フォーバル Research Memo(1):2022年3月期売上高500億円、営業利益30億円予想
[21/06/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
フォーバル<8275>は、「中小・中堅企業の利益に貢献する次世代経営コンサルタント集団」を旗印に事業展開を行う。IP統合システム、情報セキュリティ、Web構築などの情報通信コンサルティングを得意とし、総合コンサルティング、海外進出、人材・教育、環境、事業承継などの経営コンサルティングなどを行う。従来は情報通信機器の卸売販売を主に行っていたが、2000年代半ばに大きな売上・利益減に直面し、アイコンサービスを主軸としたコンサルティング業態に転換した。情報化や経営改善、海外進出や事業承継など中小企業が抱える様々な課題を解決するユニークな企業である。中小企業においてもDXが喫緊の課題となっており、同社の役割がより重くなっている。
1. 事業概要
フォーバルビジネスグループが事業の柱である。同事業グループでは、中小企業向けに、IP統合システム、情報セキュリティ、Web構築などの情報通信コンサルティングのほか、総合コンサルティング、海外進出支援、人材・教育、環境、事業承継などの経営コンサルティングサービス、OA・ネットワーク機器の販売、サービスの取次ぎなどを手掛ける。同事業グループが行うコンサルティングの特色は5分野(情報通信、海外、環境、人材・教育、起業・事業承継)と3手法(売上拡大、業務効率改善、リスク回避)に整理される。主力サービスであるアイコンサービスは定期訪問と遠隔サポート・状態監視を組み合わせた効率的な支援が特徴である。サービス自体の粗利率が高く、端末(パソコン、タブレット、携帯電話、プリンター、コピー機など)やネットワークの状態監視から得られたビッグデータから様々な改善提案を行うことにより関連商材が拡販できるという副次的効果が大きい。結果として、アイコンサービスの売上高とフォーバルビジネスグループ及び同社全体の営業利益には高い相関性がある。最近、アイコンサービスの一環としてリリースされたサービスには、スマホから簡便かつ安価に勤怠管理を行えるクラウド型勤怠管理システム「IEYASU」や業務フローの見直し・マニュアル化を行い、ペーパレス化・標準化で業務の効率性を高めるコンサルティングサービス「PPLS(ププルス)」などがある。顧客件数と顧客単価の両方の伸びが重なり、アイコンサービス売上高は4,676百万円(前期比10.9%増)と順調に成長している。
2. 業績動向
2021年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比0.1%増の49,788百万円、営業利益が同19.0%減の2,616百万円、経常利益が同25.3%減の2,483百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同27.2%増の1,357百万円となった。売上高に関しては、緊急事態宣言が出された第1四半期に前年同四半期比6.7%減と落ち込んだが、第2四半期単独では同4.3%減、第3四半期単独では同3.8%増、第4四半期単独では同7.3%増と、回復傾向は顕著である。同社では新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)においても成長を持続するビジネスを多数保有していることが好材料である。フォーバルビジネスグループでは、アイコンサービスが顧客数・平均単価ともに堅調に推移、テレワーク環境の整備などの投資が活発であり、従来の事務機器やサーバー等への投資減少を補った。新たに連結子会社化した三好商会、えすみも業績に寄与。下半期には、中小企業向けの行政支援体制も整い、IT投資が活発化する傾向にあり、アドバイザーとしての同社の活躍の場が拡大した。フォーバルテレコムビジネスグループでは、ISPサービスが減少したが、新電力サービスや保険サービスが好調だった。営業利益に関しては、販管費において経費の削減に取り組んだことで前期比348百万円減少(前期比2.2%減)となったものの、売上総利益が同960百万円減少(同5.1%減)し、営業減益となった。売上総利益の減少要因としては、コロナ禍の自粛によって機器販売等が減少したこと(フォーバルビジネスグループ)や電力の仕入れ価格が一時的に高騰した影響(フォーバルテレコムビジネスグループ)が影響した。
2022年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比0.4%増の50,000百万円、営業利益が同14.6%増の3,000百万円、経常利益が同20.8%増の3,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同39.9%増の1,900百万円となり、堅調な増収と利益のV字回復を予想する。売上高に関しては、本来なら前年のコロナ禍からの回復期にあたるために増収幅が大きくなるところだが、ハードウェア販売ビジネスからストック型ビジネスへのシフトを一段と加速するために、売上高の伸びは限定的となった。コロナ禍の影響もあり、在宅ワークやペーパレス化の促進など中小企業のデジタル化が求められており、アイコンサービスおよびその派生メニューに注力したい考えだ。前期同様にアイコンサービスの件数および単価の向上に取り組む。一方で各利益に関しては2桁の伸びを予想する。前下半期に減益要因となったフォーバルテレコムビジネスグループの電力の仕入れ条件を見直したことで値上がりリスクを回避できる見通しだ。ストック型サービスへのシフトが進めば、おのずと利益はついてくる。弊社では、コロナ禍を契機にした中小企業におけるデジタル化への危機感やアイコンサービスのメニューの充実度、過去にも営業利益30億円を超えた実績もあることから、今期の利益目標は十分達成可能であると考えている。
3. 成長戦略
同社は、これまで中小企業の経営および情報化の支援を積み重ねてきており、顧客企業の満足度の高さからその支援の質には定評があった。2021年に入り、複数の第三者認証を取得し、名実ともに“中小企業向けのDX推進アドバイザーの第一人者”となっている。2021年3月に、経済産業省による「DX認定制度 認定事業者」に認定された。DX認定制度とは、ビジョンの策定や戦略・体制の整備などをすでに行い、DX推進の準備が整っている(DX-Ready)事業者を経済産業省が認定するものであり、国が策定した指針(情報処理システムの運用及び管理に関する指針、2020年5月告示)を踏まえ、優良な取組を行う事業者を申請に基づいて認定する。これまでに全国で25社(2021年3月末時点)が認定された。この認定を通して“中小企業DXアドバイザーの第一人者”としてのブランドがさらに向上することになる。
2021年4月には、経済産業省による「経営革新等支援機関」に認定された。「経営革新等支援機関」は、中小企業等経営強化法に基づき中小企業支援事業の担い手の多様化・活性化を図る目的で、専門性の高い支援を行う企業に資格を与えるもの。この資格により、同社の顧客企業への支援メニューが拡大する。「経営革新等支援機関」の関与が必要な国の中小企業施策は数多く、事業再構築補助金、先端設備等導入計画認定、事業承継補助金、中小企業経営力強化資金融資事業、経営力強化保証制度などがある。いずれも、経営改革への意欲の高い中小企業にとってはメリットの大きな制度であり、同社の支援メニューの充実につながる認証取得である。
4. 株主還元策
同社は、配当による株主への利益還元を重要な経営課題の1つとして認識している。配当金の決定に関しては、今後の事業計画や財務状況など、中長期的観点から内部留保と安定した成果配分、双方のバランスに配慮して配当金を決定するとしており、配当性向は公約していない。実績では、安定的な利益成長を背景に配当性向は30%前後からそれ以上を維持してきた。2021年3月期の1株当たり配当金は年間で26円(維持)、配当性向48.7%となった。2022年3月期は、配当金26円(維持)、配当性向35.0%を予想する。
■Key Points
・2021年3月期は、コロナ禍による第1四半期の出遅れを取り返し増収で着地。機器販売減少と電力仕入れ価格高騰により減益
・健全かつ安定した財務体質を維持。現金及び預金100億円超と潤沢
・2022年3月期売上高500億円、営業利益30億円予想。ハードウェア販売からストック型サービスへの一段の加速で増益を狙う
・「DX認定制度 認定事業者」、「経営革新等支援機関」などの第三者認定を取得し、名実ともに“中小企業DXアドバイザーの第一人者”へ
・2022年3月期は26円、配当性向35%を予想
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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フォーバル<8275>は、「中小・中堅企業の利益に貢献する次世代経営コンサルタント集団」を旗印に事業展開を行う。IP統合システム、情報セキュリティ、Web構築などの情報通信コンサルティングを得意とし、総合コンサルティング、海外進出、人材・教育、環境、事業承継などの経営コンサルティングなどを行う。従来は情報通信機器の卸売販売を主に行っていたが、2000年代半ばに大きな売上・利益減に直面し、アイコンサービスを主軸としたコンサルティング業態に転換した。情報化や経営改善、海外進出や事業承継など中小企業が抱える様々な課題を解決するユニークな企業である。中小企業においてもDXが喫緊の課題となっており、同社の役割がより重くなっている。
1. 事業概要
フォーバルビジネスグループが事業の柱である。同事業グループでは、中小企業向けに、IP統合システム、情報セキュリティ、Web構築などの情報通信コンサルティングのほか、総合コンサルティング、海外進出支援、人材・教育、環境、事業承継などの経営コンサルティングサービス、OA・ネットワーク機器の販売、サービスの取次ぎなどを手掛ける。同事業グループが行うコンサルティングの特色は5分野(情報通信、海外、環境、人材・教育、起業・事業承継)と3手法(売上拡大、業務効率改善、リスク回避)に整理される。主力サービスであるアイコンサービスは定期訪問と遠隔サポート・状態監視を組み合わせた効率的な支援が特徴である。サービス自体の粗利率が高く、端末(パソコン、タブレット、携帯電話、プリンター、コピー機など)やネットワークの状態監視から得られたビッグデータから様々な改善提案を行うことにより関連商材が拡販できるという副次的効果が大きい。結果として、アイコンサービスの売上高とフォーバルビジネスグループ及び同社全体の営業利益には高い相関性がある。最近、アイコンサービスの一環としてリリースされたサービスには、スマホから簡便かつ安価に勤怠管理を行えるクラウド型勤怠管理システム「IEYASU」や業務フローの見直し・マニュアル化を行い、ペーパレス化・標準化で業務の効率性を高めるコンサルティングサービス「PPLS(ププルス)」などがある。顧客件数と顧客単価の両方の伸びが重なり、アイコンサービス売上高は4,676百万円(前期比10.9%増)と順調に成長している。
2. 業績動向
2021年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比0.1%増の49,788百万円、営業利益が同19.0%減の2,616百万円、経常利益が同25.3%減の2,483百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同27.2%増の1,357百万円となった。売上高に関しては、緊急事態宣言が出された第1四半期に前年同四半期比6.7%減と落ち込んだが、第2四半期単独では同4.3%減、第3四半期単独では同3.8%増、第4四半期単独では同7.3%増と、回復傾向は顕著である。同社では新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)においても成長を持続するビジネスを多数保有していることが好材料である。フォーバルビジネスグループでは、アイコンサービスが顧客数・平均単価ともに堅調に推移、テレワーク環境の整備などの投資が活発であり、従来の事務機器やサーバー等への投資減少を補った。新たに連結子会社化した三好商会、えすみも業績に寄与。下半期には、中小企業向けの行政支援体制も整い、IT投資が活発化する傾向にあり、アドバイザーとしての同社の活躍の場が拡大した。フォーバルテレコムビジネスグループでは、ISPサービスが減少したが、新電力サービスや保険サービスが好調だった。営業利益に関しては、販管費において経費の削減に取り組んだことで前期比348百万円減少(前期比2.2%減)となったものの、売上総利益が同960百万円減少(同5.1%減)し、営業減益となった。売上総利益の減少要因としては、コロナ禍の自粛によって機器販売等が減少したこと(フォーバルビジネスグループ)や電力の仕入れ価格が一時的に高騰した影響(フォーバルテレコムビジネスグループ)が影響した。
2022年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比0.4%増の50,000百万円、営業利益が同14.6%増の3,000百万円、経常利益が同20.8%増の3,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同39.9%増の1,900百万円となり、堅調な増収と利益のV字回復を予想する。売上高に関しては、本来なら前年のコロナ禍からの回復期にあたるために増収幅が大きくなるところだが、ハードウェア販売ビジネスからストック型ビジネスへのシフトを一段と加速するために、売上高の伸びは限定的となった。コロナ禍の影響もあり、在宅ワークやペーパレス化の促進など中小企業のデジタル化が求められており、アイコンサービスおよびその派生メニューに注力したい考えだ。前期同様にアイコンサービスの件数および単価の向上に取り組む。一方で各利益に関しては2桁の伸びを予想する。前下半期に減益要因となったフォーバルテレコムビジネスグループの電力の仕入れ条件を見直したことで値上がりリスクを回避できる見通しだ。ストック型サービスへのシフトが進めば、おのずと利益はついてくる。弊社では、コロナ禍を契機にした中小企業におけるデジタル化への危機感やアイコンサービスのメニューの充実度、過去にも営業利益30億円を超えた実績もあることから、今期の利益目標は十分達成可能であると考えている。
3. 成長戦略
同社は、これまで中小企業の経営および情報化の支援を積み重ねてきており、顧客企業の満足度の高さからその支援の質には定評があった。2021年に入り、複数の第三者認証を取得し、名実ともに“中小企業向けのDX推進アドバイザーの第一人者”となっている。2021年3月に、経済産業省による「DX認定制度 認定事業者」に認定された。DX認定制度とは、ビジョンの策定や戦略・体制の整備などをすでに行い、DX推進の準備が整っている(DX-Ready)事業者を経済産業省が認定するものであり、国が策定した指針(情報処理システムの運用及び管理に関する指針、2020年5月告示)を踏まえ、優良な取組を行う事業者を申請に基づいて認定する。これまでに全国で25社(2021年3月末時点)が認定された。この認定を通して“中小企業DXアドバイザーの第一人者”としてのブランドがさらに向上することになる。
2021年4月には、経済産業省による「経営革新等支援機関」に認定された。「経営革新等支援機関」は、中小企業等経営強化法に基づき中小企業支援事業の担い手の多様化・活性化を図る目的で、専門性の高い支援を行う企業に資格を与えるもの。この資格により、同社の顧客企業への支援メニューが拡大する。「経営革新等支援機関」の関与が必要な国の中小企業施策は数多く、事業再構築補助金、先端設備等導入計画認定、事業承継補助金、中小企業経営力強化資金融資事業、経営力強化保証制度などがある。いずれも、経営改革への意欲の高い中小企業にとってはメリットの大きな制度であり、同社の支援メニューの充実につながる認証取得である。
4. 株主還元策
同社は、配当による株主への利益還元を重要な経営課題の1つとして認識している。配当金の決定に関しては、今後の事業計画や財務状況など、中長期的観点から内部留保と安定した成果配分、双方のバランスに配慮して配当金を決定するとしており、配当性向は公約していない。実績では、安定的な利益成長を背景に配当性向は30%前後からそれ以上を維持してきた。2021年3月期の1株当たり配当金は年間で26円(維持)、配当性向48.7%となった。2022年3月期は、配当金26円(維持)、配当性向35.0%を予想する。
■Key Points
・2021年3月期は、コロナ禍による第1四半期の出遅れを取り返し増収で着地。機器販売減少と電力仕入れ価格高騰により減益
・健全かつ安定した財務体質を維持。現金及び預金100億円超と潤沢
・2022年3月期売上高500億円、営業利益30億円予想。ハードウェア販売からストック型サービスへの一段の加速で増益を狙う
・「DX認定制度 認定事業者」、「経営革新等支援機関」などの第三者認定を取得し、名実ともに“中小企業DXアドバイザーの第一人者”へ
・2022年3月期は26円、配当性向35%を予想
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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