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芙蓉リース Research Memo(3):営業資産の積み上げなどにより、差引利益は増益基調で推移

注目トピックス 日本株
■決算動向

1. 業績を見るポイント
芙蓉総合リース<8424>の売上高は、全体の約70%を占めるリース料収入のほか割賦販売による収入やファイナンスによる受取利息、ノンアセット収益(各種手数料収入など)によって構成されている。売上高(ノンアセット収益を除く)は基本的には「営業資産残高」に伴って増減することから、売上高の拡大のためには「契約実行高」を増やし、「営業資産」を積み上げることが必要となる。ただ主力のリース料収入については、売買取引に準じた会計処理となっており、リース物件の価格部分が含まれていることに注意が必要である。したがって金融としての本来の業績の伸びを判断するためには、売上高からリース物件の取得原価を除いた「差引利益」の動きを見るのが妥当である。

一方、本業における収益性を判断するためには、「差引利益」から「資金原価(資金調達コスト)」のほか、「人件費及び物件費」や「貸倒関連費用(戻入れ益を含む)」※などを除いた「経常利益」の動きを見るのが最も合理的であると考えられる。なお、「経常利益」は「営業資産残高」と「ROA(営業資産経常利益率)」の掛け算となるため両方の動きによって影響を受ける。また最近では、ノンアセット収益の拡大にも取り組んでおり「その他」セグメントの動きにも注目する必要がある。

※貸倒引当金繰入額(販管費)と貸倒引当金戻入益(営業外収益)をネットしたもの。


2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、売上高は「営業資産」の積み上げに伴って右肩上がりに推移してきた。また経常利益についても「営業資産」の積み上げとROA向上の両方により増益基調を続けている。特にROAの向上については、比較的利回りの高い「不動産リース」及び「航空機リース」の拡大に加え、最近ではBPOサービスを中心とした新領域のビジネス(ノンアセット収益)の伸びが寄与している。

一方、費用面を見ると、「調達原価」はほぼ横ばいで推移してきた。調達総額が増加しているものの、市中金利の影響により調達利回りが低下していることが要因である。また、「人件費及び物件費」を一定水準に抑えるとともに「貸倒関連費用」も低位にて推移しており、同社の強みであるローコストオペレーションも発揮されている。それらの結果、2021年3月期の経常利益は4期連続で過去最高を更新している。

また有利子負債は「営業資産」の積み上げに伴い増加してきたが、自己資本比率は10%前後で安定的に推移している。自己資本比率10%の水準は、流動性の高い営業資産を大量に保有するリース業界においては他社と比べて見劣りするものではなく、財務基盤の安定性に懸念を生じさせるものではない。

また資本効率を示すROEについても、2016年3月期以降、利益水準の底上げとともに上昇し、2021年3月期は10%を超える水準となっている。

営業キャッシュ・フローはマイナスの状況が続いている。これは、将来の収益源となる「営業資産」を積極的に積み上げていることが要因であり、同社の成長性を反映したものと見るのが妥当である。


2021年3月期は計画を上回る増収増益。売上高・利益ともに過去最高を更新
3. 2021年3月期決算の概要
2021年3月期の業績は、売上高が前期比3.9%増の7,403億円、営業利益が同7.6%増の446億円、経常利益が同9.0%増の480億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同12.9%増の296億円と計画を上回る増収増益を実現し、売上高・利益ともに過去最高を更新した。

売上高は、ヤマトリース及びNOCの連結効果※1などが増収に寄与した。また、事業本来の業績を示す「差引利益」についても前期比7.8%増の925億円と順調に拡大。「航空機」などでコロナ禍の影響を受けたものの、引き続き好調な「不動産」及び「エネルギー・環境」を中心とする戦略分野や、ファイナンス、BPOサービスの伸びにより、すべてのセグメントで増益を実現した。一方、費用面についても連結子会社の増加に伴う人物件費増のほか、資金原価増※2や貸倒関連費用増※3により増加したものの、すべて想定の範囲内である。「差引利益」の増加により費用増を吸収して経常増益を実現した。

※1 2020年4月から連結化したヤマトリースが通年寄与したほか、2019年8月に連結化したNOCについても6ヶ月分の上乗せ要因となった。
※2 資金原価は、営業資産の積み上げに伴う有利子負債残高の拡大により98億円(前期比3億円増)に増加したが、調達利回りは0.43%(前期は0.46%)と低位安定している。
※3 貸倒関連費用は15億円(前期比5億円増)に増加。コロナ禍の影響により発生した未収リース料(主に航空機リース)に対する引当金の計上等が理由であるが、想定の範囲内である。


その結果、ROA(営業資産経常利益率)については1.94%(前期は1.90%)に改善した。戦略分野を中心とした良質な営業資産の積み上げや入替に加え、インボイス及びNOC(BPOサービス)を含めた、ノンアセット収益の拡大がROAの向上につながったと言える。

「契約実行高」についても、コロナ禍の影響を受けた航空機リースの新規取り組みを抑制したものの、引き続き不動産リースが好調であったことやファイナンス及びアクリーティブによるファクタリング(売掛債権や診療報酬債権の買取り)の伸びにより、ほぼ前期並みの水準を確保した。その結果、「営業資産」は戦略分野を中心に前期比7.2%増の2兆5,559億円に拡大している。

財政状態については、ヤマトリースの連結化や「営業資産」の積み上げなどにより、総資産は前期末比8.2%増の2兆9,793億円に拡大。一方、自己資本も内部留保の積み増しにより同10.4%増の3,046億円に増加したことから、自己資本比率は10.2%(前期末は10.0%)とほぼ横ばいで推移した。また有利子負債(リース債務を除く)も同8.9%増の2兆4,310億円に増加したが、直接調達比率は32.6%(前期末は33.4%)、長期有利子負債比率は44.1%(同42.7%)、短期の支払い能力を示す流動比率も137.0%(同138.3%)と安定しており、財務の健全性は維持されている※。

※戦略分野を中心とした収益基盤の拡充などが評価され、(株)格付投資情報センター(R&I)による発行体格付は「A(安定的)」(2020年10月より)に引き上げられた。また、サステナビリティ・リンク・ボンドや初の外債などの積極的な起債により社債残高が増加し、直接調達比率や長期有利子負債比率の向上につながった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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