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サイバネット Research Memo(8):コアビジネス並びにDX事業の拡大等により成長を目指す(2)

注目トピックス 日本株
■サイバネットシステム<4312>の中期経営計画

2. 成長戦略の取り組み状況
(1) CAEソリューションサービス
a) コアビジネスの拡大
コアビジネスの拡大に向けては、トップベンダーであるAnsysとの関係・連携の強化を進めていく。また、開発元ベンダーが拡充する新製品の早期立ち上げに取り組むことで技術強化と製品の拡充を図り、最先端分野における高度なシミュレーションニーズに対応していくほか、CAE基盤を支えるIoTやクラウドプラットフォームのリーディングベンダーとの関係強化に取り組むことで売上拡大を推進していく方針だ。最先端分野としては、自動車業界におけるCASE※や、カーボンニュートラル、センシング、次世代素材などの開発分野が挙げられる。

※CASE:Connected(インターネットへの常時接続)、Autonomous(自動運転)、Shared(カーシェアリング)、Electric(電気自動車)を組み合わせた造語で、次世代自動車の開発テーマとした、各社が活発に研究開発を進めている分野。


なお、新たな取扱製品として2021年4月にAR開発プラットフォーム「Vuforia(ビューフォリア)」※の販売を開始したほか、同年5月にはAnsysの粉体挙動解析ツール「Ansys Rocky」、同年10月には光学系CAEソフトの販売をそれぞれ開始している。

※2021年4月にPTCジャパン(株)と販売代理店契約を締結し、米PTCが開発する「Vuforia」の販売及び技術サポートを開始。同プラットフォームの導入により、シミュレーション、デジタルツイン技術の活用を促進し、製造業のリモート業務/DXを支援していくツールとして拡販を進めていく。


また、中国や東南アジアなどが製造業の中心となるなかで、グローバル企業が研究開発拠点をこれら国々にも展開し始めていることから、アジア地域におけるCAEソリューションの需要拡大が今後見込まれる。同社は中国、台湾、マレーシアに販売子会社を展開している。これら販売会社のエンジニアに対して日本で培ってきた技術力やノウハウを移植し、ソリューションサービスを強みとして現地での売上拡大を図っていく戦略だ。現地でも日本と同じく有力ベンダーとの代理店契約を確保しており、人材の育成など体制強化を図りながら事業を拡大していく。

さらに、グローバルでの自社製品拡販にも取り組んでいる。Maplesoftでは、教育市場向けにオンライン環境下で利用可能な数式解析用ソフトウェア「MapleLearnTM」(英語版)の販売を2021年1月に開始したほか、エンジニアの設計計算をホワイトボードスタイルで可能とする数学ツール「Maple Flow(TM)」の英語版を同年3月に、日本語版を同年5月に相次いで販売開始した。同社では、現在の主要事業である教育市場向けに加えて、今後は製造業向けの展開も強化していく方針となっている。

Sigmetrixでは、主力製品となる公差解析ソフトウェア「CETOL 6σ(シーイートールシックスシグマ)」のユーザーエクスペリエンスを向上する新機能を追加したバージョンアップ版を2021年6月にリリースし、拡販を進めている。また、同社では製品販売だけでなくオンライントレーニングやコンサルティングサービスにも注力し、グローバルでの売上拡大を図っていく方針だ。

b) DX事業の拡大
CAEシミュレーション技術に、ビッグデータ分析やAI技術、AR/VRを組み合わせることによって付加価値の高いソリューションを提供し、開発現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を支援するDX事業の拡大を成長戦略として掲げている。例えば、CAEシミュレーションにAI技術を組み合わせることで、解析時間の大幅短縮、精度や品質の向上を実現するなど、設計開発プロセスにおいて新たな付加価値を提供していくことが可能となる。また、IoTとCAEを連携させたデジタルツインの環境を構築したり、AR/VR技術を組み合わせることで運用管理者の保守作業を分かりやすく支援する新たなソリューションの提供も開始している。

2021年以降は、以下の3つの取り組みを推進している。第1に、材料に関するソリューション提供の充実が挙げられる。具体的には、2021年5月に国内最大級の独立系材料試験所である(株)キグチテクニクスと業務提携を行い、材料に関する製造業向けのトータルソリューションの提供を開始した。国際的な価格競争や軽量化/耐久性、環境規制への対応強化が進むなかで、材料データに科学技術を応用して開発コストの削減や付加価値の高い製品開発に取り組むニーズが高まっており、こうしたニーズに応えるためのソリューションとなる。第一段階として、金属及び複合材料の高品質な材料物性データを作成し、高精度なシミュレーションを実現するためのサービスを提供していく。また、今後はキグチテクニクスとの連携強化により、同社が販売する材料情報管理プラットフォームを活用した顧客専用の材料データベースの構築や、材料選択のためのコンサルティングサービスなども提供していく計画となっている。

2つ目の取り組みとして、VRによる可視化ソリューションの提供が挙げられる。同社が販売・サポートするVR設計レビュー支援システム「バーチャルデザインレビュー」に、本田技研工業<7267>と共同で特許申請中の新技術「仮想現実・複合現実感を用いて解析結果を可視化する方法」をオプション機能として実装し、2021年4月より販売を開始した。従来難しかったCAE解析結果の視覚的な考察が、同ツールを用いることで設計者自らVR空間内で実施可能となり、手戻りの削減による開発期間短縮と製品品質の向上が実現可能となる。

3つ目の取り組みとして、クラウドプラットフォームの提供拡大が挙げられる。安全かつ高性能なクラウドCAE環境の提供を推進しているほか、従量制CAEライセンスと組み合わせた提供なども開始している。顧客側にとっては、高額な初期コストをかけずにCAE環境の構築が可能となり、かつ高い利便性とセキュリティが確保された環境を提供することで研究開発の効率化を実現している。

c) シミュレーションの活用領域の拡大
シミュレーション技術はここ数年、ものづくり支援用途だけでなく、気象予測や自然災害対策、通信や電力などの生活インフラ、美容や医療など幅広い分野に活用領域が広がってきており、同社においても、こうした製造業以外の分野にも積極展開していくことで売上を拡大していく方針となっている。2021年のソリューションの取り組み例として、建築業界向けに点群データという3次元座標データを用いて空調機器の換気性能のシミュレーションを実施したほか、ヘルスケア業界向けに光学式心拍センサーの開発期間とコストを削減するソリューションを開発した。

(2) ITソリューションサービス事業
ITソリューションサービス事業では、クラウド・セキュリティ事業の強化に取り組んでいる。在宅勤務等の新たな働き方が定着するなかで、リモート環境下での情報セキュリティ対策のニーズを取り込んでいく。前述したように、クラウド環境向けセキュリティソリューションの2021年12月期第2四半期累計売上高は前年同期比115.0%増と大きく伸長しており、今後も高成長が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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