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オークファン Research Memo(3):2021年9月期第3四半期(累計)は増収増益ながら、計画を下回る進捗

注目トピックス 日本株
■決算概要

1. 2021年9月期第3四半期(累計)の業績
オークファン<3674>の2021年9月期第3四半期(累計)の業績は、売上高が前年同期比26.1%増の6,414百万円、営業利益が同11.7%増の688百万円、経常利益が同12.7%増の681百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同23.1%増の406百万円と増収増益となった。ただ、計画に対しては売上高、各利益ともに下回る進捗となっている。

売上高は、第1四半期における「インキュベーション事業」(ベンチャー投資にかかる株式の一部売却)が増収に大きく寄与した。また、主力事業についても、「商品流通プラットフォーム事業」において、コロナ禍に伴う巣ごもり消費等により、注力する「NETSEA」及び「リバリュー BtoBモール」が順調に拡大した。一方、「在庫価値ソリューション事業」については、コロナ禍の影響を受けた「マーケティング支援売上」(広告運用代行等)が落ち込み、減収となった。

なお、売上高が計画を下回る進捗となったのは、1)「マーケティング支援売上」(広告運用代行等)の落ち込みに加え、2)「zaicoban」(在庫管理AI)の販売戦略の見直し、3)「リバリュー法人取引」の取引抑制(リスク管理目的)、4)海外向け販売(ネッシークロスボーダー)の出遅れなどが理由である。

利益面でも、「インキュベーション事業」が増益に寄与しているものの、1)成長性の高い「NETSEA」や「リバリュー BtoBモール」への先行投資(広告宣伝費や顧客開拓費等)や2)撤退事業等(「zaicoban」を含む)の影響により、主力事業では計画を下回る減益となっており、営業利益率も10.7%(前年同期は12.1%)に低下した。もっとも、1)については今後の流通高拡大や利益成長につながるものであるほか、2)についても来期以降は発生しない一過性要因として捉えることができる。

財務面では、自己資本が「営業投資有価証券」の評価替えに伴う「その他有価証券評価差額金」の減少により同24.2%減の6,138百万円に減少。一方、総資産についても、第1四半期における「営業投資有価証券」の売却及び評価替えに加え、リスク管理目的による「受取手形及び売掛金」の抑制、「zaicoban」にかかるソフトウェアの減損処理(第2四半期)などにより、同29.4%減の9,444百万円に減少したため、自己資本比率は65.0%(前期末は60.5%)に改善した。

各事業の業績は以下のとおりである。

(1) 在庫価値ソリューション事業
第3四半期(累計)の売上高は前年同期比7.5%減の1,353百万円、セグメント利益は同12.6%減の247百万円と減収減益となった。創業来の主力である「aucfan.com」は堅調に推移しているものの、コロナ禍の下、大手顧客のマーケティング費用の抑制的な動きにより、「マーケティング支援売上」(広告運用代行)が落ち込んだことや、新たに開始した「zaicoban」(在庫管理AI)の大手向け導入にリードタイムを要したことが業績の下振れ要因となった。なお、「zaicoban」については、同社の強みとする中小・SMB向けに活用する戦略に変更するとともに、関連するソフトウェア資産の減損処理(第2四半期)を実施している。一方、ビジネス利用アカウント数は毎月順調に増加※しており、その点では、今後のSaaS型サービスへの寄与はもちろん、商品流通プラットフォーム(「NETSEA」「リバリュー」)の流通高拡大に向けても、しっかりと基盤強化を図ることができている。

※2021年6月末のビジネス利用アカウント数は143.3万件にのぼる。


(2) 商品流通プラットフォーム事業
第3四半期(累計)の売上高は前年同期比21.1%増の3,787百万円、セグメント利益は同71.1%減の55百万円と増収ながら減益となった。コロナ禍の下、企業の在庫問題の深刻化や巣ごもり消費等に伴う返品市場の拡大につれて、注力する「NETSEA」及び「リバリュー BtoBモール」の流通額がともに伸長した。第3四半期だけで見ても、「NETSEA」の流通額(コロナ特需である感染症対策グッズを除く)は前年同期比48%増、「リバリュー BtoBモール」(バルク販売を除く)についても同66%増と大きく伸びており、それぞれ過去最高(四半期ベース)を更新。コアとなる部分の流通額は成長軌道に乗ってきた。一方、利益面では、さらなる流通額最大化に向けて、営業・開発体制の強化及びプロモーションを実施したことから大幅な減益となった。

(3) インキュベーション事業
第3四半期(累計)の売上高は前年同期比130.7%増の1,400百万円、セグメント利益は同64.4%増の669百万円と大幅な増収増益となった。2020年3月26日に東証マザーズに上場したサイバーセキュリティクラウド<4493>株式の一部売却(第1四半期)が業績に大きく寄与した。一方、利益面では、第1四半期での株式売却益の獲得により大幅な増益となったものの、第2四半期及び第3四半期については、コロナ禍に伴う景気悪化の影響等を踏まえ、保有する未上場株式の減損処理を実施したことから、セグメント損失を計上している。なお、2021年6月末の「営業投資有価証券(保有株式)」の簿価は約35.4億円※残っており、それに対応する「その他有価証券評価差額金(含み益)」は約20.7億円あることから、今後いかにその活用を図っていくのかが注目される。

※そのうち約29億円はサイバーセキュリティクラウド株式(935,000株、持株比率9.99%)、残りは他の複数銘柄(未上場株)で構成されていると見られる。


2. (事業別)売上高の四半期推移
四半期推移を見ると、売上高全体では、「インキュベーション事業」の寄与により第1四半期に大きく拡大した。一方、主力事業だけで見ると、第1四半期から第3四半期までそれぞれ前年同期比を上回って推移しているものの、過去最高(四半期ベース)となった前期第4四半期(2020年7月-9月)と比較すると、季節性の影響があるとは言え、外部環境が追い風にあるなかで物足りなさは否めない。第4四半期も先行投資を継続する方針であるが、来期以降の底上げをいかに図っていくのかが課題と言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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