城南進研 Research Memo(7):2022年3月期は4期ぶりの増収、営業利益の黒字転換を見込む
[21/08/23]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 2022年3月期業績の見通し
城南進学研究社<4720>の2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比13.6%増の6,485百万円、営業利益で260百万円(前期は637百万円の損失)、経常利益で262百万円(同585百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で186百万円(同1,056百万円の損失)と4期ぶりの増収に転じ、各利益とも黒字に転換する見通しだ。
売上高については、コロナ禍が続くなかで受講生徒数の回復等による教育事業の回復を見込んでいるほか、スポーツ事業もスイミングクラブが通年稼働することで2020年3月期並みの水準に回復することが増収要因となる。営業利益に関しては増収効果に加えて、人件費、広告宣伝費、賃借料の絞り込みやソリューション事業を伸ばすことで黒字転換を目指す。人件費についてはRPAツールの導入によるバックオフィス部門のスリム化や、各教場におけるスタッフのスリム化、正社員の約1割にあたる30名程度の削減を実施する予定だ。賃借料については2021年3月期から値下げ交渉を行っており、その効果が2022年3月期も継続するものと見られる。リスク要因としては、コロナ禍の影響が想定以上に長期化し、新規生徒の募集活動等に影響を及ぼす可能性のある点が挙げられる。
(1) 個別指導部門
個別指導部門の売上高は前期比5%以上の増加を見込んでいる。「城南コベッツ」「城南予備校DUO」ともに直営教室の新規開設予定はなく、生徒数の増加と生徒当たり単価の回復が増収要因となる。特に生徒当たり単価は、2020年に短縮された学校の夏休み期間が正常化することで、夏期講習の売上回復が見込まれている。「城南コベッツ」のFC教室については増加する可能性がある。他の個別指導塾から乗り換えを検討しているオーナーからの問い合わせがあるためだ。これら案件が決まれば増収率も7〜8%程度となる見通しだ。
「城南コベッツ」では差別化戦略として、EdTechの活用による学力向上モデルの構築に取り組んでいる。小中学生向けには「デキタス」、中高校生向けには「atama+」をデジタル教材として導入し、また、学習の進捗度合いを管理するアプリ「GoNAVI」の提供を開始し、これらを組み合わせることで基礎学力の向上スピードを迅速化し、差別化戦略としている。また、中高生向けの英語受験対策として、英語4技能対応のオリジナルテキスト「5 Codes English」を開発し、英語プログラムとして提供している。なお、現在不採算になっている教室に関しては整理統合し、2022年3月期までに不採算教室ゼロを目指している。
(2) 映像授業部門
映像授業部門の売上高は前期比9%増を見込んでいる。校舎数については条件の良い物件が見つかれば新規開設する方針だが会社計画には織り込んでおらず、既存校舎における生徒数の増加と生徒当たり売上単価の上昇が増収要因となる。前期より在宅でのオンライン受講が可能となったこともあり、同部門については順調な成長が見込まれる。
(3) 幼少教育部門
幼少教育のうち、「くぼたのうけん」については前期比20%弱の増収となる見通し。複合型スクール「城南ブレインパーク」について、2021年5月にお茶の水校を新たに開校、同年8月に新浦安校を開校予定のほか、提供プログラムもプログラミング教室「Viscuit(ビスケット)」や、こどもの哲学「P4C Little Thikers」、英語で理科実験「Little Scientist」など拡充し、受講者数の増加を見込んでいる。また、ソリューション事業として「くぼた式育児法」を全国の保育園・幼稚園に拡販していく計画となっている。
「ズー・フォニックス・アカデミー」についても、前期比10%超の増収を見込んでいる。校舎数は前期末と変わらないが、イングリッシュ・プリスクール(2〜4歳児対象)であった南浦和校に関して、2021年4月より、2〜6歳児を対象とした完全英語教育を実践するインターナショナル・スクールに移行したこと等により生徒数の増加を見込んでいる。南浦和校では英語が学べる学童保育「E-CAMP」も提供しており、子どもを長時間預かることで利益率の向上にも寄与することになり、高付加価値モデルになり得る事業として今後の動向が注目される。
「城南ルミナ保育園」については「くぼた式育児法」の導入により差別化を図っており、2022年3月期は若干の増収となる見通しだ。
(4) デジタル教材部門
デジタル教材部門の売上高は前期比3%増を見込む。「デキタス」の学校向けについては2021年度も「EdTech導入補助金」事業の対象サービスとなり、前期以上の売上貢献が期待される。また、学校以外では明日葉の学童保育施設向けでの利用者数増加に加えて、その他の学習塾並びに子ども向けスポーツクラブを運営している事業者からの引き合いもきており、これら事業者向けにも拡販していくことでさらなる成長を目指していく考えだ。
(5) グループ子会社
a) 乳幼児・児童教育関連
乳幼児・児童教育関連のうち、城南ナーサリーやフェアリィーなど認可保育園については、前期比2%程度の減収を見込んでいる。コロナ禍の影響により、0歳児を保育園に預けない保護者が増加しており、同社グループ保育園でも同様の傾向が見られていることが要因だ。保育園数については、城南ナーサリーが前期と同様8園の運営となり、フェアリィーについては2021年4月に1園を開設し、14園での運営となっている。いずれも「くぼた式育児法」の導入で差別化していく戦略となっている。
リトルランドについては、「くぼたのうけん」を中心とした各種教室の生徒数増加に加えて、「ピアノdeクボタメソッド」の認定講師講習会の増加によって前期比30%増を見込んでいる。売上高としては2020年3月期並みの水準まで回復する見通しだ。
Tresterが運営する「トレスター・インターナショナル・アフタースクール」は、2021年4月に1校(京急川崎駅前校)を開校し、全6校の運営となる。生徒数の増加と通年でフル寄与することにより、売上高は前期比30%増を見込んでいる。
b) 英語教育関連・スポーツ関連
リンゴ・エル・エル・シーの売上高は、コロナ禍で留学需要が低迷していることもあり、前期比微増収で計画している。一方、アイベックの売上高は、オンラインレッスン「プライムトーク」の受注増と企業の英語研修需要の回復により前期比50%増と2020年3月期に近い水準まで回復することを想定している。
久ケ原スポーツクラブの売上高については、施設が通年稼働することにより前期比50%増の360百万円と2020年3月期並みの水準まで回復することを見込んでいる。増収効果によって2021年3月期に0.9百万円まで落ち込んだ営業利益も、2020年3月期の実績109百万円に近い水準まで回復するものと予想される。
c) その他
その他、前期まで非連結対象子会社であった(株)イオマガジンを2021年6月より連結対象に組み入れている。同子会社はeラーニングのコンサルティングのほか、大企業や大学などで利用されているオンライン学習管理システム「Moodle(ムードル)」※の国内における正式パートナーとして導入支援・サポートを行っている。売上規模は年間1億円程度で営業利益率も約10%水準だが、2022年3月期は事業拡大のための人材投資を行うため、営業利益率は1%程度を見込んでいる。
※「Moodle」はオープンソースのeラーニングプラットフォームで、世界230ヵ国以上、約1.4億人が利用しており、日本でも大企業や大学などで利用されている。同子会社は2016年に正式パートナーとして認定され、サーバー構築から設定、運用、カスタマイズ開発を行っており、2021年7月より利活用促進のためのサポートサービスも開始している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2022年3月期業績の見通し
城南進学研究社<4720>の2022年3月期の連結業績は、売上高で前期比13.6%増の6,485百万円、営業利益で260百万円(前期は637百万円の損失)、経常利益で262百万円(同585百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で186百万円(同1,056百万円の損失)と4期ぶりの増収に転じ、各利益とも黒字に転換する見通しだ。
売上高については、コロナ禍が続くなかで受講生徒数の回復等による教育事業の回復を見込んでいるほか、スポーツ事業もスイミングクラブが通年稼働することで2020年3月期並みの水準に回復することが増収要因となる。営業利益に関しては増収効果に加えて、人件費、広告宣伝費、賃借料の絞り込みやソリューション事業を伸ばすことで黒字転換を目指す。人件費についてはRPAツールの導入によるバックオフィス部門のスリム化や、各教場におけるスタッフのスリム化、正社員の約1割にあたる30名程度の削減を実施する予定だ。賃借料については2021年3月期から値下げ交渉を行っており、その効果が2022年3月期も継続するものと見られる。リスク要因としては、コロナ禍の影響が想定以上に長期化し、新規生徒の募集活動等に影響を及ぼす可能性のある点が挙げられる。
(1) 個別指導部門
個別指導部門の売上高は前期比5%以上の増加を見込んでいる。「城南コベッツ」「城南予備校DUO」ともに直営教室の新規開設予定はなく、生徒数の増加と生徒当たり単価の回復が増収要因となる。特に生徒当たり単価は、2020年に短縮された学校の夏休み期間が正常化することで、夏期講習の売上回復が見込まれている。「城南コベッツ」のFC教室については増加する可能性がある。他の個別指導塾から乗り換えを検討しているオーナーからの問い合わせがあるためだ。これら案件が決まれば増収率も7〜8%程度となる見通しだ。
「城南コベッツ」では差別化戦略として、EdTechの活用による学力向上モデルの構築に取り組んでいる。小中学生向けには「デキタス」、中高校生向けには「atama+」をデジタル教材として導入し、また、学習の進捗度合いを管理するアプリ「GoNAVI」の提供を開始し、これらを組み合わせることで基礎学力の向上スピードを迅速化し、差別化戦略としている。また、中高生向けの英語受験対策として、英語4技能対応のオリジナルテキスト「5 Codes English」を開発し、英語プログラムとして提供している。なお、現在不採算になっている教室に関しては整理統合し、2022年3月期までに不採算教室ゼロを目指している。
(2) 映像授業部門
映像授業部門の売上高は前期比9%増を見込んでいる。校舎数については条件の良い物件が見つかれば新規開設する方針だが会社計画には織り込んでおらず、既存校舎における生徒数の増加と生徒当たり売上単価の上昇が増収要因となる。前期より在宅でのオンライン受講が可能となったこともあり、同部門については順調な成長が見込まれる。
(3) 幼少教育部門
幼少教育のうち、「くぼたのうけん」については前期比20%弱の増収となる見通し。複合型スクール「城南ブレインパーク」について、2021年5月にお茶の水校を新たに開校、同年8月に新浦安校を開校予定のほか、提供プログラムもプログラミング教室「Viscuit(ビスケット)」や、こどもの哲学「P4C Little Thikers」、英語で理科実験「Little Scientist」など拡充し、受講者数の増加を見込んでいる。また、ソリューション事業として「くぼた式育児法」を全国の保育園・幼稚園に拡販していく計画となっている。
「ズー・フォニックス・アカデミー」についても、前期比10%超の増収を見込んでいる。校舎数は前期末と変わらないが、イングリッシュ・プリスクール(2〜4歳児対象)であった南浦和校に関して、2021年4月より、2〜6歳児を対象とした完全英語教育を実践するインターナショナル・スクールに移行したこと等により生徒数の増加を見込んでいる。南浦和校では英語が学べる学童保育「E-CAMP」も提供しており、子どもを長時間預かることで利益率の向上にも寄与することになり、高付加価値モデルになり得る事業として今後の動向が注目される。
「城南ルミナ保育園」については「くぼた式育児法」の導入により差別化を図っており、2022年3月期は若干の増収となる見通しだ。
(4) デジタル教材部門
デジタル教材部門の売上高は前期比3%増を見込む。「デキタス」の学校向けについては2021年度も「EdTech導入補助金」事業の対象サービスとなり、前期以上の売上貢献が期待される。また、学校以外では明日葉の学童保育施設向けでの利用者数増加に加えて、その他の学習塾並びに子ども向けスポーツクラブを運営している事業者からの引き合いもきており、これら事業者向けにも拡販していくことでさらなる成長を目指していく考えだ。
(5) グループ子会社
a) 乳幼児・児童教育関連
乳幼児・児童教育関連のうち、城南ナーサリーやフェアリィーなど認可保育園については、前期比2%程度の減収を見込んでいる。コロナ禍の影響により、0歳児を保育園に預けない保護者が増加しており、同社グループ保育園でも同様の傾向が見られていることが要因だ。保育園数については、城南ナーサリーが前期と同様8園の運営となり、フェアリィーについては2021年4月に1園を開設し、14園での運営となっている。いずれも「くぼた式育児法」の導入で差別化していく戦略となっている。
リトルランドについては、「くぼたのうけん」を中心とした各種教室の生徒数増加に加えて、「ピアノdeクボタメソッド」の認定講師講習会の増加によって前期比30%増を見込んでいる。売上高としては2020年3月期並みの水準まで回復する見通しだ。
Tresterが運営する「トレスター・インターナショナル・アフタースクール」は、2021年4月に1校(京急川崎駅前校)を開校し、全6校の運営となる。生徒数の増加と通年でフル寄与することにより、売上高は前期比30%増を見込んでいる。
b) 英語教育関連・スポーツ関連
リンゴ・エル・エル・シーの売上高は、コロナ禍で留学需要が低迷していることもあり、前期比微増収で計画している。一方、アイベックの売上高は、オンラインレッスン「プライムトーク」の受注増と企業の英語研修需要の回復により前期比50%増と2020年3月期に近い水準まで回復することを想定している。
久ケ原スポーツクラブの売上高については、施設が通年稼働することにより前期比50%増の360百万円と2020年3月期並みの水準まで回復することを見込んでいる。増収効果によって2021年3月期に0.9百万円まで落ち込んだ営業利益も、2020年3月期の実績109百万円に近い水準まで回復するものと予想される。
c) その他
その他、前期まで非連結対象子会社であった(株)イオマガジンを2021年6月より連結対象に組み入れている。同子会社はeラーニングのコンサルティングのほか、大企業や大学などで利用されているオンライン学習管理システム「Moodle(ムードル)」※の国内における正式パートナーとして導入支援・サポートを行っている。売上規模は年間1億円程度で営業利益率も約10%水準だが、2022年3月期は事業拡大のための人材投資を行うため、営業利益率は1%程度を見込んでいる。
※「Moodle」はオープンソースのeラーニングプラットフォームで、世界230ヵ国以上、約1.4億人が利用しており、日本でも大企業や大学などで利用されている。同子会社は2016年に正式パートナーとして認定され、サーバー構築から設定、運用、カスタマイズ開発を行っており、2021年7月より利活用促進のためのサポートサービスも開始している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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