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明豊ファシリ Research Memo(5):2021年3月期は営業利益、経常利益で過去最高を更新

注目トピックス 日本株
■業績動向

1. 2021年3月期の業績概要
明豊ファシリティワークス<1717>の2021年3月期の業績は、売上高で前期比2.6%減の4,240百万円、営業利益で同0.8%増の909百万円、経常利益で同0.5%増の910百万円、当期純利益で同3.0%減の620百万円となり、営業利益と経常利益は僅かながらも過去最高を連続更新した。また、2021年2月に発表した修正計画に対しても、売上高、各利益ともに上回って着地している。

コロナ禍において2020年4〜5月に政府から緊急事態宣言が発出されたことで、企業の投資意欲が一時的に冷え込み、引き合いから受注に至るまでの期間が一部で長期化するなどの影響もあったが、期後半にかけては受注プロジェクトも遅延することなく順調に進捗したことが前期比、並びに計画比での増益要因となった。

売上高が減収となった要因は、前期まで売上計上していたアットリスク方式の案件(前期実績で100百万円)がなくなったことによるもので、同社が管理する売上粗利益※ベースでは増収、過去最高を更新している。アットリスク方式の案件がなくなったことにより、売上総利益率も前期の52.6%から54.2%に上昇している。また、前期のピュアCM方式(マネージメントサービス収入)の売上総利益率は53.9%だったことから、ピュアCM方式の案件だけで見ても売上総利益率は0.3ポイントほど上昇したことになる。同社では自社開発システム(MHS、MPS等)に加えて、ここ数年はAI技術やRPA等も積極活用しており、付加価値労働生産性が上昇していることが要因と考えられる。

※売上粗利益は、売上高から社内コスト以外の原価(工事費等)を差し引いたもの。


販管費については前期比0.1%増とほぼ横ばい水準となった。テレワーク体制の導入により各種経費の削減が図られた。また、当期純利益は本社近隣にあった事務所の本社への統合費用として14百万円を特別損失として計上したことが減益要因となった。

分野別受注粗利益の構成比を見ると、オフィス分野が前期の26%から20%に、公共分野が27%から23%にそれぞれ低下した一方で、工場・研究所分野が9%から10%に、その他分野(鉄道、学校、病院等)が16%から26%に上昇した。オフィス分野についてはコロナ禍の影響で期の前半に顧客の投資マインドが冷え込んだことが影響した。また、公共分野については、建築プロジェクトよりもコロナ禍対応を優先する自治体が増えたことが影響したが、中期的には上昇トレンドが継続するとの見方に変わりない。一方で、工場・研究所分野は既存顧客からの継続受注や新規顧客からの受注が堅調に推移した。また、その他分野についてはJR東日本の品川開発プロジェクト※の継続受注や、琉球大学、東京大学など国立大学のCM業務、公立小中学校の空調設備更新に関連したCM業務などを受注したことが上昇要因となっている。

※品川開発プロジェクトとは、JR高輪ゲートウェイ駅西側に合計4棟の高層ビルと1棟の文化施設を建設し、新たな街区を開発するプロジェクト(2024年完成予定)で、総工費は約5,500億円と現在進行中の建設プロジェクトでは最大規模となり、同社にとっても過去最大級のプロジェクトとなる。2020年12月にプロジェクトエリア内で日本初の鉄道遺構「高輪築堤」が出土されている。


なお、公共分野に関しては基本的にプロポーザル方式※の案件のみ入札しており、その大半を落札している。公表された受注案件数は17件と前期の19件よりも若干減少したが、ここ数年でCM業務の導入メリットが認識されるようになり、需要は増加しているとの認識だ。

※プロポーザル方式とは、発注者が業務の委託先を選定する際に、入札を希望する事業者に対して目的物に対する企画を提案してもらい、その中から優れた提案を評価項目別にポイント化し、総合点数が最も高かった事業者を選定する入札方式。


2021年3月期に受注した案件で注目されるのは、経済産業省から2020年8月に受注した「令和2年度業務効率化や生産性向上を目的としたオフィス環境の導入に関する調査事業」だ。これは2020年1月に受注した「令和元年度産業経済研究委託事業」に続くプロジェクトとなる。前回のプロジェクトでは、経済産業省の現行オフィスにおける様々な課題・問題意識について調査・分析を行い、経済産業省が目指すべきオフィス環境及び働き方のコンセプトモデルの構築を支援した。今回受注したプロジェクトでは、前回構築したコンセプトモデルを踏まえつつ、テレワークやペーパーレスの推進などコロナ禍における社会的な働き方の変化を見据えて、新たなオフィス環境の実現と生産性向上に向けた多様な働き方への取り組みを具体化し、その実現に向けた計画を行うことを目的としたプロジェクトとなる。

さらに、2021年5月には「令和3年度デジタル行政に対応した本省庁舎執務環境整備に関する調査事業」を受注したことを発表している。これまで実施した調査結果等に基づき、経済産業省において執務環境整備事業を実施するプロジェクト全体のマネジメント、執務環境整備と働き方改革の推進を並行して取り組む手法の試行、執務環境整備事業における職員の働き方の変化等の定量的把握等の調査などを行い、令和4年度以降の執務環境整備の在り方の提案等を行う業務となっている。

経済産業省では現状、約4,000人の職員が勤務する本庁舎において、慢性的な会議室の不足や頻繁なレイアウト変更によるコストの増大、適切な文書管理・情報管理のためのさらなるペーパーレス化など、課題が山積している状況にあり、「働き方改革」も踏まえた先進的なオフィス構築のノウハウを蓄積する同社が受注したことも必然と言える。官公庁は民間企業よりもDX化が遅れていると言われており、菅政権でも新たにデジタル庁を創設するなど官公庁のDX化に対して積極的な姿勢を見せている。このため、今後は他の省庁でも「働き方改革」を踏まえたオフィス再構築の動きが期待され、実際にオフィス移転などの需要が発生した場合には、発注者支援業務の受注獲得につながる可能性がある。同社は難易度の高い大規模オフィスの竣工時同時入居プロジェクトなどを多く手掛けきた実績もあるだけに、今後の動向が注目される。

また、2017年に山形県米沢市から受注した「新庁舎建替事業管理支援業務」では自治体向けでは初となる設計施工一括発注(DB)方式をCM支援によって実施した案件で、同社は基本計画段階からプロジェクトに参画し、基本計画の策定と網羅性・妥当性のある総事業費を算出、設計・施工者の選定支援に携わり、DB事業者の技術力・企業努力を引き出すことで、当初提案した上限価格の80%の予算で発注し、地域振興につながる工事発注の実現につなげている。今後もこうした成功事例を参考にして、他の自治体でもCM業務の導入が一段と進むものと予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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