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澁澤倉庫 Research Memo(8):コロナ禍で荷動きが鈍かったが小幅減益にとどめた

注目トピックス 日本株
■業績動向

1. 2021年3月期の業績動向
澁澤倉庫<9304>の2021年3月期の業績は、営業収益65,328百万円(前期比2.2%減)、営業利益3,627百万円(同7.2%減)、経常利益3,929百万円(同5.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,750百万円(同2.3%減)となった。国内経済は、世界的なコロナ禍の影響で個人消費や設備投資が減少するなど厳しい状況で推移した。物流業界では、自動車の生産や個人消費に持ち直しの動きが見られたものの、荷動きは総じて低調に推移した。不動産業界では、都市部におけるオフィスビルの空室率が上昇、賃料相場が下落するなど厳しい状況が続いた。

同社は、物流事業で、日用品・飲料の流通加工業務の拡充や新設拠点の稼働、自動車関連部品の取り扱い量が回復、巣ごもり需要によるECの好調などを背景に取り扱いの拡大に努めた。しかし、外食向けアルコールの苦戦や第1四半期の日用品買いだめ需要の反動などコロナ禍の直接的な影響もあり、全般に荷動きが鈍かった。不動産事業では、既存施設の保守・改良工事を計画的に実施したこともあり、引き続き堅調に推移した。利益面では、荷動きが鈍ったことで作業費は減少したが、陸上運送の売上減少で固定費率が上昇して営業総利益率が低下した。販管費は、営業活動費などコロナ禍で経費が未使用となったほか、業務の効率化や管理費の削減に取り組んだが、営業総利益の減少をカバーできなかった。

事業セグメント別の状況は、倉庫業務で、日用品などの流通加工業務が好調に推移したほか、新設拠点の稼働などにより飲料や自動車関連部品の保管・荷役の取り扱いが増加した。港湾運送業務では、世界的なコンテナ不足により輸出入貨物が減少、日用品、化学品の輸出入荷捌業務も減少した。陸上運送業務は、下期には回復傾向となったが、日用品、飲料、非鉄金属製品などの輸配送業務、加えてフェリー輸送業務や引越業務も減少した。国際輸送業務は、輸出入海上貨物や香港現法の取り扱いが減ったが、輸出航空貨物の取り扱いが増加したこと、航空運賃が高騰したことにより増収となった。その他の物流業務では、通運業務は減少したが物流施設賃貸業務が増加した。不動産事業は、一部施設の不動産付帯収入が減少したものの、ビル管理業務や賃貸ビル工事などが増加した。この結果、物流事業は営業収益59,535百万円(前期比2.5%減)、営業利益2,525百万円(同10.1%減)、不動産事業は営業収益5,991百万円(同1.9%増)、営業利益2,981百万円(同1.7%減)となった。


コロナ禍から回復傾向の兆し
2. 2022年3月期の業績見通し
同社は2022年3月期業績見通しを、営業収益67,000百万円(前期比2.6%増)、営業利益4,000百万円(同10.3%増)、経常利益4,200百万円(同6.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,800百万円(同1.8%増)と、営業利益で2ケタ増益を見込んでいる。国内経済は、コロナ禍の収束が依然不透明と言われるが、一方で世界経済が立ち直りの兆しを見せていること、ワクチンの普及に弾みがついていることを背景に、緩やかな回復も予想されている。物流業界では、国内貨物、輸出入貨物とも取扱高に緩やかな回復の動きが見られるものの、競争激化や人手不足などに伴う物流コストの増加が懸念されている。また、不動産業界では、空室率上昇や賃料相場下落といったリスクが一部で懸念されている。

同社に関しては、物流事業で、2021年3月期に稼働を開始した千葉県市川市、栃木県さくら市の拠点が通期稼働すること、新規に輸入アパレルの取り扱いを開始すること、陸上運送業務や港湾運送業務の取扱量の回復や海外現地法人の業務拡大が見込まれることから、回復感が強まることが予想される。利益面では、2021年3月期に未使用だった営業費などの費用が復活する見込みだが、倉庫業務や陸上運送業務を中心に荷動き回復による営業総利益率改善が期待できる。加えて、上海現法の連結により国際輸送業務で利益がオンする見込みである。また不動産事業では、オフィスビルを中心に安定稼働が予想されている。以上から、増収2ケタ営業増益を見込んでいる。


松戸拠点では成長戦略に沿って先行した動き
3. 2022年3月期の能力増強
2022年3月期の能力増強は、2021年3月期に稼働した千葉県市川市5,000坪(飲料)、栃木県さくら市1,500坪(化学品)がフル稼働、2020年3月期に稼働した横浜恵比須町の澁澤ABCビルディング2号館の研究用の1フロアが計画どおり2022年3月期中に稼働する見込みである。なお、2020年3月期に増床した松戸拠点では、スポーツアパレルや小型家電、調理器具など多品種少量の貨物を扱っていることから、「経営計画2023」の成長戦略に沿って実験的な運用も行っている。そうしたなかで、アイテムによってピーク曜日が変わることに対して、機械とマンパワー(作業シフト)のバランスを取るノウハウを確立、横展開するめどが立ってきたと見られる。また新たに扱いを開始するアパレルのECに関して、在庫管理から出荷までの作業を行う予定で、将来的には自社配送や受発注代行といったサービスの拡張も視野に入れているもようである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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