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Jトラスト Research Memo(3):2021年12月期第2四半期の営業利益は前年同期比大幅増益(1)

注目トピックス 日本株
■Jトラスト<8508>の業績動向

1. 2021年12月期第2四半期の業績概要
2021年12月期第2四半期における世界経済は、長期化する米中の対立問題や世界的な景気減速懸念等に加えて、世界的なコロナ禍に伴う経済活動の停滞の影響により、極めて厳しい状況にあった。このような環境下でJトラスト<8508>グループは、事業の収益性についての今後の見通しについて抜本的な見直しが必要と考えた。また、株式市場においては、企業に対する評価が会計上の資産等に基づくものではなく、将来の成長機会の先取りを重視するものとなっていることを受け止め、既存の事業ポートフォリオの価値や将来性を徹底的に見直した。具体的には、2020年12月期にキーノート(現 グローベルス)、Jトラストカード(現 Nexus Card)、JT親愛貯蓄銀行、KeyHolder<4712>及びKeyHolderの子会社並びに関連会社を売却したことで非継続事業に分類した。このため当該事業の営業収益、営業利益、税引前利益については除外して表示しており、2020年12月期第2四半期の関連する数値についても組替えて表示している。また、売却予定であることから、2020年12月期に非継続事業に分類していたJT貯蓄銀行(株)については、韓国金融委員会の承認取得に時間を要しているため、2021年12月期第1四半期には継続事業に戻しており、売却が確定した段階で改めて非継続事業に分類する予定だ。一方、2021年8月に株式譲渡が完了したJTキャピタルについては、第2四半期は継続事業として取り扱い、第3四半期以降に非継続事業となる予定である。

以上の結果、2021年12月期第2四半期の営業収益は22,340百万円(前年同期比3.3%増)、営業利益は7,160百万円(前年同期は1,040百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は3,894百万円(同780.2%増)となった。日本金融事業と韓国及びモンゴル金融事業の利益幅が上振れているほか、東南アジア金融事業の損失が計画より縮小したことに加え、投資事業において勝訴判決に係る一部受領金をその他の収益に計上したことから営業利益は大幅に改善し、通期計画を上回って推移した。

2. セグメント別業績
同社グループは、日本で構築したビジネスモデルを海外展開することで、アジアの総合ファイナンシャルグループへと成長を遂げてきた。現在、日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業、東南アジア金融事業、投資事業の4事業セグメントを展開するが、メインとなる金融3事業が営業収益全体の97.4%を占める。2021年12月期第2四半期は日本金融事業、韓国及びモンゴル金融事業で利益を確保したものの、東南アジア金融事業では損失を計上した。また投資事業は、営業収益は微減となったものの、訴訟回収金の計上もあり大幅増益となった。なお、事業ポートフォリオ再編に伴い、総合エンターテインメント事業と不動産事業は2020年12月期より報告セグメントに含まれていない。

(1) 日本金融事業
日本金融事業には、信用保証業務を中心に事業展開する(株)日本保証、サービサー業務(債権回収事業)のパルティール債権回収(株)などがある。国内の消費者金融市場が縮小するなか、2015年9月には実質的に無担保ローン事業から撤退し、不動産関連の保証業務及び債権回収業務に注力する体制を整備した。日本金融事業は、同社グループの強みが生かせる分野を中心に緩やかに成長し安定的な利益を確保することで、同社グループ全体の利益を下支えする役割を担ってきた。なお、2020年12月期には事業ポートフォリオ見直しの一環としてJトラストカードを売却したため、Jトラストカードの実績を除外している。

2021年12月期第2四半期は、主力の保証業務及び債権回収業務ともに引き続き順調に推移したことにより、営業収益は4,639百万円(前年同期比1.8%増)、営業利益は2,430百万円(同8.6%増)となった。営業収益、営業利益ともに安定推移し、営業利益率も高水準で安定している。また、通期計画に対する進捗率は、営業収益が56%、営業利益は66%に達し、計画を上回って推移している。

日本金融事業では、アパートローン保証を安定的な利益基盤とする一方で、中古アパートローン保証、海外不動産担保ローン保証、クラウドファンディング保証など、新たな保証商品への多角化を図っている。2021年6月末の債務保証残高合計は2,068億円と、コロナ禍の影響を受けたもののおおむね横ばいで推移した。

不動産関連保証業務における同社グループの強みは、市場ニーズに合わせたオーダーメイド型商品の開発力と、独自の不動産ローン審査力である。同社グループが不動産の評価、審査と信用保証を担い、銀行が融資を行っているが、地域金融機関と提携することでアパートローン保証業務を中心に保証残高は右肩上がりで増加を続けてきた。しかし、大手銀行の不正融資問題をきっかけに、アパートローン保証は以前のような勢いはない状況だ。ただ、ローンの期間は20年〜30年超と長期のため、その間は保証料収入が安定的に入ってくる。

また、同社が保証する物件は、東名阪福の各地域の都市部、徒歩10分程度の駅近物件に集中しており、債務保証を行っている賃貸住宅の入居率は95%以上を維持している。保証料が高いその他の保証(個人事業主への融資保証等)は近年、競争が激化していることから取扱いを抑え、保証料が低いものの貸倒リスクが小さいアパートローンへの有担保保証を増やし、ボリュームでカバーすることで利益を確保してきた。

現在は金融機関の審査基準が厳格化していることなどから、当面はアパートローンの保証残高は増加を期待しにくい環境にあるものの、貸倒はほとんど発生してないようだ。また、2020年11月から開始した中古アパートローンの保証残高は順調に拡大しており、2021年1月〜6月の保証実行額は約16億円と計画(13.5億円)を上回り、6月末の保証残高は20億円(2021年1月末は5億円)に達した。

サービサー(債権回収)事業のうちパルティールにて取扱う債権については、2021年4月〜6月は2020年12月期から2021年12月期にかけて購入した債権の回収が計画を上回って好調に推移した一方で、カード債権と不動産担保付債権などの債権買取により、2021年6月末の請求債権残高は8,255億円(2021年3月末比28億円増)となった。一方で日本保証が保有する簿外債権残高は、回収が順調に進んだこともあり1,287億円(同11億円減)となった。この結果、サービサー事業全体の請求債権残高は約9,500億円となり、依然として高水準を維持している。

債権回収業務における同社グループの強みは、多様な債権回収事業会社出身者のノウハウを結集した国内トップクラスの回収力にある。回収力の強さは、金融機関やカード会社などから債権を買い取る際の入札競争においても優位となり、その結果、事業拡大という好循環につながる。今後もこの強みを生かした事業拡大を進めていく方針だ。また、こうした国内事業での債権回収力の強さは、海外事業でも生かされていると言える。

なお、今後の取り組みと戦略について、日本保証では、さらなる保証残高(合計3,000億円)を積み上げるための新たな取り組みとして保証提携先の拡大を挙げている。具体的には、ソーシャルレンディング保証(提携4社)、不動産特定共同事業法に基づく不動産買取保証(提携3社)、子会社のロボットシステムとの協業で不動産特定共同事業法のシステム販売及び開発を進める。パルティール債権回収では、コロナ禍で他のサービサー(競合相手)が債権買取の入札を手控えるなか、これを事業拡大のチャンスと捉え、積極的に入札に参加する計画だ。なお、取引先金融機関は、既に一気に倍増している。また新規事業として、2021年8月2日に子会社として(株)Frontier Capitalを設立し、ファクタリング業を開始した。同社グループの強みである与信審査と債権回収のノウハウの活用が期待できるため、この事業多角化はさらなる事業基盤の拡大につながると期待されている。ただし、業績への寄与は先になる見込み。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)




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