プロパスト Research Memo(7):2022年5月期は慎重な予想を維持
[21/08/03]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 2022年5月期の業績予想
プロパスト<3236>では、今後の事業環境については次のように見ている。日本経済は、新型コロナウイルスのワクチンの普及が見込まれるなかで、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの延長等の各種政策の効果や海外経済の改善等を背景に、持ち直しの動きが継続することが期待されている。しかし、国内外のコロナ禍の動向や金融資本市場の変動等に注視する必要がある。同社が属する不動産業界に関しては、コロナ禍の影響によるインバウンドの減少や外出自粛といった影響が見込まれる宿泊業や飲食業のテナントを有する商業ビル等において、稼働率や賃料収入が低下する状況が継続することが想定される。一方で、首都圏における新築分譲マンション発売戸数は2021年5月が前年同月比556.0%増となったほか、在庫についても2020年11月以来の6,000戸台まで圧縮が進むなど、首都圏エリアに対する住宅需要は堅調さを示している。
このような経済環境下において、同社ではこれまでと同様に首都圏エリアにおける駅近等の利便性の高いレジデンス物件を中心に仕入れを行い、分譲開発物件についてはDINKS層を主たる顧客ターゲットとして捉えていく。同時に、賃貸開発物件やバリューアップ物件については富裕層やファンドを主たる顧客ターゲットとして事業展開を図る考えだ。また、物件取得については立地や価格に関して、売却想定価格を意識しつつ、より厳選したうえで取得する。そして、同社の強みである創造デザイン力やプレゼンデザイン力を生かせる分譲開発物件の販売を進める方針だ。また、コストや建築期間等を抑制した賃貸開発物件に取り組むことで事業拡大を図る。さらに、首都圏エリアにおいて割安な収益不動産を精査して購入し、効率的に改修工事を行うことで既存建物の付加価値を高めたバリューアップ物件の売却を併せて展開する計画である。
以上から、2022年5月期の業績予想は、売上高20,364百万円(前期比7.8%増)、営業利益1,457百万円(同15.0%減)、経常利益980百万円(同24.5%減)、当期純利益696百万円(同24.3%減)の増収減益を計画している。賃貸開発事業は、前期までと同様の好調継続を見込む。また、2021年5月期は十分な仕入れができず減収減益となったバリューアップ事業も、2022年5月期は通常ベースに戻ると見る。ただ、分譲開発事業については引き続き慎重に見ている。コロナ禍による不動産業界への影響が懸念されており、業界内でも特にホテルや商業ビルを取り扱う不動産会社は業績の落ち込みが大きいと見られるが、同社はレジデンスが事業の中心であり、影響は比較的小さいと考えられる。また、同社では例年、期初には慎重な予想を発表しており、2022年5月期もコロナ禍が経済に与える悪影響も勘案して、現時点での保有プロジェクトを前提に、慎重な予想を立てていることから、業績の下振れリスクは極めて小さいと考えられる。最終的には、2021年5月期決算と同様に、予想を上回って着地する可能性が高いと考えられる。
2. 2023年5月期以降の業績見通し
同社が属する不動産業界では、マンション価格の上昇に伴う契約率低下、2020年からのコロナ禍に伴う郊外への居住増加傾向、2021年に延期された東京オリンピック・パラリンピック後の建設需要の落ち込みの影響等が懸念されるものの、一方では低水準で推移する住宅ローン金利が下支え要因として期待されている。業界の先行指標となる新設住宅着工戸数は、2018年度までの高水準からは減少し、加えて足元ではコロナ禍の影響を受けて落ち込んでいるが、コロナ禍が収束すれば長期的にはおおむね横ばいでの推移が見込まれている。最近ではコロナ禍を避けて郊外の不動産を選択する動きもあるが、生活・社会インフラが整って利便性の高い都心部の魅力は大きく、コロナ禍の収束後は都心部の需要が郊外に比べて強いという、二極化の動きに回帰するであろう。
こうした経済環境のもと、同社では強みである創造デザイン力やプレゼンデザイン力を生かせる分譲開発物件の取得を進めるとともに、コストや建築期間等を抑制した賃貸開発物件に取り組むことで事業拡大を図っていく。また、割安な収益不動産を精査して購入し、効率的に改修工事を行うことで既存建物の付加価値を高めたバリューアップ物件の売却を併せて展開していく方針である。賃貸開発事業やバリューアップ事業では、今後はファンドが売却先に加わる予定であり、購買層がさらに広がる見通しである。同社では今後の業績に貢献すべく、駅近の好物件を積極的に仕入れ始めている。
不動産業界内では、好調な会社と不調な会社の二極化が進行している。同社では都心部で駅から徒歩5分程度の好立地物件にターゲットを絞り、買い付けの意思決定を迅速に行うことで他社に先駆けて好物件の仕入れが可能になっている。また、将来的には好立地の町工場が事業継承できずに売却に出されるとの見方もある。同社は、こうした物件の仕入力に、定評のある企画力・デザイン力を加えることで、事業環境が厳しさを増すなかでも、3事業がうまく補完し合うことで、2023年5月期以降も堅調な業績を維持できると弊社では考えている。
同社では現状、対外的に中期経営計画を発表していない。同社の事業規模では業績が振れる可能性が大きいため、計画を発表すると投資家をミスリードする可能性があるとの経営判断によるものである。ただ、会社としての経営方針を明確化し、同社の投資家や従業員が同社の将来像を共有するためにも、中期経営計画の正式発表は有意義であると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
<EY>
1. 2022年5月期の業績予想
プロパスト<3236>では、今後の事業環境については次のように見ている。日本経済は、新型コロナウイルスのワクチンの普及が見込まれるなかで、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの延長等の各種政策の効果や海外経済の改善等を背景に、持ち直しの動きが継続することが期待されている。しかし、国内外のコロナ禍の動向や金融資本市場の変動等に注視する必要がある。同社が属する不動産業界に関しては、コロナ禍の影響によるインバウンドの減少や外出自粛といった影響が見込まれる宿泊業や飲食業のテナントを有する商業ビル等において、稼働率や賃料収入が低下する状況が継続することが想定される。一方で、首都圏における新築分譲マンション発売戸数は2021年5月が前年同月比556.0%増となったほか、在庫についても2020年11月以来の6,000戸台まで圧縮が進むなど、首都圏エリアに対する住宅需要は堅調さを示している。
このような経済環境下において、同社ではこれまでと同様に首都圏エリアにおける駅近等の利便性の高いレジデンス物件を中心に仕入れを行い、分譲開発物件についてはDINKS層を主たる顧客ターゲットとして捉えていく。同時に、賃貸開発物件やバリューアップ物件については富裕層やファンドを主たる顧客ターゲットとして事業展開を図る考えだ。また、物件取得については立地や価格に関して、売却想定価格を意識しつつ、より厳選したうえで取得する。そして、同社の強みである創造デザイン力やプレゼンデザイン力を生かせる分譲開発物件の販売を進める方針だ。また、コストや建築期間等を抑制した賃貸開発物件に取り組むことで事業拡大を図る。さらに、首都圏エリアにおいて割安な収益不動産を精査して購入し、効率的に改修工事を行うことで既存建物の付加価値を高めたバリューアップ物件の売却を併せて展開する計画である。
以上から、2022年5月期の業績予想は、売上高20,364百万円(前期比7.8%増)、営業利益1,457百万円(同15.0%減)、経常利益980百万円(同24.5%減)、当期純利益696百万円(同24.3%減)の増収減益を計画している。賃貸開発事業は、前期までと同様の好調継続を見込む。また、2021年5月期は十分な仕入れができず減収減益となったバリューアップ事業も、2022年5月期は通常ベースに戻ると見る。ただ、分譲開発事業については引き続き慎重に見ている。コロナ禍による不動産業界への影響が懸念されており、業界内でも特にホテルや商業ビルを取り扱う不動産会社は業績の落ち込みが大きいと見られるが、同社はレジデンスが事業の中心であり、影響は比較的小さいと考えられる。また、同社では例年、期初には慎重な予想を発表しており、2022年5月期もコロナ禍が経済に与える悪影響も勘案して、現時点での保有プロジェクトを前提に、慎重な予想を立てていることから、業績の下振れリスクは極めて小さいと考えられる。最終的には、2021年5月期決算と同様に、予想を上回って着地する可能性が高いと考えられる。
2. 2023年5月期以降の業績見通し
同社が属する不動産業界では、マンション価格の上昇に伴う契約率低下、2020年からのコロナ禍に伴う郊外への居住増加傾向、2021年に延期された東京オリンピック・パラリンピック後の建設需要の落ち込みの影響等が懸念されるものの、一方では低水準で推移する住宅ローン金利が下支え要因として期待されている。業界の先行指標となる新設住宅着工戸数は、2018年度までの高水準からは減少し、加えて足元ではコロナ禍の影響を受けて落ち込んでいるが、コロナ禍が収束すれば長期的にはおおむね横ばいでの推移が見込まれている。最近ではコロナ禍を避けて郊外の不動産を選択する動きもあるが、生活・社会インフラが整って利便性の高い都心部の魅力は大きく、コロナ禍の収束後は都心部の需要が郊外に比べて強いという、二極化の動きに回帰するであろう。
こうした経済環境のもと、同社では強みである創造デザイン力やプレゼンデザイン力を生かせる分譲開発物件の取得を進めるとともに、コストや建築期間等を抑制した賃貸開発物件に取り組むことで事業拡大を図っていく。また、割安な収益不動産を精査して購入し、効率的に改修工事を行うことで既存建物の付加価値を高めたバリューアップ物件の売却を併せて展開していく方針である。賃貸開発事業やバリューアップ事業では、今後はファンドが売却先に加わる予定であり、購買層がさらに広がる見通しである。同社では今後の業績に貢献すべく、駅近の好物件を積極的に仕入れ始めている。
不動産業界内では、好調な会社と不調な会社の二極化が進行している。同社では都心部で駅から徒歩5分程度の好立地物件にターゲットを絞り、買い付けの意思決定を迅速に行うことで他社に先駆けて好物件の仕入れが可能になっている。また、将来的には好立地の町工場が事業継承できずに売却に出されるとの見方もある。同社は、こうした物件の仕入力に、定評のある企画力・デザイン力を加えることで、事業環境が厳しさを増すなかでも、3事業がうまく補完し合うことで、2023年5月期以降も堅調な業績を維持できると弊社では考えている。
同社では現状、対外的に中期経営計画を発表していない。同社の事業規模では業績が振れる可能性が大きいため、計画を発表すると投資家をミスリードする可能性があるとの経営判断によるものである。ただ、会社としての経営方針を明確化し、同社の投資家や従業員が同社の将来像を共有するためにも、中期経営計画の正式発表は有意義であると言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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