チノー Research Memo(6):成長分野の需要増への積極的な対応と経営基盤強化で、中計達成の期待高まる
[21/12/28]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 2022年3月期の見通し
チノー<6850>の2022年3月期の業績見通しについては、売上高で前期比5.8%増の22,300百万円、営業利益で前期比14.4%増の1,300百万円、経常利益で同9.0%増の1,400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同34.1%減の850百万円、EPSは100.36円としている。この見通しは、2021年11月10日に業績予想の上方修正を行ったもの。世界的な半導体供給不足や原材料費の高騰など、先行きの不透明感は依然として継続しているものの、2022年3月期第2四半期末では計測制御機器及びセンサの需要の回復による売上高の増加、計装システムの原価率の改善が見られた。脱炭素に関わる研究開発や IoT 化を目指す操業現場の設備投資も見込まれ、2022年3月期第3四半期以降もこの需要が堅調に推移することが予想されることが背景としてある。この修正後数値に関しても、今後の取り組みや中期経営計画の妥当性を勘案しても達成可能性は高いものと弊社では分析している。
2. 「中期経営計画2026」概要
同社では、グループ一丸となった持続的成長軌道の構築と中長期的な企業価値の向上に取り組んでいく、2022年3月期から2027年3月期までの計画を策定している。同社を取り巻く事業環境としては、世界の政治や経済の不透明化、デジタル技術の革新、地球温暖化や気候変動問題の深刻化、日本の少子化や高齢化、世界の人口増加などVUCAの加速が進んでいる。こうしたなかで同社は、創立90周年(2026年)に向けた経営ビジョンとして、「共創:環境の変化を捉えながらステークホルダーと共に新しい価値を創造」「特長:卓越した技術によるループソリューションで顧客に感動を届ける」「信頼:信頼の“絆”を強め 情熱とチームワークで未来に向かって成長し続ける」の3つを定めている。
3. 成長戦略
先述の中期経営計画2026数値目標(KGI)達成のために同社では、1)成長分野のさらなる開拓・拡大(新たな成長分野に向けたグループシナジーを創出し、特長あるソリューションの開発と提供を加速させる)、2)コア事業の高度化と価値創造(独自技術とサービスとのインテグレーションによりコア事業を高度化し、顧客と新しい価値を創造する)、3)海外事業の基盤強化と拡大(国内外事業のリレーションシップ強化と地域別戦略の展開によりグループ収益力を高める)、4)経営基盤の強靭化(企業価値の創造とイノベーション、スピード経営を支え、人財・組織・ICT・ガバナンス・財務体質の強靭化を進める)の4つの基本戦略を基に、持続的な成長軌道の構築、中長期的な企業価値の向上、脱炭素社会づくりへの貢献を目指していく。
(1) 成長分野のさらなる開拓・拡大
エネルギー需要の構造変化、厳しさを増す環境規制、情報通信技術のブレイクスルー、健康・長寿ニーズの増大といった背景を成長及び拡大の機会と捉えるものである。具体的には、サステナブルな社会の実現に向けて水素利用、半導体・電子部品、次世代電池、新素材、医療医薬・食品管理、ロジスティクスなどの成長分野に対してグループシナジーを創出し、特徴あるソリューションの開発と提供を加速させていく計画となっている。
(2) コア事業の高度化と価値創造
温度標準技術や温度計測技術、赤外線計測技術、湿度・ガス計測技術、ループソリューション、計装システムといった特長ある独自技術について「温度のチノー」の信頼性と顧客密着型サービスの強化で計測・制御・監視という同社の温度ループソリューションを深耕する。これによりサービスを次のステージへ持っていくことでの顧客感動エンジニアリング(顧客満足度の最大化)の実現を目指していく計画である。
(3) 海外事業の基盤強化と拡大
コロナ禍における世界経済停滞、米中摩擦と自国第一主義、中国・インド・ASEAN諸国の成長を背景に国別・地域別セグメント戦略の展開、体制強化及び人財育成、ICT技術活用によるグローバルインフラの整備、アジア市場でのさらなるプレゼンス向上を行っていくことで、国内外&生産・販売・開発の連携によるグローバルニッチ開拓を進めていく計画である。
(4) 経営基盤の強靭化
経営基盤の強靭化において同社では、社会経済システムの抜本的変化を背景に社会のニーズや課題を的確に察知して迅速に対応できる、柔軟かつ耐性の強い経営基盤が不可欠であると考えている。具体的には、少子化と高齢化の加速、価値観と働き方の多様化、デジタル社会の本格到来、マルチステークホルダー資本主義の台頭、コロナ禍・パンデミックの発生などである。こうしたなかで、目指すビジョン・事業戦略と整合した形で、エンゲージメントを高める人財マネジメントの確立、DX推進による業務執行の機動性・効率性の確保、コーポレートガバナンスの高度化、 資本効率の向上を一層重視した財務戦略の展開を軸に、態勢・機能・制度の整備・充実を図る。ステークホルダーの期待に応えながら新たな価値を創造し続けていくことでVUCAに俊敏かつ柔軟に適応し、CSV(共有価値の創造)に基づいた経営戦略を果敢に実行していく。これにより企業価値の創造とイノベーション、スピード経営を支える人財・組織・ICT・ガバナンス・財務体質の強靭化を進めていく計画である。
財務マネジメント方針については、最適資本構成の追求による財務健全性の確保、投資効率を意識した積極的な成長投資、配当性向30%以上を目安とする安定配当を行うとしている。これによって、健全性をベースに成長性と資本効率を重視した財務戦略の展開を図っていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 石津大希)
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1. 2022年3月期の見通し
チノー<6850>の2022年3月期の業績見通しについては、売上高で前期比5.8%増の22,300百万円、営業利益で前期比14.4%増の1,300百万円、経常利益で同9.0%増の1,400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同34.1%減の850百万円、EPSは100.36円としている。この見通しは、2021年11月10日に業績予想の上方修正を行ったもの。世界的な半導体供給不足や原材料費の高騰など、先行きの不透明感は依然として継続しているものの、2022年3月期第2四半期末では計測制御機器及びセンサの需要の回復による売上高の増加、計装システムの原価率の改善が見られた。脱炭素に関わる研究開発や IoT 化を目指す操業現場の設備投資も見込まれ、2022年3月期第3四半期以降もこの需要が堅調に推移することが予想されることが背景としてある。この修正後数値に関しても、今後の取り組みや中期経営計画の妥当性を勘案しても達成可能性は高いものと弊社では分析している。
2. 「中期経営計画2026」概要
同社では、グループ一丸となった持続的成長軌道の構築と中長期的な企業価値の向上に取り組んでいく、2022年3月期から2027年3月期までの計画を策定している。同社を取り巻く事業環境としては、世界の政治や経済の不透明化、デジタル技術の革新、地球温暖化や気候変動問題の深刻化、日本の少子化や高齢化、世界の人口増加などVUCAの加速が進んでいる。こうしたなかで同社は、創立90周年(2026年)に向けた経営ビジョンとして、「共創:環境の変化を捉えながらステークホルダーと共に新しい価値を創造」「特長:卓越した技術によるループソリューションで顧客に感動を届ける」「信頼:信頼の“絆”を強め 情熱とチームワークで未来に向かって成長し続ける」の3つを定めている。
3. 成長戦略
先述の中期経営計画2026数値目標(KGI)達成のために同社では、1)成長分野のさらなる開拓・拡大(新たな成長分野に向けたグループシナジーを創出し、特長あるソリューションの開発と提供を加速させる)、2)コア事業の高度化と価値創造(独自技術とサービスとのインテグレーションによりコア事業を高度化し、顧客と新しい価値を創造する)、3)海外事業の基盤強化と拡大(国内外事業のリレーションシップ強化と地域別戦略の展開によりグループ収益力を高める)、4)経営基盤の強靭化(企業価値の創造とイノベーション、スピード経営を支え、人財・組織・ICT・ガバナンス・財務体質の強靭化を進める)の4つの基本戦略を基に、持続的な成長軌道の構築、中長期的な企業価値の向上、脱炭素社会づくりへの貢献を目指していく。
(1) 成長分野のさらなる開拓・拡大
エネルギー需要の構造変化、厳しさを増す環境規制、情報通信技術のブレイクスルー、健康・長寿ニーズの増大といった背景を成長及び拡大の機会と捉えるものである。具体的には、サステナブルな社会の実現に向けて水素利用、半導体・電子部品、次世代電池、新素材、医療医薬・食品管理、ロジスティクスなどの成長分野に対してグループシナジーを創出し、特徴あるソリューションの開発と提供を加速させていく計画となっている。
(2) コア事業の高度化と価値創造
温度標準技術や温度計測技術、赤外線計測技術、湿度・ガス計測技術、ループソリューション、計装システムといった特長ある独自技術について「温度のチノー」の信頼性と顧客密着型サービスの強化で計測・制御・監視という同社の温度ループソリューションを深耕する。これによりサービスを次のステージへ持っていくことでの顧客感動エンジニアリング(顧客満足度の最大化)の実現を目指していく計画である。
(3) 海外事業の基盤強化と拡大
コロナ禍における世界経済停滞、米中摩擦と自国第一主義、中国・インド・ASEAN諸国の成長を背景に国別・地域別セグメント戦略の展開、体制強化及び人財育成、ICT技術活用によるグローバルインフラの整備、アジア市場でのさらなるプレゼンス向上を行っていくことで、国内外&生産・販売・開発の連携によるグローバルニッチ開拓を進めていく計画である。
(4) 経営基盤の強靭化
経営基盤の強靭化において同社では、社会経済システムの抜本的変化を背景に社会のニーズや課題を的確に察知して迅速に対応できる、柔軟かつ耐性の強い経営基盤が不可欠であると考えている。具体的には、少子化と高齢化の加速、価値観と働き方の多様化、デジタル社会の本格到来、マルチステークホルダー資本主義の台頭、コロナ禍・パンデミックの発生などである。こうしたなかで、目指すビジョン・事業戦略と整合した形で、エンゲージメントを高める人財マネジメントの確立、DX推進による業務執行の機動性・効率性の確保、コーポレートガバナンスの高度化、 資本効率の向上を一層重視した財務戦略の展開を軸に、態勢・機能・制度の整備・充実を図る。ステークホルダーの期待に応えながら新たな価値を創造し続けていくことでVUCAに俊敏かつ柔軟に適応し、CSV(共有価値の創造)に基づいた経営戦略を果敢に実行していく。これにより企業価値の創造とイノベーション、スピード経営を支える人財・組織・ICT・ガバナンス・財務体質の強靭化を進めていく計画である。
財務マネジメント方針については、最適資本構成の追求による財務健全性の確保、投資効率を意識した積極的な成長投資、配当性向30%以上を目安とする安定配当を行うとしている。これによって、健全性をベースに成長性と資本効率を重視した財務戦略の展開を図っていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 石津大希)
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