ウェーブロックHD Research Memo(1):インテリア事業を譲渡し成長事業へ投資を積極化することで成長を目指す
[21/07/26]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■要約
ウェーブロックホールディングス<7940>は、防虫網や農業用、建設資材用各種シート等のマテリアルソリューション事業と、金属調加飾フィルムを中心としたアドバンストテクノロジー事業を展開する樹脂加工メーカーである。2021年3月に主力事業の1つであったインテリア事業(住宅用壁紙)を主要取引先のサンゲツ<8130>に譲渡し、成長事業への投資を積極化することで成長を目指す方針を明らかにした。
1. 2021年3月期の業績概要
2021年3月期の連結業績は、売上高で前期比横ばいの29,248百万円、営業利益で同8.2%減の1,489百万円となった。売上高はインテリア事業の販売価格低下やマテリアルソリューション事業におけるビルディングソリューション製品の需要低迷をリビングソリューション製品の好調でカバーした。営業利益は、インテリア事業の譲渡に関連したアドバイザリー費用や本社オフィスレイアウト費用などの一時費用191百万円を計上したことにより減益となったものの、同要因を除けば前期比で増益であった。なお、インテリア事業を担う(株)ウェーブロックインテリア(以下、WIT)の株式の51%をサンゲツに譲渡したことに伴い、株式売却益2,094百万円を計上している。WITに関しては、2022年3月期以降は持分法適用関連会社となるが、いずれはすべての株式を譲渡する見込みとなっている。
2. 中期経営計画
同社は2021年6月に中期経営計画を発表した。安定した長期利益の獲得を重視し、早期に営業利益を2021年3月期の水準に回帰させること、成長事業と位置付けているアドバンストテクノロジー事業や環境関連ビジネス(地中熱ビジネス)の育成に注力していく方針を打ち出した。アドバンストテクノロジー事業では、自動車向けに金属調加飾フィルムやPMMA/PC2層シートの採用が進んでおり、今後の高成長が見込める状況となってきている。一方、地中熱ビジネスはビニルハウス等の農業・建設分野向けに需要開拓を進めていく方針で、施工会社の連携も実施し、システムインテグレータとして事業を拡大していく計画だ。独自の特許技術「ヒートクラスター」による高効率な熱交換システム(従来比3〜5倍)により、従来工法よりも設備投資費用を抑制できることが長所となる。再生可能エネルギーである地中熱利用により、屋内の空調管理や農業の生産性向上等、サステナビリティに貢献する事業として今後の成長が期待される。業績目標は2024年3月期に売上高24,500百万円、営業利益1,260百万円を掲げた。2021年3月期の業績からインテリア事業を除いた数値(売上高20,173百万円、営業利益709百万円)を起点に年平均成長率を見ると、売上高で6.7%、営業利益で21.1%の成長となる。これら注力事業が順調に育てば、2025年3月期以降の収益成長期待もさらに高まるものと予想されるだけに、今後の動向が注目される。
3. 2022年3月期の業績見通し
2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比30.3%減の20,400百万円、営業利益で同51.0%減の730百万円となる見通し。インテリア事業譲渡による影響を除いた既存事業ベースでは売上高で同1.1%増、営業利益で同3.0%増となる。マテリアルソリューション事業は、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響一巡により各ソリューションが回復する一方で、原材料費の上昇やプロダクトミックスの悪化により増収減益となるものの、アドバンストテクノロジー事業における自動車内外装部品向け売上高伸長による損益改善効果や、前期に発生した一時費用がなくなることが増益要因となる。インテリア事業の譲渡により、一旦収益水準は下がるものの、アドバンストテクノロジー事業や環境関連ビジネスの基盤を固めていくことで、2023年3月期以降は再成長ステージに入る見通しだ。
■Key Points
・2021年3月期業績はコロナ禍の影響がプラス、マイナス両面であり、実質的な営業利益は前期比増益で着地
・自動車向け金属調加飾フィルム、農業・建設向け地中熱ビジネスの成長に期待
・2021年3月末に実施したインテリア事業の譲渡により2022年3月期は減収減益を見込むも、アドバンストテクノロジー事業の収益急回復により、既存事業ベースで増収増益となる見通し
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YM>
ウェーブロックホールディングス<7940>は、防虫網や農業用、建設資材用各種シート等のマテリアルソリューション事業と、金属調加飾フィルムを中心としたアドバンストテクノロジー事業を展開する樹脂加工メーカーである。2021年3月に主力事業の1つであったインテリア事業(住宅用壁紙)を主要取引先のサンゲツ<8130>に譲渡し、成長事業への投資を積極化することで成長を目指す方針を明らかにした。
1. 2021年3月期の業績概要
2021年3月期の連結業績は、売上高で前期比横ばいの29,248百万円、営業利益で同8.2%減の1,489百万円となった。売上高はインテリア事業の販売価格低下やマテリアルソリューション事業におけるビルディングソリューション製品の需要低迷をリビングソリューション製品の好調でカバーした。営業利益は、インテリア事業の譲渡に関連したアドバイザリー費用や本社オフィスレイアウト費用などの一時費用191百万円を計上したことにより減益となったものの、同要因を除けば前期比で増益であった。なお、インテリア事業を担う(株)ウェーブロックインテリア(以下、WIT)の株式の51%をサンゲツに譲渡したことに伴い、株式売却益2,094百万円を計上している。WITに関しては、2022年3月期以降は持分法適用関連会社となるが、いずれはすべての株式を譲渡する見込みとなっている。
2. 中期経営計画
同社は2021年6月に中期経営計画を発表した。安定した長期利益の獲得を重視し、早期に営業利益を2021年3月期の水準に回帰させること、成長事業と位置付けているアドバンストテクノロジー事業や環境関連ビジネス(地中熱ビジネス)の育成に注力していく方針を打ち出した。アドバンストテクノロジー事業では、自動車向けに金属調加飾フィルムやPMMA/PC2層シートの採用が進んでおり、今後の高成長が見込める状況となってきている。一方、地中熱ビジネスはビニルハウス等の農業・建設分野向けに需要開拓を進めていく方針で、施工会社の連携も実施し、システムインテグレータとして事業を拡大していく計画だ。独自の特許技術「ヒートクラスター」による高効率な熱交換システム(従来比3〜5倍)により、従来工法よりも設備投資費用を抑制できることが長所となる。再生可能エネルギーである地中熱利用により、屋内の空調管理や農業の生産性向上等、サステナビリティに貢献する事業として今後の成長が期待される。業績目標は2024年3月期に売上高24,500百万円、営業利益1,260百万円を掲げた。2021年3月期の業績からインテリア事業を除いた数値(売上高20,173百万円、営業利益709百万円)を起点に年平均成長率を見ると、売上高で6.7%、営業利益で21.1%の成長となる。これら注力事業が順調に育てば、2025年3月期以降の収益成長期待もさらに高まるものと予想されるだけに、今後の動向が注目される。
3. 2022年3月期の業績見通し
2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比30.3%減の20,400百万円、営業利益で同51.0%減の730百万円となる見通し。インテリア事業譲渡による影響を除いた既存事業ベースでは売上高で同1.1%増、営業利益で同3.0%増となる。マテリアルソリューション事業は、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響一巡により各ソリューションが回復する一方で、原材料費の上昇やプロダクトミックスの悪化により増収減益となるものの、アドバンストテクノロジー事業における自動車内外装部品向け売上高伸長による損益改善効果や、前期に発生した一時費用がなくなることが増益要因となる。インテリア事業の譲渡により、一旦収益水準は下がるものの、アドバンストテクノロジー事業や環境関連ビジネスの基盤を固めていくことで、2023年3月期以降は再成長ステージに入る見通しだ。
■Key Points
・2021年3月期業績はコロナ禍の影響がプラス、マイナス両面であり、実質的な営業利益は前期比増益で着地
・自動車向け金属調加飾フィルム、農業・建設向け地中熱ビジネスの成長に期待
・2021年3月末に実施したインテリア事業の譲渡により2022年3月期は減収減益を見込むも、アドバンストテクノロジー事業の収益急回復により、既存事業ベースで増収増益となる見通し
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YM>