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Jリース Research Memo(1):2021年3月期は事業用賃料保証が成長し、売上高・各利益ともに過去最高を更新

注目トピックス 日本株
■要約

ジェイリース<7187>は、家賃債務保証業界の大手の1社である。2004年に現 代表取締役社長兼会長の中島拓(なかしまひらく)氏が大分県で設立した。当初から地域に密着した家賃債務保証サービスを行い、宮崎、熊本と支店を増やし九州の基盤を固めた。2010年には、東京、新潟を始め東日本進出に着手し、全国の主要都市に拠点を広げている(2021年5月時点で全国28拠点)。地域別には長らく九州の比率が高かったものの、現在では関東の売上構成比が九州を上回っている。2016年6月に東証マザーズに上場、2018年3月には東証1部に昇格した。

1. 事業内容
国土交通省資料によると、賃貸借契約において家賃債務保証会社の利用率は、2010年に39%、2014年には56%に上昇しており、2018年の調査結果(日本賃貸住宅管理協会調査)では、75%まで上昇している。2020年4月に施行された改正民法(債権法)も追い風になる。この改正では、連帯保証人が保証する金額の極度額(上限)が設定されるため、連帯保証人の担保価値が低下する。また、足元では新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響で家賃滞納に対する意識が高まっていることから、結果としては家賃債務保証会社の利用を必須とする不動産オーナーが増加することが予想される。

同社のビジネスモデルは、店舗と人で都市部を中心に面展開し、顧客のニーズに徹底的に応えることで信頼を勝ち取り、入居者審査では独自データを活用し厳格にリスクを管理するという“地域密着+リスク管理徹底ビジネスモデル”である。具体的な特長としては、(1) 店舗網と人数、(2) きめ細かな商品・サービス、(3) 協定件数と申込件数、(4) 事業用賃料保証、(5) 代位弁済発生率と代位弁済回収率、(6) 高い成長性、の6点が挙げられる。

2. 業績動向
2021年3月期の連結業績は、売上高で前期比12.7%増の7,601百万円、営業利益で同506.8%増の943百万円となり、売上高及び各利益で過去最高を更新した。事業用賃料保証を成長分野と見据えて積極的な営業を推進したこともあり、保証関連事業が順調に推移した。また、独自データを活用することで保証ストックの質を維持・向上できた。経営指標では、債権管理業務を強化したことで、代位弁済発生率は6.3%(前期は7.2%)と低位にコントロールでき、代位弁済回収率は98.1%(同97.2%)と上昇した。

3. 今後の見通し
2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比11.8%増の8,500百万円、営業利益で同27.1%増の1,200百万円と、売上高・各利益ともに2ケタ成長を予想し、過去最高業績を更新する計画である。引き続き事業用賃料保証の営業に力を入れる方針で、新規出店は最大で4支店を計画している(2021年5月時点で2店舗開設済)。なお、足元(2021年4月、5月)の業績は好調に推移しているものの、コロナ禍による影響を考慮し、各指標は保守的に設定されている。キャッシュ・フローのバロメーターとなる代位弁済発生率は6.6%(前期は6.3%)、代位弁済回収率は97.0%(同98.1%)と良好な状態を維持する計画である。2022年3月期は、中長期の成長を見据えた投資も同時に行う予定で、新規出店に加え、事業用賃料保証強化のための人材採用・教育、独自の与信データベースの高度化、社内管理業務のデジタル化(DX)への投資を継続する。

4. 成長戦略・トピックス
同社は、3年後の2024年3月期を目標年度とする中期経営計画を公表しており、2024年3月期に売上高100億円以上、売上高の年間成長率10%を目指す。過去5年間の年平均成長率が18.8%であることから年間成長率10%は最低限のコミットメントと考えられる。これまでの成長のドライバーは東日本への進出と浸透であったが、今後も年2〜4店舗の出店を計画しており、全国ネットワークの完成を急ぐ。なお、近年の出店は旗艦店ではなく軽装備のサテライト的な店舗が多く、その投資対効果は実証済みである。また同社の強みとなっている事業用賃料保証が近年成長ドライバーとなっており、今後も事業用賃料保証が同社の成長に大きな役割を果たすであろう。利益面では、2024年3月期に営業利益15〜20億円、営業利益率15〜20%を目指す。また、利益成長により、自己資本比率の向上(現状14.8%)や配当性向の向上(現状8.0%、20%目安)も達成したい考えだ。

5. 株主還元策
同社は、株主への利益還元を経営の最重要課題の一つとして位置付けており、財務体質の強化や事業拡大のための内部留保の充実を図りつつ、安定的かつ継続的な配当を行う方針である。2019年3月期及び2020年3月期は配当原資が乏しく無配となったが、2021年3月期は好調な業績を背景に、年配当金5.0円、配当性向8.0%と復配を実施した。2022年3月期は、年間配当金20.0円(前期比15.0円増配)、配当性向25.3%を予想する。成長投資とのバランスを勘案しながら、配当性向目安の切り上げなど一段の株主還元も視野に入る。

■Key Points
・地域密着で中小不動産仲介会社と協業するスタイル。上場4社のなかでは過去6年間の成長性でトップ
・2021年3月期は売上高・各利益ともに過去最高を更新。コロナ禍による顧客のリスク意識の変化が追い風となり、事業用賃料保証が成長
・中期計画では2024年3月期に売上高100億円以上、営業利益15〜20億円を目指す
・2021年3月期は復配を実施。2022年3月期は増益を背景に前期比15.0円増配、配当性向25.3%を予想

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)




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