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安田倉庫 Research Memo(7):2021年3月期は下期から回復傾向、物流事業は増収増益で着地

注目トピックス 日本株
■業績動向

1. 2021年3月期の業績概要
安田倉庫<9324>の2021年3月期の業績は、営業収益47,709百万円(前期比2.3%増)、営業利益3,288百万円(同5.2%減)、経常利益4,363百万円(同2.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,791百万円(同5.3%減)となった。また、2021年2月4日の修正予想値に対しても営業収益で1.5%増、営業利益で13.4%増となった。コロナ禍による厳しい状況のなか、各利益を上方修正し、前期比5.2%の営業減益にとどめたことは評価できよう。

国内経済は、コロナ禍の影響などにより急速に減少した企業収益や個人消費に一部持ち直しの動きが見られたものの、国内外の景気は依然として安定せず、厳しい状況で推移した。同社を取り巻く事業環境については、倉庫物流業界では国内貨物・輸出入貨物ともに荷動きは鈍さを増し、不動産業界ではテレワーク推進等により都市部のオフィスビル空室率上昇が続いており、一段と厳しい状況で推移した。

このような状況のもとで同社は、「長期ビジョン2030」に基づき、物流事業においては、付加価値の高いロジスティクス・サービスの提供による取引の拡大や、東雲営業所(東雲倉庫)・東雲営業所(辰巳倉庫)をはじめとする物流施設の拡充・高度化などの事業基盤の強化を図った。不動産事業においては、既存施設の適切なメンテナンスと機能向上の推進によって稼働率の維持・向上に努めた。

セグメント別業績では、物流事業は営業収益41,715百万円(前期比5.1%増)、セグメント利益3,254百万円(同1.5%増)となった。コロナ禍の影響などにより倉庫作業料や国際貨物取扱料が減少した一方、前期に子会社化した大西運輸の陸運料増加や、倉庫施設の新設・拡張による保管料が増加した。また、不動産事業は営業収益6,554百万円(前期比13.3%減)、セグメント利益2,105百万円(同7.4%減)となった。既存賃貸施設において稼働率を維持する一方、施工工事の減少などの影響を受けた。

2. 2022年3月期の業績見通し
2022年3月期の業績見通しについて同社は、営業収益51,500百万円(前期比7.9%増)、営業利益2,900百万円(同11.8%減)、経常利益4,000百万円(同8.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,600百万円(同6.9%減)を見込んでいる。

国内経済は、ワクチンの普及などによりコロナ禍の落ち込みから緩やかに回復していくという見方も多いが、依然として経済下振れのリスクは残り、不透明な状況が続くものと同社では予測している。こうした情勢のもとで同社を取り巻く事業環境は、倉庫物流業界では国内貨物・輸出入貨物で持ち直していくことが期待されつつあるものの不安定な状況が継続すると予想され、不動産業界では空室率の上昇と賃料水準の下落が懸念され、厳しい状況で推移するものと同社では予測している。

このような状況のもとで同社は、物流事業では取引拡大や物流施設の拡充など事業基盤の強化を推進し、不動産事業では既存施設のメンテナンスや機能向上の推進による稼働率の維持・向上や保有不動産の再開発促進に努めるとしている。一方、利益面では、物流施設の拡充や既存施設の修繕、経営インフラの強化に伴う営業費用の増加などにより営業減益を見込んでいるものの、2021年3月期下期からの回復傾向を考慮すると、やや保守的な印象が強い。

3. 中期成長イメージ
現状、大規模な不動産の再開発や新規開発が予定されていないことから、不動産事業は当面、既存不動産の設備更新が中心となると思われる。したがって、「長期ビジョン2030」は物流サービスがけん引する前提になっていると弊社では想定している。なかでもメディカル物流サービスやITキッティングサービスといった、ソリューション色の強いサービスへの期待は大きい。特に、2021年3月期に新物流拠点が稼働したメディカル物流サービスは、医療機器メーカーからの取引要請が少なくないようで、収益への貢献がさらに高まるジャンルと考えられる。ITキッティングサービスも、コロナ禍をきっかけに社会のデジタルシフトが急速に進展していることから、成長する環境が整ってきたと弊社では見ている。メディカル物流サービス・ITキッティングサービスともに、物流施設が増強されれば収益拡大につながる状況にあると思われることから、成長のけん引役として期待したい。

2022年3月期の物流事業の設備投資計画としては、既存施設の設備増強・更新のみで新規施設はない。しかし短中期的には、旧本社の再開発が課題となると弊社では見ている。もともと一部を倉庫として使っていることから、新設物流施設として使用される可能性が高いと予測できるものの、同社ではこれから検討に入る模様である。2023年3月期スタートの次期中期経営計画で具体的な構図が示されることを期待したい。併せて、大阪営業所南港倉庫(GLP大阪内一部区画)のように物流施設を賃借することで、景気や競合などによる需要のボラティリティに対して機動的に展開することも検討しているようだ。また、「戦略企画部」では、M&Aによる規模拡大を成長戦略として考えているようだが、好立地が少なくなりつつあるなかで効果的な戦略と言えよう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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