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極東貿易 Research Memo(6):変革期〜発展期で持続的成長企業の実現“Change & Growth”(2)

注目トピックス 日本株
■中期経営計画と成長戦略

2. 新規ビジネス(M&A含む)の開発と育成
「KBKプラスワン2025」の最大の目玉は、新規ビジネス(M&A含む)である。5つの成長分野への取り組みをプロジェクト化し、経営資源投入を強化している。これは就任3年目となる岡田社長の強い思いでもあり、社長直轄プロジェクトとして、戦略的に取り組んでいる。5つの成長分野とは、1)再生可能エネルギー、2)水素・電池、3)環境衛生、4)バイオプロダクツ、5)産業向けDX・IoT、となっている。5つの成長分野については極東貿易<8093>もこれまで何らかの形で関わってきており、市場や技術の知見や経験が生かせる分野でもある。同社はそのなかから、複数の事業化を目論んでいる。ここで注目しておきたいポイントは、同社はM&Aの成功のための知見やノウハウを有していることである。過去7件以上M&Aを実行しているが、M&Aの後の収益性は全ての案件とも社内平均を上回っている。また、新規ビジネスのために5年間50億円投資枠(M&A)を設定している。現状の低収益の状況下、今回の「投資枠50億円」は投資リスクをとってでも次世代の柱事業を育成する覚悟が見受けられる。新規ビジネスプロジェクトは若手社員の精鋭部隊を中心にグループ企業も含め部門横断的に30名強が集結し、ビジネスプランづくりやM&A調査などに取り組んでいる。

(1) 再生可能エネルギー分野(基幹産業関連部門と産業素材関連部門)
再生可能エネルギーのビジネス分野を風力設備の建設や安全確保等絞り込んでおり、特に海洋関連では知見と経験があり「洋上風力発電」の事業化を進めている。現在、洋上風力の建設候補地(青森・秋田沖、銚子沖や長崎沖等)に足を運んで顧客ニーズの聴取などを行っている。同社は風車建設(メインコントラクターの役割)は行わないが、関連するメンテナンス機器や建設用の掘削機器、海中ケーブル等周辺機器に注力している。国内メーカーは海洋の地形の知見がない等洋上風力建設の経験が浅く、現時点では各社がスタートラインに立っている状態にあるため、同社にも商機は十二分にある。また、同社では風力発電のブレード(羽根)用炭素繊維の販売も既に始まっている。

(2) 水素・電池分野(産業素材関連部門)
水素ステーション等のカーボンニュートラル社会のインフラ設備(燃料電池車や水素ステーション等)に関連したビジネスへの取り組みを強化している。水素ステーション分野では、素材メーカーから炭素繊維を調達して水素タンクの設計・据付を行っている。また、電気・燃料電池分野では、リチウムイオンバッテリー(LiB)と燃料電池を組み合わせて、燃料電池車に応用開発を進めている。既にヨーロッパでは同社のLiBを搭載したバスやトラックが走行している。モスクワでも電池搭載バスは2019年から2020年にかけて実績が増えている。

(3) 環境衛生分野(産業素材関連部門)
産業用・工業用の廃水・汚水処理には、バイオ(微生物)の働きの利用や環境に優しい洗浄剤を使用している。一般に食品工場では油が混入した廃水処理に莫大な設備投資が求められるが、同社の廃水処理技術の特徴は食品工場の油を廃水し、その廃水をきれいな水と油に分解し、きれいな水はそのまま排水、油はボイラーの燃料に再利用する。同技術は食品工場の関係者から注目されており、導入した工場には多くの見学者が訪れている。特許に関しても現在申請中のようである。既存顧客(ハム・ソーセージ等食肉業界)の食品工場では既に実績があり、今後は医薬品や化学等の業界へ横展開を進めている。また、同社は、火力発電所の制御装置分野で電力会社と深く関わりがあり、エネルギー業界向け特殊機器や管理機器を販売してきたが、今後は廃ガスマネジメント等の市場展開を模索している。

(4) バイオプロダクツ分野(産業素材関連部門)
サステナブルな社会実現に向けて、「クモ糸繊維」「藻類バイオ燃料」といった植物由来や人工合成タンパク質等をキーワードとしたバイオプロダクツ分野に注目が集まっている。同社でも、植物由来素材を使った製品や再利用に取り組んでおり、現在は、“お〜いお茶”(伊藤園)用のティーバッグを樹脂コンパウンドメーカーと共同開発を進めている。同社は、顧客が植物由来の新素材や添加剤に興味を持っているものの実用化するまでの時間がかかるため、ジックリ取り組み、大きなビジネスに育てていきたいと考えている。

(5) 産業向けDX・IoT分野(基幹産業関連部門等)
ドローンの産業用途(保守点検、遠隔制御や監視等)が広まっている。同社でもドローン関連分野の事業化を推進している。同社は設備産業(電力、自動車等)に深く関わってきた経験上、顧客企業の業務プロセスや現場マネジメントに関して知見と経験があり、顧客企業の課題(無人化、遠隔常時監視等)をドローンで解決できるソリューション力を有している。同社の優位性は顧客企業の現場ニーズ(悩みや問題)を認識して、顧客視点で問題解決できることである。ドローン以外にも工場向けIoT機器や自走式ロボット等も取り組んでいる。

3. 株主価値・企業価値向上に資する資本戦略
株主価値・企業価値向上のためは、営業利益1,000百万円近くまで復調させたうえで、資本効率性の向上がキーとなる。「KBKプラスワン2025」では、2026年3月期の経営目標であるROE8%達成に向けて必要な成長投資(投資枠50億円等)を実行する一方で、自己資本を積み増さず資本効率性の向上を図る。その背景には、現在自己資本を積み増さなくても事業を推進する上での資金の余力があるためである。さらに、積極的な株主還元策を推進する。具体的には、「KBKプラスワン2025」の前半3年間は親会社株主に帰属する当期純利益を全て配当金に分配(配当性向100%)し、後半2年間は通常配当に戻すという増配継続を目指している。「KBKプラスワン2025」では、株価上昇を意識した資本戦略を図り、プライム市場にふさわしい「資本効率重視」の経営へワンランクアップし、資本市場から信頼を獲得してプライム市場の上場を確実なものとする考えである。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)




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