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エーバランス Research Memo(6):2021年6月期業績はVSUNの新規連結効果により大幅増収増益を達成

注目トピックス 日本株
■業績動向

1. 2021年6月期の業績概要
Abalance<3856>の2021年6月期の連結業績は、売上高で前期比302.8%増の26,901百万円、営業利益で同276.5%増の1,361百万円、経常利益で同315.6%増の1,269百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同154.4%増の537百万円と大幅な増収増益となった。第2四半期よりVSUNを連結子会社として取り込んだことが主因で、2021年2月に発表した会社計画に対しても売上高、各利益ともに上振れて着地し、過去最高業績を大きく更新した。2021年5月以降、ベトナムでコロナ禍による政府の外出規制導入の影響で工場稼働や製品出荷に一部影響を与えたが、工場敷地内に従業員を常駐させるなど対処し、影響を最小限に食い止めている。なお、親会社株主に帰属する当期純利益の増益率が経常利益に対して低く見えるのは、VSUNの子会社化に伴い非支配株主に帰属する当期純利益が前期の5百万円から394百万円に増加したことが要因となっている。

VSUNの連結業績への影響額は売上高で21,013百万円、営業利益で731百万円となっており、VSUNの太陽光パネル製造事業を除く既存事業ベースで見ると売上高は前期比11.8%減の5,888百万円、営業利益は同74.5%増の630百万円となっている。同社はグリーンエネルギー事業において太陽光発電所の施工・販売によるフロー型ビジネスから、太陽光発電所を自社保有し、売電収入をベースとしたストック型ビジネスへと転換を進めており、2021年6月期はその過渡期にあたり減収要因となった。一方、営業利益に関しては、売電収入の増加や前期に損失を計上したIT事業や光触媒事業も含めて収益性が改善し、2ケタ増益を達成している。

(1) グリーンエネルギー事業
グリーンエネルギー事業の売上高は前期比15.0%減の5,311百万円、セグメント利益は同23.1%増の1,005百万円となった。同社グループでは、安定収益確保のためWWB、バローズを主体として発電所の販売を継続しながら、完工後も継続保有するストック型へビジネスを転換させ、宮之浦太陽光発電所、湖西市太田ソーラーパーク、高梁太陽光発電所、勝間太陽光発電所、風力発電所などから売電収入を収受している。2021年6月期中には、花畑太陽光発電所の一部区画(2020年11月連系、初年度通期売電収入:約1.5億円見込)、角田市太陽光発電所(2021年3月連系、初年度通期売電収入:約7.5億円見込)、福島市大波太陽光発電所(同6月連系、初年度通期売電収入:約2.2億円見込)のほか、M&Aにより神戸市所在の発電所権利を取得している。

既に安定収益化しているO&M事業では、落雷対策で効果のあるアース線配線や、施設内カメラの設置によるセキュリティの確保、RPAシステムを通じた異常点探知等のシステム提案等が評価されており、年間売上高で数億円規模と着実に実績を積み上げている。

また、海外事業においては、ベトナム、台湾、カンボジア等、東南アジア諸国の旺盛な電力需要に対してグリーンエネルギーを供給するため、現地企業との合弁等により事業参画している。また、環境省が実施した2019年度「二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism:JCM)資金支援事業のうち設備補助事業」の公募案件の採択を受け、カンボジア国内における太陽光発電(1MW)とバイオマス発電(0.5MW)を併設したハイブリッド発電設備の整備プロジェクトを推進していく予定になっている。コロナ禍の影響により海外渡航制限などが続いていることから、海外事業については目立った進捗はないものの、今後もリスク管理を適切に行いながら現地企業との合弁や、JCMを通じたプロジェクトに積極的に参画し、海外事業を拡大していく方針となっている。

そのほか、物販事業として太陽光パネルやPCSなど太陽光発電設備の販売や、災害時の非常用電源等に利用可能なポータブルバッテリー「楽でんくん」、産業用及び住宅用蓄電池の販売などを推進したほか、新規事業として陸上の小型風力発電所を2020年3月に北海道檜山エリアにて11機稼働させている。

(2) 太陽光パネル製造事業
太陽光パネル製造事業は売上高で21,013百万円、セグメント利益で731百万円を計上した(2020年10月〜2021年6月までの9ヶ月間の業績)。グリーンエネルギーの世界的な需要拡大を受け、欧州向けに加えて近年は米国向けの販売も拡大傾向にある。

世界の太陽光パネル市場はその上位を中国企業が占めるなかで、VSUNは日系最大の太陽光パネルモジュールメーカーとして同社によると世界上位16位となっており、今後も積極的な能力増強を進め、事業規模を拡大していく方針となっている。2021年7月には第3工場新設に伴う設備投資の実行により稼働を開始している。設備投資額は約13億円で年間生産能力1GWとなり、能力増強後は2.6GWの能力に拡大した。第3工場では主に日欧米向けで需要が見込める最先端パネル(1枚のパネルで発電能力500W以上、または600W以上の製品)を製造する予定となっている。

ベトナムでは、2021年5月以降にコロナ禍によりベトナム政府及び地方行政当局による外出自粛令などの拡散防止策が発出され工場稼働・製品出荷に影響を生じたが、同社グループとしての継続的なサポートや対策などにより連結業績の大きなけん引役となった。

(3) IT事業
IT事業の売上高は前期比5.2%増の61百万円、セグメント利益は16百万円(前期は40百万円の損失)となった。ナレッジ(情報・知識・経験)の共有や業務プロセスの再構築を通じた労働生産性の向上ツールとなる「Knowledge Market®」やMicrosoft 365を活用したDX支援サービス、その他RPA製品やIoTを活用した各種サーベイ調査の収集支援等を実施した。またグリーンエネルギーの供給やRE100推進等に関連したSDGsを志向する企業や自治体等からのニーズについては、グリーンエネルギー事業、ヘルスケア関連事業との連携を図りつつ事業を推進している。

(4) 光触媒事業
光触媒事業の売上高は前期比57.0%増の177百万円、セグメント利益は32百万円(前期は6百万円の損失)と2019年1月に子会社化して以降、初めて黒字を計上した。売上高は新型コロナウイルス感染症対策としてニーズが増している抗菌・抗ウィルス製品「blocKIN」の商品ラインナップ拡充を図ったことや、「光触媒LIFE」事業をさらに推進し、コーティング施工事業者のFC加盟・代理店数の拡大を図ったことが増収につながった。第4四半期には北海道のホテルから光触媒施工を受注し、収益増に貢献した。

(5) その他
その他には建機販売事業が含まれており、売上高は前期比38.1%増の355百万円、セグメント損失は54百万円(前期は49百万円の損失)となった。国内建機供給にとどまらず、バングラデシュや中国などのインフラ整備事業などへのレンタル事業を強化したことにより増収となったものの、収益改善までには至らず損失計上が続いた。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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