TOKAI Research Memo(8):2025年3月期まではLife Design実現に向けた基盤構築期間(2)
[21/11/29]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■今後の見通し
(3) 5つの重点戦略
中期経営計画における重点戦略として、TOKAIホールディングス<3167>では以下の5点に取り組んでおり、現時点ではおおむね順調に進捗している。
a) LNG戦略の推進
LNG戦略とは、Local(既存エリアにおけるシェア拡大)、National(国内新規エリアの拡大)、Global(海外への展開)の3つの頭文字を組み合わせたものとなる。既存エリアでのシェア拡大や新規エリアへの展開によって、主力のガス事業、CATV事業、アクア事業を中心に収益基盤である顧客件数の拡大に取り組んでいく。また、法人向け情報通信事業では、AWSについて導入コンサルティングから設計、構築、接続回線、監視運用サービスに至るまで全行程をワンストップで提供できる強みを生かして、クラウドサービス関連事業の拡大に取り組んでいく。AWS関連では国内での豊富な実績をもとに、2021年9月から中国に現地法人を持つ日本企業のAWS利用をサポートする「AWS中国リージョン対応ソリューション」の提供も開始しており、今後は海外の需要も取り込んでいくことにしている。建築設備不動産事業においては、既述のとおりM&A戦略の推進によって総合建設事業者としての基盤を固めており、今後グループシナジーを生かしながら東海エリアを中心に事業規模の拡大を目指していく考えだ。
b) TLCの進化
顧客の潜在ニーズを察知し、新しいライフスタイルをデザイン・提案するためのデジタルマーケティングを推進していく。約310万件の顧客データを一元管理するデータ分析プラットフォーム「D-sapiens」を活用することで顧客に最適なサービスを提案し、高付加価値化、顧客体験の向上を図っていく。デジタルマーケティングの具体的な取り組みとしては、アクア事業においてAI分析によって顧客の解約予兆を察知し、解約防止施策を打つなどしている。また、直近では非対面でも商談可能なWeb感謝祭サイトを構築し、新たな需要の掘り起こしに取り組んでいる。まだ、これら施策によって大きな効果は得られていないものの、今後も様々な施策を企画し、そのデータを収集して評価、分析、改善を続けていくことで、デジタルマーケティング施策の効果も大きくなっていくものと思われる。
c) DX戦略の本格化
同社は、今回の中期経営計画策定と同時にDX戦略も策定している。DX戦略では、全国約310万件の顧客データや「ABCIR+S」を最大限に活用することで既存ビジネスモデルの最適化をさらに進めていく。また、DXによる「業務効率化」や「サービスの高付加価値化」を実現していくと同時に、スタートアップ企業等との協業による「新たなビジネスの創造」にもチャレンジしていく。2021年4月には新規事業創出に向けたオープンイノベーション戦略の一環として、(株)TOKAIベンチャーキャピタル&インキュベーションを設立している。
d) 経営資源の最適配分
中期経営計画では、今後4年間で合計950億円の営業キャッシュ・フロー(経営資源)の創出を見込んでおり、これらの最適配分として事業基盤拡大のための成長投資に650億円を投下し、残り300億円については株主還元や株主価値の向上に充当していく方針としている。2022年3月期第2四半期累計実績では、営業キャッシュ・フロー114億円のうち、成長投資に90億円(既存事業63億円、M&A27億円)、残り21億円を配当金に充当しており、最適配分については計画どおり進捗した。
e) SDGsに向けた取り組みの強化
SDGsに向けた取り組みとして、2021年5月に「TOKAIグループ カーボンニュートラルビジョン」を公表している。同社グループで2050年にカーボンニュートラルの達成を目指しており、その前段階として2030年までのCO2削減施策を打ち出している。具体的には、「ABCIR+S」の活用(LPガスの自動検針導入、配送ルート最適化等)によって事業活動におけるCO2削減に取り組んでいくほか、高効率ガス機器や太陽光発電システムの住宅への普及促進等によって住宅におけるCO2削減に貢献していくとしている。
また、2021年8月には都市ガス事業において、J-クレジット制度※を活用し、CO2排出量をオフセットして実質的にCO2排出量をゼロとする「カーボンニュートラルガス」の販売を開始した。販売先はSDGsの取り組みに前向きな自治体や企業等となる。「ゼロカーボンシティ」を表明した静岡県藤枝市と「ゼロカーボンシティの実現に向けての連携協定書」を同年8月に締結しており、今後もこうした取り組みが増えていく可能性がある。
※J-クレジット制度:省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出量削減や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量をクレジットとして国が認証する制度。
2021年10月には初期費用0円で太陽光発電システムを住宅に設置できる「TOKAI ZERO SOLAR」の提供も開始した。同社が初期設置費用をすべて負担し、サービスの利用中は光熱費の削減メリットを利用者は享受できるほか、契約期間※終了後は設備一式を無償で取得できるほか、発電した電気を無料で利用することができるといったメリットがあり、住宅への太陽光発電システムの普及を促進し、CO2排出量の削減に貢献していく。
※契約期間は10〜15年で発電容量や周辺環境、設置条件等によって異なる。
そのほか、2021年4月よりテレワーク主体となる新しい働き方を導入し、ハード面(パソコンやスマートフォン)の整備に加え、在宅勤務手当やデジタルワークプレイスの整備を実施している。また、ペーパーレス化の推進や電子印システムの導入検討など業務プロセスの改善についての取組みを進めており、今後もワークスタイル改革による柔軟な働き方を実現し、多様な人材が活躍できる環境を整備していく考えだ。
ガバナンス体制の強化についても推進している。2021年2月には新たに指名・報酬委員会を設置し、取締役会の機能の独立性、客観性と説明責任をさらに強化した。また、多様性及び専門性確保の観点から、社外取締役を取締役の3分の1以上とし、女性取締役も登用している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>
(3) 5つの重点戦略
中期経営計画における重点戦略として、TOKAIホールディングス<3167>では以下の5点に取り組んでおり、現時点ではおおむね順調に進捗している。
a) LNG戦略の推進
LNG戦略とは、Local(既存エリアにおけるシェア拡大)、National(国内新規エリアの拡大)、Global(海外への展開)の3つの頭文字を組み合わせたものとなる。既存エリアでのシェア拡大や新規エリアへの展開によって、主力のガス事業、CATV事業、アクア事業を中心に収益基盤である顧客件数の拡大に取り組んでいく。また、法人向け情報通信事業では、AWSについて導入コンサルティングから設計、構築、接続回線、監視運用サービスに至るまで全行程をワンストップで提供できる強みを生かして、クラウドサービス関連事業の拡大に取り組んでいく。AWS関連では国内での豊富な実績をもとに、2021年9月から中国に現地法人を持つ日本企業のAWS利用をサポートする「AWS中国リージョン対応ソリューション」の提供も開始しており、今後は海外の需要も取り込んでいくことにしている。建築設備不動産事業においては、既述のとおりM&A戦略の推進によって総合建設事業者としての基盤を固めており、今後グループシナジーを生かしながら東海エリアを中心に事業規模の拡大を目指していく考えだ。
b) TLCの進化
顧客の潜在ニーズを察知し、新しいライフスタイルをデザイン・提案するためのデジタルマーケティングを推進していく。約310万件の顧客データを一元管理するデータ分析プラットフォーム「D-sapiens」を活用することで顧客に最適なサービスを提案し、高付加価値化、顧客体験の向上を図っていく。デジタルマーケティングの具体的な取り組みとしては、アクア事業においてAI分析によって顧客の解約予兆を察知し、解約防止施策を打つなどしている。また、直近では非対面でも商談可能なWeb感謝祭サイトを構築し、新たな需要の掘り起こしに取り組んでいる。まだ、これら施策によって大きな効果は得られていないものの、今後も様々な施策を企画し、そのデータを収集して評価、分析、改善を続けていくことで、デジタルマーケティング施策の効果も大きくなっていくものと思われる。
c) DX戦略の本格化
同社は、今回の中期経営計画策定と同時にDX戦略も策定している。DX戦略では、全国約310万件の顧客データや「ABCIR+S」を最大限に活用することで既存ビジネスモデルの最適化をさらに進めていく。また、DXによる「業務効率化」や「サービスの高付加価値化」を実現していくと同時に、スタートアップ企業等との協業による「新たなビジネスの創造」にもチャレンジしていく。2021年4月には新規事業創出に向けたオープンイノベーション戦略の一環として、(株)TOKAIベンチャーキャピタル&インキュベーションを設立している。
d) 経営資源の最適配分
中期経営計画では、今後4年間で合計950億円の営業キャッシュ・フロー(経営資源)の創出を見込んでおり、これらの最適配分として事業基盤拡大のための成長投資に650億円を投下し、残り300億円については株主還元や株主価値の向上に充当していく方針としている。2022年3月期第2四半期累計実績では、営業キャッシュ・フロー114億円のうち、成長投資に90億円(既存事業63億円、M&A27億円)、残り21億円を配当金に充当しており、最適配分については計画どおり進捗した。
e) SDGsに向けた取り組みの強化
SDGsに向けた取り組みとして、2021年5月に「TOKAIグループ カーボンニュートラルビジョン」を公表している。同社グループで2050年にカーボンニュートラルの達成を目指しており、その前段階として2030年までのCO2削減施策を打ち出している。具体的には、「ABCIR+S」の活用(LPガスの自動検針導入、配送ルート最適化等)によって事業活動におけるCO2削減に取り組んでいくほか、高効率ガス機器や太陽光発電システムの住宅への普及促進等によって住宅におけるCO2削減に貢献していくとしている。
また、2021年8月には都市ガス事業において、J-クレジット制度※を活用し、CO2排出量をオフセットして実質的にCO2排出量をゼロとする「カーボンニュートラルガス」の販売を開始した。販売先はSDGsの取り組みに前向きな自治体や企業等となる。「ゼロカーボンシティ」を表明した静岡県藤枝市と「ゼロカーボンシティの実現に向けての連携協定書」を同年8月に締結しており、今後もこうした取り組みが増えていく可能性がある。
※J-クレジット制度:省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出量削減や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量をクレジットとして国が認証する制度。
2021年10月には初期費用0円で太陽光発電システムを住宅に設置できる「TOKAI ZERO SOLAR」の提供も開始した。同社が初期設置費用をすべて負担し、サービスの利用中は光熱費の削減メリットを利用者は享受できるほか、契約期間※終了後は設備一式を無償で取得できるほか、発電した電気を無料で利用することができるといったメリットがあり、住宅への太陽光発電システムの普及を促進し、CO2排出量の削減に貢献していく。
※契約期間は10〜15年で発電容量や周辺環境、設置条件等によって異なる。
そのほか、2021年4月よりテレワーク主体となる新しい働き方を導入し、ハード面(パソコンやスマートフォン)の整備に加え、在宅勤務手当やデジタルワークプレイスの整備を実施している。また、ペーパーレス化の推進や電子印システムの導入検討など業務プロセスの改善についての取組みを進めており、今後もワークスタイル改革による柔軟な働き方を実現し、多様な人材が活躍できる環境を整備していく考えだ。
ガバナンス体制の強化についても推進している。2021年2月には新たに指名・報酬委員会を設置し、取締役会の機能の独立性、客観性と説明責任をさらに強化した。また、多様性及び専門性確保の観点から、社外取締役を取締役の3分の1以上とし、女性取締役も登用している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>