万円と増収減益となった。コロナ禍による社会情勢の変化をきっかけに、企業の在庫問題が深刻化するなかで、注力する「NETSEA」及び「リバリュー」がともに順調に伸長した。特に、第2四半期だけで見ると、「NETSEA」の流通額(コロナ特需である感染症対策グッズを除く、ReValueBtoBモール)は前年同期比141%と伸び、過去最高流通額(四半期ベース)を更新。また、「リバリュー」(バルク販売を除く)についても、流通額は同237%と大きく伸び、こちらも過去最高流通額(四半期ベース)を更新しており、コアとなる部分の流通高は成長軌道に乗ってきた。一方、利益面では、さらなる「NETSEA」の流通高最大化に向けて、営業・開発体制の強化及び積極的なプロモーションを実施したことから大幅な減益となった。

(3) インキュベーション事業
売上高は1,382百万円(前年同期は30百万円)、セグメント利益は777百万円(同11百万円の損失)と計画を上回る大幅な増収増益となった。2020年3月26日に東証マザーズに上場したサイバーセキュリティクラウド<4493>株式の一部売却が業績に大きく寄与したが、その点は想定内である。計画を上回ったのは他の複数銘柄を追加的に売却したことが理由である。一方、利益面では、第1四半期での株式売却益の獲得により大幅な増益となったものの、第2四半期だけで見ると、コロナ禍に伴う景気悪化の影響等を踏まえ、保有する未上場株式の減損処理を実施したことから、373百万円のセグメント損失を計上している。なお、2021年3月末の「営業投資有価証券(保有株式)」は約37.4億円※残っており、それに対応する「その他有価証券評価差額金(含み益)」は約22.8億円あることから、今後いかにその活用を図っていくのかが注目される。同社では、引き続き成長性の高い「NETSEA」及び「リバリュー」への積極投資を計画しており、「営業投資有価証券」の追加売却による資金捻出(回収)も検討しているようだ。

※そのうち約30億円はサイバーセキュリティクラウド株式(935,000株、持株比率10.08%)、残りは他の複数銘柄(未上場株)で構成されていると見られる。


2. (事業別)売上高の四半期推移
四半期推移を見ると、売上高全体では、「インキュベーション事業」の寄与により第1四半期に大きく拡大した。一方、主力事業だけで見ると、第1四半期、第2四半期ともに前年同期比を上回って推移しているものの、過去最高(四半期ベース)となった前期第4四半期(2020年7月-9月)と比較すると、季節性の影響があるとは言え、物足りなさは否めない。したがって、第3四半期以降の底上げをいかに図っていくのかが課題となっている。

3. 2021年9月期上期の総括
以上から、2021年9月期上期を総括すると、「インキュベーション事業」により業績全体では順調に進捗した一方、外部環境が追い風(在庫問題の深刻化、オフラインからオンラインへの流通構造の変化等)にあるなかで、主力事業については出遅れる状況(特に、利益面)となっており、その構図をどう評価するのかがポイントと言えるだろう。もっとも、主力事業における利益の下振れや特別損失(減損処理)の計上は、将来を見据えた先行投資や一時的な費用の前倒しによるものであり、今後の成長や収益力の確保に寄与する性質のものであるとの見方ができる。特に、「インキュベーション事業」で回収した資金を成長性の高い「商品流通プラットフォーム事業」への先行投資に振り向けるとともに、自治体との協業や出展企業の獲得、機動的な戦略変更(中小・SMB向け無料在庫診断レポートの導入等)などを推し進め、第2四半期における流通額が過去最高水準へ達したところは、今後に向けて明るい材料と言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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