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サムティ Research Memo(7):「開発して保有する」ビジネスへの転換により、安定収益の拡大を目指す方針

注目トピックス 日本株
■中期経営計画(アフターコロナ版)の進捗

1. 中期経営計画の概略
サムティ<3244>は、2019年11月期から2021年11月期までの中期経営計画「サムティ強靭化計画」を推進してきたが、コロナ禍による影響や今後の環境変化等を見据え、2021年1月に新たな中期経営計画(5ヶ年)「サムティ強靭化計画(アフターコロナ版)」を公表した。基本方針として、1) 「開発して保有する」ビジネスへの転換、2) ホテルREIT設立に向けた取り組みの継続、3) 地方大都市圏における戦略的投資の継続、4) 海外事業での収益基盤の構築、の4点を掲げている。特に、これまでとの違いで言えば、1)と4)にあり、「資産保有型」のデベロッパーとして収益の安定化を図ることや、今後の成長軸として海外事業へ着手することが新たな方向性として打ち出された。

(1) 「開発して保有する」ビジネスへの転換
これまで、投資収益の早期回収やキャッシュ・フロー獲得のため、完成物件については速やかに売却する方針で展開してきたが、消費税改正に伴う対応※や、賃料単価や売却価格の好調な地合い等も勘案したうえで、原則3年間保有することにより、インカムゲイン(賃貸収入等)を最大限享受する方針へと見直した。

※2020年の消費税における税制改正により、建物の消費税については取得年度の支払消費税に含めることができなくなったが、取得・施工引渡しの期を含めて3年以内に売却すると税務上のメリット(支払消費税の一部還付)を受けられることから、完成後3年での売却を原則としている。


(2) ホテルREIT設立に向けた取り組みの継続
観光立国実現のための政策が堅持されるなかで、コロナ禍収束後の需要の戻りや業界再編の動きを取り込むため、引き続き既存ホテルの収益力強化を図るとともに、ホテルREIT設立へ向けた取り組みを継続していく。また、今後の開発案件についても厳選投資を継続し、中長期的な視野でREIT資産の積み上げに貢献する方針である。

(3) 地方大都市圏における戦略的投資の継続
引き続き、需要を見極めながら全国主要都市での投資を拡大していく方針である。今後は開発ペースを加速し、完成後は一定期間保有することで、安定的な賃貸収入の拡大を目指す。

(4) 海外事業での収益基盤の構築
ベトナムにおけるVHMとの共同事業を契機に、同社グループの長年培ったノウハウを活用し、ASEAN諸国の経済成長や都市人口増加に伴う住宅需要増を取り込んでいく戦略であり、今後の成長ドライバーとして位置付けている。特に、経済成長率が著しいベトナムについては、現地有力デベロッパーとの協業による開発リスクの低減や現地税率によるメリットも享受していく方針である。既述のとおり、足元ではコロナ禍の影響が拡大しているものの、プロジェクトの一部の販売を開始すると、申し込み数は着実に伸びており、確かな手応えを得ることができた。

2. 投資計画
今後5年間(2021年11月期から2025年11月期)の投資計画として約7,500億円を掲げており、その内訳は、レジデンス開発3,000億円、ホテル・オフィス開発1,200億円、収益不動産の取得2,500億円のほか、新たなテーマである海外事業800億円により構成されている。また、「開発して保有する」ビジネスへの転換や、SRR及びホテルREITの成長により、2025年11月期のグループ資産を1兆円(連結資産では5,000億円)に拡大する方針である。なお、2021年11月期上期まで(半年間)の投資実績は合計2,113億円(進捗率28.2%)にのぼり、グループ資産も前期末比782億円増の4,475億円に拡大しており、順調なスタートを切った。

3. 業績目標
最終年度である2025年11月期の業績目標として、売上高2,200億円水準(うち、賃貸収入等は450億円)、営業利益350億円以上、ROE15.0%水準、ROA7.0%水準、自己資本比率30.0%以上を目指している。また、収益構造の転換により、営業利益に占めるインカムゲイン(賃貸収入等)の構成比を50%(現在は15%程度)に引き上げるとともに、海外事業の構成比は15%を見込んでいる。すなわち、これまでの国内キャピタルゲイン(開発利益等)中心から、安定収益であるインカムゲイン(賃貸収入等)中心の収益モデルへ移行するとともに、新たな成長ドライバーとして海外でのキャピタルゲインを獲得していく方向性である。

4. 弊社アナリストによる注目点
弊社アナリストも、今後さらに事業を拡大し、持続的な成長を実現していくためには、積み上げ型の収益モデルへの転換や海外展開は理にかなった戦略であり、同社はまさに次のステージに向けた変革期にあると捉えている。ただ、収益構造の転換を進めるにあたって、当面は保有資産の積み上げを優先する(物件売却を抑える)ことが想定されるため、それに伴って売上高の伸びが一旦緩やかになる可能性があることに注意が必要である。したがって、戦略的な進捗を評価するためには、保有資産の拡大ペースやインカムゲイン(賃貸収入等)の伸びに着目することが妥当であろう。もっとも、原則3年以内の物件売却を予定していることから、最長でも3年後には売上高の伸びも回復していくことが想定される。また、現地の有力デベロッパーとの協業による海外事業(ベトナム)のポテンシャルにも期待したい。今回のプロジェクトを契機として、これまで培ってきたノウハウや迅速な経営判断を生かし、さらなる展開に結び付けていけるかがポイントとなろう。それらを踏まえ、中長期的な目線から、(1) ホテルREIT上場や他社との連携(外資オペレーター等)を含む、ホテル事業の強化に向けた動きや、(2) 地方都市圏における戦略的投資の進捗、(3) 海外事業(ベトナム)の動向や今後の展開などに注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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