クオールHD Research Memo(6):医薬品製造販売事業がフル寄与したことで増収増益を確保
[21/07/06]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■クオールホールディングス<3034>の業績の動向
3. 医療関連事業の動向
医療関連事業のうち、主力のアポプラスステーションの業績は、上期のCMR派遣が好調だったことで、通期では増収を確保したものの、下期だけで見ると減収となった。外資系製薬企業向けの契約更新率が低かったことが要因だ。CMRの人員は第2四半期末時点で587名まで増加したが、2021年3月期末時点では約570名と前期末並みの水準まで減少したようだ。ただ、専門性の高いCMRについては増加しており、派遣単価も上昇傾向にある。医療系人材紹介派遣事業については、主力の薬剤師の派遣需要が下期に入って減少に転じた。前述した通り、グループ店舗でも薬剤師の最適配置を進めており、グループ内取引が減少したことも一因となっている。
一方、医薬品製造販売事業では、売上高は通期で20億円弱となり、着実に拡大している。前期は下期のみの売上寄与であったが、藤永製薬の通期業績で見ると11.9%増となっている。後発薬の炭酸リチウム「フジナガ」をグループ内薬局で先発品から切り替えて販売する等シナジー効果が顕在化した格好だ。先発薬から「フジナガ」への切り替え率は、第2四半期末で3割程度だったが、第4四半期末には6割程度にまで上昇しており、同社の戦略が順調に進んでいるものと評価される。
2022年3月期業績は全ての事業が増収増益となり、全体では2割超の増益に転じる見通し
4. 2022年3月期の業績見通し
2022年3月期の業績は売上高で前期比8.1%増の175,000百万円、営業利益で同22.2%増の9,000百万円、経常利益で同21.6%増の9,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同24.8%増の4,200百万円と2期ぶりの増収増益に転じる見通し。営業利益は2018年3月期の過去最高(9,091百万円)に迫る水準まで回復する。処方箋応需枚数の回復と新規出店効果により保険薬局事業が増収増益となるほか、医療関連事業もCMR派遣や医療系人材紹介派遣事業の需要回復を見込んでいる。
2022年3月期も新型コロナウイルス感染症対策を引き続き徹底して事業運営を進めていくと同時に、薬剤師派遣については、新型コロナウイルスワクチンの接種協力依頼に対応するため、COVID-19ワクチンプロジェクトを立ち上げ、ワクチン集団接種会場等に薬剤師を積極的に参画させている。また、保険薬局でもワクチン接種前の予診票記入サポート・ワクチン接種後の体調管理を継続して実施しており、地域のかかりつけ薬局として、その機能を果たしていく。
(1) 保険薬局事業
2022年3月期の保険薬局事業は、売上高で前期比10.3%増の164,100百万円、セグメント利益で同4.0%増の8,400百万円を見込む。新規出店についてはM&Aを含めて50〜70店舗前後を想定し、30億円以上の増収効果を見込んでいる。また、薬価改定によって数%程度のマイナス影響がでるものの、処方箋応需枚数の回復と調剤技術料単価の上昇によりカバーする見通しだ。5月17日現在で7店舗を新規出店しており、4月の処方箋応需枚数(全店ベース)も前年同月比12.5%増となる等、順調な滑り出しとなっている。既存店ベースの処方箋応需枚数の前提は、第1〜2四半期で前年同期比5%増、第3四半期10%増、第4四半期12%増となっている。今後、新型コロナウイルスワクチンの接種が進み感染拡大が収束に向かえば、十分達成可能な水準と弊社では見ている。
なお、利益率が前期の5.4%から5.1%に低下するのは、処方箋応需枚数の増加に対して、薬剤師の人員増によるコスト増や、薬価改定に伴う利益減少を見込んでいることが要因だ。薬剤師については新卒で200名程度の採用を実施した(2021年3月末の薬剤師数は正社員で2,264名)。また、2021年8月からスタートする薬局の機能別認定制度に向けた準備や、在宅調剤の強化、薬局の価値創出につながる新規サービスの開発等も積極的に取り組んでいく方針となっている。
機能別認定制度とは、薬局を機能別に「地域連携薬局」及び「専門医療機関連携薬局」の2分類とし、それぞれ一定要件を満たした店舗を認証する制度となる。店舗によっては「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の両方で認証取得することも可能で、逆にいずれの要件も満たさない場合は、認定外薬局となる。超高齢社会の到来に向けて課題となっている在宅医療への対応として、医療や介護を含めた「地域包括ケアシステム」構想を確立していくための施策で、患者自身が適した薬局を選択できるようにすることを狙いとした制度となる。同制度の導入によって直接的な収益への影響はまだ無いものの、2022年以降の診療報酬改定において、調剤技術料の算定に影響する可能性が高い。特に、地域薬局を展開する中小規模の企業では「地域連携薬局」として認証されることが重要になると見られ、経営体力面から大手企業の集約化が一段と進む可能性もある。同社にとっては、グループ化による出店拡大の好機になると弊社では見ている。
(2) 医療関連事業
2022年3月期の医療関連事業は、売上高で前期比10.1%増の15,200百万円、セグメント利益で同42.2%増の2,100百万円を見込む。CMR派遣については、製薬企業におけるMRのアウトソーシング化の流れが強まること、コロナ禍で高いITリテラシーを持ち、販売情報提供活動をできるMRの需要が増加していること等から、2022年3月期はCMRの採用・育成を積極化し、こうした需要を取り込んでいく方針となっている。CMR人員については前期末の約570名から約700名まで増員する計画となっている。
一方、医療系人材紹介派遣事業も2022年3月期は急回復を見込んでいる。処方箋応需枚数の回復に伴って前期に絞り込まれた派遣薬剤師の需要が回復するほか、新型コロナウイルスワクチン集団接種会場向けの需要も寄与する見通し。また、保健師についても新型コロナウイルス感染症対策に関連して、企業向け産業保険師の需要が増加しており、収益増要因となる。医薬品製造販売事業については、グループ薬局での取扱拡大と品質管理の徹底による安定供給を進めていくことで、増収増益が続く見通し。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. 医療関連事業の動向
医療関連事業のうち、主力のアポプラスステーションの業績は、上期のCMR派遣が好調だったことで、通期では増収を確保したものの、下期だけで見ると減収となった。外資系製薬企業向けの契約更新率が低かったことが要因だ。CMRの人員は第2四半期末時点で587名まで増加したが、2021年3月期末時点では約570名と前期末並みの水準まで減少したようだ。ただ、専門性の高いCMRについては増加しており、派遣単価も上昇傾向にある。医療系人材紹介派遣事業については、主力の薬剤師の派遣需要が下期に入って減少に転じた。前述した通り、グループ店舗でも薬剤師の最適配置を進めており、グループ内取引が減少したことも一因となっている。
一方、医薬品製造販売事業では、売上高は通期で20億円弱となり、着実に拡大している。前期は下期のみの売上寄与であったが、藤永製薬の通期業績で見ると11.9%増となっている。後発薬の炭酸リチウム「フジナガ」をグループ内薬局で先発品から切り替えて販売する等シナジー効果が顕在化した格好だ。先発薬から「フジナガ」への切り替え率は、第2四半期末で3割程度だったが、第4四半期末には6割程度にまで上昇しており、同社の戦略が順調に進んでいるものと評価される。
2022年3月期業績は全ての事業が増収増益となり、全体では2割超の増益に転じる見通し
4. 2022年3月期の業績見通し
2022年3月期の業績は売上高で前期比8.1%増の175,000百万円、営業利益で同22.2%増の9,000百万円、経常利益で同21.6%増の9,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同24.8%増の4,200百万円と2期ぶりの増収増益に転じる見通し。営業利益は2018年3月期の過去最高(9,091百万円)に迫る水準まで回復する。処方箋応需枚数の回復と新規出店効果により保険薬局事業が増収増益となるほか、医療関連事業もCMR派遣や医療系人材紹介派遣事業の需要回復を見込んでいる。
2022年3月期も新型コロナウイルス感染症対策を引き続き徹底して事業運営を進めていくと同時に、薬剤師派遣については、新型コロナウイルスワクチンの接種協力依頼に対応するため、COVID-19ワクチンプロジェクトを立ち上げ、ワクチン集団接種会場等に薬剤師を積極的に参画させている。また、保険薬局でもワクチン接種前の予診票記入サポート・ワクチン接種後の体調管理を継続して実施しており、地域のかかりつけ薬局として、その機能を果たしていく。
(1) 保険薬局事業
2022年3月期の保険薬局事業は、売上高で前期比10.3%増の164,100百万円、セグメント利益で同4.0%増の8,400百万円を見込む。新規出店についてはM&Aを含めて50〜70店舗前後を想定し、30億円以上の増収効果を見込んでいる。また、薬価改定によって数%程度のマイナス影響がでるものの、処方箋応需枚数の回復と調剤技術料単価の上昇によりカバーする見通しだ。5月17日現在で7店舗を新規出店しており、4月の処方箋応需枚数(全店ベース)も前年同月比12.5%増となる等、順調な滑り出しとなっている。既存店ベースの処方箋応需枚数の前提は、第1〜2四半期で前年同期比5%増、第3四半期10%増、第4四半期12%増となっている。今後、新型コロナウイルスワクチンの接種が進み感染拡大が収束に向かえば、十分達成可能な水準と弊社では見ている。
なお、利益率が前期の5.4%から5.1%に低下するのは、処方箋応需枚数の増加に対して、薬剤師の人員増によるコスト増や、薬価改定に伴う利益減少を見込んでいることが要因だ。薬剤師については新卒で200名程度の採用を実施した(2021年3月末の薬剤師数は正社員で2,264名)。また、2021年8月からスタートする薬局の機能別認定制度に向けた準備や、在宅調剤の強化、薬局の価値創出につながる新規サービスの開発等も積極的に取り組んでいく方針となっている。
機能別認定制度とは、薬局を機能別に「地域連携薬局」及び「専門医療機関連携薬局」の2分類とし、それぞれ一定要件を満たした店舗を認証する制度となる。店舗によっては「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の両方で認証取得することも可能で、逆にいずれの要件も満たさない場合は、認定外薬局となる。超高齢社会の到来に向けて課題となっている在宅医療への対応として、医療や介護を含めた「地域包括ケアシステム」構想を確立していくための施策で、患者自身が適した薬局を選択できるようにすることを狙いとした制度となる。同制度の導入によって直接的な収益への影響はまだ無いものの、2022年以降の診療報酬改定において、調剤技術料の算定に影響する可能性が高い。特に、地域薬局を展開する中小規模の企業では「地域連携薬局」として認証されることが重要になると見られ、経営体力面から大手企業の集約化が一段と進む可能性もある。同社にとっては、グループ化による出店拡大の好機になると弊社では見ている。
(2) 医療関連事業
2022年3月期の医療関連事業は、売上高で前期比10.1%増の15,200百万円、セグメント利益で同42.2%増の2,100百万円を見込む。CMR派遣については、製薬企業におけるMRのアウトソーシング化の流れが強まること、コロナ禍で高いITリテラシーを持ち、販売情報提供活動をできるMRの需要が増加していること等から、2022年3月期はCMRの採用・育成を積極化し、こうした需要を取り込んでいく方針となっている。CMR人員については前期末の約570名から約700名まで増員する計画となっている。
一方、医療系人材紹介派遣事業も2022年3月期は急回復を見込んでいる。処方箋応需枚数の回復に伴って前期に絞り込まれた派遣薬剤師の需要が回復するほか、新型コロナウイルスワクチン集団接種会場向けの需要も寄与する見通し。また、保健師についても新型コロナウイルス感染症対策に関連して、企業向け産業保険師の需要が増加しており、収益増要因となる。医薬品製造販売事業については、グループ薬局での取扱拡大と品質管理の徹底による安定供給を進めていくことで、増収増益が続く見通し。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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