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システム ディ Research Memo(5):公教育ソリューション事業、公会計ソリューション事業が2ケタ増収に(1)

注目トピックス 日本株
■業績動向

2. 事業部門別動向
(1) 学園ソリューション事業
学園ソリューション事業では、学園運営をトータルに支援する学園情報管理システム「キャンパスプラン」を提供している。学校運営を支える情報システムは、学務系(対学生・生徒業務)と法人系(学校法人の内部管理業務)の大きく2系統に分けられるが、「キャンパスプラン」はこれらの業務をトータルで支援するソフトウェアとなっていることが特徴であり、強みとなっている。対象は国公立大学(短期大学含む)と私立学校法人(大学・高校・専門学校等)向けだが、これまでは1校当たりの規模が大きい大学を中心に事業を展開してきた。その結果、システム ディ<3804>の製品は全国の国公私立大学(短大含む)1,100校のうち約350校に導入され、業界トップシェアの地位を確立している。それ以外にも私立の専門学校や高校で導入が進んでおり、2021年4月末の累計導入学園数は前期末比7校増の1,001校となった(アクティブユーザー数は500〜600校)。

2021年10月期第2四半期累計の売上高は前年同期比24.8%減の715百万円となった。主力製品である「キャンパスプラン.NET Framework」及びクラウド版となる「キャンパスプラン for Azure」が引き続き好評で、新規顧客からの引き合いだけでなく、既存ユーザーの追加導入も多く、安定した売上、営業利益を計上した。前年同期比で減収となった要因は新規導入校数が前年同期の11校から7校に減少し、フロー収入となる導入支援売上高が約50百万円減少したことに加えて、新収益認識基準の導入により、例年3月、4月に集中していた年間保守サポート契約の一部売上が、月按分で計上されることになったことが大きい。同事業は3月、4月に年間保守サポート料の更新時期が集中しているため、従来は上期偏重型(第2四半期偏重)の売上となっていた。新収益認識基準の導入によりこうした偏重がなくなるため、2021年10月期下期の売上高については前年同期の水準を上回る可能性が大きいと弊社では見ている。

なお、2019年11月に販売を開始した次世代学園総合情報システム「CampusPlan Smart」は、機能性・利便性・操作性が大きく向上し、また高度なセキュリティ機能にも対応していることが特徴で、導入顧客からも高い評価を受けている。現在は総務・人事給与システムの提供にとどまっているが、学務系システムやその他業務システムについても順次開発を進めており、2023年には既存製品の機能をすべてカバーする予定となっている。同事業の次世代を担うパッケージシステムとして、既存顧客でのリプレイスを進めると同時に新規顧客獲得によりシェアを拡大していく戦略だ。

(2) ウェルネスソリューション事業
ウェルネスソリューション事業の製品はフィットネスクラブやスポーツ施設、アミューズメント施設などで利用される会員管理を中心とした施設運営支援システムとなる。2001年に提供を開始したフィットネスクラブ・スポーツ施設の会員管理システム「Hello EX」は業界トップシェアとなっており、2017年後半には文化・観光施設向け運営管理システム「Hello Fun」もリリースし、顧客の拡大に取り組んでいる。同事業については、入退場ゲート等のハードウェア製品なども含めて販売するケースもある。2020年4月末の累計顧客数は前期末比17施設増の1,195施設となっている。

2021年10月期第2四半期累計の売上高は前年同期比6.0%減の383百万円となった。コロナ禍の影響が長引き、主力ユーザーとなるフィットネスクラブやスポーツ施設において、新規出店計画の延期や事業縮小が続いていることを背景に、新規契約件数の減少が減収要因となっている。既存店舗を対象としたシステム利用料収入については大きな影響を受けておらず売上を維持できているようで、施設の利用効率を向上させる「新型コロナ三密対策」ソリューションの提供等により一定の売上、営業利益も確保した。また、2020年11月に提供開始したクラウド型会員管理・会費回収システム「Smart Hello」については、パーソナルジムをはじめとする小型店舗を中心に導入件数が順調に増加しているものの、まだ全体の売上を押し上げる規模にまでは至っていないようだ。

(3) 公教育ソリューション事業
公教育ソリューション事業は公立の小中高校向けに統合型校務支援システム「School Engine」※をクラウドサービスで提供している。同じ学校向けソフトウェア事業でも、私立学校法人や独立行政法人である国公立大学を対象とする学園ソリューション事業とは事業環境が大きく異なる。違いの1つは自治体予算制度だ。公立学校は各自治体の教育委員会の管理下にあり、エリア内での共通予算はあっても1校当たりの予算の制約が厳しい。こうした状況に適合するため、同社は「School Engine」を初期投資負担の少ないクラウドサービスで提供している。競合のなかにはパッケージソフトで提供しているところが多く、小中高校のすべてでクラウドサービスを提供しているのは同社だけとなっている。

※統合型校務支援システムとは、教務系(成績処理、出欠管理、時数等)・保健系(健康診断票、保健室管理等)、指導要録等の学籍関係、学校事務系などを統合した機能を有するシステムのこと。同社の「School Engine」はこれらの機能に生徒や保護者とのメール連絡網、グループウェア機能などが付いている。


営業先も学園ソリューション事業とは異なり、高校は各都道府県、小中学校は各市町村の教育委員会が窓口となる。案件を落札できれば当該教育委員会の管轄下にある学校すべてに導入されることが多い。入札公示時期は地域によって異なるが、7〜8月公示の場合は9〜10月に落札事業者が決まり、翌年4月までに導入して運用開始となる。また、12〜1月公示で2〜3月に落札、2学期が始まる9月から運用開始となるケースもある。

2021年10月期第2四半期累計の売上高は前年同期比20.1%増の485百万円と2ケタ増収が続いた。2021年4月末の累計導入校数が前期末比74校増加の3,068校(18県、4政令指定都市、10中核都市:高校約3割、小中学校約7割)と順調に拡大し、システム利用料収入が増加したことや、調査・企画案件を1件受注したことも増収に貢献した。なお、都道府県単位で小中高校を一貫する統合型校務支援システムについては、高知県と山梨県の2県で導入されている。また、公立高校では18県で同社製品が導入されトップシェアとなっているほか、小中学校では4つの政令指定都市のほか、10の中核都市で同社製品が導入されている。

また、奈良市教育委員会の協力のもと、開発を進めてきた「Home Services」は2021年4月より奈良市の小中学校向け「School Engine」の新機能として運用が開始されている。児童生徒に関する活動情報を保護者にインターネットを通じて直接提供するサービスとなり、学校・保護者間の連絡手段のデジタル化を実現するサービスとして注目される。奈良市において今後1年程度、運用実績を蓄積し、機能改修も図りながら全国へと横展開していく予定で、利用料は「Shool Engine」の利用料の2〜3割程度を想定しており、2023年度から収益面でもインパクトが出てくるものと期待される。

なお、文部科学省の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(令和元年度)」によれば、2019年度における公立学校は全国で約3.3万校となっており、このうち統合型校務支援システムを導入済みの学校は64.8%(約2.1万校)と年々上昇傾向にある。文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」では2022年度までに導入率100%を目標としているため、残り約1万校が潜在需要となり、同社にとっては引き続き成長期待の大きい市場と言える。ただ、需要が見込まれる反面、従来よりも受注競争が激しくなっているのも事実で、業界シェアが高いとは言え今後の動向は注視しておく必要がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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