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テクマト Research Memo(6):セキュリティシステムのクラウドシフトを背景に、情報基盤事業が大きく成長(1)

注目トピックス 日本株
■テクマトリックス<3762>の業績動向

2. 事業セグメント別の動向
(1) 情報基盤事業
情報基盤事業の売上収益は前年同期比14.8%増の11,289百万円、営業利益は同12.5%増の1,379百万円と過去最高を更新した。また、受注高で同31.4%増の15,908百万円、受注残高で同52.3%増の25,314百万円といずれも大きく伸長した。年々巧妙化するサイバーテロ対策として、企業の情報セキュリティシステムも次世代型のクラウドセキュリティシステムにシフトする動きが2020年頃から進み始め、2021年に入ってその動きが顕著となったことが好調の背景にある。特に、国内外で事業拠点を多く持つ大企業にとってセキュリティ対策をクラウド上で一括管理できるメリットは大きく、Palo Alto Networks社製SASE※1である「Prisma Access」を導入する企業が大幅に増加した。受注案件の規模も3〜5年契約で大型化する傾向にあり、受注残高が積み上がる要因となっている。規模が大型化することで売上総利益率は数ポイント程度の低下要因となるが、人件費率の低下により吸収できており、利益ベースでも増益に寄与している。なお、需要が急拡大しているPalo Alto Networks製品の一次代理店は同社以外にも複数あるが販売実績は同社がトップとなっており、パロアルトネットワークス(株)が2020年12月に開催したイベント「Japan Partner Day 2020 Virtual」でも、3年連続で「JAPAN Distribution Partner of the Year」※2を受賞している。

※1SASE(Secure Access Service Edge):ネットワークとセキュリティの機能を包括的にクラウドから提供すること。クラウドサービスの普及が進むなかで、これまでクラウドのポリシーは利用サービス別に適用されることが多かったが、SASEは単一のクラウドに集約し包括的に管理するという新しい概念。
※2 「JAPAN Distribution Partner of the Year」は、販売実績や前年度からの成長、販売後のサポートサービスの提供において大きな成果を達成した日本のディストリビュータを表彰するもので、同社は2018年から3年連続の受賞となった。


分野別の売上動向を見ると、前年同期にリモートワークの普及に伴って特需的に増加したリモートアクセス製品や個人認証システムが減少したものの、次世代ファイアウォールを中心にクラウド型サービスが大きく伸長したほかストレージ製品も堅調に推移した。また、セキュリティシステムの高度化が進むとともに、統合セキュリティ運用・監視サービス「TPS(TechMatrix Preimium Support)」の売上も伸長した。営業活動においてクラウド型サービスとの複合提案の取り組みを強化したことや、二次代理店となるSIerでも「TPS」をセットで販売するケースが増えてきたことが要因だ。運用・監視サービスの売上規模はまだ小さいものの(部門構成比で10%弱)、サイバーテロによる重大インシデントの発生リスクが高まるなかで引き合いが強まっており、売上拡大とともに利益率向上に寄与することが見込まれる。なお、運用・監視サービスではほかに「TRINITY(トリニティ)」があるが、これは1代目のサービスであり、契約更新時により高度なサービスを提供できる「TPS」への移行提案を進めている。

そのほか、子会社のクロス・ヘッドについては、インフラ構築案件が顧客の意志決定の遅れにより苦戦したものの、下期に挽回し通期では計画どおりになる見通しだ。沖縄クロス・ヘッドは売上高で計画を下回ったものの、リモートデスクトップ・サービスなど採算の良い自社サービスが好調で、利益ベースでは計画を上回って進捗している。

なお、情報基盤事業(単体)におけるストック売上比率は、サブスクリプション課金モデルのクラウド型セキュリティサービスの急成長により前年同期の60.6%から76.2%と大きく上昇した。今後もサブスクリプション課金モデルのサービス拡大が見込まれることから、ストック売上比率も高水準で推移する見込みで安定した収益性が続くものと予想される。

(2) アプリケーション・サービス事業
アプリケーション・サービス事業の売上収益は前年同期比1.0%増の4,856百万円、営業利益は同49.1%減の221百万円となった。新規事業である教育事業への先行投資や、前期まで継続していたCRM事業における更新需要の反動減、ビジネスソリューション事業において数千万円程度の不採算案件が発生したことが主な減益要因となった。ただ、受注高は前年同期比7.3%増の5,484百万円、受注残高は同10.0%増の10,127百万円と順調に増加しており、先行きに関しては明るい。

なお、ストック型売上比率(単体のアプリケーション・サービス事業及びNOBORIの売上収益に占める比率)は前年同期の56.0%から63.8%に上昇した。「NOBORI」を中心にクラウド型サービスが順調に成長していることや、非ストック型の比率が高いCRM事業が減少したことも一因となっている。同社は、ストック売上比率を今後3年間で65%程度まで引き上げていくことを目指している。

a) 医療分野
医療分野の売上収益は前年同期比2ケタ増と好調に推移した。クラウド型PACS「NOBORI」の契約施設数が順調に増加していることが主因だ。既存顧客の更新や新規受注、他社からのリプレイス案件がいずれも増加した。検査件数で見ると前年同期比19.7%増、保存患者数では同15.1%増となっており、2ケタ成長が続いている。また、新規事業として取り組んでいるPHRサービスについては地域連携医療機関など大規模病院で導入が進んでおり、利用者数は数万人規模と急速に拡大している。PHRでの収益化を図るとともに、PHRをタッチポイントとしてクラウド型PACSのさらなるシェア拡大を狙っている。

AIベンチャーやエムスリーなどと協業して取り組んでいるAI診断サービスについては、脳腫瘍や肺炎の診断支援で利用が着実に進んでいる。ただ、普及拡大に向けてはAI診断支援サービスの保険適用がカギを握ると見ており、その状況が実現すれば収益化に向けて事業がより一層加速することが期待できる。一方、医知悟の遠隔読影サービスについては健診需要が堅調に推移し、計画を上回って推移している。また、A-Lineが提供する医療被ばく線量管理サービス「MINCADI」については、2020年4月より病院でのデータ管理が義務化されたことで需要拡大が期待されていたが、当初計画よりも導入ペースはスローとなっている。コロナ禍で規制当局の監査が厳しく実施されておらず、病院側での導入意識も低くなっていることが要因と見られる。A-Lineについては当面先行投資が続くものと同社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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