ファンペップ Research Memo(1):皮膚潰瘍向け治療薬が第3相臨床試験入り、2024年の上市を見込む
[21/09/14]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
ファンペップ<4881>は大阪大学大学院医学系研究科の機能性ペプチドの研究成果を実用化する目的で、2013年に設立されたバイオベンチャー。独自開発した機能性ペプチドをベースとした抗体誘導ペプチド技術により、高額な抗体医薬品の代替となる医薬品の開発に取り組んでいる。また、機能性ペプチドに関しては、化粧品向け等にも少量だが販売している。社名のファンペップの由来は、機能(function)を持つペプチド(peptide)の可能性を追求し、新たな医薬品等の開発によって社会に貢献する企業になるとの想いを込めて名付けられた。
1. 抗体誘導ペプチドの特徴と優位性
同社独自の技術である抗体誘導ペプチドは、キャリア※となる機能性ペプチド「AJP001」に標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープを組み合わせることで、標的タンパク質の働きを阻害する抗体を体内で産生できることが特徴となっている。生物由来のキャリアを用いる他の競合技術は、反復投与時に効果が減弱する可能性があることや製造上の品質管理が難しいことに加え、副作用を引き起こす懸念があったが、同社の抗体誘導ペプチドはこれらの課題を解消できるといった優位性を持つ。また、抗体医薬品と比較すると製造コストが1割程度の水準と大幅に低減できる可能性があり、患者アクセスの促進や医療財政の問題に対する改善効果も期待できる。このため、抗体医薬品の代替薬になることが期待される。
※キャリアは自己タンパク質に対して抗体を産生させる役割を果たす。
2. 主要開発パイプラインの動向
同社の開発パイプラインで最も進んでいるのは、皮膚潰瘍(褥瘡、糖尿病性潰瘍)を適応症とする機能性ペプチド「SR-0379」となる。塩野義製薬<4507>と2015年に全世界を対象としたライセンス契約を締結(契約総額は100億円)しており、2021年6月より国内で第3相臨床試験を開始している。対象は、簡単な外科的措置が必要な患者となり、「植皮等の簡便な外科的措置が行えるまでの期間」を主要評価項目とし、プラセボ群との比較を行う。「SR-0379」は創傷治癒促進効果と抗菌活性の両方の効果を持つことから、開発に成功する可能性は高いと弊社では見ている。順調に進めば1年程度で臨床試験が終了する見込みで、弊社としては2024年の上市を見込んでいる。また、抗体誘導ペプチドでは乾癬を適応症とした「FPP003」(大日本住友製薬<4506>と北米におけるオプション契約を締結)の第1/2a相臨床試験が、2019年4月よりオーストラリアで進められている。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)影響でスケジュールはやや遅延しており、2022年半ばの終了を予定している。同結果が良好であればオプション契約を締結している大日本住友製薬がオプション権を行使して開発を進めていく可能性がある。その他、花粉症を適応症とした「FPP004」、乾癬を適応症とした「FPP005」については前臨床試験段階となっている。また、2021年8月にはメドレックス<4586>とマイクロニードル技術を用いた次世代製剤技術開発に関する共同研究契約を締結しており、今後開発候補品での利用が可能か検証していくことにしている。
3. 業績動向
2021年12月期第2四半期累計業績は、事業収益で126百万円、営業損失で186百万円となった。「SR-0379」の第3相臨床試験入りに伴うマイルストーン収入を計上している。通期業績は事業収益で129百万円(前期比126百万円増)、営業損失で1,244百万円(同680百万円の損失拡大)と期初計画を据え置いている。「SR-0379」の第3相臨床試験費用を中心に、研究開発費が1,166百万円、前期比で803百万円増加することが損失拡大要因となる。研究開発費については2022年12月期以降も年間10億円台のペースが続く見通しだ。2021年6月末の現金及び預金の残高は3,587百万円となっており、当面の事業活動資金は確保されている。
4. 成長戦略
同社では、今後も独自技術である抗体誘導ペプチドの優位性を生かして、抗体医薬品が既に発売されている「炎症領域」の開発パイプラインを拡充していく戦略となっている。標的となるタンパク質は既に上市されている抗体医薬品と同じであるため、リード化合物を特定する時間が通常よりも大幅に短縮できるほか、有効性や安全性についても既に抗体医薬品で確認できていることから、開発リスクも小さい。同社では既存パイプラインの開発を進めながら、今後も2年に1本のペースでパイプラインを拡充していくことを目指しており、研究者の増員も進めていく計画となっている。当面は開発ステージとなるため、営業損失が続く見込みだが、抗体誘導ペプチドの開発対象となる領域における抗体医薬品の2019年の世界市場規模は主要製品だけで約475億米ドルとなっており、中長期的な成長ポテンシャルは大きいと弊社では見ている。
■Key Points
・大阪大学発のバイオベンチャーで、独自開発した抗体誘導ペプチド技術を用いて抗体医薬品の代替医薬品の開発に取り組む
・皮膚潰瘍向け治療薬は国内で第3相臨床試験を開始、2024年にも上市の可能性
・乾癬治療薬「FPP003」はオーストラリアでの第1/2a相臨床試験は終了見込みが2022年半ばに変更
・抗体誘導ペプチドの開発対象となる領域における抗体医薬品の世界市場規模は約475億米ドルで成長ポテンシャルは膨大
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<AS>
ファンペップ<4881>は大阪大学大学院医学系研究科の機能性ペプチドの研究成果を実用化する目的で、2013年に設立されたバイオベンチャー。独自開発した機能性ペプチドをベースとした抗体誘導ペプチド技術により、高額な抗体医薬品の代替となる医薬品の開発に取り組んでいる。また、機能性ペプチドに関しては、化粧品向け等にも少量だが販売している。社名のファンペップの由来は、機能(function)を持つペプチド(peptide)の可能性を追求し、新たな医薬品等の開発によって社会に貢献する企業になるとの想いを込めて名付けられた。
1. 抗体誘導ペプチドの特徴と優位性
同社独自の技術である抗体誘導ペプチドは、キャリア※となる機能性ペプチド「AJP001」に標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープを組み合わせることで、標的タンパク質の働きを阻害する抗体を体内で産生できることが特徴となっている。生物由来のキャリアを用いる他の競合技術は、反復投与時に効果が減弱する可能性があることや製造上の品質管理が難しいことに加え、副作用を引き起こす懸念があったが、同社の抗体誘導ペプチドはこれらの課題を解消できるといった優位性を持つ。また、抗体医薬品と比較すると製造コストが1割程度の水準と大幅に低減できる可能性があり、患者アクセスの促進や医療財政の問題に対する改善効果も期待できる。このため、抗体医薬品の代替薬になることが期待される。
※キャリアは自己タンパク質に対して抗体を産生させる役割を果たす。
2. 主要開発パイプラインの動向
同社の開発パイプラインで最も進んでいるのは、皮膚潰瘍(褥瘡、糖尿病性潰瘍)を適応症とする機能性ペプチド「SR-0379」となる。塩野義製薬<4507>と2015年に全世界を対象としたライセンス契約を締結(契約総額は100億円)しており、2021年6月より国内で第3相臨床試験を開始している。対象は、簡単な外科的措置が必要な患者となり、「植皮等の簡便な外科的措置が行えるまでの期間」を主要評価項目とし、プラセボ群との比較を行う。「SR-0379」は創傷治癒促進効果と抗菌活性の両方の効果を持つことから、開発に成功する可能性は高いと弊社では見ている。順調に進めば1年程度で臨床試験が終了する見込みで、弊社としては2024年の上市を見込んでいる。また、抗体誘導ペプチドでは乾癬を適応症とした「FPP003」(大日本住友製薬<4506>と北米におけるオプション契約を締結)の第1/2a相臨床試験が、2019年4月よりオーストラリアで進められている。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)影響でスケジュールはやや遅延しており、2022年半ばの終了を予定している。同結果が良好であればオプション契約を締結している大日本住友製薬がオプション権を行使して開発を進めていく可能性がある。その他、花粉症を適応症とした「FPP004」、乾癬を適応症とした「FPP005」については前臨床試験段階となっている。また、2021年8月にはメドレックス<4586>とマイクロニードル技術を用いた次世代製剤技術開発に関する共同研究契約を締結しており、今後開発候補品での利用が可能か検証していくことにしている。
3. 業績動向
2021年12月期第2四半期累計業績は、事業収益で126百万円、営業損失で186百万円となった。「SR-0379」の第3相臨床試験入りに伴うマイルストーン収入を計上している。通期業績は事業収益で129百万円(前期比126百万円増)、営業損失で1,244百万円(同680百万円の損失拡大)と期初計画を据え置いている。「SR-0379」の第3相臨床試験費用を中心に、研究開発費が1,166百万円、前期比で803百万円増加することが損失拡大要因となる。研究開発費については2022年12月期以降も年間10億円台のペースが続く見通しだ。2021年6月末の現金及び預金の残高は3,587百万円となっており、当面の事業活動資金は確保されている。
4. 成長戦略
同社では、今後も独自技術である抗体誘導ペプチドの優位性を生かして、抗体医薬品が既に発売されている「炎症領域」の開発パイプラインを拡充していく戦略となっている。標的となるタンパク質は既に上市されている抗体医薬品と同じであるため、リード化合物を特定する時間が通常よりも大幅に短縮できるほか、有効性や安全性についても既に抗体医薬品で確認できていることから、開発リスクも小さい。同社では既存パイプラインの開発を進めながら、今後も2年に1本のペースでパイプラインを拡充していくことを目指しており、研究者の増員も進めていく計画となっている。当面は開発ステージとなるため、営業損失が続く見込みだが、抗体誘導ペプチドの開発対象となる領域における抗体医薬品の2019年の世界市場規模は主要製品だけで約475億米ドルとなっており、中長期的な成長ポテンシャルは大きいと弊社では見ている。
■Key Points
・大阪大学発のバイオベンチャーで、独自開発した抗体誘導ペプチド技術を用いて抗体医薬品の代替医薬品の開発に取り組む
・皮膚潰瘍向け治療薬は国内で第3相臨床試験を開始、2024年にも上市の可能性
・乾癬治療薬「FPP003」はオーストラリアでの第1/2a相臨床試験は終了見込みが2022年半ばに変更
・抗体誘導ペプチドの開発対象となる領域における抗体医薬品の世界市場規模は約475億米ドルで成長ポテンシャルは膨大
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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