エヌ・シー・エヌ Research Memo(8):2022年3月期は大規模木造建築(非住宅)分野が大幅に回復
[21/08/05]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 2022年3月期の業績予想
エヌ・シー・エヌ<7057>の2022年3月期の業績予想については、売上高7,365百万円(前期比14.5%増)、売上総利益1,938百万円(同20.1%増)、営業利益202百万円(同28.6%減)、経常利益257百万円(同20.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益200百万円(同11.1%減)を見込んでいる。同社は2022年3月期のテーマとして成長分野への投資を掲げている。成長分野である(1)大規模木造建築(非住宅)分野と(2)BIM事業における3次元CADの分野に対しての投資、そして技術部門への投資として(3)R&Dセンターを開設する予定である。2022年3月期の販管費については前期比30.5%増の1,736百万円を計画しており、これらの成長投資を行うことにより、各利益では2ケタの減益を見込んでいる。なお、住宅分野の売上高は5,894百万円(前期比7.2%増)と増加を見込んでいるほか、大規模木造建築(非住宅)分野の売上高については、コロナ禍により止まっていた工事現場が再開することにより、1,071百万円(同86.8%増)と大幅な増収、その他については399百万円(同10.5%増)と連続で2ケタの増収を見込んでいる。
2020年3月期までは約500社の既存登録店の活性化に注力していたが、同社のシステム及び体制が整ってきたことから、2021年3月期においては耐震性の高い木造住宅のさらなる普及に向けて、新規登録店の獲得強化を図っており、45社を加え546社となった。登録施工店の増加により、物件受付数・見積出荷数も堅調に推移しているが、建築士法(施行規則第21条関係)の見直しによって、木造2階建てで延べ面積が500m2以下の4号建築物(4号建物)についても構造計算等に係る図書について15年間保存することが義務づけられたことを鑑みれば、今後においても登録施工店の増加によるネットワークは拡大すると考えられ、物件受付数・見積出荷数の増加傾向が継続すると弊社では考えている。
2. 成長分野への投資
2022年3月期のテーマとして成長分野への投資を掲げている。成長分野である(1)大規模木造建築(非住宅)分野と(2)BIM事業における3次元CADの分野に対しての投資、そして技術部門への投資として(3)R&Dセンターの開設と、3つの成長分野に積極投資を推進する。
(1) 大規模木造建築(非住宅)分野
大規模木造建築(非住宅)分野の投資計画については、(1)人材の獲得強化、(2)プレカット工場ネットワークの拡大、(3)積極的なプロモーションによる認知度向上を掲げる。人材の獲得強化については、日本では木造住宅の構造計算については行っていなかったため、人材の確保がなかなかできない状況にある。ただし、同社は年間で1,600戸の建物の構造計算をしている実績を生かし、新たな人材に対する教育も可能と考えられ、他のゼネコンや工務店と比べて人材を増やして強化しやすい素地があると弊社では考えている。そのため、人材獲得に対して相対的に優位な位置にあるだろう。プレカット工場ネットワークの拡大については前述のとおり2021年3月期においては、全国の工場、大手18社と提携し、プレカット工場ネットワークを形成している。2022年3月期においても、このネットワークを30社まで増やす計画であり、プレカット工場の供給量を増やすための全国ネットワークの拡大を推進することにより、大規模木造建築(非住宅)分野の生産能力を拡充させる。また、積極的なプロモーションによる認知度向上については、木構造デザインによる大規模木造(非住宅)物件の引き合いを増やすための認知活動の強化に向けた投資を行っていく。これらの施策により中期経営計画における売上計画の中で、2023年3月期の大規模木造建築(非住宅)分野の売上高を約30億円まで伸ばすことを目標としている。2021年3月期はコロナ禍の影響から計画は未達だったが、中期経営計画をコロナ禍により後ろ倒しにすることなく、計画通り実現していく予定であり、そのためにも今回の投資については、2023年3月期に大きく飛躍するための一年であるという位置付けであろう。
(2) BIM事業
BIM事業については、世界の普及状況及び木造分野の普及状況から鑑みて、同社の急成長のカギとなると弊社では考えている。まずBIMとはコンピュータ上に作成した主に3次元の形状情報に加え、室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げなど、建築物の属性情報を併せ持つ建築物情報モデルを構築するシステムをいう。設計、施工から、維持管理など、さまざまなフェーズで、単一のBIMモデルに蓄積された情報を活用、共有、管理することで、建築物の品質や性能を向上させるとともに、業務効率を改善させる。英国では2013年、2025年までにさらにBIMを活用し建築事業におけるコストを33%削減、工期の50%短縮を目標として定めた「Construction2025」を発表している。米国では2012年に建設会社におけるBIM導入率が7割程度となり、土木分野においてもBIM活用率が5割に達している。日本の建築物の図面はこれまで手書きや平面図など、2次元で受け渡しが行われているが、世界中で2次元の図面だけで建築を行っている国はほとんどない状況である。国内ゼネコンにおけるBIMの導入率は約8割まで上昇しているようであるが、実際の建物に使われ始めたのは2019年から2020年にかけてからである。木造分野においては導入率が低く比率すらデータ化されていない状況である。世界標準の流れから相当遅れを取っている日本では、Society 5.0の社会実装を進めるため、建設分野の制度改革として、BIMの活用及び進展が進むことが見込まれる。同社ではBIM事業の拡大に向けて2021年6月に新拠点となるBIM/CADセンターを開設した。
(3) R&Dセンター
木構造の基礎研究を目的としてR&Dセンターの設立を予定している。国産材の利用率向上や、大規模木造建築の引き合い増加に伴う接合部の開発強化、SE構法のシステム強化を行う計画である。これから必要になる木構造の接合部の強度や耐震性能について、基礎的な研究を行っていく必要があり、足腰の強い技術開発をしていきたいと考えているようである。「SE構法」は、4階建て、5階建てを実現しているが、木造による超高層ビルになると、日本では法律の変更が必要になるものの、ドイツではCLTという材料を使い、ビルディングを木造で作ることも増えているようであり、木造建築物の高層化に向けた取り組みに向けて、今後のR&Dセンターでの研究開発が重要になりそうだ。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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1. 2022年3月期の業績予想
エヌ・シー・エヌ<7057>の2022年3月期の業績予想については、売上高7,365百万円(前期比14.5%増)、売上総利益1,938百万円(同20.1%増)、営業利益202百万円(同28.6%減)、経常利益257百万円(同20.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益200百万円(同11.1%減)を見込んでいる。同社は2022年3月期のテーマとして成長分野への投資を掲げている。成長分野である(1)大規模木造建築(非住宅)分野と(2)BIM事業における3次元CADの分野に対しての投資、そして技術部門への投資として(3)R&Dセンターを開設する予定である。2022年3月期の販管費については前期比30.5%増の1,736百万円を計画しており、これらの成長投資を行うことにより、各利益では2ケタの減益を見込んでいる。なお、住宅分野の売上高は5,894百万円(前期比7.2%増)と増加を見込んでいるほか、大規模木造建築(非住宅)分野の売上高については、コロナ禍により止まっていた工事現場が再開することにより、1,071百万円(同86.8%増)と大幅な増収、その他については399百万円(同10.5%増)と連続で2ケタの増収を見込んでいる。
2020年3月期までは約500社の既存登録店の活性化に注力していたが、同社のシステム及び体制が整ってきたことから、2021年3月期においては耐震性の高い木造住宅のさらなる普及に向けて、新規登録店の獲得強化を図っており、45社を加え546社となった。登録施工店の増加により、物件受付数・見積出荷数も堅調に推移しているが、建築士法(施行規則第21条関係)の見直しによって、木造2階建てで延べ面積が500m2以下の4号建築物(4号建物)についても構造計算等に係る図書について15年間保存することが義務づけられたことを鑑みれば、今後においても登録施工店の増加によるネットワークは拡大すると考えられ、物件受付数・見積出荷数の増加傾向が継続すると弊社では考えている。
2. 成長分野への投資
2022年3月期のテーマとして成長分野への投資を掲げている。成長分野である(1)大規模木造建築(非住宅)分野と(2)BIM事業における3次元CADの分野に対しての投資、そして技術部門への投資として(3)R&Dセンターの開設と、3つの成長分野に積極投資を推進する。
(1) 大規模木造建築(非住宅)分野
大規模木造建築(非住宅)分野の投資計画については、(1)人材の獲得強化、(2)プレカット工場ネットワークの拡大、(3)積極的なプロモーションによる認知度向上を掲げる。人材の獲得強化については、日本では木造住宅の構造計算については行っていなかったため、人材の確保がなかなかできない状況にある。ただし、同社は年間で1,600戸の建物の構造計算をしている実績を生かし、新たな人材に対する教育も可能と考えられ、他のゼネコンや工務店と比べて人材を増やして強化しやすい素地があると弊社では考えている。そのため、人材獲得に対して相対的に優位な位置にあるだろう。プレカット工場ネットワークの拡大については前述のとおり2021年3月期においては、全国の工場、大手18社と提携し、プレカット工場ネットワークを形成している。2022年3月期においても、このネットワークを30社まで増やす計画であり、プレカット工場の供給量を増やすための全国ネットワークの拡大を推進することにより、大規模木造建築(非住宅)分野の生産能力を拡充させる。また、積極的なプロモーションによる認知度向上については、木構造デザインによる大規模木造(非住宅)物件の引き合いを増やすための認知活動の強化に向けた投資を行っていく。これらの施策により中期経営計画における売上計画の中で、2023年3月期の大規模木造建築(非住宅)分野の売上高を約30億円まで伸ばすことを目標としている。2021年3月期はコロナ禍の影響から計画は未達だったが、中期経営計画をコロナ禍により後ろ倒しにすることなく、計画通り実現していく予定であり、そのためにも今回の投資については、2023年3月期に大きく飛躍するための一年であるという位置付けであろう。
(2) BIM事業
BIM事業については、世界の普及状況及び木造分野の普及状況から鑑みて、同社の急成長のカギとなると弊社では考えている。まずBIMとはコンピュータ上に作成した主に3次元の形状情報に加え、室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げなど、建築物の属性情報を併せ持つ建築物情報モデルを構築するシステムをいう。設計、施工から、維持管理など、さまざまなフェーズで、単一のBIMモデルに蓄積された情報を活用、共有、管理することで、建築物の品質や性能を向上させるとともに、業務効率を改善させる。英国では2013年、2025年までにさらにBIMを活用し建築事業におけるコストを33%削減、工期の50%短縮を目標として定めた「Construction2025」を発表している。米国では2012年に建設会社におけるBIM導入率が7割程度となり、土木分野においてもBIM活用率が5割に達している。日本の建築物の図面はこれまで手書きや平面図など、2次元で受け渡しが行われているが、世界中で2次元の図面だけで建築を行っている国はほとんどない状況である。国内ゼネコンにおけるBIMの導入率は約8割まで上昇しているようであるが、実際の建物に使われ始めたのは2019年から2020年にかけてからである。木造分野においては導入率が低く比率すらデータ化されていない状況である。世界標準の流れから相当遅れを取っている日本では、Society 5.0の社会実装を進めるため、建設分野の制度改革として、BIMの活用及び進展が進むことが見込まれる。同社ではBIM事業の拡大に向けて2021年6月に新拠点となるBIM/CADセンターを開設した。
(3) R&Dセンター
木構造の基礎研究を目的としてR&Dセンターの設立を予定している。国産材の利用率向上や、大規模木造建築の引き合い増加に伴う接合部の開発強化、SE構法のシステム強化を行う計画である。これから必要になる木構造の接合部の強度や耐震性能について、基礎的な研究を行っていく必要があり、足腰の強い技術開発をしていきたいと考えているようである。「SE構法」は、4階建て、5階建てを実現しているが、木造による超高層ビルになると、日本では法律の変更が必要になるものの、ドイツではCLTという材料を使い、ビルディングを木造で作ることも増えているようであり、木造建築物の高層化に向けた取り組みに向けて、今後のR&Dセンターでの研究開発が重要になりそうだ。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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