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FJネクスト Research Memo(6):2021年3月期は減収減益も高い業績水準。財務基盤の安定性も高水準を確保

注目トピックス 日本株
■業績推移

1. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、首都圏における資産運用型マンションに対する賃貸需要、並びに購入需要の拡大に支えられて業績は総じて順調に推移してきた。2009年3月期にリーマン・ショックに伴う景気後退の影響で業績のボトムを迎えたものの、エフ・ジェー・ネクスト<8935>は仕入高を追わずに採算性に合った仕入れを継続していくという方針のもと堅実な物件開発を進めたことで、大きな痛手を被った不動産業界においては比較的軽微な落ち込みで乗り切り、その後は景気回復とともに順調に業績を拡大してきた。2015年3月期は竣工時期の関係などにより一旦踊り場を迎えたが、2016年3月期以降は大幅な増収増益を続けており、売上高は2020年3月期まで5年連続で過去最高を更新した(2021年3月期はコロナ禍の影響により一旦後退)。社歴を重ねながらも、同社がまだまだ成長過程にあることを示している。

財務面では、業績の拡大に伴って有利子負債残高も増えてきたが、内部留保の積み増しなどにより自己資本比率も高い水準を維持しており、財務基盤の安定性に懸念はない。

なお、同社がリーマン・ショックに伴う厳しい業界環境を比較的スムーズに乗り切れたのは、厳選された好立地を含め、収益還元法による採算性を重視した「ガーラ」ブランドの資産価値の高さ、並びに同社の財務基盤の安定性によるものと言える。

2. 2021年3月期決算の概要
2021年3月期の業績は、売上高が前期比14.0%減の72,988百万円、営業利益が同29.4%減の7,351百万円、経常利益が同29.0%減の7,334百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同26.0%減の4,983百万円とコロナ禍の影響により、過去最高業績を更新した前期を下回る結果となった。ただ、期初計画に対しては概ね想定内であり、引き続き高い業績水準を維持したとの見方ができる。

減収となったのは、コロナ禍に伴い「不動産開発事業」におけるマンション販売戸数が2,013戸(前期比542戸減)に減少したことが主因である。特に、1回目の緊急事態宣言発令下(2020年4〜5月)における営業活動の一時的な自粛等により、第1四半期での落ち込みが響いた。ただ、第2四半期以降は、新築マンションの販売を中心に前期並みの業績まで回復しており、コロナ禍においても資産運用型マンションに対する需要に変化はないようだ。一方、安定収益源となっている「不動産管理事業」については、賃貸管理戸数の積み上げ※により順調に拡大した。「建設事業」においても、マンション建設及び大規模修繕工事を中心に堅調に推移した。また、「旅館事業」はコロナ禍の影響を一部受けたものの、「Go Toトラベルキャンペーン」の効果もあり最小限の範囲に抑えることができた。

※2021年3月末の賃貸管理戸数は17,080戸(前期末比1,137戸増)、建物管理棟数は311棟(同17棟増)と大きく拡大した。


利益面でも、減収に伴う収益の下押しにより減益となった。土地仕入価格や建築費が高止まりするなかで、売上原価率はほぼ横ばいで推移。一方、販管費率は減収による固定費負担の増加や人件費増等により悪化し、営業利益率は10.1%(前期は12.3%)に低下した。事業別で見ると、「不動産開発事業」が減収により減益となった一方、「不動産管理事業」及び「建設事業」は増益を確保した。「旅館事業」はセグメント損失を計上したものの想定内であり、業績全体に対する影響も軽微である。

一方、今後の業績の伸びに影響する「たな卸資産」(パイプライン)の状況については、「販売用不動産」(完成マンション)及び「仕掛販売用不動産」(開発用地及び開発中のマンション)ともに前期末比で減少した。もっとも、安定収益を確保する目的から、「販売用不動産」の一部を固定資産(自社保有の賃貸物件)に振り替えたことが影響している※1。また、「販売用不動産」については前期末比で減少したとは言え、新築マンションを中心に高い水準を維持しており、2022年3月期の業績に寄与するものとして捉えることができる。用地仕入れも概ね計画どおりに確保できているようだ。また、戦略的に取り組んでいる中古マンション※2については、販売戸数(2,013戸)のうち871戸、期末の販売用不動産(1,467戸)のうち501戸を占めており、保有期間中の賃貸収益※3を含めて、引き続き業績に寄与している。

※1 期末の「販売用不動産」のうち、中古マンション(約83億円)を有形固定資産へ振り替えている。
※2 中古マンションについては、新築物件の完成スケジュールとの調整を図りながら順次販売していくほか、保有期間中は賃貸収入を得られ、ストックビジネスとしての側面もある。弊社においても、中古マンションへの取り組みは新築物件だけに依存しない、同社ならではの収益機会の確保という点に注目している。さらに、購入者にとっても、中古市場の活性化(流動性の厚み)はいざというときのために大きなメリットがあるものと評価している。
※3 賃貸収入は「不動産開発事業」に含まれている。2021年3月期の賃貸収入は、前期比4.1%増の7,516百万円と順調に伸びている。


財政状態については、前述のとおり、「たな卸資産」が減少した一方、有形固定資産が増加し、その結果、総資産は前期末比2.7%減の84,375百万円となった。一方、自己資本は内部留保の積み増しにより同7.1%増の53,869百万円に増加したことから、自己資本比率は63.8%(前期末は58.0%)に上昇した。有利子負債は同20.4%減の20,815百万円に減少し、有利子負債比率は24.7%(30.2%)に低下。支払能力を示す流動比率も535.8%と高い水準にあることから、財務の安全性に懸念はない。また、資本効率を示すROEは9.6%(前期は14.1%)と低下したものの、ほぼ10%水準を確保しており、バランスの良い財務内容と言える。

3. 2022年3月期の業績予想
2022年3月期の業績予想について同社は、売上高を前期比11.0%増の81,000百万円、営業利益を同8.8%増の8,000百万円、経常利益を同9.1%増の8,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同10.4%増の5,500百万円と増収増益を見込んでいる。今後のコロナ禍による影響が依然不透明であるなか、コロナ禍以前の水準に完全には戻らないとの想定のもと、「不動産開発事業」の一定の回復が増収に寄与する見通しである。販売戸数は2,400戸(前期比387戸増)を計画している。利益面でも、増収により増益を実現するものの、各プロジェクトの原価率を保守的に見積もり、営業利益率は9.9%(前期は10.1%)に若干低下する想定となっている。

弊社でも、コロナ禍による影響については、引き続き注視する必要があるものの、首都圏における賃貸需要については底堅く推移しているうえ、潜在的な購入需要も根強いこと、一定水準のたな卸資産(パイプライン)を確保していることなどから総合的に判断すれば、同社の業績予想の達成は十分に可能であると見ている。注目すべきは、今後のニューノーマルを見据え2023年3月期以降の業績をどのように伸ばしていくのかにある。成長の軸となる用地仕入れや中古マンションの買い取り等の進捗をはじめ、将来に向けた取り組み(ニューノーマルに沿った新たな営業スタイルの確立やファンづくりの仕組み、DX推進による居住空間価値の創出等)にも注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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