ハウスドゥ Research Memo(4):リバースモーゲージ保証事業を第三の柱に育成(2)
[21/09/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業概要
(2) 高齢者の資金需要に対応する「不動産+金融」サービス
高齢者は「住宅」という資産を所有しているものの、収入と支出が低水準にとどまっている。高齢者の持家率は60代が93.1%、70代以上も93.2%と極めて高い。一方で、公的年金以外に老後資金として2,000万円が必要との試算が出ているものの、高齢者の平均貯蓄額は2,284万円、中央値は1,515万円と、60%以上で貯蓄が2,000万円未満となっている。ハウスドゥ<3457>は、不動産ストックの流動化により資産を資金化することで資金を市場に還流させ、経済活性化の一翼を担うことを目的として、高齢者の資金需要に対応する「不動産+金融」サービスを提供している。このサービスにより高齢者は、自宅に住みながら老後の生活資金を得ることができるため、資金面で老後のQOLを向上させることができる。
これらの高齢社会の問題に対し、同社は複数のソリューションビジネスを展開している。2013年10月には自宅を売却した後も住み続けられる「ハウス・リースバック」サービスを他社に先駆けて開始し、2016年7月には一時的な資金ニーズはあるものの自宅を売却するほどの金額を必要としない人向けに「不動産担保ローン」を、2017年10月には地域の金融機関と提携して自宅を担保に融資を受けられる「リバースモーゲージ保証事業」をスタートさせた。これらの幅広い商品ラインナップにより、多様な顧客ニーズに応える。
a) ハウス・リースバック事業
「ハウス・リースバック」サービスは、同社が住宅を買い取り、売主とリース(賃貸)契約を結ぶスキームである。持ち主は自宅を売却して資金を得た後も、愛着のある住居や地域で住み続けられるほか、資金の使途、年齢、収入、対象者、対象物件に制限がないうえ、住居の賃貸契約に保証人も不要である。同社は地域密着型の店舗網を展開していることに加え、不動産の査定や不動産売買、金融サービスのノウハウを有していることから、ハウス・リースバックに必要な機能をすべて自社の経営リソースでカバーできることが強みとなる。
ハウス・リースバック事業は、買取時の事務手数料、毎月の家賃収入、売却時のキャピタルゲインと3種類の収益機会がある。物件は顧客から直接取得し、仕入額の約3%が買取時の事務手数料となる。取得翌月からは毎月家賃としてインカムゲインが発生し、年間で仕入額の約8%程度がリターンとして入る。売却時には、諸費用及び手数料別途で仕入額の15%程度のキャピタルゲインが発生する。
一方で、ハウス・リースバック事業はストック型収益ビジネスであるため先行投資負担が重く、資金が固定化される。投資資金を借入金に依存すると、事業の急成長の持続と財務の安全性維持がトレードオフの関係になってしまう。このため、ストック型という性格は薄れるものの、財務体質の安全性を維持しながら事業規模も追うことを可能にするため、2018年6月期からハウス・リースバック保有資産の本格的なオフバランス化を始めた。再売買、処分売買、買取会社、ファンドへの売却を含めた売却売上高は、2018年6月期に前期比約2.5倍の4,235百万円、2019年6月期に同約3.0倍の12,622百万円に拡大した。これに伴い保有総額は、2018年6月期末の8,324百万円に対して2020年6月期末には3,410百万円、2021年6月期末は4,685百万円となっている。
b) 不動産担保ローン
不動産担保ローンのスキームは、融資の金利及び事務手数料などで同業他社と大差がない。ただし、同社のメインビジネスが不動産売買の仲介業であることから、不動産価格の査定に関しては質量ともに他社を凌駕するうえ、査定のスピードも速い。不動産担保融資残高は2017年6月期末に2,865百万円、2018年6月期末に5,587百万円、2019年6月期末に8,163百万円、2020年6月期末に11,045百万円と急速に拡大した。しかしながら、2021年6月期以降はより差別化を図れるハウス・リースバック事業に資金を振り向ける方針を掲げていることから、不動産担保融資残高は縮小傾向となる見込みである。
c) リバースモーゲージ保証事業
リバースモーゲージは、自宅を担保として融資を受けることができる金融商品の1つである。住宅ローンが元本・利息を毎月返済するのに対し、リバースモーゲージは利息のみを毎月支払い、元本については生存中は返す義務がなく、死亡後担保である自宅を売却するなどして一括返済する。自宅は所有しているが、現金収入が少ないという高齢者向けの資金調達手段として1981年に導入された。欧米では主流の金融サービスであるものの、日本では資金の出し手となる金融機関が限定されており、本格普及には至っていない。これは金融機関が不動産売買を本業としていないため、物件の査定と物件処分がネックとなるためである。リバースモーゲージサービスは不動産価格の下落、金利上昇、長命化などのリスクがあるものの、同社子会社のフィナンシャルドゥが保証サービスを提供することで活性化を図っている。フィナンシャルドゥは契約時に事務手数料・調査料を受け取り、利用者が金融機関に支払う利息の一部を保証料として得るため、イニシャルとランニングの両方で収益機会があるストック型収益ビジネスとなる。
リバースモーゲージ保証事業では、同社グループがこれまで培った不動産売買のノウハウを生かすことで、市場取引価格に基づいた査定が可能となる。また通常、不動産売買で債権処理が発生した場合、不動産販売などに20〜25%の中間マージンが発生するが、同社では直接販売のためこれが不要となる。このため、安全性を考慮しても金融機関自身が行うよりも大きな融資枠を提供でき、利用客はフィナンシャルドゥがリバースモーゲージ保証として提供する商品と契約を結ぶ動機付けとなる。
2021年6月期末のリバースモーゲージ累計保証残高は5,343百万円(前期末比57.1%増)、累計保証件数は562件(同55.2%増)と急成長を遂げた。2022年6月期末の累計保証残高は10,688百万円〜12,825百万円と倍増以上を計画している。
同社グループでは、地方銀行や信用金庫などの地域金融機関と提携することで、リバースモーゲージ保証のサービスエリアを広げている。2017年10月に大阪信用金庫(大阪市天王寺区)との提携により「リバースモーゲージ保証事業」を開始して以降、2021年6月期末までに25行の金融機関と提携している。なお、子会社のフィナンシャルドゥは、2020年10月に同社当てに20億円の第三者割当増資を行っており、これにより提携金融機関の拡大が加速している。
3. フロー型収益事業
フロー型収益事業としては、不動産売買事業、不動産流通事業、リフォーム事業及び小山建設グループが該当する。このうち不動産売買事業は、不動産市況に収益が左右される場合がある。また、不動産流通事業は成長強化事業への人材育成の場として経営リソースを提供しており、大きな成長は見込んでいない。リフォーム事業は、不動産流通事業などと連携して事業を運営している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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(2) 高齢者の資金需要に対応する「不動産+金融」サービス
高齢者は「住宅」という資産を所有しているものの、収入と支出が低水準にとどまっている。高齢者の持家率は60代が93.1%、70代以上も93.2%と極めて高い。一方で、公的年金以外に老後資金として2,000万円が必要との試算が出ているものの、高齢者の平均貯蓄額は2,284万円、中央値は1,515万円と、60%以上で貯蓄が2,000万円未満となっている。ハウスドゥ<3457>は、不動産ストックの流動化により資産を資金化することで資金を市場に還流させ、経済活性化の一翼を担うことを目的として、高齢者の資金需要に対応する「不動産+金融」サービスを提供している。このサービスにより高齢者は、自宅に住みながら老後の生活資金を得ることができるため、資金面で老後のQOLを向上させることができる。
これらの高齢社会の問題に対し、同社は複数のソリューションビジネスを展開している。2013年10月には自宅を売却した後も住み続けられる「ハウス・リースバック」サービスを他社に先駆けて開始し、2016年7月には一時的な資金ニーズはあるものの自宅を売却するほどの金額を必要としない人向けに「不動産担保ローン」を、2017年10月には地域の金融機関と提携して自宅を担保に融資を受けられる「リバースモーゲージ保証事業」をスタートさせた。これらの幅広い商品ラインナップにより、多様な顧客ニーズに応える。
a) ハウス・リースバック事業
「ハウス・リースバック」サービスは、同社が住宅を買い取り、売主とリース(賃貸)契約を結ぶスキームである。持ち主は自宅を売却して資金を得た後も、愛着のある住居や地域で住み続けられるほか、資金の使途、年齢、収入、対象者、対象物件に制限がないうえ、住居の賃貸契約に保証人も不要である。同社は地域密着型の店舗網を展開していることに加え、不動産の査定や不動産売買、金融サービスのノウハウを有していることから、ハウス・リースバックに必要な機能をすべて自社の経営リソースでカバーできることが強みとなる。
ハウス・リースバック事業は、買取時の事務手数料、毎月の家賃収入、売却時のキャピタルゲインと3種類の収益機会がある。物件は顧客から直接取得し、仕入額の約3%が買取時の事務手数料となる。取得翌月からは毎月家賃としてインカムゲインが発生し、年間で仕入額の約8%程度がリターンとして入る。売却時には、諸費用及び手数料別途で仕入額の15%程度のキャピタルゲインが発生する。
一方で、ハウス・リースバック事業はストック型収益ビジネスであるため先行投資負担が重く、資金が固定化される。投資資金を借入金に依存すると、事業の急成長の持続と財務の安全性維持がトレードオフの関係になってしまう。このため、ストック型という性格は薄れるものの、財務体質の安全性を維持しながら事業規模も追うことを可能にするため、2018年6月期からハウス・リースバック保有資産の本格的なオフバランス化を始めた。再売買、処分売買、買取会社、ファンドへの売却を含めた売却売上高は、2018年6月期に前期比約2.5倍の4,235百万円、2019年6月期に同約3.0倍の12,622百万円に拡大した。これに伴い保有総額は、2018年6月期末の8,324百万円に対して2020年6月期末には3,410百万円、2021年6月期末は4,685百万円となっている。
b) 不動産担保ローン
不動産担保ローンのスキームは、融資の金利及び事務手数料などで同業他社と大差がない。ただし、同社のメインビジネスが不動産売買の仲介業であることから、不動産価格の査定に関しては質量ともに他社を凌駕するうえ、査定のスピードも速い。不動産担保融資残高は2017年6月期末に2,865百万円、2018年6月期末に5,587百万円、2019年6月期末に8,163百万円、2020年6月期末に11,045百万円と急速に拡大した。しかしながら、2021年6月期以降はより差別化を図れるハウス・リースバック事業に資金を振り向ける方針を掲げていることから、不動産担保融資残高は縮小傾向となる見込みである。
c) リバースモーゲージ保証事業
リバースモーゲージは、自宅を担保として融資を受けることができる金融商品の1つである。住宅ローンが元本・利息を毎月返済するのに対し、リバースモーゲージは利息のみを毎月支払い、元本については生存中は返す義務がなく、死亡後担保である自宅を売却するなどして一括返済する。自宅は所有しているが、現金収入が少ないという高齢者向けの資金調達手段として1981年に導入された。欧米では主流の金融サービスであるものの、日本では資金の出し手となる金融機関が限定されており、本格普及には至っていない。これは金融機関が不動産売買を本業としていないため、物件の査定と物件処分がネックとなるためである。リバースモーゲージサービスは不動産価格の下落、金利上昇、長命化などのリスクがあるものの、同社子会社のフィナンシャルドゥが保証サービスを提供することで活性化を図っている。フィナンシャルドゥは契約時に事務手数料・調査料を受け取り、利用者が金融機関に支払う利息の一部を保証料として得るため、イニシャルとランニングの両方で収益機会があるストック型収益ビジネスとなる。
リバースモーゲージ保証事業では、同社グループがこれまで培った不動産売買のノウハウを生かすことで、市場取引価格に基づいた査定が可能となる。また通常、不動産売買で債権処理が発生した場合、不動産販売などに20〜25%の中間マージンが発生するが、同社では直接販売のためこれが不要となる。このため、安全性を考慮しても金融機関自身が行うよりも大きな融資枠を提供でき、利用客はフィナンシャルドゥがリバースモーゲージ保証として提供する商品と契約を結ぶ動機付けとなる。
2021年6月期末のリバースモーゲージ累計保証残高は5,343百万円(前期末比57.1%増)、累計保証件数は562件(同55.2%増)と急成長を遂げた。2022年6月期末の累計保証残高は10,688百万円〜12,825百万円と倍増以上を計画している。
同社グループでは、地方銀行や信用金庫などの地域金融機関と提携することで、リバースモーゲージ保証のサービスエリアを広げている。2017年10月に大阪信用金庫(大阪市天王寺区)との提携により「リバースモーゲージ保証事業」を開始して以降、2021年6月期末までに25行の金融機関と提携している。なお、子会社のフィナンシャルドゥは、2020年10月に同社当てに20億円の第三者割当増資を行っており、これにより提携金融機関の拡大が加速している。
3. フロー型収益事業
フロー型収益事業としては、不動産売買事業、不動産流通事業、リフォーム事業及び小山建設グループが該当する。このうち不動産売買事業は、不動産市況に収益が左右される場合がある。また、不動産流通事業は成長強化事業への人材育成の場として経営リソースを提供しており、大きな成長は見込んでいない。リフォーム事業は、不動産流通事業などと連携して事業を運営している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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