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ダイコク電 Research Memo(6):2021年3月期業績は下期から回復傾向にあり、利益面では計画を上回る着地

注目トピックス 日本株
■決算動向

2. 2021年3月期決算の概要
ダイコク電機<6430>の2021年3月期の業績は、売上高が前期比29.4%減の23,228百万円、営業利益が同65.7%減の490百万円、経常利益が同41.1%減の986百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同42.3%減の612百万円と、コロナ禍の影響により減収減益となった。ただし、下期からは回復傾向にあり、利益面では計画を上回る着地となっている。

厳しい業界環境が続くなか、コロナ禍の影響(休業要請及び時短営業等)も重なり、パチンコホール経営が一段と厳しい状況に置かれたことや「旧規則」機の撤去スケジュールが延期されたことが、設備投資意欲の極端な低下や設備投資の先延ばしを招き、「情報システム事業」が大きく後退した。また、「制御システム事業」についても、コロナ禍の影響により各遊技機メーカーの新作タイトル販売が延期されたことなどを背景として、表示ユニット及び制御ユニットの販売が前期を下回った。

利益面では、大幅な減収に伴って減益となったが、全社的な経費の見直しが収益を下支えし、計画に対しては上回って着地した。特に、研究開発費の一巡(前期比350百万円減)、人件費の削減(同280百万円減)、コロナ禍に伴う出張旅費の圧縮(同150百万円減)などが販管費の大幅な減少に寄与した。

財務面では、減収に伴い売掛金等の売上債権が減少したことや「有形固定資産」の減価償却等により、総資産が前期末比3.8%減の41,084百万円に縮小した。一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同0.8%増の30,662百万円と若干増加したことから、自己資本比率は74.6%(前期末は71.2%)に上昇した。また、現金及び預金は15,739百万円を確保し、流動比率も267.1%となっていることから、財務の安全性に懸念はない。

事業別の業績は以下のとおりである。

(1) 情報システム事業
売上高は前期比33.7%減の17,462百万円、セグメント利益は同37.5%減の1,939百万円と大きく後退した。AIホールコンピュータ「Χ(カイ)」の導入(既存ホールコンピュータからのシステムアップ)や、それに紐付く最新機器の販売などに注力したものの、コロナ禍のもと、休業要請や時短営業、ファンの自粛等の影響によりパチンコホール経営が一段と厳しい状況に置かれるなかで、設備投資意欲が極端に低下したことや、「旧規則」機の撤去スケジュールが1年延長されたことによる設備投資の先延ばしも重なって、売上高は大きく減少した。特に、コロナ禍の影響はおおむね想定内であったが、撤去スケジュールの延長が想定外の影響を及ぼしたようだ。また、収益の底上げに貢献してきたMGサービスについても、ホール休業期間中は一時的にサービスを停止(約1か月間)したことから前期比で若干減少したが、それでも収益の下支えとなっているところは評価すべきポイントである※。また、「遊タイム」機が徐々に普及してきたなか、「MIRAIGATE 2020 Web展示会&セミナー」での提案を通じて、「遊タイム」機対応の情報公開端末(REVOLA、IL-X3)の販売が年末商戦以降順調に推移するともに、「遊タイム」機のデータ管理に役立つAIホールコンピュータ「Χ(カイ)」の導入件数についても、前期比90%まで回復してきたところは今後に向けて明るい材料と言える。利益面では、減収により減益となったものの、収益性の高いMGサービスによる下支えのほか、オンライン形式の展示会&セミナーの開催やモバイル活用、その他経費の削減により、計画を大きく上回ることができた。セグメント利益率も11.1%(前期は11.8%)と高い水準を維持している。

※特に、AIホールコンピュータ「Χ(カイ)」と並び、今後の目玉となっている商圏分析サービス「Market-SIS」(MGサービスの一部)については、商圏内の人の流れ(ファン動向)を捉え、ホールの集客力に寄与するツールとして高い評価を得ており、着々とシェア拡大を図っている。


なお、パチンコホールの稼動状況(4円パチンコ、20円パチスロ)については、緊急事態宣言が発令された2020年4月〜5月が前年同期比50%前後の水準で低迷したものの、その後回復し、7月以降は80%前後で推移している。足元の回復基調は踊り場に差し掛かった感もあるが、新しい遊技性(「遊タイム」など)を有した遊技機が徐々に市場に導入され、高稼動のパチンコ遊技機も出始めていることから、今後の遊技機入れ替え需要の活性化が期待される。

(2) 制御システム事業
売上高は前期比12.5%減の5,775百万円、セグメント損失は15百万円(前期は78百万円の利益)となった。コロナ禍のもと、ホール休業や時短営業の影響により各遊技機メーカーの新作タイトル販売が延期されるなかで、部品販売や小規模の受託開発案件等により一定の売上水準を確保したものの、コアとなる基盤販売(表示ユニット及び制御ユニット)が前期を下回った。利益面でも、減収による収益の押し下げに加え、収益性の高い基盤販売の下振れにより、セグメント損失を計上するに至った。もっとも、コロナ禍による活動制限が徐々に緩和されるにつれ、各遊技機メーカーにおいては「遊タイム」機等の新しい遊技機の開発が本格化してきた。同社では、この動きに合わせてリソースの再配分や工程の見直し等を進めるとともに、パチスロ遊技機の受託開発や販売製品の事業領域の拡大、表示ユニットの低コスト化に向けた調査研究など、今後に向けた取り組みを推進している。

3. 2021年3月期の総括
以上から、2021年3月期を総括すると、厳しい業界環境にコロナ禍の影響等も重なり、業績面では厳しい状況が続いた。改めて現状を整理すると、パチンコホールの設備投資意欲が回復し、パチンコ、パチスロの「新規則」機への移行が進まないことには、同社が推進するAIホールコンピュータ「Χ(カイ)」の導入や、それに紐付く最新機器の販売も本格化しない状況が継続していると言える。ただ、活動面に目を向けると、今後の成長の軸となるAIホールコンピュータ「Χ(カイ)」や「Market-SIS」(商圏分析サービス)の普及、パチスロ受託開発に向けた取り組みなど、しっかりと手応えを感じながら、地ならしを行っているところは将来に向けて明るい材料と評価できるだろう。特に、後述する「MIRAIGATE 2020 Web展示会&セミナー」では、例年の2倍規模の参加者を集め、潜在的な需要の大きさを確認することができたことや、市場の動きとして「遊タイム」機種の開発や導入が徐々に進んできたことは、同社の「情報システム事業」及び「制御システム事業」にとって事業拡大のチャンスであり、業績回復への道筋はもちろん、新たな成長フェーズへの移行に向けて視界が開けてきたと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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