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安田倉庫 Research Memo(1):「長期ビジョン2030」の基本戦略に基づき、事業展開が順調に推進

注目トピックス 日本株
■要約

安田倉庫<9324>は、社歴100年を超える旧安田財閥系の総合物流企業である。国内外で保管、流通加工、輸配送などの総合物流サービスを展開していることに加え、オフィスビルの賃貸サービスなど不動産事業も行っている。物流拠点や所有不動産が東京や横浜を中心とする好立地にあることが強みで、首都圏を中心に北海道や関西、九州、北陸、そして中国・ASEANまでのネットワークを有する。また、メディカルやITキッティングなど顧客や商品特性に合わせてカスタマイズしたソリューションサービスも非常に特徴的で、同社の強みとなっている。物流事業と不動産事業の2021年3月期における事業別営業収益構成比は、物流事業86.4%、不動産事業13.6%であり、物流事業は成長事業、不動産事業は安定収益事業という位置付けになっている。

1. 長期ビジョン
同社は次の100年に向けて、事業体制の構築と更なる飛躍を目指す「長期ビジョン2030」を策定した。「長期ビジョン2030」の基本戦略に基づき、2021年3月期は物流倉庫の増強やメディカルサービスの充実などの施策を講じた。物流倉庫の増強としては、「東雲営業所(東京メディカルロジスティクスセンター)」「東雲営業所辰巳倉庫(東京メディカルロジスティクスセンターII)」「大阪営業所 南港倉庫」の新設のほか、大黒流通センターを増床した。メディカルサービスの充実としては、物流事業者として初めて医療機器修理業許可(修理区分:特管第一区分から特管第八区分まで)を取得し、医療機器の修理業務に参入するなど、高度なサービスをトータルに提供できるようになった。ほかにも本社移転による経営の効率化や、「DX(デジタルトランスフォーメーション)事業推進室」設置による物流事業のDX化も推進している。

2. 2021年3月期の業績概要
2021年3月期の業績は、営業収益47,709百万円(前期比2.3%増)、営業利益3,288百万円(同5.2%減)、修正予想値に対しては営業収益で1.5%増、営業利益で13.4%増となった。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)による厳しい状況のなか、各利益を上方修正し、前期比5.2%の営業減益にとどめたことは評価できる。物流事業では、コロナ禍の影響などにより荷動きが鈍かったものの下期に向けて改善が進んだこと、子会社の陸運料増加や倉庫施設の新設・拡張による保管料増加が寄与したことにより、増収増益となった。一方、業界全般で低迷が続く不動産事業は、既存施設の稼働率を維持したものの、施工工事の減少などの影響を受け、減収減益となった。

3. 2022年3月期の業績見通し
2022年3月期の業績見通しについては、営業収益51,500百万円(前期比7.9%増)、営業利益2,900百万円(同11.8%減)を見込んでいる。取引拡大や物流施設の拡充など事業基盤の強化を推進し、不動産事業では既存施設のメンテナンスや機能向上の推進による稼働率の維持・向上や保有不動産の再開発促進に努めるとしている。一方、利益面では、物流施設の拡充や既存施設の修繕、経営インフラの強化に伴う営業費用の増加などにより営業減益を見込んでいるものの、2021年3月期下期からの回復傾向を考慮すると、やや保守的な印象が強い。

4. 配当方針
同社では今後の事業展開に備えるため適正な利益配分を行うことを基本方針とし、剰余金の配当については利益水準等を勘案し安定的な配当を維持していきたいと考えている。また、内部留保資金については、同社を取り巻く状況の変化に柔軟に対応すべく、物流施設及び不動産施設の整備・拡充及び情報システムの開発等、事業基盤強化の原資として有効に活用するとともに、借入金の返済にも充当し、中長期的な業績の安定と向上による企業価値の増大を図ることで、株主の期待に応えることができるよう努めている。

2021年3月期の1株当たり配当金については、期中の業績上方修正と配当性向を高める方針から、中間配当金9.50円及び期末配当金14.50円と合わせて1株当たり年間配当金24.00円へと増配となった。なお、2022年3月期の1株当たり配当金については、中間配当金12.00円及び期末配当金12.00円と合わせて1株当たり年間配当金24.00円(前期同額)としている。

■Key Points
・社歴100年を超える財閥系総合物流企業で、国内から中国・ASEANまでのネットワークを有する
・「長期ビジョン2030」をもとに成長戦略を展開
・好立地に加え、メディカル・ITキッティングなどのソリューションサービスに強み
・2022年3月期は増収・減益見込みも、2021年3月期下期からの回復傾向を考慮すると、やや保守的な印象が強い

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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