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タナベ経営 Research Memo(5):経営コンサルティング事業は増収減益

注目トピックス 日本株
■タナベ経営<9644>の業績動向

2. 事業セグメント別動向
(1) 経営コンサルティング事業
経営コンサルティング事業の売上高は前期比1.2%増の5,642百万円、営業利益は同25.1%減の1,098百万円となった。コロナ禍で4〜5月は政府の緊急事態宣言発出に伴い、企業活動が大きく制限を受けるなかでコンサルティング契約の一時休止や延期、並びにコンサルティング契約につなげるための導線役であった戦略ドメイン&ファンクション研究会やFCCセミナーが中止や延期となったことが響いた。ただ、緊急事態宣言が解除された6月以降は一部の業界を除いて、企業活動も活発化し始め、With・Afterコロナにおける経営戦略の再構築やDXへの取り組みといったコンサルティングニーズが増加し始めるなど、全体的には回復基調をたどっている。また、2021年1月にグローウィン・パートナーズ(株)をグループ会社化した効果もあって、売上高については増収を確保した。

売上高の内訳を見ると、ドメイン・ファンクションコンサルティングは前期比0.2%増の3,835百万円となった。コロナ禍で期の前半は苦戦を強いられたものの、第3四半期以降は既存顧客のフォロー強化や、サービス提供におけるオンライン化を推進し、「ウィズコロナの中長期ビジョン策定・推進」「事業承継」「業務改善・生産性改革」「営業戦略・販売力強化」等をテーマとした案件が増加した。チームコンサルティングの期中平均契約数は前期の487件に対して464件と減少したが、四半期ベースで見れば第1四半期の427件を底に上向きに転じている。地域別では、中部エリアや九州エリアが相対的に堅調だったようだ。また、M&Aコンサルティングに関しては、グローウィン・パートナーズ(株)のグループ会社化によって大きく伸長した。一方、戦略ドメイン&ファンクション研究会は、コロナ禍での開催中止や一部延期が発生し減収となったが、対策としてライブ配信とリアル集合型との併用開催などで対応を進めている。

HRコンサルティングは前期比19.3%減の1,095百万円と低調に推移した。期初からのリアル集合型セミナーのキャンセルや開催中止等が影響した。ただ、HR分野においても「働き方改革を実現する人事制度構築・運用」や「ジョブ型人事制度への移行」をテーマとしたコンサルティングや、オンラインによる社内教育システム「FCCアカデミー(企業内大学)設立」の引き合いは好調で、「FCCアカデミー」に関しては導入企業数が前期末の97社から120社に増加した(今後は300社を目指す方針)。また、セミナーのオンデマンド配信やオンライン配信も新たに開始し、「ファーストコールカンパニーフォーラム2020」「経営戦略セミナー」では、ともに2千名を超える経営者・経営幹部の参加があった。

デジタルコンサルティングの売上高は前期比122.7%増の570百万円となった。(株)リーディング・ソリューションによるデジタルマーケティング施策の戦略策定から企画・実行・改善までのワンストップ支援サービスや、グローウィン・パートナーズ(株)のバックオフィス業務に対するDX支援をテーマとしたコンサルティングサービスが好調に推移した。

営業利益の減益要因は、売上構成比の変化による売上総利益率の低下(前期比1.5ポイント低下)で47百万円、販管費の増加で321百万円となっている。

(2) マーケティングコンサルティング事業
マーケティングコンサルティング事業の売上高は前期比6.4%減の3,571百万円、営業利益は同50.5%減の83百万円となった。期の前半は感染防止対策商品やテレワーク関連商品等の需要増加で堅調に推移していたが、各種イベント等の延期・中止に伴い、プロモーション商品の企画・制作を含むコンサルティング需要の減少やダイアリー等の一部キャンセルが発生したことで減収減益となった。

分野別の売上動向を見ると、マーケティングコンサルティングは前期比8.5%減の1,902百万円となった。デザインプロモーションは各種イベント等の延期・中止により、関連するプロモーション商品の企画・制作が減少したものの、感染防止対策商品(マスク・消毒液・飛沫防止用アクリルパネル等)やテレワーク関連商品のプロモーション企画等が好調に推移した。また、ブランドプロモーションは、第1四半期からの企業のプロモーション活動自粛により、集客イベントやキャンペーン等の企画が大きく減少したものの、第2四半期以降はデジタルを活用した新たなブランディング・プロモーション支援に注力し、好調に推移した。

SPツールの売上高は前期比4.6%増の701百万円となった。展示会や営業活動等で使用するプロモーション商品の販売は減少したものの、感染防止対策商品やテレワーク関連商品の伸長によりカバーし増収となった。また、ダイアリーは、ブルーダイアリー(手帳)等で一部キャンセルが発生した影響により、前期比9.4%減の966百万円となった。

営業利益の増減要因を見ると、販管費の削減で55百万円の増益、売上減と売上総利益率の低下(前期比1.9pt低下)で141百万円の減益となった。


無借金経営で自己資本比率は80%台と健全な財務状況
3. 財務状況と経営指標
2021年3月期末の総資産は前期末比435百万円増加の13,405百万円となった。主な変動要因を見ると、流動資産では現預金及び有価証券が1,142百万円増加し、固定資産では長期預金及び投資有価証券が1,560百万円減少し、グローウィン・パートナーズ(株)のグループ会社化に伴い、のれんが548百万円増加している。なお、長短合わせた現預金及び有価証券は8,697百万円と前期末比で418百万円減少したものの、総資産に占める比率は64.9%と引き続き高水準を維持している。

負債合計は前期末比43百万円減少の1,975百万円となった。流動負債で未払法人税等が74百万円、前受金が107百万円それぞれ減少し、固定負債では繰延税金負債71百万円、債務保証損失引当金28百万円をそれぞれ計上した。また、純資産は前期末比479百万円増加の11,430百万円となった。配当金369百万円を支出した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益498百万円を計上したほか、非支配株主持分が214百万円増加した。

経営指標を見ると、自己資本比率は83.1%と前期末から若干低下したものの高水準を維持しており、現預金及び有価証券も80億円以上と潤沢で無借金経営を維持していることから、財務の健全性は引き続き高いものと判断される。一方、収益性に関してはコロナ禍の影響によってROEや営業利益率など総じて低下した。ただ、(株)リーディング・ソリューションやグローウィン・パートナーズ(株)のグループ会社化によるシナジー効果によって成長ポテンシャルは従来よりも高まっており、収益性についても2022年3月期以降は上昇していく可能性が高いと弊社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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