TDCソフト Research Memo(5):2022年3月期第2四半期は増収増益で各事業分野は堅調に推移(1)
[21/12/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2022年3月期第2四半期の業績概要
情報サービス産業を取り巻く環境は、テレワーク環境の整備・強化に向けた需要が一巡した。一方で、クラウドコンピューティング、AI、IoT、RPA、ブロックチェーン、マイクロサービス等の技術革新によるDXの潮流が、企業の競争力強化に向けた戦略的な投資需要を高め、IT投資需要は増加基調で推移していくことが見込まれている。また、コロナ禍によってTDCソフト<4687>においても金融ITソリューション分野で一部案件の延伸・中断のほか、対面営業の制限といった形で受注活動への影響が発生していたが、2022年3月期第2四半期においては、これらの影響は解消されており、保険、クレジット関連のシステム開発案件などが堅調に推移している。
また、同社グループは2019年4月から2022年3月における中期経営計画「Shift to the Smart SI」に基づき「次世代型システムインテグレーター」を目指し、市場の潜在ニーズを捉え、デジタル技術の新たな潮流に対応した次世代型SI事業へと進化することをビジョンに掲げている。
2. 2022年3月期第2四半期業績
2022年3月期第2四半期(4-9月)の売上高は14,661百万円(前年同期比11.2%増)、営業利益1,588百万円(同47.5%増)、経常利益1,647百万円(同48.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,117百万円(同49.9%増)だった。コロナ禍によって昨年度発生した一部案件の延伸または一時中断の影響については、感染症対策の徹底やリモートワークの積極的な活用によって解消された。夏場にコロナ禍の状況が悪化したなかでも事業への影響を限定的なものに抑制できたことで、各事業分野は堅調に推移。高付加価値SIサービスは、計画を上回る進捗で高収益化を実現できている。また、新型コロナウイルス感染症による影響により、業種によっては需要動向に違いがあると見られるものの、企業側においてもDX化推進をこれ以上止める訳にはいかず、経済活動の正常化の動きが進むなか、特に金融業などではシステム投資の動きが一斉に再開されたと弊社では考えている。
また、7-9月期(2Q単体)の売上高営業利益率は前年同期比の9.1%から10.0%に改善している。主な要因としては、コロナ禍の影響による活動制限に伴うコスト抑制が挙げられる。これについては短期的に利益に繋がるものではあるが、中長期的には持続性があるわけではなく、会社側も一過性との認識を示している。一方で、テレワークが社会に普及したことによって、対応可能な業務においては、コロナ収束後もテレワークを持続することができるため、一定のコストは削減されることになるだろう。そのほか、コロナ禍の状況を見極めるうえで新入社員の採用を一時的に抑制(53名)した影響もあろう。これについては、下期においてもコストの減少が利益増に繋がる要因となるが、あくまでも緊急的に抑制したものであり、来年からは元の水準に戻すほか、その後は積極的に人材採用を進める計画である。しかし、上述した一時的な要因だけでなく、同社が推進している次世代型SI事業において、最新の要素技術等を活用した高付加価値SI分野の売上高の構成比が上昇しており、全体に貢献している面もある点は認識しておきたい(現在の中期経営計画の初年度には売上高構成比は3.7%だったが、今上期においては16.2%まで上昇)。
なお、10-3月期(下期)の営業利益及び経常利益の見通しは1,161百万円、1,162百万円と上期実績(1,588百万円、1,647百万円)を下回る計算となる。これは更なる成長に向けた足場固めを行うための積極的な投資を推進することが要因である。重点分野として挙げているアジャイルやセキュリティのほか、同社と親和性のあるデータ基盤、UX、仮想化に近いサービスに向けた取り組みのための投資を行う。もっとも、高付加価値分野である次世代型SI事業の売上高構成比が拡大しているほか、アジャイル事業においても収益性が高まっている。また、セキュリティ事業についてもインターネット総合研究所とサイバーセキュリティ分野でのアライアンス締結による事業サービスの拡大が見込まれるなか、下期については保守的な計画であると弊社では考えており、一段の上振れの可能性が高いと見ておきたい。
3. 事業分野別の業績
(1) ITコンサルティング&サービス
顧客のDX推進に向けたIT戦略やシステム化構想の立案、技術コンサルティング、最新の技術や開発手法の教育サービスの提供や、自社開発のクラウドアプリケーションサービスの提供、BI/DWH、ERP/CRMに関連するソリューションサービスの提供を行っている。2022年3月期第2四半期においては、顧客企業のDX推進に向けたIT需要の高まりを背景に、ITサービス管理、クラウドマネージドサービス関連の案件が堅調に推移したことにより、売上高は前年同期比69.5%増収の1,891百万円となった。コンサルについてはアジャイルの活況が続いており、今後も拡大が見込まれるほか、サービスではコロナ禍において活況の分野となっているため、ITサービス管理、クラウドマネージドサービス関連などが今後も業績をけん引する格好となると弊社では考えている。
(2) 金融ITソリューション
金融業向けにシステム化構想・設計・開発・保守などの統合的なITソリューションの提供を行っており、2022年3月期第2四半期においては、コロナ禍で中断していたプロジェクトの影響が解消した。保険やクレジット関連のシステム開発案件などが堅調に推移したことにより、売上高は前年同期比4.5%増収の6,849百万円だった。金融業のIT投資再開によってアプリケーションなどの需要が復活したことから、DX化の加速とともに需要が拡大に向かうと弊社では考えており、先行きに対しても強気の見方を持っている。
(3) 公共法人ITソリューション
流通業、製造業、サービス業や公共向けにシステム化構想・設計・開発・保守などの統合的なITソリューションの提供を行っており、2022年3月期第2四半期においては運輸業や通信業、エネルギー業向けの開発案件等が堅調に推移し、売上高は前年同期比6.1%増収の4,047百万円となった。なお、運輸業はDX化向けの上流案件が増加していることから、今後も拡大が期待されている。
(4) プラットフォームソリューション
ITインフラの環境設計、構築、運用支援、ネットワーク製品開発、ネットワークインテグレーション等の提供を行っている。2022年3月期第2四半期については、クラウド関連のインフラ構築案件が堅調に推移しており、売上高は前年同期比10.3%増収の1,873百万円だった。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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1. 2022年3月期第2四半期の業績概要
情報サービス産業を取り巻く環境は、テレワーク環境の整備・強化に向けた需要が一巡した。一方で、クラウドコンピューティング、AI、IoT、RPA、ブロックチェーン、マイクロサービス等の技術革新によるDXの潮流が、企業の競争力強化に向けた戦略的な投資需要を高め、IT投資需要は増加基調で推移していくことが見込まれている。また、コロナ禍によってTDCソフト<4687>においても金融ITソリューション分野で一部案件の延伸・中断のほか、対面営業の制限といった形で受注活動への影響が発生していたが、2022年3月期第2四半期においては、これらの影響は解消されており、保険、クレジット関連のシステム開発案件などが堅調に推移している。
また、同社グループは2019年4月から2022年3月における中期経営計画「Shift to the Smart SI」に基づき「次世代型システムインテグレーター」を目指し、市場の潜在ニーズを捉え、デジタル技術の新たな潮流に対応した次世代型SI事業へと進化することをビジョンに掲げている。
2. 2022年3月期第2四半期業績
2022年3月期第2四半期(4-9月)の売上高は14,661百万円(前年同期比11.2%増)、営業利益1,588百万円(同47.5%増)、経常利益1,647百万円(同48.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,117百万円(同49.9%増)だった。コロナ禍によって昨年度発生した一部案件の延伸または一時中断の影響については、感染症対策の徹底やリモートワークの積極的な活用によって解消された。夏場にコロナ禍の状況が悪化したなかでも事業への影響を限定的なものに抑制できたことで、各事業分野は堅調に推移。高付加価値SIサービスは、計画を上回る進捗で高収益化を実現できている。また、新型コロナウイルス感染症による影響により、業種によっては需要動向に違いがあると見られるものの、企業側においてもDX化推進をこれ以上止める訳にはいかず、経済活動の正常化の動きが進むなか、特に金融業などではシステム投資の動きが一斉に再開されたと弊社では考えている。
また、7-9月期(2Q単体)の売上高営業利益率は前年同期比の9.1%から10.0%に改善している。主な要因としては、コロナ禍の影響による活動制限に伴うコスト抑制が挙げられる。これについては短期的に利益に繋がるものではあるが、中長期的には持続性があるわけではなく、会社側も一過性との認識を示している。一方で、テレワークが社会に普及したことによって、対応可能な業務においては、コロナ収束後もテレワークを持続することができるため、一定のコストは削減されることになるだろう。そのほか、コロナ禍の状況を見極めるうえで新入社員の採用を一時的に抑制(53名)した影響もあろう。これについては、下期においてもコストの減少が利益増に繋がる要因となるが、あくまでも緊急的に抑制したものであり、来年からは元の水準に戻すほか、その後は積極的に人材採用を進める計画である。しかし、上述した一時的な要因だけでなく、同社が推進している次世代型SI事業において、最新の要素技術等を活用した高付加価値SI分野の売上高の構成比が上昇しており、全体に貢献している面もある点は認識しておきたい(現在の中期経営計画の初年度には売上高構成比は3.7%だったが、今上期においては16.2%まで上昇)。
なお、10-3月期(下期)の営業利益及び経常利益の見通しは1,161百万円、1,162百万円と上期実績(1,588百万円、1,647百万円)を下回る計算となる。これは更なる成長に向けた足場固めを行うための積極的な投資を推進することが要因である。重点分野として挙げているアジャイルやセキュリティのほか、同社と親和性のあるデータ基盤、UX、仮想化に近いサービスに向けた取り組みのための投資を行う。もっとも、高付加価値分野である次世代型SI事業の売上高構成比が拡大しているほか、アジャイル事業においても収益性が高まっている。また、セキュリティ事業についてもインターネット総合研究所とサイバーセキュリティ分野でのアライアンス締結による事業サービスの拡大が見込まれるなか、下期については保守的な計画であると弊社では考えており、一段の上振れの可能性が高いと見ておきたい。
3. 事業分野別の業績
(1) ITコンサルティング&サービス
顧客のDX推進に向けたIT戦略やシステム化構想の立案、技術コンサルティング、最新の技術や開発手法の教育サービスの提供や、自社開発のクラウドアプリケーションサービスの提供、BI/DWH、ERP/CRMに関連するソリューションサービスの提供を行っている。2022年3月期第2四半期においては、顧客企業のDX推進に向けたIT需要の高まりを背景に、ITサービス管理、クラウドマネージドサービス関連の案件が堅調に推移したことにより、売上高は前年同期比69.5%増収の1,891百万円となった。コンサルについてはアジャイルの活況が続いており、今後も拡大が見込まれるほか、サービスではコロナ禍において活況の分野となっているため、ITサービス管理、クラウドマネージドサービス関連などが今後も業績をけん引する格好となると弊社では考えている。
(2) 金融ITソリューション
金融業向けにシステム化構想・設計・開発・保守などの統合的なITソリューションの提供を行っており、2022年3月期第2四半期においては、コロナ禍で中断していたプロジェクトの影響が解消した。保険やクレジット関連のシステム開発案件などが堅調に推移したことにより、売上高は前年同期比4.5%増収の6,849百万円だった。金融業のIT投資再開によってアプリケーションなどの需要が復活したことから、DX化の加速とともに需要が拡大に向かうと弊社では考えており、先行きに対しても強気の見方を持っている。
(3) 公共法人ITソリューション
流通業、製造業、サービス業や公共向けにシステム化構想・設計・開発・保守などの統合的なITソリューションの提供を行っており、2022年3月期第2四半期においては運輸業や通信業、エネルギー業向けの開発案件等が堅調に推移し、売上高は前年同期比6.1%増収の4,047百万円となった。なお、運輸業はDX化向けの上流案件が増加していることから、今後も拡大が期待されている。
(4) プラットフォームソリューション
ITインフラの環境設計、構築、運用支援、ネットワーク製品開発、ネットワークインテグレーション等の提供を行っている。2022年3月期第2四半期については、クラウド関連のインフラ構築案件が堅調に推移しており、売上高は前年同期比10.3%増収の1,873百万円だった。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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